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久重山'97 5/30

由布岳からみる九重山

由布岳からみる九重山
(↓は硫黄山の噴気)

 熊本から別府まで九州を横断するように、ライダー、チャリダー憧れのやまなみハイウェイは走る。その旅のハイライトをむかえるあたりに九重山はそびえる。九重山とは一帯に広がる火山群の総称で、標高1700m程の山々が連なる。ハイウェイは、この九重山に向かってよけるでもなし、くぐるでもなし真っ直ぐに延びる。そして、道はその山ふところに食いつき、つづらおりを繰り返しながら牧ノ戸峠を越えて行く。僕がこの場所を初めて訪れたのは、'96の春の自転車旅だった。旅の最高点・牧ノ戸峠(1330m)を越えたときには、登りきった達成感と、この先は下りという安堵感で心が満たされた。

['95 硫黄山噴火]

 九重山系の星生山の山腹にある硫黄山で、95’の秋に噴火が始まった。それまであった噴気とは異なる場所から、突然に水蒸気を噴き出し、ときには周辺に火山灰を降らせた。その後、噴火が終わったとの発表は記憶にないが、僕が96’に訪れたときも、また97’の5月に訪れたときも長者原から硫黄山の激しい噴気が見えた。

 噴火の影響は、真っ先に登山にも影響し、しばらくは牧ノ戸峠から硫黄山の裏を通って久住山へ向かう沓掛コースや、硫黄山のすぐ横を通って法華院に抜けるすがもり越などの通行が禁止された。現在は、星生山などの一部を除き登山規制は解除されている。<

長者原からみる硫黄山

長者原からみる硫黄山 '97 5/24

[登山]

『久重の遅い春』

 '96の春に久住山を目指したときは、牧ノ戸峠からの道が規制されており、やむなく長者原から雨ヶ池越を越えて坊ヶツルに入ろうとした。春といってもまだ景色は冬枯れで、灰色の曇空のなかに吹く風はとても冷たかった。どのガイドブックにも春登山の防寒対策について書かれていたので、その点には万全を期した。おかげで、自転車で牧ノ戸峠を越える時には、いつもの倍くらいの重量が足にかかった。

法華院温泉での4月の雪

法華院温泉での4月の雪
雨ヶ池を過ぎて坊ヶツルが見えたが、夏にはテントの花がさくこの地も、まだまだ景色は寒く、視界に一つのテントの花も飛び込まない。野にただひとりテントを張るのには慣れてはいたが、その光景はあまりに寒々しく、突然にさみしん坊になった僕は、少し先にある温泉山小屋で名高い法華院のキャンプ場にテントを張ることにした。そこならば、少しは人の気配があった。

 テントを張って、さあ軽く久住山に登るかと思ったときは午後1時。いっそう灰色を増した寒々しい空からは、とうとう雪がふりだした。時は、4月2日、まさかとは思ったが、かなりの勢いで雪は降る。身体の疲れもあって、その日は停滞と決め込んだ。ラジオの天気予報からは観測史上2位の寒波到来という忌まわしき言葉が流れ、不安な一夜を迎えた。夜になって雪は、さらに勢いを増し激しくテントを叩く。テントの内側についた滴、寝袋の湿気までみるみる凍る。そのとき、温度計は−10℃を示していた。その寒さで寝たか寝ないかわからぬまま、酷寒の夜が明けた。次の日も、雪は降りつづき、昼間でも温度はさほど上がらない。ここまで来たのに登らないで終わるのか、でも遭難したらどうしようと、臆病な僕は葛藤を繰り返した後、結局、その日も停滞。食料は2泊3日分だったので、くやしさとともに次の日、山を下りた。あいかわらず雪は降りつづいていた。

 初めて訪れた久重は、寒さの中で震えながら2日間、テントの中で停滞するだけの苦い経験を残してくれた。でも外に広がる凍てついた灰色の光景は、九重の厳しい顔として印象深かった。


『再び挑戦、5月の久重』

   再び久住山に挑む機会は、'97の5月に訪れた。今度は、自転車に代わりDT50が旅の足になっていた。かつて苦労した牧ノ戸峠への登りも、時折白煙を吐くもののDT50はスイスイ登る。噴火による登山規制もすでに解除になっており、牧ノ戸峠からいざ沓掛コースを通って久住山を目指す。5月下旬といえばミヤマキリシマの季節で、柔らかい陽射しのなか、ピンク色のアクセントが新緑の山肌に浮かんでいた。西千里浜を過ぎるころには濃いガスが出始め、視界は悪くなった。久重の山々は、その秀麗な姿をよそモノの僕にそう簡単には見せてはくれない。避難小屋を越え、久住分かれにさしかかった頃、ゴーという怪しげな音が聞こえ始める。これぞまさしく硫黄山の咆哮なのだと、その見えぬ勇姿に思いを馳せながら霧の中でしばらく耳をすます。急登の後、視界が30mくらいの濃い霧に覆われた久住山山頂(1787m)に到着。こんなガスのかかった日でも、牧ノ戸峠方向から続々と登山者がやってくる。この山の人気の高さを実感した。そのまま、ピストンで牧ノ戸峠に戻る。往復4時間位。

くつかけ山付近くつかけ山付近

くつかけ山付近


[温泉]

八丁原地熱発電所

八丁原地熱発電所

 久重山周辺には数え切れぬほどの温泉がある。温泉は、旅人の疲れた体を癒すだけにとどまらず、クリーンなエネルギーとして地熱発電にも活用されている。うたせ湯で有名な筋湯温泉の奥、ちょうど牧ノ戸峠の裏手にある八丁原には温泉を利用した地熱発電所がある。

[赤川温泉]

 久重の大分県側の久住高原の一角に、赤川温泉という温泉がある。そこは久住山への登山口の一つで、山の宿・赤川荘が森のなかにひっそりとたっている。入浴のみ400円。26.5℃の冷泉である。目の前に滝を望む露天風呂には、冷たい青白色の湯?が注がれている。始めは、その冷たさに震えるものの、目をつぶって、じっと湯を揺らさぬようにしていると、しだいに心地よくなってくる。もちろん、温かい内湯もある。露天風呂は混浴、内風呂は別浴。

 大分県では温泉番付がつけられていて、この赤川温泉は堂々、西の張り出し大関である。ちなみに、東の横綱は法華院温泉、西の横綱は別府の鍋山の湯。

赤川温泉

赤川温泉


【豆情報】

・お薦めキャンプ場

 久住高原・沢水にある沢水キャンプ場は1泊1000円と高いが、正面に阿蘇や祖母を見渡せる広大な草原の中にポツンとテントが張れる。もちろん、トイレ・自販機完備で、このロケーションならば1000円も惜しくは無かった。

・瀬の本YHに泊まると、夜に黒川温泉の高級旅館の露天風呂に連れて行ってくれる。 御感想、御質問等は

takeshin@hkg.odn.ne.jpまで

お寄せください。


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沢水Cから望む阿蘇