Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
A preface to "An another tale of Z"




第四九話 序 「合体戦艦エイジャックス」

〇〇九八年九月一日 一六時一〇分
ソロモン共和国軍 アガスタ派遣艦隊旗艦
戦闘巡洋艦「エイジャックス」


イド2脱出を企図するガディ・キンゼー大佐のティターンズ艦隊はアガスタ共和国国境に接近している。開戦前に通信を送ってきた大佐に、ソロモン共和国軍アガスタ派遣艦隊司令官、エドワード・マーロウ中将は首を振った。彼らを通すわけにはいかない。マーロウの艦隊はアガスタ大統領の命令を受け、ティターンズ艦隊迎撃のため、エマ中佐のエウーゴ艦隊と共に国境線上に進出している。
「見逃してくれる(ブリンク)というわけには行かないようだな、マーロウ。」
「そろそろ年貢の納め時というものだろう。思えばタイタン以来四年間の因縁だが、タイタン核攻撃といい、無辜の民間船襲撃といい、君らの所行には人間として目に余るものが少なくなかったのでね。」
 マーロウ流の最大の怒りの表現である。彼の艦はすでに回頭し、全砲門をティターンズ艦隊に向けている。
「核は俺じゃない! ガイアYで会った時、話したじゃないか! あれはジャマイカンが、、」
「命令に従った以上は同罪(ギルティ)だ。許される話ではない。それにだ。」
 ジャブロー核爆撃も君らの仕業だろうと言ったマーロウに、ガディは沈黙した。
 ガディとの通信の後、マーロウは「エイジャックス」Bパートの分離を命じた。エイジャックスは巡洋戦艦と小型空母が合体した複合戦闘艦で、分離すれば戦艦部分(Aパート)は駆逐艦並みの運動性能と戦艦級の砲撃力を兼ね備えた高速戦艦になる。すでにBパートにはブッダ艦長が乗船し、第三艦橋で指揮を執っている。
「覚悟しろ、ガディ・キンゼー、このエイジャックスの真の力を見せてやる。」
 特殊戦闘配置のブザーが鳴り、全艦の乗員に耐Gシートへの着席とベルト着用が命じられる。やがて各セクションの戦闘準備完了のランプが艦橋で点灯し、およそ五〇秒で戦艦は最高度の戦闘態勢を確立した。乗員の多くがバトル・スター記章受勲艦、「レイキャビク」の元乗員である。日頃の訓練の賜物である迅速さに、マーロウは満足した笑みを浮かべる。
 因縁の対決、タイタンの悲劇以来の宿敵との戦いに、エドワード・マーロウは高揚している。


重巡洋艦「アレキサンドリア」


 通信後のガディは蒼白な顔で次席指揮官(セカンド)に通信を送った。
「本艦がエイジャックスを引き受ける。残りの艦はサチワヌのアヤチ大佐の指揮でサイド7に向かえ。」
「ガディ大佐、アレキサンドリア単独で立ち向かうのは危険では。」
 密集隊形で敵陣を突破すべきと言うアヤチの言葉をガディは退けた。対ギア戦の時でさえ、エイジャックスは船体を分離してはいなかった。ただでさえ高速艦なのに、五万トンもある空母部分を分離したらどれほどの機動力があるか、放っておいたら艦隊ごと殲滅される。ガディはアヤチにそう言い、自分は単艦でエイジャックスを阻止するとし、矢継ぎ早に命令を下した。
「第一から第六エンジン、出力臨界(クリティカル)! 総員ベルト着用! 総力戦(オール・アウト)用意!」
 命令の合間に、ガディは乗船していたジャマイカン中佐とジェリド少佐に退艦を促した。
「そうさせてもらうよ、生き残れるとは思えないのでね。」
 そう言い、ジャマイカンはジェリドと共に艦橋を出て行った。彼らの退艦を確認した後、ガディは操縦席のベルトをしっかりと締め、自ら操縦桿を握り、スロットルレバーに手を置いた。この状況では操艦を未熟な操縦オペレータに任せるのは危険だ。
「射撃コントロールを操縦席に渡せ。」
 砲術長が射撃コンピュータを操縦席にリンクさせ、ガディの眼前にアレキサンドリア全艦の火器の射界と見越し射撃用のレテクルが表示される。主流にはならなかったが、バルセロナ級の設計者もこういう戦闘法を無視していたわけではなかった。
「突撃(ソーティード)!」
 全速で突進してくるエイジャックスに対し、アレキサンドリアは六基のエンジンを白熱させ、やはり全速でエイジャックスに突進する。


戦闘巡洋艦「エイジャックス」

「船体分離(セパレート)!」
 マーロウの命令の下、空母部分をAパートに固定していた六本のボルトが解除され、空母部分「イーグル」Bパートがスラスターを点火してAパートから分離する。Aパート「ファルコン」は七万二千トンの巡洋戦艦で、その総重量は通常状態、「エイジャックス・コンプリート」のおよそ五分の三である。つまり、戦艦並みの装甲を持つ空母部分を分離することで、「エイジャックス・ファルコン」は通常状態でも余裕のある推力のさらに七割増の推力を得ることができ、極めて高い機動性(アジリティ)を持つ。イーグルと完全に分離したファルコンは六基のエンジンを点火し、轟然とアレキサンドリアに突撃する。
(つづく)




Go to Text