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A preface to "An another tale of Z"




第四五話 序 「パイン山荘事件」

〇〇九八年七月二九日 二三時一〇分
ソロモン共和国 首相官邸

ロモン首相リーデルは官邸の司令室でアリスタからの議会中継に見入っている。後ろ盾だったルオと財界人の殺害で恐慌したアリスタの議員たちには批准に前向きの動きがある。しかし、ソロモンによる財界人殺害の疑いもあり、事案の究明を求める議員もいる。アリスタTVの中継映像をリーデルは喰い入るように見た。
「これでは我が国はソロモンの属国(プリトゥク)ではないか。戦艦に港を封鎖され、潜入したソロモンの工作員が我が国のVIPを次々と殺害している!」
「我が国の主権(スヴィニリニテート)は、誇りはどうした!」
「これで条約など結んだらアリスタはソロモンに奴隷化(プラボジェニィ)されるぞ!」
 いちいちごもっともだ。官邸の司令室で頭を抱えつつ、ワイシャツ姿のリーデルは出頭してきたハウス情報部長の顔を見た。国防省から官邸に呼び出されたマシュマーとハウスは両者とも首相の脇に立ち、事態の推移を見守っている。
「現在、ライスハウス邸では西部署の刑事と警備員との銃撃戦が続いています。」
 現場からの中継で、屋敷の園庭に装甲車を突っ込ませ、髪をクルーカットに刈り上げたサングラスの男がショットガンでビリニュス金属の警備員を撃ち倒している映像を見たリーデルはあんぐりと口を開けた。
「降伏しろ! 西部署のデイモンだ!」
 爆発する車に、長い足でサブマシンガンを持った警備員を蹴り上げた黒いライダースーツの刑事の映像を見たマシュマーが凍り付いている。別の映像ではマツダと呼ばれた刑事が屋敷に44マグナムを連射している。
「だーっ!」


 別の場所ではカンフー技を使う若い刑事が空手チョップや飛び蹴りで警備員を次々と倒している映像が映し出され、ショットガンを持ったデイモン部長刑事とライダースーツがアップになる。
「デカ長! 敵(てき)は館内に逃げ込んでいます!」
 デイモンが捕らえた事務員らしい男の胸ぐらを掴み、手拳で殴り倒す。
「吐かせろ! 何をしても構わん!」
「敵(てき)って何だ!」
 捕らえた男に殴る蹴るの暴行を加えている西部署の刑事たちの映像を見たリーデルは口に手を遣り、もう一方の手であわわと画面を指差した。
「何てことをするんだ!」
 ズキューン! ドキューン! ドガガガガッ!
「アリスタ警察は荒っぽいと聞いてはいたが、、」
 映像を前に目を点にしたマシュマーが言った。ティターンズも裸足で逃げ出すデイモン軍団の家宅捜索のハードさにおののく一同の目前で、屋敷の一角が刑事たちによってダイナマイトで爆破される。
 グワーン!
「ハウス情報部長、まさか貴官の差し金ではあるまいな。」
 マシュマーがクスクス笑っている情報部長をたしなめたが、首相と作戦部長に冷たい視線を向けられたハウスは両手を振り、自分は何もしていないと答えた。
「アッラーとイエスと天地神明に誓って、私は無実です。」
「いつ多神教徒(パンティエスト)になった。」
 空々しい情報部長の誓いに、マシュマーが細い目で嫌味を言った。そこにリーデルが口を挟む。
「背後関係は、この公務員犯罪も含め、何か情報はあるのか、アンドリュー。」
「さっそく調査いたします。」
 ハウスは颯爽と敬礼し、情報部による真相の究明を二人に約束した。
(つづく)




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