ツマグロヒョウモン
(褄黒豹紋)



チョウ目  タテハチョウ科
前ばね長さ:32〜40mm


 観音崎自然博物館の芝生広場周辺で咲くアシタバの花の写真を撮ろうと,ふと傍らのトネアザミを見ると,見慣れぬ美しいチョウが留まっていた。
2004.9.28
 
  
 全体の雰囲気はアカタテハに似ているが,紋様や色合いが明らかに異なる。よほどお腹がすいているのか,私の存在を無視したようにトネアザミの吸蜜に夢中で,それを幸いにいろいろな角度からそのチョウの写真を撮ることができた。
 
 
 
 海からの少し強い風に身体を揺らし吸蜜するチョウの写真を30数枚ほど撮り,一段落したところで館内へ戻り,居合わせた研究員へこのことを話した。

 研究員のご専門は海洋生物であったが,吸蜜を続けるチョウを私と一緒に観察,チョウの図鑑であれこれ調べて頂いた結果,奄美諸島以南に生息するカバマダラに似ていることが判った。

 家へ帰り,小学館のNEO昆虫図鑑のカバマダラと私が撮った写真を比較してみると,紋様や色合いが微妙に異なる。そこでタテハチョウの仲間に見当をつけ,沢山あるタテハチョウの写真を片っ端から見比べたところ,ツマグロヒョウモンのメスであることが判明した。

 図鑑のコメントには「関東地方以西〜南西諸島に生息,沖縄では一年中見られ,メスはカバマダラに擬態します。」とあったが,何故カバマダラに擬態するのかの説明はなかった。
 
  
 

カバマダラ♂
小学館の図鑑NEO「昆虫」から転載
メスがカバマダラに擬態する理由
 
 ツマグロヒョウモンのメスが何故カバマダラに擬態するのか?図鑑ではそれ以上のことが判らないため,ツマグロヒョウモンをキーコードに調べたところ,愛媛県・愛蝶会のホームページに興味深いコメントと対比写真を見つけた。

 要約すると「元来は亜熱帯以南の暖地の蝶であるが、永年の間に低温に適応しつつ次第に北へ生息圏を広げ、今日本では関西以西に定着した順応性の強い蝶である。

 一方、同じ暖地系の蝶でカバマダラという蝶がいる。日本では奄美大島以南にしか生息していない。この蝶の幼虫はトウワタという有毒植物を食べて育つ為に、成蝶になっても体内に毒素が残り、一度この毒蝶を食べ苦しんだ小鳥は、二度とこの蝶を襲うことはないという。

 所がカバマダラに、このツマグロヒョウモンの雌の斑紋がよく似ている。毒蝶にわが身を似せて小鳥など外敵から身を守る知恵、いわゆる「擬態」といわれるものである。このツマグロヒョウモンは雌雄の斑紋が異なり、雌だけがカバマダラに擬態したのは、種族保存の為の母性保護という自然界の妙であろうか。」

 どうやらツマグロヒョウモンもナガサキアゲハやムラサキツバメ同様,地球温暖化の影響か?生息域を北上させているチョウのようである。しかしながら,擬態の対象であるカバマダラは今でも奄美大島以南にしか生息せず,ツマグロヒョウモンだけが生息圏を北へ北へと広げているようだ。

 美しい南国のチョウを観音崎で見られることは嬉しいことだが,これが地球温暖化の証と考えると,手放しで喜んでばかりもいられない気がする。
カップル
 
 観音崎公園 花の広場の草むらを歩いていると,足元から突然妙なチョウが飛びたち,3メートルほど先に着地した。静かに近づいてみると,一ヶ月前に観音崎自然博物館の芝生広場で見かけたツマグロヒョウモンで,それもカップルであった。

 一ヶ月前出会った時は,風に乗って気まぐれに飛んできた迷チョウかと思ったが,カップルでいるところを見ると,どうやら確実に生息域を北上させ,観音崎でも繁殖を始めていると思われる。
2004.10.25
 
  
幼   虫
 
 観音崎から家へ帰る途中,我が家近くの路上で一匹のあまり見慣れぬイモムシを見つけた。黒地に赤い紋様の入った,どぎつい配色のイモムシで,念のため写真に撮ってから,近くの草むらに放して帰宅した。

 何のイモムシか?昆虫図鑑で調べてみたが判らず。インターネットで何気なくツマグロヒョウモンの幼虫を検索してみたところ,なんとそのものズバリで,それこそビックリ仰天した。

 偶然とはいいながら,本来南西諸島に住んでいたツマグロヒョウモンのカップルと幼虫を,同じ日に目撃することは,地球温暖化の証のようなもので,なんとも複雑な気持ちである。
2004.10.25
  
 
オ   ス
 
 観音崎公園・花の広場で見なれぬチョウを見つけた。キタテハに若干似ていて豹柄が美しい。セイタカアワダチソウの花を吸密しているそのチョウを見てツマグロヒョウモンのオスと直感した。昨年カップルを見かけたが,オスを単独で見るのはこれが初めて。

 ツマグロヒョウモンのメスを初めて見た時は,いかにも南国のチョウと言った感じで感激したものだが,それに比べるとオスは少し見劣りする。昆虫や野鳥の世界では,オスがメスより美しいのが普通だが,ツマグロヒョウモンは例外的存在と言える。

 何故?ツマグロヒョウモンのメスはオスより美しいのだろうか? 答のカギはどうやら,ツマグロヒョウモンのメスがカバマダラに擬態していることにありそうだ。
2005.10.13
  
  
  
美しいメスに再会
 
 ツマグロヒョウモンのオスに出会った翌日,今度は美しいメスと一年ぶりに再会した。観音崎公園・花の広場ではコスモスが見頃を迎えたが,少し離れた荒れ地ではセイタカアワダチソウが咲き誇っている。辺り一面を黄金色に染めたその景観は,エル・ドラド(黄金郷)へ足を踏み入れたかと錯覚するほどの迫力がある。

 そのセイタカアワダチソウの蜜を求めて,キタテハ・アカタテハ・ヒメアカタテハ・セセリチョウ・シジミチョウ等が飛び回っている。それに混じって,一見したところ羽の周辺が青みを帯びたチョウが飛んでいた。ツマグロヒョウモンのメスに違いない!

 そのチョウに狙いをつけて,吸密するたびに接近して写真を撮った。ところが,羽をせわしく開いたり閉じたり,一時として羽を休めることを知らない。羽を全開した姿を撮ろうとするのだが,シャッターが下りた時には羽を閉じていることしばしばで,50枚近くの写真を撮りながら,全開したものはほんの数枚だった。
2005.10.14
  
  
  
  
  
我が家の庭で幼虫発見!
 
 「見慣れないイモムシがいるよ!」階下から,来年,喜寿を迎える母が呼んでいる。デジカメ片手に庭へ出て母の指先を見ると,体長3〜4cm,黒地に赤い筋の入ったチョット毒々しい感じのイモムシがいた。ツマグロヒョウモンの幼虫だ!二年前,自宅近くの路上で見かけ,印象が強烈だったこともあって,最近ボケ気味の私の記憶に残像が留まっていたらしい。

 ツマグロヒョウモンの幼虫は二匹。一匹はスミレの葉,もう一匹はギボウシの葉の上にいる。それぞれの葉をよく見ると,5本あったと思われるスミレの被害がひどく,4本は食べ尽くされ,残り1本も葉の半分ほどが残っているだけである。ギボウシにも虫食いの跡はあるが,古いもので,ツマグロヒョウモンの幼虫が食べた跡とは思われない。

 地球温暖化の影響か?最近は南方から北上するツマグロヒョウモンやナガサキアゲハ,ムラサキツバメ等のチョウを度々見かけるが,まさか我が家の庭で繁殖しているとは,嬉しい反面,少々薄気味悪い気もする。
2006.9.15
  
  
  

スミレの葉
  

ギボウシの葉


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