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音律
たかが数セント、されど数セント
カラオケの得点
最近はブームが去りつつあるカラオケですが、一時は大ブームを起こしましたね。 みなさんも、少なくとも一度や二度は行ったことがあるのではないかと思います。 そのカラオケの中に、歌い終わると得点が出るタイプのものがあり、仲間同士で行くと得点を競って結構盛り上がりますが、みなさんの中には、「本当にうまい人は良い点がでない」という話しを聞いたことがありませんか? 実はどうもそれは正しいようです。 その理由の一つがリズムです。 本当にうまい人はメトロノームのように機械的なリズムを刻むのではなく、あるときは前のり気味に少し早いタイミングで音を取ったり、あるときはタメを作ってタイミングを遅らせたりするのですが、機械はそれをリズムが外れてると判定するようです。 もう一つ考えられる理由が音程です。 これに関係する話しですが、バイオリニストであり作曲家、また純正律の研究家としても有名な玉木宏樹さんが興味深い話しを某掲示板でしていました。 玉木さんによると、歌手の北島三郎氏は、♪は〜るばる来たぜ、ハコダテ〜♪のハのところの音程が、ピアノはおかしいと言ってるそうです。 つまり、北島三郎氏は、ピアノとは違う音程で歌う場合があるということです。 もし、カラオケの、音程の判定がピアノの音程を基準にしているのであれば、北島氏本人がその歌を歌ったとしても、満点は出ないことになります。 さてではなぜ北島氏はピアノの音がおかしいと感じたのでしょうか? 実はこれこそが、このページのテーマである、“音律”の違いに原因があるのです。 音律って?
音律とは何かというと、音階を構成する諸音の音高関係を数理的に規定したもので、また、一定の音律に従って楽器の音を整えることを調律というのです。 なお、日本や中国には、楽律という言葉がありますが、これも音律とほぼ同義語とみなして良いと思います。 音律にはいくつかの種類があるのですが、ここでは、我々初心者が最低限の知識として知っておいた方が良いと思われる、「ピタゴラス音律」、「純正律」、「平均律」を主に取り上げてみたいと思います。 なお、ここでは、初心者を対象としたごく初歩的な理解を目標としていますので、あまり専門的に深く掘り下げて論じることは避けたいと思います。 もっと詳しく音律のことを知りたいと思う方は、当サイトでリンクさせてもらっている、MAKIさんのサイトや、玉木さんのサイトの「純正律研究所セミナー」をご参照ください。 ピタゴラス音律
北島氏に限らず、歌の上手な人は、「ピタゴラス音律」に近い音程の取り方をする傾向にあるのですが、このピタゴラス音律というのは大昔から世界中のあちこちで採用されていた調律方法で、昔はポピュラーな音程の取り方でした。 このピタゴラス音律の特徴を大雑把に言えば、メロディーは綺麗になるが、ハーモニーは犠牲にされるということです。 つまり、一人で歌ったり、楽器で単旋律(メロディー)を弾くには良いが、合唱や合奏での和声(ハモリ)では綺麗なハーモニーを生むことはできない音律だということです。 さて、私達のバイオリンの調弦はピタゴラス音律によって調弦されます。 ピタゴラス音律による音階は、純正5度を積み重ねて作られた音階ですが、バイオリンの調弦も純正5度の音程差でそれぞれの弦を調弦しますから、まさにピタゴラス音律なのです。 したがって、バイオリンの音程のとり方はピタゴラス音律が基本であるし、私達が普段先生から指導を受けるときの音程も、特別な場合を除いてピタゴラス音律を基準に指導を受けています。 つまり、平均律のピアノやチューナーとは音程が違うということです。 ピタゴラス音律で弾いてみよう!
ま、理屈はともかく、ピタゴラス音律で弾くとどんな感じになるか、チューナーを使って試してみましょう。 なお、チューナーは、一部を除いてピアノなどと同じ平均律を基準にしていますから、そのまま目盛りを読んで音程を取ったのでは、ピタゴラスにはなりません。 そこで、平均律とピタゴラスの音程差を差し引きしながら目盛りを読むのです。 チューナーには、一部を除いて「セント」(CENT)という単位で目盛りが表示されており、私の安価なチューナーは5セントが最小目盛りになっています。 (なお、セント単位の目盛りのないチューナーをお持ちの方は、ゴメンサイです。でも、ココを参考にしながら、大体の勘で聞きごこちの良いところをチューナーを見ながら探ってみてください) セントというのは、平均律の半音を100等分した単位で、半音が100セント、オクターブが1200セントとなり、このセントはよく音程の話しででてきますので覚えておくと良いでしょう。 まずは正確に純正5度でチューニングしてください。まだチューニングに自信のない方は、当サイトの“初心者の難関「チューニング」”をご参照ください。 次に、A線の開放弦から、イ長調の音階(スケール)をピタゴラス音律で弾いてみます。 A線の開放弦のラは、チューナーの針は真中にあるはずですね? 次のシは、4セント高めにとります。 なお、多少針がフラフラするのは仕方ないので、大体4〜5セントで結構です。(以下同様) その次のド#は、8セント高く取り、次のレは2セント今度は低くとり、E線に移って・・・正確にチューニングされていたら、開放弦のミは2セント高いはずです。そしてファ#は6セント高く、ソ#は10セント高く、オクターブ上のラは当然±0で音程を取ります。 これでピタゴラス音律による、イ長調の音階(スケール)となります。 なお、平均律との音高差は、難しい公式を知らなくても簡単に割り出す方法があるんです。 ピタゴラスは、平均律と比較し、全音は常に4セント広く、半音は常に10セント狭いので、これを覚えておくと、平均律チューナーでもピタゴラスの音階が分かるのです。 また、各音の、平均律とピタゴラス音律の音高差を別ページに書き並べましたので、ここを参考にしていたでければ、一目でその差が分かります。 どうぞ、ご参考に! さてでは実際にピタゴラスの音階で曲を弾いてみましょう。 みなさんよくご存知の「チューリップ」をイ長調で、ラ・シ・ド#―・ラ・シ・ド#―・ミ・ド#・シ・ラ・シ・ド#・シ〜・・・・・・と、上記のスケールでの平均律との音高差をチューナーで確認しながら弾いてみましょう。 なお、このとき、3度のド#は、正規のピタゴラスでは8セント高めですが、この3度はピタゴラスの特徴的な音なので、もうさらに3〜5セント高くとって、ピタゴラスの特徴を強調した方が、平均律との差が分かり易いかもしれません。 いかがですか?ピタゴラス的な音階でのチューリップは? ここで、平均律でのチューリップと比較するために、ピタゴラスのチューリップを何度か弾いたあとに、あえて平均律でのチューリップを弾いてそのニュアンスの違いを比べると良いと思います。 平均律の音階は、すべての音をチューナーの針が真中に来るように弾けば良いので簡単ですね。 さていかがでしょうか? ピタゴラス音律のチューリップは、平均律のチューリップより華やかな感じがしませんか? もしまだ違いがよく分からないという方は、もう少し上達してからまた上記の比較を試してみてください。 きっといつかその違いが感じ取れる日が来るはずです。 これは私の持つ印象ですが、ピタゴラス的に弾くと、長調はより長調らしく、短調はより短調らしく聞えます。 皆さんはどのような印象を持たれるでしょうか? 共鳴を聴き取る練習
さて、ここで一つ重要な指摘をしておかなければなりません。 初心者であるうちは、上記のようにチューナーを使って音階練習をするのも仕方ないにせよ、ある程度上達したら、音の共鳴を聞きながら音程を取る練習をしなければなりません。 共鳴については、詳しくは先生に指導を受けることをお奨めしますが、一番分かりやすいのが3の指の音(イ長調ならA線のレ)です。 なぜなら、3の指は一つ低音側の開放弦とオクターブの関係になるので、たとえばA線のレを弾くと隣のD線の開放弦が勝手に振動し、慣れれば目で確認できるほど振動し、音が共鳴します。 D線の3の指のソと、G線の開放弦などはもっと分かり易いかもしれません。 3の指に限らす、1の指も、2の指も、それぞれ共鳴が得られるツボがあり、そこがピタゴラス的な正しい音程となるのです。 ただし、正確に5度チューニングされていることと、共鳴を得られやすいボウイング技術もある程度必要になります。 私達初心者は、その共鳴を聞き分けて音程を取る練習をすることが一つの目標でもあるのです。 ピタゴラス音律の弱点
これについてはすでに述べたように、ピタゴラス音律では美しいハーモニーを得ることはできません。 特に3度を含む和音の場合、致命的な不協和音となるので、合奏するときに、伴奏的役割の人達までもみんなが3度の音をピタゴラス的に高く取ったらハーモニーがグチャグチャになってしまいます。 私は弦楽器での合奏の経験はありませんが、頭の中でシュミレーションするだけでもかなり酷い音になるのが想像できます。 そこで登場するのが純正律となるのですが、その話しと平均律の話しはまた後ほどということで、今回の話しはここまでにさせてもらいます。 つづく |
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