位相検波ってなんだ?

このコンテンツは東京デバイセズさんにプリント基板実装して頂き、
位相検波の実験モジュールとして発売されました。

2012/4/9

◆PSoCデジタルLメータの動作原理

 先に製作したPSoCデジタルLメータの動作原理は位相検波によるものです。このページではその動作原理をご紹介します。

◆インダクタに生じる位相差について

 インダクタに交流電圧を加えると90°遅れた位相の電流が流れます。Lメータはこの現象を利用しインダクタンスを計測します。電流位相が遅れる現象を回路シミュレータで確認したいと思います。使用する回路を以下に示します。

 電流波形を確認するためにL1に電流検出用抵抗R1を接続します。R1の値はL1のリアクタンス(XL=2πfL=6.28Ω)の10%程度に設定します。入力電圧と同位相の波形を見るためにR2とR3を使用します。

 シミュレーションの結果は以下のようになります。A点の電圧(=入力電圧の位相)に対してB点の電圧(=L1に流れる電流の位相)がおおよそ90°遅れていることが分かります。

 シミュレーションの波形を詳細に調べると遅れ時間は236(usec)でした。周波数は1kHzですから約85°の位相差になります。ここで生じた5°の差は電流を観察するために使ったR1の影響により生じたものです。実際のインダクタも内部に抵抗成分を持っており、LとRの直列回路とみなすことができるのです。

◆位相検波

 下のグラフはExcelを使って90°位相の異なる波形を合成したものです。多くの場合観測される波形はインダクタ成分と抵抗成分の合成波になります。下のグラフからも合成波はインダクタ成分よりも大きくなっていることが分かります。このように、合成波の大きさを計測しただけでは純粋なインダクタンスを知ることはできません。

灰色のライン=抵抗成分
赤のライン=インダクタ成分
黒のライン=合成成分

 合成波からインダクタンス成分を取り出すために位相検波の登場です。

 インダクタ成分と抵抗成分には90°の位相差があります。そこで、インダクタ成分と同位相の矩形波を作りONを1、OFFを−1と定義してインダクタ成分と抵抗成分に掛け算します。掛け算の結果が以下のグラフです。

ピンクのライン=抵抗成分
青のライン=インダクタ成分

 インダクタ成分は全波整流の波形になります。抵抗成分は積分すると±が相殺される波形になります。掛け算を行うことで抵抗の成分がキャンセルされますので純粋なインダクタ成分の大きさを知ることができます。

 説明の都合で抵抗、インダクタの2成分対してそれぞれ掛け算を行いましたが、実際は合成成分に対してこの掛け算を行います。結果は、上のグラフのピンクと青のラインの合成波になりますので、結果を積分すると青のラインの大きさだけが残ることになります。

◆位相検波後の処理は

 位相検波された信号をローパスフィルタを使って直流にします。その電圧をADコンバータで読んで、XL=2πfLの式を使ってLを計算するわけです。

◆検波するだけでも測定器

 位相検波の機能を持った測定器がロックインアンプです。予め検出したい信号の位相が分かっている場合はこの原理を使って検波することによって小信号を精度良く計測することができます。マニアとしては手元に置きたい機器の一つでもあるわけですが、「何に使うの?」なんて聞かれちゃうとちゃんと説明できませんね。で、雰囲気だけでも味わおうとこんな実験をやったりしているわけで・・・、その勢いがあるうちにPSoCデジタルLメータにしてみました。


Latest update at 2008/1/22