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第66話

電車の窓から豆腐を投げると血行が促進されて、より健康的になることが出来ると近くに住むインド人が教えてくれたので、僕は早速髪型を整え、タキシードに着替えて豆腐屋を目指しました。豆腐屋に行くにはフォーマルな姿で行かないと失礼になります。万一軽装で行こうものなら、校長先生( ないしそれより偉い人 )に怒られてしまい、口にティッシュを詰められてしまうそうなのです。その話も近くから住むインド人から聞いていたので、やはりインドの人は頭が良いんだなぁ、と改めて思いました。

家を出た僕は自転車にまたがり、豆腐を求めて勢いよく出発しました。15分ほど自転車をこいでいると、右手のほうにお店らしき建物が見えてきました。インド人は右側に見える店は全て豆腐屋だからどこに入っても間違いと話していたので、僕は早速その店に入ることにしました。自転車を店の脇に停め、逸る気持ちを落ち着かせるために一度大きく深呼吸をして、冷静を装って店内に入りました。中に入ると70歳前後のおじいさんがカウンター越しに僕を見ていました。目が合った瞬間に心拍数が上がっていくのを自分でもはっきりと感じ取りましたが、ここで動転してしまうと校長先生に怒られてしまうため、僕は左足を思いっきりネギで殴り続けることで何とか冷静を保っていました。

しばらく店内を見て回りましたが、店の中にはペンや鉛筆や消しゴム、コピー用紙などの文具が置いてあるばかりで僕が探している豆腐はどこにもありませんでした。なぜ豆腐屋なのに豆腐が置いてないんだ。不安に思った僕は粗相を覚悟で、おじいさんに豆腐はどこにありますかと尋ねました。するとおじいさんは一瞬目を見開いて僕を見てから少し間をおいて、急に僕を怒鳴りつけてきました。

おじいさんがあまりに興奮してたので何を言っているか全く分かりませんでしたが、僕は自分の置かれた状況を考えていると衝撃の事実に気付いてしまったのです。それは、この僕の失礼な質問に激怒しているということに加え、そしてライオン=ネコ科であるという2つの事実から、このお豆腐屋さんは実は校長先生であると、僕は気付いてしまったのでした。僕は校長先生に怒られてしまった以上、口にティッシュを入られることだけは阻止しなければと、口を両手でふさいで全力で店から飛び出しました。

般若心経を唱えながら店を飛び出したのが功を奏したのか、何とか口にティッシュをつめられることだけは回避することが出来ました。それにしてもひどい目に遭いました。何で僕はこんな目に遭ったのでしょうか。そう考えるうちに僕の怒りはこんな事を教えてきたインド人に向けられてゆきました。僕は再び自転車に乗り、一直線に彼の働くカレーショップへと向かいました。カレーショップに到着すると僕は般若のような形相で乗り込み、カレーセットを頼んで、それにヨーグルトを少し混ぜて美味しく頂きました( また普段とは違う味わいでした )。