banar

八甲田山 '97 8/21

岩木山から望む八甲田山

岩木山から望む八甲田山

 

 雪中行軍中に起こった遭難の地として世に知られる八甲田山が活火山であることに気づいた時は、その意外な横顔の発見に胸がおどった。地図をよく見ると地形を描く等高線からは美しい火山錐の連なりが想像されるし、いくつかの山の頂には巨大な火口が口を開けている。噴火の記録こそもたないものの、八甲田の山々が織り成す新鮮な地形は、地図の上からも活きている火山を感じさせる。

 【登山】

 東西に走る国道103号によって山塊は大きく北八甲田と南八甲田に分けられる。南八甲田は山中に湿地が豊富で捨て難い魅力を持っているが、とても森が深いためか、登山地図に描かれるルートはすべて難路を示し、初心者のみの入山は慎めと赤い字で書いてある。そのため登山には山塊の最高峰でもある北八甲田の大岳(1584.6m)を選んだ。

 北八甲田には、おもに山塊の西と南からルートが開かれている。西の山麓ある酸ヶ湯温泉はキャンプ場もあり、登山には絶好の拠点になった。山麓といっても標高はすでに1000m程度あり、大岳山頂まではわずかだ。東北の長い山旅の末、ここにたどり着いた僕にとっては、この手軽さはありがたかった。

 酸ヶ湯温泉の巨大な駐車場にバイクを止め、大岳山頂を目指して登山を始める。はじめは森の中をゆく。展望は無いが、緩く登ってゆく道は八甲田の森歩きを心地よく堪能させてくれる。しばらく行くと森を抜け、炎天の下を歩くようになる。道は徐々に沢に近づき、やがて流れをまたぐ。河原の石がどれも変質しているこの沢の名は地獄湯ノ沢という。沢のどこからか酸性の強い温泉が湧き出しているのに違いない。

 ひとしきり登り、道が平坦になると、すでに仙人岱に足を踏み入れていた。仙人岱は大岳、小岳、硫黄岳に囲まれる平坦地である。ここはかつて湿原だった。なんと登山者の踏み荒らしが湿原を草原に変えてしまったという。木道を進んでゆくと、草原の中に小休止には良いベンチがあった。その傍らではコンコンと水が湧き出ている。ここは活火山の懐だけれど、その湧き水は酸味も、苦味も、鉄味もせず、たいへんおいしい。

 仙人岱から先は、大岳山頂への急な登りに変わる。高度がどんどん上がり、樹木限界を越えた道からは、空飛ぶ鳥のように仙人岱を見下ろす。小岳、高田大岳と連なる北八甲田のやまなみがしだいにあらわになる。鏡沼という小さな池を過ぎると山頂まではわずかであった。

大岳山頂からの眺め

大岳山頂からの眺め

 

 山頂には火口が大きく口を開けている。火口の中には緑が茂る。最近に噴火したような生々しさは感じられない。火口の向こうにそびえる高田大岳は、文句のつけようのない火山錘だ。


【ブナニ次林】

 十和田の奥入瀬渓谷を経て、酸ヶ湯を目指していた道中、不思議な森を見つけた。道の両側にブナの森が広がっている。東北脊梁山脈をひたすら北上してきた僕にとって、ブナの森はもはや見慣れたものであった。だからこそ、この森のブナが見せる奇妙な姿に気がついた。森をつくるブナの一本一本がひょろひょろでとても頼りない。幹の直径は10cmもあるだろうか。ちょっとした不思議に包まれながら、明るいブナの道を快走する。途中、道の傍らに立つ案内板を見つけた。それはこの森の成り立ちを語っていた。

 大正から昭和にかけて、この周辺にあったブナ林は放牧のために大規模に伐採された。幾らかの樹木は、放牧される動物たちが休める日陰をつくるために伐採を免れた。放牧の衰退と同時に、伐採を免れたブナたちは森の修復に取り掛かった。そして60年という年月を掛けて、今の姿まで回復したそうだ。回復しつつあるとは言え、原生のブナの森とは素人目にも大きな違いを感じさせる。

ブナ二次林

 それでも森は豊かだ。この若いブナが育ててきた林床は、歩けばフカフカ。年を越した落葉のコラージュの中からは多種多様なキノコが顔を出し、その傘についた水滴は木漏れ日を受けてみずみずしく光る。ブナの幹はまだまだ細いけれど、この森の風景からかつての伐採し尽くされた原野を想像するのは難しい。森には驚くほどの回復力がある。


【豆情報】

・おすすめキャンプ場は森の中の酸ヶ湯温泉C。一泊210円。

・酸ヶ湯温泉Cからバイクで2分ほどのところにある酸ヶ湯温泉は、ヒバ造りの千人風呂が有名。入浴のみ420円。混浴であるが、風呂の中間に男女を分ける札が立つ。女性専用風呂もある。洗い場はなし。名の通り酸性の強い温泉。

・大岳登山の下りは、毛無岱側に下りるのが良い。細かくは上毛無岱と下毛無岱に分けられる。どちらの湿原も解放感がすばらしい。

情報、質問等は

takeshin@hkg.odn.ne.jpまで

お寄せください。

八甲田山情報板へ
全国活火山一覧へ
日本全国活火山登頂計画TOPへ

毛無岱

毛無岱