JO-AKKUN 2005 年 5 月 31 日更新
尼崎脱線事故にまつわる怪 テレビカメラマンの戯言
前のページへ   次のページへ


   回生ブレーキの怪

回生失効とは
 

 回生失効を一言で言うと、「回生ブレーキが利かなくなる現象」である。そんないい加減なブレーキがあるのかと思うのだが、報道では同型の電車で複数の運転士が経験しているようだ。「10 回に 3 回くらい」の頻度とも伝えられている。

 
電車のブレーキ
 

 事故を起こした電車には空気ブレーキと回生ブレーキが搭載されている。

 空気ブレーキは空気の圧力を利用し、ブレーキドラムにブレーキシューを押し当てて摩擦抵抗によって制動力を得るモノだ。制御方式も多くの方式があるが、当該電車は電気指令式である。

 回生ブレーキとは、電車の走行用モーターを一時的に発電器として動作させると、モーターの回転を止めようとするチカラが発生する。このチカラを利用して減速させる装置のことだ。
 このブレーキで発電された電力(回生電力)は、パンタグラフから架線に戻され、他の電車がこの電力を使うことが出来る。省エネの観点から、素晴らしいブレーキシステムだと言える。

 ただし、電車には全ての車両にモーターが付いているわけではない。当該電車では 2、3、5 両目がモーターを搭載した車両で、残る 1、4、6、7 両目には搭載されておらず、当然回生ブレーキも無いことになる。

 従来、電車では回生ブレーキと空気ブレーキを同時に動作させていたが、空気ブレーキは摩耗による保守が伴うため、近年は高速走行時に空気ブレーキの動作開始を遅らせる遅れ込め制御が一般的となっている。摩耗軽減以外にもブレーキ加熱に伴う性能低下や回生電力の効率向上にもつながる。
 事故のあった電車もこの遅れ込め制御であった。

 
再び回生失効
一般的な失効

 回生ブレーキには致命的な欠点がある。それは、回生電力が何処かで消費されないとブレーキが利かなくなると言うのだ。通常は、ブレーキを掛けている電車の前後を走行している電車が消費することになるのだが、理想的には大電力を消費する力行(加速)中であることが望まれる。

 基本的な事だが、在来線を走る電車は、力行(加速)して十分な速度に達したら、モーターへの給電を切断し惰性で走行する。これを惰行と呼ぶが、この状態でも電車はほぼ一定の速度を保つことが出来る。停車駅ではブレーキのみを使用して停止する。つまり大電力を消費しているのは電車が駅を出発してしばらくの間の力行中だけだと言える。
 この事から、回生ブレーキを掛けている電車の前後に力行中の電車が居なければ回生失効しやすいと言われている。

 
変電所

 前述のように前後に力行中の電車が居ない場合、回生電力は変電所に戻される。複線の場合は対向する線路(上り線から下り線。下りから上り)に送電され力行中の電車で消費される。それでも消費されない場合に備え、変電所内に抵抗器を設置している場合もある。
 ただし、何れの場合でも変電所までの距離が離れていると送電損失が無視できなくなり、回生電力が有効に活用されないばかりか、制動力に影響が出ると考えられる。

 
低速時、高速時の失効

 回生ブレーキは、低速時に発電能力が低下し回生失効しやすい。これとは逆に高速時は、発電される電圧が高くなり過ぎ、そのまま架線に戻すと不具合が発生するおそれがあるため、回路は自動的に遮断される。当然、回生失効が起きる。

 
回生失効の対策
 

 電車には前述のように空気ブレーキが搭載されており、回生失効が起きても安全に停車することが出来る。しかし、制動力は低く、特に高速走行時では顕著となる。
 そこで、回生失効が起きないように様々な工夫がされている。電車や変電所に抵抗器を設置し、回生電力を消費させたりしている。後述の省エネき電システムもその一つだが、事故を起こした電車(或いは地上設備)がどのような対策を講じていたかは不明だ。

 
2005 年 5 月 31 日新規

 


   省エネ試験の怪

省エネルギーき電システム
 

 回生ブレーキは新型の電車には積極的に導入され、省エネ効果に期待が寄せられている。しかし実際のところは期待するほどの省エネには繋がっていないのが現実のようだ。各鉄道会社を始め様々な研究機関で効率を上げるための方法が模索されている。
 JR西日本も例外ではなく、平成12年度に学研都市線の放出(はなてん)駅と四条畷(しじょうなわて)駅の間で省エネルギーき電システム(上下タイき電方式)の試験的に行われた。特別な設備を必要としないことから、同様のシステムを導入している私鉄もある。

以下のリンクから「VOL.7 技術開発のしごと」に進み関連するページをご参照下さい
JR西日本 : JRニュース > JRを支えるエキスパートたち > バックナンバー

他社の取り組み

東京急行電鉄ウェブサイト
東急電鉄環境活動

京浜急行
京急の環境活動について

懐疑的ですが
 

 さて、事故が起こった電車は、JR尼崎駅に到着するとJR東西線を経て学研都市線に乗り入れる事になっていた。現在も省エネ試験が継続されているか否かは不明。
 また、平成14年度から、JR宝塚線の一部区間でも同様の試験をしていた。JR西日本は実施について公表しておらず、また区間も不明であるが、国土交通省の環境関係のリリースでは実施されたと記されている。
 不可解なのはこの試験に対する結果がどうであったのか公表されていないことだ。まだ集計中であるのかも知れないが、良好な結果が得られなかったので公表を控えて居るとも思ってしまう。

 更に言えば、結果を焦る余り安易に電車に手が加えられていたのではと懐疑的に考えてしまう。例えば空気ブレーキの動作するタイミングを必要以上に遅らせたり、制動力を弱めれば、回生電力がアップするくらいは素人でも考えつく。この状態で、回生失効が起これば、どうなるかも想像できる。そんな電車を安全に停車させるには確実に空気ブレーキが掛かる非常ブレーキを使用する以外運転士には選択肢がないだろう。

国土交通省のリリース
「環境保全に資する独自の取組(グッド・プラクティス)」

2005 年 5 月 31 日新規

 


   戯言

今更ながら
 

 今更ながら申し上げるが、今回の事故はブレーキが利かなかったことが疑わしいと考えている。勿論、回生失効を疑っている分けだが、空気ブレーキに手を加えられていたのではないかと考えている。
 それは、JR宝塚駅やJR伊丹駅でのオーバーランであり、主に低速時の制動不足が考えられるからだ。つまり空気ブレーキ。なぜ空気ブレーキに手を加えられていたと考えるかは前述の通り。
 そんな自殺行為をJR西日本がするわけがないが、事故発生以降の発言や行動、何よりも現実的でない過密ダイヤなど様々な状況を考えると「No」とも言い切れない。

 
全くの戯言
 

 事故を取材していて驚いたのは、JR西日本の社員が「回生ブレーキ」についてまともな説明ができないことだ。一人は運転士で、もう一人は車両工場に居た人だ。車両工場にいた人は、もしかすると広報担当か関連会社の方かもしれない。
 しかし、クチを揃えたように「モーターに逆回転のチカラを発生させブレーキを掛ける」と説明したのだ。この2人は別々の場所で話を聞いているのだが、何度聞き直してもモーターに(逆の電力を加え)逆回転させていると聞き取れる。
 鉄道愛好家なら誰でも知っているような事をちゃんと説明できない。いや、理解していない。多分その程度の教育しか受けていないのだろう。
 執拗に質問したためか、取材の最後に運転士はこういった。「電車の構造については詳しくないので」と。。。

 
 

 ”日勤教育”でなぜちゃんとした教育や指導が行われないのか?それは、ちゃんとしたことを教えられる人材が居ないからではないか?と邪推してしまう。

 いや。たしかに、草むしりとかの教育もありましたよ。小学校とか中学校の時とか。便所掃除とかもあったかな?水を入れたバケツを持って廊下に立たされるとか。これ以上書くと事故と関係のない方の仕事まで批判しなければならなくなってしまいますから、やめておきますが、JR西日本流”日勤教育”なんてのは、学校での体罰禁止と同時にやめていなければならなかった事だ。

 
2005 年 5 月 31 日新規

 


   追加・「5 ノッチ」の怪

駅の停車は 5 ノッチ
 

 事故を起こした 207系は駅で停車する際、8 ノッチまであるブレーキの内、5 ノッチを使用して停車するように運転士は指導されている。回復運転など大きな制動を要する場合のみ 6 ノッチを使うとの事だ。8 ノッチは非常ブレーキ並の制動力があり、吊革につかまっていない乗客が転倒する虞もあるので使用しないが、過密ダイヤを考えると 5 ノッチと言うのは不可解である。

 
2005 年 5 月 31 日新規

 

前のページへ   次のページへ
テレビカメラマンの戯言   JO-AKKUN

無断使用を禁ずる
Copyright (C) 2005 JO-AKKUN. All Rights Reserved.