Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
A preface to "An another tale of Z"




第二十六話 「ズム・シチ解放」 序


〇〇九七年一一月二五日 深夜
ズム・シチ市 国道一号


厳令の敷かれている首都星の一般道路を一台のセダンが疾走している。高速道路は危険だ。緩いとはいえ首都星には夜間外出禁止令が出されており、会合地点までの十数キロは運転手にとってはまさに冷や汗ものだ。ナビゲーションシステムを睨む後席の軍曹が、時折運転手に道路の変更を指示する。
「あなたたちはどういう理由で私たちを連れていくのですの? 夫に会えるというのは、本当なのですの?」
 車の後部座席ではドリス夫人が傍らのライヒに文句を言っている。レンタカーは大型乗用車を借りたが、ドリス妻子は両脇をライヒとコルテス一等兵曹に挟まれ、娘のアルマはライヒの隣にいる。アルマはズム・シチのオファキム女子大学の二年生で、年齢は一九歳、少なくとも母親よりは話の分かる相手だと思っているが、ライヒは提督の娘の澄んだ薄緑色の瞳に見つめられ、頬を赤らめた。車はハイマンが運転している。助手席ではジオン公用語に堪能なチャオナタサ二等兵


曹が無線機で警察無線を傍受している。
「気付かれたようですね。この先、非常線(コルドン)が張られています。」
 迂回しましょう、ハイマンが自動車のハンドルを切った。彼の属するベルデン社はジオンの会社であり、元々彼はこの街の地理に詳しい。すかさずコルテスが道路を確認し、チャオナタサが警察無線からの距離をチェックする。
「あなたたち! 夫の手の者じゃないの!」
 はい、そうです、と言うライヒは夫人に詫びつつ、最初に邸内に侵入した時のことを思い出した。恐るべきことに夫人はフリルの付いた晴れ着に着替えると、表の警備兵に挨拶して出ようとしたのだ。鋭敏な娘のアルマが彼らの意図に気付き、気位の高い夫人は晴れ着のまま、ライヒらと共に屋敷の塀を乗り越えることになった。服を汚された夫人は彼らにご立腹である。
「お母様、この人たちにもこの人たちの事情があるようですわ。今は我慢してライヒ中佐の言うことに従いましょう。」
 ね、と、アルマが魅力的な瞳でライヒの顔を覗き見た。今年で三〇歳になる中佐は、はい、と、頬を赤らめた。彼らの車は宇宙港ではなく、郊外の今は使われていないゲートに向かっている。そこに艦隊の高速艦が待機しているはずだ。
                          (後の話に続く)




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