海事代理士試験案内

この試験は筆記試験と口述試験の2段階で行われる。筆記に合格した者だけが口述試験を受験できる。

まず筆記試験からいこう。

(これは船長が受験した会場の様子をもとにしたもので,他の会場でも全く一緒とは限らないから注意するように)

『マニュアル』によると,筆記は毎年10月上旬に行われるそうだ。たしかに船長が受験した2004年の場合,10月1日だった。今年受験しようとする人のために,会場の様子いくつかの注意点をあげておく。

1.試験形式はマークシート方式(鉛筆で塗りつぶすヤツ)ではない。なぜか?きっとマークシートにするほど受験者が多くないからだ。と思う。

2.ということで,まさしく答案用紙に答えを「筆記」することになる。○×問題もあるが,漢字も書かねばならない。漢字が苦手な乗船者は気をつけるように。

3.試験は丸一日かかる。船長が受験した会場では弁当持参者もいたし,運輸局の入っている建物内に食堂もあったので昼飯には困らなかった。スリッパ等上履きも不要だったぞ。

4.会場では受験者に対し非常にサービスがよい。きっと受験者が多くないからだ。受験者のために控え室を確保してくれてあった。

5.試験は1科目ごとやるのではなく,数科目まとめて行われる。解答を記入し終われば見直しをして,退室可能になったら全速前進で試験室を出ろ。そして控え室・食堂・ロビー等々指定された(許された)場所で次の科目群を勉強するのがコツだ。

6.全科目終了後退出する際には,模範解答をくれる。問題用紙もむろん持ち帰り可だ。だから自分の答えを問題用紙にも転記しておくべし。うちに帰ったら自己採点できるぞ。この試験は合格基準が明らかにされているので,筆記試験段階における自分のおおよその合否を把握できる。今後の身の振り方を決めるのに役立つぞ。


筆記の合格発表は試験が終了して約1ヶ月後だ。昨年は10月29日だった。合格者名簿はインターネットでも確認できる。ただし,最終合格でもないのに,いきなり本名をさらされてしまうから心臓の弱い者は気をつけろ
つまりだ,最終合格者名簿とつきあわせると,昨年と今年の口述不合格者がわかってしまう。この仕様は何とかして欲しいところだ。


で,首尾よく筆記合格となると数日後合格通知が届く。それには口述試験の案内もついてくる。筆記を受験した会場ごとに時間が割り振られているから,自分の口述試験開始時間はいつなのか確認しておくこと。



『マニュアル』によると口述試験は例年11月下旬に行われるそうだ。たしかに昨年は11月24日だった。

そしてこの口述こそ,海事代理士試験における魔の海域=バミューダ・トライアングルなのだ。

海事代理士試験における口述試験とは,司法書士試験・土地家屋調査士試験の口述のような人物調査ではない

つまり,「この受験者は,まさかお風呂に入っても落ちないなワッペンが体に貼ってある人ではあるまいな?」ということを単に調べる試験ではないということだ。

もっとわかりやすくいうと,答えの出来次第でバンバン落とされる本当の試験ということだ。

やはり海は厳しい。気をつけろ。


次に,口述試験の様子および注意事項を記す。

1.試験会場は東京の国土交通省だけだ。特に遠方の受験者には負担が重い。だが,仕事さえ休めれば地方の受験者は「お上りさん」になれるのでよしとしよう。なぜ「よしとする」か?それは,試験が終わった後,日本国の首都で酒池肉林ができるからだ。

2.ビルは警戒厳重だ。隣は警察庁だし,権力の犬ども警官がウロウロしているぞ。地下鉄駅に「私服」もいるから,コッソリ探してみるのも一興だ。だが,挙動不審者として臨検される前に,入り口でガードスタッフに受験票を提示し,用件を伝えて,さっさと中へ入れてもらうのが賢い海の男のあるべき姿だ。
「私服」はジロジロ見られると自尊心をいたく傷つけられる動物なので,さりげなくチェックするようにしてやってくれ。

3.控え室に入ると受験票を提示し,自分の名前と本籍地住所が間違いないか確認するようきれいなお姉さんから指示される。
おまえら緊張することはないぞ。お姉さんはジョーズじゃないからな,喰われたりしないから安心しろ。

4.昨年の控え室はちょっと狭かった。もちろん立錐の余地がないというほどではなく,座るところはじゅうぶんあるので,主催者側は十分配慮してくれている。むしろすごいサービスの良さだ。これこそが海事代理士試験のウリだ。受験者が多い他の試験ではこうはいかない。別の試験だが,船長はかつて体育館で待たされたことがあるぞ。寒いじゃないか。

5.控え室に早く入りすぎると緊張ばかりしてよいことはない。しかし遠くから来る人はしかたない。安全側にたって早く来ざるを得ないからだ。もし待ち時間が長くて息が詰まったらロビーでテレビが見られる。いっぱい番組もやっている。音は聞こえないが。建物内にドトールコーヒーもあるぞ。味はいつもと同じだが。まあ楽しめ

6.さて,「いざ出航」という段になると,8人が二組にわかれて試験室前に案内される。AグループとBグループだ。中でつながってはいるが,形式上,試験室は2つある。これから先,控え室には戻れないので荷物を全部持っていくように注意があるはずだ。

7.そして前の組が終わり,試験室に入り自分の席に着くと,やがてジリジリジリというベルが鳴り,口述試験の案内にある通りの手順で試験が始まる。

8.1科目3分,それがすむと時計回りで席を移動していき,合計4科目12分の試験が済めば,諸君は晴れて自由の身だ。

9.途中わからない問題が出たら,「わかりません。次お願いします。」と答え,3分間を有効に使え。もたもた考えている暇はない。口述はいわばクイズタイムショックだ。時間さえ余れば,さっきパスした問題をもう一度出してくれる。不幸にして,出してくれないようなケチな人試験官に当たってしまった場合は「出してくれ」とこちらからリクエストしろ。海は何が起こるかわからない。臨機応変に対処すること。

10.実は試験中の室内はかなりガヤガヤした感じがする。みんなデカい声で答えているからか?(「おまいら,そんなに声をはりあげなくてもいいだろ〜」と思ったのは船長だけではあるまい)対策としては,自分もデカい声を出すか,試験官へにじり寄って答えるかだ。遠く離れていては不利だ。設問を聞き逃さないためにも,身を乗り出して,息がかかるくらいに,近寄れ。
ただし歯はみがいとけよ。一日中くさい息をかけられる側の身にもなってみろ。試験官の仕事が苦役になってしまうではないか。

11.全部終われば,試験室を出てとっとと帰宅するようにいわれる。試験室の前に座っている次の組が不安げな眼差しをこちらに向けてくるなか,意気揚々と凱旋だ。もう試験は終了したので,外でわんさか警戒している警察官に拿捕されても安心だ。

12.あ,それから服装を気にする者が多いと思うが,なんでも構わないと思うぞ。社会人としての常識をわきまえた清潔な服装ならば。上記2で書いたように,あまりにも怪しいヤツは入港拒否されて終わりだろうからその点だけ気をつけるべし。まあ実際にはそんなヤツはいないだろうが。船長の受けた時間帯にはスーツ派が圧倒的多数だった。事情さえ許せば野郎どもはネクタイぐらい締めていくのは悪いことではないと思うぞ。
ちなみに船長はスーツを持っていないので,着ていけなかった。他にも普段着で来ている海の漢も見かけたぞ。



あとは最終合格発表を待つだけだ。昨年は口述試験終了から20日後だった。海事代理士試験規定第5条第2項では「合格者の公示は,口述試験終了後20日以内にするものとする」(太字部分船長)となっているが,実務上は期限ギリギリの20日後になる。少し細かくいえば,20日後が土曜日または日曜日に当たる場合だけ,例外的に直前の金曜日が合格発表日になる。なんとなれば,次の月曜に持って行くと「20日以内」という規定に反することになるので,それはできないからだ。国土交通省および各地方運輸局のWEBサイトでも昼ぐらいには掲載されるぞ。当日中に官報でも公表される。
毎年「いつ発表だ?」とさわぐ香具師がいるが,上記例外に当てはまらない限り,20日後だからな。それより早くなることはないぞ。

↓↓そして,数日後,合格者には配達証明郵便でこんな筒が届く。↓↓

中身はいうまでもなく合格証書である。

すべてネタバレではつまらない。証書の形式は見てのお楽しみということにしよう。

(なお,残念ながら口述試験で不合格だった者は申請により翌年の筆記試験は免除される。)



合格基準からみた海事代理士試験の特徴

国土交通省発表の海事代理士試験の合格基準をみてもらえばわかるが,この試験はたとえば行政書士試験の合否判定基準とはまた違ったルールが適用されている。

すなわち,筆記試験では単純に「総得点の60パーセント以上の得点」を取っただけでは合格は確定せず,もしも全科目受験者の平均正答率が60パーセントを上回る状況であった場合には,受験者の平均正答率以上の得点をあげなければならないわけだ。

わかりやすくいうと,昨年の場合,公表された受験者の平均「解答率」(ママ)が59.2%であるから,60%以上得点した者は自動的に筆記合格となる。もしも受験者の平均正答率が65パーセントだった年があると仮定すると,たとえ60パーセントの正解率を自分が取っていても,不合格になるということである。

一方で,各科目には合格のために最低必要とされる得点率なるものは一切設定されていない。
(ここが試験科目ごとの最低得点率を定めている行政書士試験とは異なっている箇所だ。)

ちなみに,司法書士試験や土地家屋調査士試験では合格者の割合(数)が先にありき(得点上位者の数%)という「実質的基準」がある。つまり競争試験の性格が色濃いというわけだ。ただ,母集団の出来があまりにも悪かったらどうなるのかまでは知らない。興味のある方は各自調査されたい。

つまり海事代理士試験においては,誰もが指摘することだが,総得点こそ大切なのであって,ある科目(例えば民法)がO点でもちっとも構わないというわけである。

この合格基準からみた筆記試験の特性を短くまとめると,「合格者の質を確保しつつ,ある年の試験問題の難易度により偶然に合格者が増えすぎたりしないよう,競争も加味した試験」と定式化できる。
↑合格基準から見た海事代理士試験の特徴の宇宙初(?)の定式化。これを「船長の第1テーゼ」と呼ぶ。もちろん,「それをはじめて唱えたのは俺だ」という輩がいたら申し出てくれ。よろこんで,「宇宙初」の称号とともに「船長の第1テーゼ」の「船長」部分を譲ろう(笑)

それに対して,いま一度合格基準を見ると,口述試験では競争的要素は加味されていないのがわかる。

つまり単純に「受験者の知識の質と量を問うている」わけだ。
↑「船長の第2テーゼ」
(これは厳しい。この試験に置いて口述が恐れられる真の理由がココにある。でも普通に勉強すれば大丈夫だけどね。)

なぜこんな分析をしたかというと,それはすべて,次節に述べる勉強法と関わりがあるからだ。


海事代理士試験の勉強法

船長は法学部出身ではない。一身上の都合で自ら法律の勉強をやらなければならなかっただけの者であり,今も勉強中の一学徒に過ぎない。

決してお偉いセンセイではないということだ。それを踏まえて聞いて欲しい。

海事代理士試験は科目数が多いが,内容的には「一般法律常識科目」と「海事法令科目」とに分かれる。

では,こんなに多数の科目のどこから手をつけるべきか?

万人へのアドバイスであるが,とくに,法律の勉強はあまりしたことがないという人へ告ぐ。

「海事法令科目から勉強せよ。」

これはすでにいろんなところで,いろんな人が述べている意見であるから目新しい考え方ではない。むしろ合格者の常識である。しかし,初心者の方々に向けてのメッセージとしてあえて記した。

なぜか?

第1に,よくいわれる理由は配点構成だ。「あわび倶楽部」のトップページを見て欲しい。ここに試験科目と配点とがわかりやすくまとめてあるので参考にさせてもらおう。憲法・民法・商法の3つがいわゆる一般法律常識科目だ。

一目瞭然だが,この分野は3つあわせても合計配点がたったの30点だ。

つまり,その他の科目で全体配点200点の85%を占めている(昨年実績)ということである。
(見ての通り,2科目追加される予定の今年はさらにこの比率が上昇して86.3%になると予想される。)

前節を読んだ諸君はすでに理解してくれていると思うが,
憲・民・商すべて0点だったと仮定しても,まだ十分合格できるではないか。

だからこそ,「海事法令科目」から手をつけろ!

「早く始めた科目は,それだけ繰り返す回数が増える。よって知識の定着もよくなる」ということを前提とした話だ。あとそれから,一知半解の輩が多すぎるからいっておくと,先走り汁を出し過ぎないよう注意して欲しいのだ。船長はこの3科目をハナから捨てろといっているわけではない。むしろその逆だ商法は一般科目に分類こそされているが,実質的には,他の資格試験で出題の中心となっている会社法も手形法も出ないので,ほとんど毎年似たような論点ばかり出題されており,海事法令専門科目と同一の対策が可能なのだ。だから『マニュアル』をやりこめば,かなり得点できる。ゆめゆめ捨ててはならない。他方,民法はまた別だ。これは出題範囲が広く,学習経験がないとなかなか短期間に得点源にするのは難しい。また憲法は,どこかで誰かが言っていたが,行政書士試験用のテキストで憲法部分を見ておくとよい。船長も試験直前期に,主要な判例が載っている易しいテキストで復習するようにした。かけた時間の割には,なかなか効果があったぞ。

とくに,配点が20点となっている「船員法」・「船舶職員及び小型船舶操縦者法」・「船舶法」・「船舶安全法」の4つが大切だ。なぜならば,この4科目は口述試験科目でもあるからだ。

海事代理士試験は,法律を勉強した経験がないからといって全く気後れする必要はない
あなたを含めたほとんどの人間は海事法令なんてはじめて勉強するのだ。

だから心配はいらない。

海事法令科目からはじめる理由の第2は,前節で分析したこの試験の特性を思い出してくれればわかる。

くりかえしになるが,筆記試験は「合格者の質を確保し」つつ,「競争も加味した試験」というのがその本質であり,口述試験は単純に「受験者の知識の質と量とを問うている」のであった。

まず,筆記試験の競争に勝ち残るためには他の受験者に差をつけられないことが必須条件だ。

そのためには,得点しやすい科目で点を稼ぐことが大事である。

では,海事代理士試験において得点しやすい科目とは何か?

実は
すべての海事法令科目だ。

海に関係の薄い人間にとって,海事法令はとっつきにくいのは認める。しかし,実際に試験対策をやり始めると,これが意外にも易しい

どうしてそういいきれるのか?

海事法令科目は毎年同じような問題ばかりが繰り返し繰り返し繰り返し出るからだ。

いや,あえてはっきりいうと同じ問題しか出ないのだよ。

だから,いままでの傾向が今年も続くと仮定すると,過去問をやり込んでいれば,必ず対応できる。もちろんすべて満点は難しいかもしれないが,普通に準備していれば8割以上は堅い

ここで仮に『マニュアル』を繰り返しやっても,諸君にとって意味がわからない問題があったとしよう(まあ,そんな過去問は数少ないが。白状すると船長の場合,「造船法」で出てくる<きょ底平たん部>と<陸上耐圧部>の意味がいまだよくわからん。誰か親切なお方がいたら,こんなダメな船長に教えてやって欲しい。気になってしかたないので,本屋で造船関係の書物も探してみたが,船長の住んでいる地方では造船関係の書物自体がなかった。いずれ機会があれば図書館で調べてみるつもりではいるが。)。

そんな場合,海の男なら気にせず丸暗記しろ
↑「そんな無責任な」という声が聞こえてきたが,そんなことはない。合格するのが目標なんだろ?じゃ,手段を選ぶな。

商法も海事法令科目と同様,過去問で対応できるから,論述問題(1行問題とでもいうかな?○×や穴埋め式問題ではないやつのこと。どんな問題か知りたい人は過去問をみてくれ)を完全に捨てたとしても,これも8割近くとれる。憲法だって行政書士試験用のテキストを読んでおけば,何もしない人とかなり違う。民法だけは,やったことなければ<解答用紙に適度に○と×をちらしておけばOK>ぐらいの軽い気持ちでいればいい(論述はハナから書かない)。もちろん他の資格試験で学習経験のある者にとっては海事代理士試験の民法など赤子の手をひねるようなものだろう。

そして,過去問ベースの問題ができるということは,試験実施機関が求める「合格者の質」も同時に満たしていることになるのはいうまでもない。


まとめよう。

1.海事法令科目から勉強すること。

2.過去問を中心に学習すること。

これが海事代理士試験対策の基本線だ。

我らが『海事代理士合格マニュアル』には各節の最初にその科目の基本書とすべき参考文献があげられているが,通常の受験者は無視して差し支えないと思う。そんなものを読んでいる暇があったら,過去問を徹底的にやり込んだほうが試験勉強としては効率がよいのは明らかだ。また,『マニュアル』は憲法・民法・商法…という配列になっているが,それも無視して海事法令から始めることだ。順番は何でも構わない。『マニュアル』の順にやってもいいし,パラパラめくってみて自分でもできそうな所から始めたっていい。船舶の登記・登録に興味があったら船舶法だし,楽チンそうなのは国土交通省設置法だ。あとは各自お好みでどこからでも料理してくれ。


最新版の『マニュアル』に模範解答が掲載されるようになったのは,海図に述べたとおりだ。

これはもちろん学習者にとってよいことなのだが,ちょっと心配なこともある。それは法令を参照しなくなる人が出てしまうのではないかということだ。

学習時には必ず『マニュアル』のヒントを見て,法令集を引くようにして欲しい。

なぜ法令を引かなければならないのか?

問題を解くたびに法令集を引くのは時間がかかるので効率が悪いように感じるかもしれない。
(とくに学習を始めたばかりの時期は。)

だが,実は法令を読み慣れることによって大切な能力が養われるという側面もある。

それは
新科目に対応する能力だ。

新科目(今年は内航海運業法と船員職業安定法の2科目)は当たり前だが過去問がない。

ならば,どう対策するか?

他科目の過去問からつかんだ出題レベル・雰囲気から,新科目で問われそうな事項を自分で法令を読むことによって予めまとめておくしかない。

この「まとめ」能力が法令を読み慣れることによって養われてくるのだ。

だから,法律学習になれていない人ほど新科目は最後に勉強するべきだと船長は思う。


そろそろ締めよう。

3.問題を解くときにはマメに法令集を引くこと。

4.新科目は最後にやること。

以上だ。