まず,なにはなくとも,(社)日本海事代理士会『海事代理士合格マニュアル』(2004年発行 成山堂書店)だ。

本書は,海事代理士試験を受験する者にとって「バイブル」とでも呼びうる必携の書である。

これがなければ海事代理士試験の対策は始められないといっても過言ではない。

海事代理士試験自体がマイナーなので,近くの本屋には置いてないかもしれない。そんなときは発行元の成山堂書店でも通信販売してくれるようだ。今はネット通販もあるので入手はできる。これまでの出版履歴を見ると,数年(3年程度)に1度改訂されている。昨年改訂されたばかりなので今年は改訂新版は期待できないだろう。むろん保証の限りではないが。だからあきらめてさっさと買うのも一つの方法だ。

この書籍は書名こそ『マニュアル』となっているが,試験の概要・学習の指針といった内容はほんの少しだけで,内容はほとんど全部が本試験の過去問と思ってもらっていい(というか,過去問集として使うべきだ)。ヒントとして各問題の正答を導き出す際の根拠となる条文がどれであるか一問一問丁寧に指示しているというすばらしい問題集だ。

なぜにすばらしいかというと,海事法令になじみのない人間には,この典拠というヤツが本当にありがたいのだよ。「もしこれがなかったら」と考えるとゾッとする。

考えてもみたまえ。


受験勉強中は


@問題を解く


A答えがわからない

B模範解答を見る


Cなぜそういう答えになるかわからない

Dそれを知るために法令集を引く

ということを
果てしなく繰り返すわけだが,このDが一番のクセ者だ。

漢字カタカナ混じり
の,子条文・孫条文が入り乱れた,やたらと読みにくい海事法規の条文を解読しながら,今解いている問題の答えの根拠を一問一問探すなど不可能に近い


とくに初心者の時期はツラい。
すぐに陸(オカ)にあがりたくなる。つまり,早々に受験断念だ。

だったら,ヒントで参照条文が「ホゲホゲ法ニョロ条」と書いてあれば,そこを引けば一発で正答が導き出せると思わないか?

海事代理士試験に合格した先達たちはこのヒントを見ながら法令集を引きまくり,見事に最終合格を勝ち取っていったのだ。

今年受験する人も,この本は買いましょう。いや,買うべきだ。ぜひとも買いなさい!

ヒントで参照条文がついているなんて普通の法律受験参考書では当たり前でしょ?」という海の厳しさを知らぬシロウトの声が聞こえてきた気がするが,ここではあえて放置プレイだ。

ちなみに値段は3780円である。外見は薄い本だが,内容を考えると決して高くないと思う。船長は改訂される前の古い版も本屋さんで見つけて,物欲が押さえきれず,結局買ってしまった。『マニュアル』にはない古い過去問が載っているしね。『マニュアル』には各科目ごとに参考文献案内もついているので「試験に合格するための最低限の知識程度では,オイラの燃え上がるような向学心を押さえきれないぜ。夜中に人間発火現象で火事になってしまったらどうしてくれるんだ?」という方には,さらに突っ込んだ勉強ができるように配慮もされている。私的には試験対策という目的に限っていえば本書と法令集だけで十分だと感じているが。
それから,肝心な学習の順序だが,「羅針盤」のページを見てくれ。

また,特筆すべきは,昨年改訂出版された本書では,なんと!,模範解答がついた。「いままで答えもついていなかったんかよ!」というツッコミが再び聞こえてきたが,そのとおりだ。これは決して乱丁・落丁とかではなく,あえて意図して,そういう編集方針をとっていたのだよ。

昨年発行された『マニュアル』の前身である『海事代理士受験の手引き』(2001年発行)の2ページにはこうある。「編者としては,ヒントに記述する関係法令の条文等を逐一参照し,勉強していただくことによって前後の内容も把握することができ,試験の際にはその問題のみならず前後の条文に関する内容が出題されたときにも対応することができるため,解答を記載せずヒントのみにしている」と。

いや,ホントのところは,「平成12」年以前は,国土交通省が模範解答を公表していなかったからではないの?と船長は思う。もちろん,優秀な人材だっているであろう海事代理士会が,いままで自信がなくて模範解答一つ載せられなかったと言っているわけではなく,日本の世間特有の横並び意識や「官尊民卑」の弊風があるのではないかと思うわけだ。さらに,国土交通省には政治家様にはめっぽう弱いくせに,業界団体に圧力をかけるのがお得意なクズがいるので,力の弱い業界としては何事も大過なく無難にこなしておくのは致し方ないのかもしれない。それにしても,ここまでやるかな?なんか海事代理士会の「風」(フウ)がわかるような気がしてゲンナリするぞ。

ただし,注意すべきは,この本には編者の海事代理士会WEBサイトいわく,「幾つかの編集ミス、印刷ミス」があることだ。だから使用の際には必ず代理士会のサイトへ行って,正誤表を確認してくれ。(ここでは直リンしないが,代理士会サイトのトップページから「お知らせコーナー」へ入れば一目瞭然だ。)でも疑問に思うのは「ミス」は本当にこれだけなのか?ということなのだが。

あと不満があるとすれば,ヒント内容における密度の違いというか何というか,『マニュアル』を実際に解いてもらえばわかるのだが,根拠条文の場所しかあげられていないものもあれば,たとえ短いものであっても,少し解説を加えてあるものもあったりして,初めのうち結構とまどう(もちろん後者のパターンの解説の方が理解を深めるために有り難いのはいうまでもない)。一読者として,その辺の改善を次回の改訂では考えていただきたいと思う。





で,首尾よく『マニュアル』を手に入れたら,次は法令集だ。

船長は国土交通省大臣官房総務課監修『平成16年版実用海事六法』(成山堂書店)を使った。お腹いっぱいになるくらい海事法令が出ている。恐らく本書と競合するのは海文堂出版の『海事六法』なんだろうが,本屋の店先でみる限り,それよりは収録法令数が多い。でも,そのためか値段が割高(7980円)。2ちゃんねるの掲示板を見ていると,ネット上の法令データを印刷して学習した人もいるようなので,「印刷する手間が面倒」と感じなければ,ネットから印刷したデータでもかまわないと思う。かえって愛着がわくかも。なんといっても海事法令は頻繁に改正があるし,たとえ一度限りの受験の記念としても,5000円から8000円という大金?を六法に費やせる思う人は多くないかもしれぬから。まあ,なんというか,この辺は個人の価値観と財布の都合ということで,各自判断されたし。

ただし,買わなくてもいいが,必ず現行の法規集を手元に置いておくことはお忘れなく。この試験の過去問を分析すると,法令の穴埋め問題が頻出という特徴があるのはお馬とか鹿さんでもわかるので,繰り返し法令を引くことが有効な試験対策の一つだからだ。毎度毎度,偉そうな言い方になるが,やっぱりその際には,蛍光ペンで条文にマーカをつけながら学習するのがいいのではないかと船長は思うわけだ。

法律の勉強は繰り返しだから,出てくるたびに条文を引いているとすでに自分がマーカをつけた条文にしばしば出くわす。何度も何度もそんなことがあって,だんだんマーカを色鉛筆に代えてみたりしてどんどん六法が汚れてくる。すると知識が定着してくるという仕組みだ。しかし,引いた記憶が全くないのにマーカがなぜかついていると,「オイラって,もしかして,記憶力が人一倍弱いのか?」と思う瞬間もあるのは事実だ。まあ,アホだから勉強せねばならないのだが。。。


この試験の勉強法は羅針盤に譲るとして,これらの書籍として販売されている法令集には海事代理士試験受験者にとって痛恨の欠陥がある。

それは「海事代理士法」が出ていないことだ(T_T)「海事代理士法施行規則」もない「海事代理士試験規程」なんかは尚更出ていない当然のように影も形もない

まあ,海事代理士法は試験科目ではないので,致し方ないとも思える。が,しかし,まるで無視されたかのように感じてもの悲しくなるのも事実だ。

「海事代理士法が試験科目でないは海事代理士会が強制入会でないことと関係があるのではないか?だれか知っている人がいたら教えて欲しい。たとえば司法書士や土地家屋調査士などは開業するために各士会へ必ず入会しなければならないため,試験科目にも司法書士法や土地家屋調査士法がある。一時,筆記試験科目からはずされていた時期もあった(口述試験では問われた)が,今は筆記科目にも復活しているようだ。でも,入会は強制でなくても試験科目にすべきではないかなと思うのは船長だけだろうか?だって,適法に開業している人は,入会するかしないかにかかわらず「海事代理士」に違いないのだから,海事代理士法の知識は常識として必要だからである。




「くそー,未収録なんて許せん」と思ったそこの奥さん,あなた,実は朗報がある。前述の『海事代理士合格マニュアル』には3つとも,全部,残らず収録済みだ。やっぱり『マニュアル』は買いましょう。いや,買ってくれ。ぜひとも買いなさい。