Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
A preface to "An another tale of Z"




第五一話 序 「女帝の帰還」

〇〇九八年九月二六日 一四時
太陽系外周艦隊 装甲巡洋艦「シーハウンド」

クニールの司令部からの命令を受け、集結した四隻の護衛戦艦が旗艦を先頭に航路を驀進している。旗艦シーハウンドではブレストン大佐が本部から送られてきたデータを元に作戦を検討している。
「五年も放置されていた艦だ、状態が良いとは思えん。」
 解析したPT―32のスペクトルとエンジンを製造したタキム社の仕様データを見比べつつ、ブレストンは敵艦の状態を分析した。案の定、エンジン内部に経年による脆化(エンブリトルメント)が見られる。外惑星にこのエンジンをオーバーホールできる施設はない。
「索敵装置及び射撃装置の状態はどうでしょう。」
「パッチ2型戦艦の装置が完全なら、ペンテレシアを後ろに走らせた時に反応があったはずだ。」
 ブレストンはシーハウンドが背後に廻り込み、前面でエイストラ以下各艦が攻撃しつつ頭を押さえる案を各艦長に提案した。敵の背後でモビルスーツを展開し、前後から大型ミサイルで攻撃する。消耗している各艦の兵装の中で、敵艦を確実に沈めてしまう破壊力を持つこの武器だけは使われずに温存されてきた。
「ハンマー&アンビル(鎚と金床)戦術だ。シーハウンドがハンマー、エイストラ以下が金床だ。」
 作戦を誤ると突出したシーハウンドのみが一方的に叩かれかねない。が、装甲の厚いパッチ2型に対抗するにはこの戦術しかないと艦隊司令は各艦長に言った。
「賛成だ、バート、他に方法はない。」
「敵の陽動(ディヴァージョン)に誘い出されて弾薬(アミュニション)も残っていないからな。」
「ここで退いたら外周艦隊の名折れだ。」
 リッチモンド艦長が出没した海賊船は本隊の存在を艦隊からごまかすための欺罔だと指摘した。パッチ2型など軍艦は高度な遮蔽装置を持っている。
「まんまと乗せられたわけだ。」
「同盟以来、無事故(オナラブル)を誇って来た直航航路(ストレイト)を荒らした代価は払ってもらう。」


 ブレストンがそう言い、センサー担当士官が敵影を発見すると、四隻の護衛戦艦は各々戦闘配置についた。


〇〇九八年九月二六日 一四時
オルドリン市 ソロモン沿岸警備隊司令本部


 なんとか間に合った。艦隊の協力で燃料不足で撤退した護衛戦艦四隻を再び戦線に投入したキャサリン・C・マクニール大将は記者会見で遅れた昼食のサンドイッチをモグモグと囓りつつ、コーヒーカップを片手に戦況を示すパネルを凝視している。
「アナスコシア、シーハウンドはまだ?」
 六〇隻いた海賊船はほとんど撃退した。敵船に遮蔽装置(クローキング・デバイス)を持つ船がいたとは思わなかったから探索は難航したけれども、ブレストンの艦隊に加え、オミクロン基地から来た戦艦二隻がアーガマの後方に防衛線を張っている。新たに発見された大型戦艦を中心とする敵艦隊を彼女は睨んだ。
「戦艦レムリン、レダの残存艦だ。こんな所で再会するとは奇遇だな。」
「完全な状態とは思えない。」
 スカパ・フローが使えたことは幸いだった。艦隊から回航した大型補給艦で燃料を補給したブレストン艦隊は司令部の指示でアーガマ救援に急行している。
「ただ、武器弾薬の補給まではできなかった。しかし、整備不良で中古の海賊戦艦なら、シーハウンドとブレストンで十分相手になるはず。」
「戦術の妙を尽くせばな。」
 フッドが言った。アリスタ沖で撃破されたアムルタートはグワダンとの砲戦で破損し、ほとんど戦闘力はなかった。当時の記録をひっくり返すと第九艦隊の他の戦艦、レムリン、デバステータ、ゴルゴダートも状態は似たり寄ったりのはずだが、パッチ2型戦艦のスペックはブレストンの艦を上廻る。エイジャックスなら一隻で三艦まとめて宇宙の藻屑にできるだろうが、タイガー級はこの宙域には配備されていない。
「バートなら大丈夫よ。」
 元トーメンター操舵手のシーハウンド艦長について彼女は論評した。接近している艦隊は、おそらく敵の主力だろう。
(つづく)




Go to Text