スッポンタケ
(鼈茸)
学名:Phallus impudicus Pers

スッポンタケ科  高さ:10〜15cm

 10月18日,観音崎公園で顔見知りになった方から「奇妙なキノコを見つけましたよ!」との情報をいただいた。翌日,現地へ行ってみると,常緑樹の林の中,倒木をチップにして敷き詰め,その上に落ち葉が堆積,半ば腐葉土化した林床に,野鳥の卵のようなキノコが20個くらい転がっていた。大きなものは鶏卵大,小さなものでもピンポン球くらいある。

 私がこれまでお目にかかった球状のキノコとしてはノウタケ,ヒメカタショウロとサンコタケの幼菌があるが,そのいずれでもない。帰宅後,保育社の「きのこ図鑑」であれこれ調べてみたところ,キヌガサタケかスッポンタケらしいことがわかった。
2008.12.4
 

2008.10.19
 一週間後の10月26日,その後の様子が気になり現地へ行ってみたが,ほとんど変化がかんじられない。ネットで調べ,半割にすると切断面からキノコの種類が判別できると知っていたので,丸々としたものを一つ頂戴することにした。直径50〜60mmのキノコはマシュマロのような見かけの割にずしりと重い。帰宅後,正式に計測したところ,直径は65mm,重さは80gもあった。 
 
 
2008.10.26
 

表面
 

裏面
 計測後,卵の表面にある少し硬い薄皮を剥き,刺身包丁でゆっくりと真っ二つに切断。断面を見たところ,スッポンタケの幼菌とわかった。
   
 「きのこ図鑑」によればスッポンタケは「食用に不適」となっていたが,「毒」とは書いてない。ネット情報では「中華料理の材料として使われるキノコ」とあった。下手物食いの私としては捨てるわけにはいかない。ネット情報を信じ,中華風スープの具にすることにしたが,傍で家内が薄気味悪そうに眺めていた。

 以前は,巨大ハモを捕まえ料理した時等,家内は猛反対したものだが,最近はあきらめたのか,言っても無駄と悟ったのか,あまり反対しなくなった。それでも口をとがらせ不機嫌な家内を尻目に,鶏卵を四つ割りにしたくらいのサイズに切り分けてみた。中華料理の前菜の一つ「ピータン」に似た雰囲気がある。鍋にお湯を煮立て,ピータン似のスッポンタケの幼菌を入れ,中華スープの素を加えてできあがり。

 中華風スッポンタケ幼菌スープは,その日の夕食の椀になったが,家内も母も尻込みして手を出そうともしない。食べてみると,美味と言うほどではないが変な癖はない。外見と異なりシャキシャキした食感が好ましい。家内の前ではいかにも美味しそうに食べてみた。

 美味しげに食べる私を見て,家内が恐る恐る手を出し一切れ口にしたが,食べた途端,渋い顔になり,それ一つだけに終わってしまった。結局,残りは全て意地っ張りな私の胃袋に消えた。翌朝,普段と変わらない私の姿を見て,家内が呆れたようなホッとしたような複雑な表情をしたのが印象的だった。
  
 幼菌を試食してから8日後の11月3日,観音崎フェスタの取材のついでに,スッポンタケの様子を見に行った。幾つかの殻の表面に皺のようなものが寄っている。柄が伸びて殻を突き破り,傘と柄を突き出す前兆のようだ。

 図鑑で見るスッポンタケは,傘は暗緑色,柄は白色。一見スッポンの頭部に似た形状をしていることから,和名はスッポンタケと名づけられたようだが,男性のシンボルのようにも見える。因みに,学名はPhallus impudicus Pers.図鑑の学名の意味を読んだところ,“Phallus=陰茎 impudicus=淫らな”とあった。和名に比べて学名がストレートな表現をしているのが面白い。
 

2008.11.3
 
 それからは,2〜3日置きに様子を見に行くことにした。ところが,一週間過ぎ,二週間過ぎても一向に大きな変化は見られない。そして約四週間後の11月29日,殻を破り暗緑色をした網目状の頭部を突き出している個体を一つ見つけた。なんとも薄気味悪いキノコだ。あらためて辺りを見回したところ,他にも同じような状態のものが数個見つかった。いずれもまだ成長過程にあるのか,柄の部分が短い。
 

2008.11.29
 
 翌日,立派に成長した姿を写真に撮るべく出かけてみたが,期待に反してまともに生長したものが見あたらない。どれも中折れ状態になっている。翌々日の12月1日になっても同じだった。何故だろう?柄の途中から折れ曲がったものをいくつか観察したところ,「傘の部分に殻が固着している」のが共通原因であることがわかった。
 

2008.11.30
  

2008.12.1
 ガッカリしながらも気を取り直し,少し離れた場所にある大きな幼菌の様子を見に行ってみると,傘も柄も太く立派なものが目についた。ところが,これも傘に殻が固着しているのか,頭を持ち上げることができず,もがき苦しんでいるように見える。このままでは,中折れ状態になってしまう。

 殻を取り除いてやれば勃起?するかもしれない。手を差し伸べて,薄いながらも硬い殻をそっと取り除いてみた。すると,それまで押さえつけられていた重しがとれたように,むくむくと頭をもたげ,見る間に太く逞しくなり,学名にふさわしい姿になった。
 

2008.12.1
 
 
 なんとかそれらしき写真が撮れたが,図鑑やネットで見たものに比べどこか雰囲気が異なり満足できない。12月3日,再び現地へ出かけて見ると,一昨日手がけたスッポンタケは,完全に生長が止まり,若干老化が進んで落葉の上に横たわっていた。それとほぼ直角の位置に,若々しいスッポンタケが自力で殻を破り柄を伸ばしているのが目に入ったが,何故か自立していない。
  
  
 
 横たわった状態のスッポンタケでは様にならない。そこで,あまり好ましいことではないが,若いスッポンタケを根から掘り起こし,近くの日の当たる場所へ移動させ,腐葉土の上に起立させて写真を撮った。

 しばらくすると,傘の表面についた暗緑色のグレバと呼ばれる粘液の匂いに誘われて,ハエが数匹集まってきた。ハエは粘液に含まれる胞子を運ぶ役割をしていると聞く。花に群がるチョウやハチの役割を果たしているようだ。グレバは悪臭がすると聞いていたので,鼻を近づけてみたが,異臭はするもののそれほどでもない。私の鼻は相当鈍感らしい。
  
 
 
 ネット情報ではスッポンタケそのものも食用になるとあったので,撮影に使用した1本だけを持ち帰った。家内が留守なのを幸い,台所で頭部と根の部分を取り外し,食用になる柄の部分だけを水洗いした。途中,グレバの粘液が流れ出し,強い異臭が台所に漂ったため,慌てて窓を開け放ち,換気扇のスイッチを入れた。

 水洗い後,一見太いアスパラガスのような柄を計測したところ,長さは約17cm,太さは1.5〜2.5cmあった。色は純白で無臭。中は海綿状なのか思いの外軽い。晩酌のつまみを作るつもりで冷蔵庫に保管した。
 
 
 夕食直前,家内の料理作りが一段落したところで,冷蔵庫から柄をうやうやしく取り出し,まな板の上に載せ,刺身包丁で二つに切り開いてみた。柄の中はチクワのような中空,断面は海綿状で発泡スチロールのような感じだ。
 
 
 
 柄は無色・無臭,味もなさそうなので,炒めて味つけすることにした。フライパンにマーガリンを塗り,柄を入れて1分間ほど炒め,仕上げに焼き肉のタレを少し加えてできあがり。私の料理はいたって簡単。

 小皿に盛った柄は一見チクワ風。少し炒めすぎたのか1/3位に縮んでいる。ウイスキーのお湯割りを飲みながら,柄を一切れ口に含み噛みしめてみたが,焼き肉のタレの主張が強く,スッポンタケの味が感じられない。二切れ三切れ噛みしめた時,焼き肉のタレとは異なる例えようのない仄かな味を感じた。
   


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