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アスペルガー症候群のパニックのいわゆる「切れやすい」についての脳波における症例と治療


 アスペルガー症候群のパニックのうち、特に易怒性、いわゆる「切れやすい」について困っている方がおられると思うので、ある症例をご紹介したい。ご参考になれば、と思う。

 アスペルガー症候群の方がすべて脳波に問題を持っておられるわけではない。アスペルガー症候群の方の中でも受動型とされる方はむしろ孤独を愛し、ほかの人からおとなしいと思われている方がほとんどではないだろうか。ところが、中には、脳波を検査してみると、次の事例の様に、β波が優位で、ストレス状態であって、パニックを起しやすい状態の方がおられるようなので、紹介したい。

  さて、脳波については、通常、部屋を暗くして、目を閉じたバックグランド脳波では、前頭葉ではβ波、後頭部ではα波が支配的である。ところが、この症例では、後頭部にα波はない。β波だけである。通常、目を開けると後頭部のα波はβ波に変わり、活動が開始されたことを示すが、もともとβ波のままであるので、活動状態は続いている。

  次に過呼吸を行って、脳の酸素を低下させ、仮にストレスを与えた状態を作ると、前頭葉は、β波の周波数の増加が始まり、亢進しやすいことが分かる。光刺激を与えた場合、前頭葉は、通常、光が12ヘルツぐらいからβ波の周波数が増加し、活動の亢進を示すが、光が3ヘルツからこの増加が始まり、亢進しやすい。

 以上の検査を通じて、突発波は検出されていないことから、てんかんは起きていないが、過呼吸の後に、α波が現れ、覚醒低下が見られるところに特徴があった。仕事をし過ぎるとついには穏やかな状態に陥るという状態があることを示している。

 この結果について、所見としては、バックグランドにα波が見られないことから、「背景活動ではβ周波数帯域優位で休むべき時に十分休むことのできない働き過ぎの脳波といえる。またストレスや外界からの刺激で活動が容易に亢進し、そのために覚醒度が低下しやすい特徴も認められる。」というものであった。

 脳波検査前、仮説としては、パニックは、パニックを起す引き金となる脳波がある、と考えられていた。しかし、この症例では、そのような脳波は見つからなかった。ところが、後頭部の信号は海馬体や脳梁からの信号であるそうだ。海馬体や脳梁が常に働きつづけると、脳が休まる時がなく、常にストレス状態にある。その結果、「海馬体や脳梁が休まる時がなければ、眠っていても休まる時はないだろう」ということになる。

  以上を大脳生理学的に説明する。話題になっている海馬体、脳梁の位置はどこにあるのだろうか。大脳の下に帯状回がある(役割は分からない)。その下に、脳梁がある。これは、左脳と右脳を情報交換して橋渡ししている機能がある。この場合、これは常に働き続けている。脳梁につながって、左右に海馬体が1つづつ伸びている。これは、記憶を司っている。この場合、これも休むことはない。常に働き続けている。ところが、海馬体の先端にあるのは、偏桃体あるいは偏桃核と呼ばれるところである。ここが、実は感情をコントロールしているところである。偏桃体にα波があれば、穏やかな状態、β波があれば、活動状態、周波数が増加すればストレス状態である。後頭部から検出される脳波は常にβ波であり、これは休むことがない以上、容易に亢進しやすいことが考えられる。

  偏桃体の働きについては、次のサイトを参照していただきたい。
http://www.sam.hi-ho.ne.jp/mountain-field/Feeling-Place/motivation.htm

  ここで、ブレンダ・スミス・マイルズがアスペルガーのパニックを「メルトダウン」と表現していることが私にとっては気になる。例えば、アスペルガーのパニックが「突発波」によって引き起こされるとすると、それは瞬間的に生じるはずである。ところが、実際には、パニックを起すまでには、わずかではあるが、時間があり、まさに「メルト」するだけの時間を要する。β波も同様であり、すぐに亢進するわけではなく、秒単位で時間が必要である。

  それでは、治療方法はあるのだろうか。1つは、抗てんかん薬を使って脳波の亢進を防止し、感情をコントロールしている偏桃体の脳波の亢進を防止する方法の可能性があげられる。この抗てんかん薬としては、従来から「易怒性改善薬」として用いられている「デパケン」があげられる。「デパケン」はもともと抗てんかん薬であり、アスペルガーのパニックに効果があると定説があるわけではない。しかし、「易怒性改善薬」として用いられているところをみると、脳波の亢進に何らかの効果が従来から認められていた可能性がある。ただし、医家向けなので、医師でなければ、処方はできない。ご担当の先生にご相談されてみていただきたい。

 しかし、ここで大きな疑問が起きる。海馬体がリラックスせず働きつづけるということは、情報が常に記憶されつづけるということではないだろうか。自閉症者は記憶容量が大変大きく、中には、電話帳1冊は簡単という方もおられる。その理由として、この海馬体が働き続けているためと考えることはできないだろうか。そうすると、自閉症者の方は、後頭部の脳波がβ波の方が多いのだろうか。

正常な成人の脳波については下記にリンク先を記載した。

脳波のより詳細な検査結果については以下に記載した。

詳細な検査結果

正常な成人の脳波
正常な成人の脳波(縮小版)