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五島・福江島 '96 3/21

 五島列島には奇妙な火山があると聞いて行かずにはいられなかった。1996年の春、博多からの夜行フェリーで五島列島へと向かう。この旅には、当時まだチャリダーになりたてだった北九州出身の阿部修英氏も同行。意外に混雑した船内で一夜を明かして、次の日の早朝にようやく五島列島の島の一つに寄港。目的地・福江島には午前9時頃に到着。島といってもその中心は福江市と市を名乗る場所だけに離島ムードはあまり無い。石田城下の古い町並みを抜け、まずは鬼岳に向かう。

鬼岳山頂部

鬼岳山頂部

 鬼岳の山の基部は溶岩流、山頂付近はスコリアと呼ばれる降下物の積み重なりで出来ているらしい。関東でいう東伊豆の大室山、九州でいう阿蘇の米塚といったところか。似たようなスコリアの丘が周辺にはいくつもあって、この辺りはとても不思議な一帯なのだ。

 鬼岳の麓にあるコンカナ王国の中には、鬼岳温泉という真っ赤な色をした温泉が湧き出している。入浴のみOK。露天風呂の他にもいろいろな風呂がある。コンカナ王国は様々なレジャー施設、レストランなどがあり、一大リゾートであるのだが、貧乏旅の我々にとっては縁の無いものばかり。

 鬼岳に登ってみると、山頂部は野焼きによって草原になっていて景色は良い。しかし、ただの禿山と言ってしまえばそれまでだ。鬼岳の山腹を一周するサイクリングコースなんかもある。しばらくそこで遊んだ後、山頂下の休憩舎を今夜の宿と決め荷物を置く。身軽になった体で、今度は島の南部の富江へと自転車を走らす。目指す富江には「井坑」があるのだ。

富江近くの海岸から鬼岳を望む

富江近くの海岸から鬼岳を望む

 青く澄んだ海と、ゴミ一つ無い白い砂浜を右手に20kmの道のりをひた走る。五島の海の美しさを改めて実感する。富江の町には、珊瑚細工の工房がいくつもあり、思った以上にこの場所が南洋であることに気がつく。町を抜け、畑を抜けると何の飾り気もない「井坑」にたどり着いた。

井坑の内部

井坑の内部

「井坑」とは何なのか?地図上では『∴』でしかなくて、その名が醸し出す怪しさに島に来る前から期待を膨らませていた。読み方も「いこう」ではなく「いあな」と読むことを現地で知った。井坑とは溶岩洞窟と呼ばれるものであった。流れている溶岩もいずれは止まり、冷えて固まるわけだが、ある時には固まり損ねた部分が流れ去ってしまって、あとに洞窟が出来るらしい。内部は、まるで巨大なミミズの腹の中にいるかのように不気味である。見学用に解放されているのは極一部の数百m程で、洞窟はさらに数kmと長く続き、いずれ海中に没して水中洞窟となるらしい。洞窟内部には太陽の光を必要としない得体の知れない洞窟生物とやらが住んでいるとの説明もあった。溶岩洞窟?さらには洞窟生物??といった好奇心をかき立てるこの場所は地元のガキンチョたちの恰好の遊び場になっていた。


【豆情報】

・おすすめ野宿ポイントは、鬼岳周辺。見てのとおり鬼岳は山全体が草原なので少し歩けば必ず良いテント場が見つかる。しかし、風が強い場合は難。

・山頂下の休憩舎は、もしもの雨もしのげ、立派なトイレと自販機が備わっていて野宿には良いのだが、夜中に地元のローリング族やアベックなどの訪問者も多い。

・鬼岳の山頂下には天文台があり、開いていれば夜は望遠鏡で星見という贅沢な禿山の一夜が楽しめる。僕らが見たのは話題になった『百武彗星』だった。

・五島の自然について知りたければ、鬼岳の南麓の鐙瀬(あぶんぜ)海岸に無料のビジターセンターがある。

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