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八幡平 '97 8/18

東麓の松尾村から八幡平を望む

東麓の松尾村から八幡平を望む

 八幡平の地図を眺めていると、山のいたるところに平らな場所が見つかる。それらの場所の多くは池や湿地の印が付いている。山々の地形を描く等高線は幅が広く、丸みを帯びていて、緩やかな山並みが想像される。幅の狭いギザギザの等高線で描かれる関東山地の山々を登っていた頃の僕には、この等高線ですらも新鮮な感じであった。

 秋田と岩手の県境付近には、八幡平のほか 秋田焼山秋田駒ヶ岳、岩手山と4つの活火山が存在する。これらのうち八幡平は唯一噴火記録を持たない。とはいうものの、周辺での噴気活動は活発で、山腹、山麓には豊富な温泉が湧いている。西麓の後生掛温泉には泥火山という不思議なものがある。泥沼の中から火山ガスが泥を絡めて噴き出る。はね上げられた泥はまわりに積もり、いつしか山になる。なるほど、泥をマグマに見立てれば、これも立派な火山である。 後生掛温泉 泥火山

後生掛温泉 泥火山

八幡沼

八幡沼

 八幡平という名の由来には次のような伝説が残っている。時代は坂之上田村麻呂の奥州征伐にまでさかのぼる。敗走する大猛丸一族の追撃の際、現在の八幡平山頂にある八幡沼付近に到達した田村麻呂は眼前に広がる神秘の風景に感銘し、ここに八幡大菩薩を奉じて戦勝を祈願したという。現代では、八幡沼のそばの見返り峠まで車道が通ってしまったが、深い森に包まれた沼の風景はまだまだ神秘を感じさせる。


【登山】

 標高1600m近い見返り峠までバイクで登れてしまったので、山頂(1613m)までは登山といった雰囲気は全くなく、散歩程度であった。八幡沼を中心にしっかりした遊歩道が整備され、案内板なども充実している。オオシラビソの森に囲まれる山頂では展望を確保するために木造の見晴台が設置されている。森あり、沼あり、湿原ありの1時間かそこらの心地よい散歩であった。


【松尾鉱山】

 八幡平の東麓から見返り峠に向けて、アスピーテラインと呼ばれる観光登山道路を登ってゆくと、途中に突如として八幡平らしくない風景が広がる。冷たいコンクリートの廃屋群と露天掘りされた山肌。ここは大正の初めから昭和にかけて栄えた松尾鉱山の跡である。開山以来、半世紀の間硫黄の採掘、生産を行い、最盛期には我が国での硫黄のシェアの1/3を占めたという。一方で坑道から流出する酸性水で下流の北上川が汚染され、その影響は岩手にとどまらず宮城にも及んだそうだ。硫黄の生産が回収硫黄に代わられるともに鉱山は衰退してゆき、昭和47年に閉山した。しかし以後も酸性水は流出し続け、公害問題は残されたままになっていた。昭和57年になって、「鉄バクテリア酸化・炭酸カルシウム中和法」なるものを用いた中和処理場が建設され、今でも毎分17立方mで噴出される酸性水の処理が行なわれている。そして現在、サケの溯上や白鳥の飛来が観察されるほどに北上川の水質は回復したという。八幡平の美しい自然の影には、こんな苦い歴史があったことは驚きであった。 松尾鉱山跡

松尾鉱山跡


【豆情報】

・名湯だらけの八幡平周辺で一つだけ入るべき温泉を選ぶのは難しい。思案の末、見返り峠直下にある標高では一番の藤七温泉を選んだ。歴史を感じさせる木造の内風呂と正面に噴気帯を望む露天風呂がある。陽の光が強いと白く変質した噴気帯と湯の白さがなんともまぶしい。入浴のみ400円。

・キャンプ場はアスピーテラインを秋田側に下ったところにある大沼キャンプ場位だろうか。今までは森の中にある静かなキャンプ場であったが、97年に改装され、やたら豪華なオートキャンプ場になった。でも一泊400円とお手頃価格。


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