荒沢岳  
…上信越の山…

 あらさわだけ
 (1969m)   



登山口〜前山〜前ー〜荒沢岳

   
平成20年10月4日(土)
天気  晴れ 
  メンバー 8人
      

荒沢岳の登山口を出発したのは6時ちょっと過ぎ。 登山口にトイレまで兼ね備えてあったのは意外だ。 7、8年前に訪ねたときは、越後駒ヶ岳は多くの登山者でお祭りのような賑やかさだったと聞いていたが、荒沢岳では一人の登山者さえも見られなかった。

登山道は水源地のような沢を離れて山腹へと向かい、15分後には尾根へ。 朝の日差しがブナ林の中に通い、白く輝いている幹がすがすがしくて気持ちがよい。
ブナの葉は今が黄みを帯び始め、この辺りでは黄葉も緒に付いたばかりのようだ。

     〔トイレのある登山口〕                       〔旭日の入るブナ林〕

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ジクザクに登って尾根のより高い位置へと前進し、何げなく振り返った奥只見湖の湖面は靄に覆われていた。 前山に着いたことは足元の三角点の標石で知ったが、ここから下り坂になる。

5分後に登り返しを迎えて一度高みに立つと、その後は緩やかな登りがしばらく続く。 
前方に荒沢岳が山容を出すと登山道は平坦になり、間もなく行く手を指針するように前ー(まえぐら)が荒沢岳に重なって見えてくる。

先でもう一度重なって見えると下り坂になり、また緩やかに登って重なって見えた三度目で前ーにグッと迫って悲愴になる気持ちを叱咤し、四度目で前ーの直下まで下って行く。 
この先岩場危険の注意書きを見て心を雄々しくするべく時間を取ってから登りに挑んだ。

                  〔荒沢岳は正面、まだ遠い〕                    〔荒沢岳と前ーが縦に並ぶ〕             

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重苦しい空気の包んでいる樹林の中をひと登りしてから20mほどもある垂直に近い岩場には鎖が張ってあるが、足がかりは堅固なものでしめしめと胸の内で発して三点確保の体勢で登って行く。

足元の険相さを覗いたら恐怖心で自縄自縛に陥って身動きが取れなくなるので、振り返らずに敵愾心をひたすら待ち構える岩場に燃やし、ハシゴ、鎖、ハシゴと目先を変えて尾根に一度飛び出す。

すぐに視線に入ったのはお先真っ暗になる前ーの本体の姿であり、鋸歯状の岩峰を見上げてしばし呆然。

  
〔最初の岩場〕                          〔前ーの岩峰〕
 
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ここまでは序盤戦に過ぎなかった事をあらためて思い知るが、本番の登山道は前ー東面の岩壁の基部に付いている。鎖三本と長いロープ一本で下って行く登山道は底が抜けているようでもあり、下るだけ下ってようやく長い登り返しの途に付く。

草付の岩場の登りは始めから終わりまで鎖が施され、足場をとどめるところもたくさんあって危険な岩場とは言えないが、油断大敵なのは長すぎることから生じる気の緩みだ。

  
  〔前ーの基部に下る〕                     〔前ーの基部からの登り〕

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尾根に立ってから5分後に前ーの山名標のある場所に着き、後は尾根道を歩くだけになる。 尾根の左右の急な傾斜には真紅に染まった潅木と笹の緑の対照が美しく、紅葉前線の真っ只中に踏み込んでいるようだった。

主稜線に出て右側に進み、岩峰を四つほど越すと荒沢岳に到着する。

   
〔左側の巻き道に〕                       〔荒沢岳の山頂〕

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山頂の景色は素晴らしい。 四囲に取り巻く山々があまねく広がっている。

まずは通り一遍に見回し、その後じっくり主立つ山々に視線を凝らした。 すぐに目に入って来たのは、やっぱりこの界隈を領して双璧をなしている越後駒ヶ岳と中ノ岳だ。
しばらく釘付けになったが、見飽きることがなかった。

その後おもむろに視線をもう少し西側に移してみれば、足下に気持ちの良い尾根が平原のように見えるはずだ。 荒沢岳で端を極めていたかのように思う尾根が、ここからもくねくねと蛇行しながら灰の又山を介して兎岳に向かっている。 

一部の笹原にはくっきりと道筋を現わし、そこに向かっているのが、すぐかたわらに見えている薄い踏跡だ。 

南側では、とりとめなく范乎としている平ヶ岳の平頂を霞みがちに捉えることができ、更にその左側ではまったく両極端の山容を持つ燧ケ岳が大空に双耳峰を突き立てていた。

視線を反対にすれば、明日登る未丈ガ岳が眺められ、眼下では今辿ってきた尾根の一部始終が一望することができる。 

下山は同じ道を引き返すだけだ。 前ーを慎重に期して突破したら胸のつかえがおり、足も重石が取れたように快調になる。 登山口に戻ったのは出発してから9時間余り経った頃である。

  

 〔登山道からの風景・クリックすると拡大します

--コースタイム--
 登山口 6:05 前山 6:55 前ー直下 7:45〜7:55 前ー 9:10
 荒沢岳 10:35〜11:10 前ー 12:15 前ー直下 13:35〜13:40
 前山 14:40 登山口 15:15

                                  実働時間 8時間20分
--参考地図・図書--
 「山と高原地図 越後三山 昭文社」