【市民憲章 Q&A】


 お陰様でこの『市民憲章情報サイト』も4年目に入りました。
 拙いサイトであるにも拘わらず、一万人をはるかに上回る方々に御利用頂きましたこと、誠に有り難く思っております。
 この間、いろいろな方々から、メールで情報をお寄せ頂いたり、お問い合わせを賜ったりして参りましたが、最近、市町村合併によって誕生した新市において市民憲章の策定作業が始まったこともあってか、新市の関係者の方々から市民憲章に関する基本的な御質問を頂くことが多くなりました。
 過去の制定事例に鑑みますと、近年はどの市においても策定のための委員会が学識経験者・公募市民・等によって構成されているようですが、このような場合、策定された市民憲章自体の良し悪しや制定後の推進活動の成否は、委員会のメンバーをはじめとする関係者の方々がどの程度市民憲章の意義や役割を理解されているかによって決まると言っても過言ではありません。
 そこで、各地の市民憲章が「日本人に合った、日本らしいまちづくり」の支柱となることを念じ、よく質問される事柄について、本サイトの内容と重複するものも含め、回答を簡潔にまとめることに致しました。
 市民憲章の社会的評価が確実に高まりつつある中で、本サイトが今後ますます多くの方々のお役に立つことができればこの上ない幸いです。
 なお、市民憲章の策定および制定後の推進活動等に関する講演・講義・監修・助言の御依頼に関しましては、時間の許す限り喜んでお引き受け致しておりますので、メール(jipwaseda@yahoo.co.jp)で御連絡下さい。

平成18年5月3日  三輪真之(MIWA Mayuki)


[質 問](Question)
Q−01 「市民憲章」と「citizen's charter」はどこが違いますか?
Q−02 日本の市民憲章の特徴はどのようなところにありますか?
Q−03 日本で最初に市民憲章を制定した都市はどこですか?
Q−04 全国でどのくらいの都市に市民憲章が制定されていますか?
Q−05 日本の市民憲章はどのような内容のものが多いのですか?
Q−06 市民憲章はどのように制定されるのですか?
Q−07 市民憲章にはどのような存在意義がありますか?
Q−08 まちづくりにおいて市民憲章の果たす役割は何ですか?
Q−09 「市民憲章」と「法律」はどこが違いますか?
Q−10 「市民憲章」と「総合計画」はどこが違いますか?
Q−11 「市民憲章」と「自治条例」はどこが違いますか?
Q−12 「市民憲章」と「都市宣言」はどこが違いますか?
Q−13 「市民憲章」と「市の歌」はどこが違いますか?
Q−14 「市民憲章」と「まちづくり標語」はどこが違いますか?
Q−15 市民憲章はどの都市のものも似たようなものではありませんか?
Q−16 市民憲章は抽象的で現実性に乏しいのではありませんか?
Q−17 市民憲章の推進活動とはどのようなものですか?
Q−18 市民憲章はまちづくりとどのような関係がありますか?
Q−19 市民憲章はNPOとどのような関係がありますか?
Q−20 市民憲章はよく改定されるのですか?
Q−21 市民憲章の良し悪しはどこで判断するのですか?

[回 答](Answer)
●Q−01 「市民憲章」と「citizen's charter」はどこが違いますか?
○A−01
 「市民憲章」と「citizen's charter」の違いを明らかにする前に、「市民」と「citizen」の違い、「憲章」と「charter」の違いをはっきりさせておく必要があります。
 日本で「市民」と言えば、単に「行政区域としての市に住民登録がされている者・そこで仕事や勉強をしている者・等」を指すのが常識ですが、欧米で「citizen」と言えば、本来「長い間自治と自衛によって守られてきたcityの運営主体」を指します。
 すなわち、日本の「市民」は「たまたまそこに住んでいてお互いに仲良く暮らすべき人々」といった程度の実質的な意味しか持たないのに対して、欧米の「citizen」は「そこを守るための多くの権利や義務を持ち、時としては武器を持って他の市と戦う同士」といった特別な歴史的意味を持っています。
 また、日本で「憲章」と言えば、「共同体の構成員が共に目指すべき善行を祈願的に誓約するもの」といった色彩が強く、その字面からも「のり」(憲)と「ふみ」(章)の伝統を受け継ぐ感があるのに対して、欧米の「charter」は「為政者と市民が権利や義務の内容を明文化した契約書的なもの」であり、イギリスの『大憲章』(Magna Carta、1215)の「carta」と同語源で、重要な内容を書面で確認することを要するものです。
 これらのことからも、「citizen」を「市民」と、「charter」を「憲章」と翻訳する場合は十分な注意の必要であることが了解されますが、実際、欧米の「citizen's charter」と日本の「市民憲章」とは、制定目的・形式・内容・ボリューム・等の点で大きく異なり、全く別のものと考えても差し支えがないように思います。
 因みに、日本の市民憲章は、制定目的や内容が『五箇条の御誓文』(Charter Oath、1868)に近いので、英訳する場合は「charter oath」とするのが妥当であろうと考えられます。

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●Q−02 日本の市民憲章の特徴はどのようなところにありますか?
○A−02
 現在日本の都市に制定されている市民憲章の大半は、その都市の地理・気候・風土・歴史・特徴・誇るべき点・制定の事情・等を簡潔に述べた「前文」と、その都市の市民が日常的かつ継続的に心掛けるべきまちづくりの肯定的目標を箇条書きにした「本文」から成っていますが、特に著しい特徴が見られるのは「本文」の部分であり、主として以下の3点が重要です。
 第一は「簡潔である」ということです。
 日本の市民憲章の「本文」は、その多くが概ね30字前後から成る5カ条程度の文言で表現されていますから、老若男女を問わず、誰もが無理なく了解できる内容です。  この点は、欧米の「charter」や欧米流の「都市憲章」・「企業憲章」などが、論理の構成や文言の定義を重視した法律的な内容で相当なボリュームを持ち、一般市民の感覚からすればうんざりするものであることと決定的に異なります。
 第二は「肯定的に述べられている」ということです。
 日本の市民憲章の「本文」には、無いに等しい僅かの例外を除き、否定形は全く用いられていませんし、命令的あるいは強制的な表現もなされていません。
 この点は、「人間は良いことを自主的にやる時心身共に健康になる」という人間哲学的な真理に照らして見ても極めて重要ですし、「世の中は皆が悪いことをしなくなっても決して良くはならない」という厳然たる事実を再認識する上においても重要です。
 第三は「和語が多用されている」ということです。
 現在の日本で常用されている日本語では、各種の文書を平均すると、和語が概ね50%強の頻度で用いられていますが、市民憲章の「本文」では少なくとも80%を超えて用いられており、これは流行歌の歌詞における和語の使用率に近い数値です。
 この点は、市民憲章の「本文」が和語の特質を色濃く携え、温かく親しみやすく、心の底から共感できるものであり、安らかなイメージを持つものであることを示しています。

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●Q−03 日本で最初に市民憲章を制定した都市はどこですか?
○A−03
 日本の市民憲章の名称・形式・内容が最初に明確に示されたものは、今から丁度50年前の昭和31年5月3日に制定された「京都市市民憲章」で、後続する各地の市民憲章はこれを手本として検討されたものが多いと思われます。
 ただし、これに先立ち昭和25年4月1日に制定された広島市の10カ条から成る「市民道徳」は、その制定目的や内容の点から見れば、市民憲章と見なし得るものであると思われますし、また、昭和8年7月および昭和21年11月に制定された萩市の3カ条から成る「市民憲章」や昭和22年11月3日に制定された3カ条から成る「出雲市憲章」などは市民憲章の萌芽として位置付けられるべきものであると思われます。

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●Q−04 全国でどのくらいの都市に市民憲章が制定されていますか?
○A−04
 平成18年(2006年)3月31日現在、日本の47都道府県で市制を施行している都市は800(23の東京特別区を含む)あり、それらの内、筆者が「市民憲章」の制定を確認している都市は590(8の東京特別区を含む)[約73.8%]です。
 因みに、4年前の平成14年(2002年)3月の時点では、695の都市があり、それらの内、617の都市(609の市と8の東京特別区)[約88.8%]に「市民憲章」・「区民憲章」が制定されていましたが、その後、市町村合併による都市の誕生および消滅が相次ぎ、暫定的に未制定の都市が多くなっています。
 なお、地域別の制定率に大きな違いは見られませんが、大都市(23の東京特別区を含む)に未制定の都市が多いという傾向があり、例えば、盛岡市・仙台市・富山市・横浜市・さいたま市・千葉市・静岡市・名古屋市・大阪市・神戸市・松山市・宮崎市などの県庁所在都市には市民憲章が制定されていません。
 また、昭和41年(1966年)から昭和60年(1985年)までの20年間に501もの都市で市民憲章が制定されたことは特筆すべきことであると思われます。

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●Q−05 日本の市民憲章はどのような内容のものが多いのですか?
○A−05
 形式的に見ると「前文」・「本文」から成る「定型」のものが圧倒的に多く、散文詩的な「非定型」のものは数例に過ぎません。
 「前文」にはその都市の地理・気候・風土・歴史・特徴・誇るべき点・制定の事情・等が簡潔に述べられ、「本文」にはその都市の市民が日常的かつ継続的に心掛けるべきまちづくりの肯定的目標が箇条書きにされています。
 ちなみに、「本文」の第一条に用いられている形容語で最も多いものは「美しい」であり、次いで「豊か」・「住みよい」・「明るい」・「きれい」・「楽しい」などとなっています。
 また、「本文」の文末表現としては「しましょう」とするものが最も多く、次いで「します」が続き、「しよう」・「したい」といったものや名詞で終わるものもあります。

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●Q−06 市民憲章はどのように制定されるのですか?
○A−06
 市民憲章が制定される事情は、それぞれの都市や時代によっても異なりますが、市民憲章の存在意義や制定後の推進活動にも関わる事柄として、留意すべき点が3つあると思われます。
 第一は「契機」です。
 過去の制定事情を調べてみますと、約8割の都市が市制施行の節目となる年(例えば、0年・5年・10年・15年・・・、およびその前後の年)に市民憲章を制定しています。
 これは、市民憲章の策定および制定が「市制〜周年の記念施策」として発意されることが多くの市民に抵抗無く受け入れられてきたことを物語っていると考えられます。
 第二は「主体」です。
 まず、発意の主体が誰であるかを厳密な意味で特定することはできませんが、現実的には、市長であったり、市議会議員であったり、市の企画部であったり、商工会議所であったり、市民団体であったりします。
 少なくとも近年は、多くの場合、市長もしくは市議会の要請を受けて市の然るべき部署が市民憲章の制定に関わる委員会を設置し、その中に公募市民を入れて検討を重ねるという方式が通例化しているようです。
 ただし、制定の主体が「行政」か「市民」かという問題は、市民憲章の文言や市政の範囲にも関わることなので、十分な議論のなされることが望ましいと思われます。
 第三は「手続き」です。
 市民憲章案がどのように策定されるかは、例えば、「市の事務局が作成する」・「委員会で作成する」・「草案起草委員が作成する」・「著名人に依頼する」・「文案を公募する」など、それぞれの都市によっていくつかの流儀がありますが、何れにせよ、多くの場合は策定された案がパブリックコメント等で市民に公表された後、市議会で承認され、それが正式の市民憲章として公示されることになります。
 この場合、「市民の参加がどのように担保されるか」および「市の公式な文書として扱われるかどうか」ということについては事前に確認しておく必要があると思われます。

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●Q−07 市民憲章にはどのような存在意義がありますか?
○A−07
 残念ながら、これまで長い間市民憲章は大きな存在意義があるとは認められず、しばしば「鏡餅の上の小さな橙のようなもの」つまり「無いと様にならないから置きはするが、あっても大した役には立たないもの」などと悪口を言われたりもしてきました。
 しかしながら、ここ数年、市町村合併によって誕生した新市等において、市民参加の形で市民憲章の策定が進められることが増え、一般市民の間でも市民憲章に対する関心が急速に高まり始めてきました。
 その結果、「市民憲章は、我々日本人が現在抱えている大きな問題を根本的に考えさせてくれる契機となるものである」ことが理解され始め、更に、「市民憲章の意義や役割を十分理解しその推進活動を都市のまちづくりに活かしていくことが、最も新しく最も日本的なまちづくりのスタイルである」という社会的認識が全国各地で着実に形成されつつあるように思われます。
 特に、市民憲章は次の2つの点について、21世紀を迎えた我々日本人に重大な問題提起をしていると考えられます。
 第一は「日本人らしいまちづくりとは何か」という問題です。
 言うまでもなく、現在も国際化は驚くべき速さで進行していますが、それと並行して、「外国から評価され得る日本らしさや日本人らしさが急激に喪失されつつある」という現実から目を逸らす訳にはいきません。
 明治時代や太平洋戦争直後ならいざ知らず、このような時代には、何事によらず海外事例を有り難がり十分な検討もしないまま日本に持ち込むような「欧米コンプレックスに根差したまちづくり」に対しては、厳しい目を向ける必要があります。
 さもなければ、全国各地に「国籍不明の無気味なまち」を乱立させ、住民から尊い地域愛を奪い、言い知れぬ不安感やストレスを増大させていくことになりかねません。
 市民憲章は、日本人が日本人らしいまちづくりを進めようとする時に「何が最も大切なことなのか」そして「どのような進め方が好ましいのか」を考えさせてくれます。
 第二は「法律で世の中が良くなるのか」という問題です。
 世の中が厳しくなると悪いことをする人間が増え、否応なしに法律によって問題を解決せざるを得ないことが多くなってきます。
 しかしながら、ここで十分注意しなければならないことは、本来「法律というものは、性悪説に基づいて悪いことをする人間の存在を前提とし、そのような人間によって世の中が悪くならないようにするため、強制力と罰則を付加して定められているものである」ということです。
 従って、いくら数多くの法律を定め、全ての人間がその法律を守ったとしても、世の中はせいぜい「より悪くはならない」だけで決して良くはなりません。
 寧ろ、不必要に法律が増えると、世の中は暗く息苦しいものになるばかりでなく、無気力で何もしようとしない人間が増えることになります。
 すなわち、世の中を良くするためには、一人でも多くの人間が「自主的かつ積極的な意志に基づいて世の中を良くしようとする」ことが大切です。
 市民憲章は、法律の意義や限界を認識させてくれると同時に、我々が「どのような考え方で何をすべきか」を考えさせてくれます。

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●Q−08 まちづくりにおいて市民憲章の果たす役割は何ですか?
○A−08
 日本の市民憲章は、「本文」が「簡潔である」・「肯定的に述べられている」・「和語が多用されている」という3つの大きな特徴を持っています。
 このようなことから、市民憲章を日々思い浮かべたり声に出して唱えたりすることによって、年齢・性別・職業・立場・等に関係なく、市民の誰もが「その時々に自分ができる良いこと」を気持ちよく自覚することができます。
 特に、まちづくりの努力というものが地域において半永久的に続くものであることを考えた場合、「一人一人の市民が自分にできる良いことを具体的に自覚する源がある」ことと「良いことをして褒められることはあっても、良いことをしなかったといって責められることはない」ことは、極めて大きな現実的意味を持つと思われます。

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●Q−09 「市民憲章」と「法律」はどこが違いますか?
○A−09
 「市民憲章」は「世の中を良くする」ためにあり、「法律」は「世の中を悪くしない」ためにあると思われます。
 従って、市民憲章の意義を理解しそれを行動規範に取り入れる市民が増えれば、たとえ緩やかな歩みであっても世の中はどんどん良くなっていきますが、いくら法律を増やしたり罰則を強化したりしても、「本当は世の中にいない方がよい悪人」に大きな影響を及ぼすだけで、寧ろ「世の中を支えているまともな善人」のやる気や生き甲斐を減退させてしまうことになりかねません。
 また、市民憲章は性善説を前提としたものですから、人間相互の信頼感を増大させ、世の中を明るく伸びやかなものにしますが、法律は性悪説を前提としたものですから、人間相互の不信感を深刻化させ、世の中を暗く息苦しいものにします。

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●Q−10 「市民憲章」と「総合計画」はどこが違いますか?
○A−10
 「市民憲章」は「市民生活の最高規範」であり、「総合計画」は「行政の最上位の規定」であると思われます。
 すなわち、市民憲章は「市民の生活や環境に関わる理想や願望を重点的に示したもの」であり、本来「法律的な扱いをされたり、事業化されたりすべきものではない」のに対し、総合計画は「都市の行政に関わる全ての計画に現実的な規定力を持つべきもの」であり、原則として「法律的あるいは制度的な裏付けを持ち、公的予算によって事業化されるべきものである」ということになります。
 従って、例えば、有効期間・適用対象・法的根拠・事業評価・利害調整・強制執行などといった概念は、総合計画については重要な意味を持つのに対して、市民憲章については全く意味を持ちません。
 また、敢えて言うならば、市民憲章は「好ましいことを実現する」という理想主義的な側面を強く持つものであるのに対して、総合計画は「好ましくないことを解決する」という現実主義的な側面を強く持つものであるように思われます。

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●Q−11 「市民憲章」と「自治条例」はどこが違いますか?
○A−11
 「市民憲章」は「法律ではないもの」であり、「自治条例」は「法律と見なされるべきもの」であると思われます。
 すなわち、市民憲章は、「起き得る良いこと」を想定して定められるものであるため、市民の自主的な意欲や立派な活動の顕彰を予定しているのに対し、自治条例は、「起き得る悪いこと」を想定して定められるものであるため、背信行為やトラブルに対処すべき強制力や罰則を制度的に担保しようとすることになります。
 従って、必然的に、市民憲章は簡潔で親しみ易いものになりますが、自治条例は内容が論理的で厳格なものであっても一般市民には親しみ難いものになりがちです。
 現在、各地で「自治条例」・「自治基本条例」・「都市条例」・「まちづくり条例」といったものが検討され、いくつかの都市においては既に制定されていますが、少なくとも、市民憲章との意義や役割の違いは明確に理解されるべきであると思われます。

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●Q−12 「市民憲章」と「都市宣言」はどこが違いますか?
○A−12
 「市民憲章」は「市民の規範意識が自らに向けて総合的に示されるもの」であり、「都市宣言」は「ある時期の社会的テーマに対する市および市民の態度が市の内外に表明されるもの」であると思われます。
 都市宣言は、例えば、昭和30年代前半には「公明選挙都市宣言」や「世界連邦平和都市宣言」が、昭和30年代後半には「交通安全都市宣言」が、昭和60年前後には「核兵器廃絶平和都市宣言」が、平成2年前後には「ゆとり都市宣言」が、平成6年前後には「人権擁護都市宣言」が、平成10年以降は「男女共同参画都市宣言」などが、それぞれ数多くの都市において制定されています。
 これらの例を見ても、都市宣言の制定事情がその時々の社会的問題に大きな影響を受けていることがよく分かりますが、市民憲章にはこれ程はっきりした影響は認められません。
 また、市民憲章については、都市によって程度の差こそあれ、大半の都市において制定後もその推進活動が長く継続されていますが、都市宣言については、それに伴う実践活動が継続されている事例は極めて少ないのが現実です。

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●Q−13 「市民憲章」と「市の歌」はどこが違いますか?
○A−13
 「市民憲章」は「まちづくりにおける諸々の善行を喚起するもの」であり、「市の歌」は「自らが関わりを持つまちに対する愛情を涵養するもの」であると思われます。
 過去の事例を見る限り、市の歌の歌詞は市民憲章の「前文」の内容が情緒的に表現されたものであるように感じられます。
 なお、僅かながら、市民憲章とは別個に「市民憲章の歌」が定められている例や、市民憲章自体にメロディーが付けられている例もありますが、何れも「市の歌」や「市民の歌」程には市民に認知されていないようです。

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●Q−14 「市民憲章」と「まちづくり標語」はどこが違いますか?
○A−14
 「市民憲章」は「可能な限り広い目配りや気配りが長く求め続けられるもの」であり、「まちづくり標語」は「まちづくりに対するその時々の市民の気持ちや気分が印象的に表現されるもの」であると思われます。
 例えば、「守ろうよ 私の好きな街だから」というまちづくり標語は、かつて日本全国を席巻した「火の用心、マッチ一本火事の元」という防災標語には及ばないまでも、各地で用いられており、まちづくり標語の傑作と言っても過言ではありません。
 この例のように、まちづくり標語においては「印象の強さ」が重要なポイントになりますが、市民憲章においては「印象の深さ」が重要なポイントになるように思われます。

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●Q−15 市民憲章はどの都市のものも似たようなものではありませんか?
○A−15
 全国の市民憲章を見ると、確かに形式や文言はよく似ていますし、実際、ある地方都市の議会でその都市の市民憲章が近隣にある都市の市民憲章に酷似していることが問題になったこともありますが、だからと言って市民憲章自体を否定的に見ることは、少なくとも次の3つの点で明らかな誤りです。
 第一は、約9割の市民憲章に「前文」がありますが、そこにはその都市の地理・気候・風土・歴史・特徴・誇るべき点・制定の事情・等が示されており、その部分が酷似することはあり得ませんし、また、「前文」が無いものについては、形式自体に特徴のあるものが多いので、市民憲章全体が酷似していると断言できるような例は無いということです。
 第二は、たとえ同じ言葉が用いられているとしても、それぞれの都市の市民がその言葉から思い浮かべるイメージには大きな違いのある場合が多いということです。
 例えば、北海道の「(稚内市)市民憲章」の第一条に「自然を愛し うつくしい緑のまちをつくりましょう」とあり、大分県の「大分市民の誓い」の第一条に「自然を愛し、緑豊かなまちをつくります」とありますが、これらの条文に共通した「自然」・「緑」といった重要なキーワードが、それぞれの市民にとって同様の意味内容を持つとは到底考えられません。
 第三は、市民憲章の文言が似通ったものであったとしても、制定までの過程が異なったものである限り、それらの市民憲章がそれぞれの都市において持つ意味や果たし得る役割には大きな差があるということです。
 万が一、他市の市民憲章を安易に模倣したり借用したりするような都市があるとすれば、そのような都市のまちづくりは何をしてもうまくいかないと思われます。

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●Q−16 市民憲章は抽象的で現実性に乏しいのではありませんか?
○A−16
 大多数の市民憲章の「本文」の文言は、字数が少なく、固有名辞も含まれず、抽象的な表現のなされることが多いため、しばしば「現実性に乏しい」という批判を受けますが、これは、市民憲章の意義や役割を考えれば、大きな誤りであることが分かります。
 すなわち、市民憲章は「一人一人の市民が、様々な局面において自分にできる良いことを見付け、それを自主的に気持良く実行しようとする」ことを誓い合って定められるものであるため、法律文書や行政文書のように誰もが常に同一の理解をすることを予定した「厳格で具体的な表現」であっては、全く意味が無いことになるということです。
 市民憲章は抽象的であるからこそ、多くの市民の「豊かで伸びやかな想像」と「自由で気持の良い行動意欲」をいつまでも可能ならしめているのです。

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●Q−17 市民憲章の推進活動とはどのようなものですか?
○A−17
 市民憲章が制定されるということは、市民が自分のまちをよくするための誓いを立てるということに他なりませんが、それだけで終わってしまったのでは意味がありません。  そこで、市民憲章が制定された後引き続いて、その内容を具現化すべく推進活動の始められるのが通例です。
 このような推進活動は、例えば「美化運動」・「緑化運動」・「健康運動」・「イベント」・「コンクール」等を中心として進められることが多いのですが、必ずしも数多くの市民の支持を得て活発に続けられてきた訳ではありません。
 岩手県水沢市(現・奥州市)の推進活動は40年の立派な活動実績がありましたが、特筆すべきことは、25年の歳月を経た時点で厳しい反省がなされ、推進活動の方針が「三啓発・七実践・五活動」という明快なスローガンに集約されたことです。
 因みに、「三啓発」とは、「知る」(市民憲章があることを知る)・「理解する」(市民憲章の内容を理解する)・「実践する」(市民憲章を実践する)という啓発の目的を示すものであり、「七実践」とは、「市民」(個人)・「家庭」・「町内」・「地区」・「職場」・「団体」・「行政」の7つの場がそれぞれに相応しい実践の目標や内容を持つというものであり、「五活動」とは活動の主たる領域を「普及」・「提言」・「先導」・「顕彰」・「助成」の5つに分けて検討するというものです。
 これは、疑いなく全国の市民憲章の推進活動における最も優れた成果の一つであると思われますが、惜しむらくは「市民憲章自体の意義と役割を啓蒙する」ことが強調されていなかったため、その後の活動に限界があったのではないかと思います。
 また、現在は広報やコミュニケーションの手段が驚異的な進歩を遂げていますから、若い人達を交えた「新しい推進活動のあり方」も検討されるべきであろうと思われます。

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●Q−18 市民憲章はまちづくりとどのような関係がありますか?
○A−18
 市民憲章は、市民が自分のまちを良くするために、「自分にできる良いこと」を具体的に自覚し、それをできる範囲で気持ちよく実行しようとする姿勢を育むという大きな役割を持ち、市民憲章の推進活動はそのような役割を具現化するために続けられると言っても過言ではありません。
 そのような姿勢は、各地の都市においてしばしば見受けられた「まちづくりに関わる努力の大半を行政に押しつけ、自らは行政サービスを享受するだけで何もしない」という市民の姿勢とは正反対のものですが、どこの都市においても財政状況が逼迫し、エスカレートするばかりのサービス要求には応じられなくなっている現状を考えますと、市民に「自助・自立の気構え」を気分良く喚起させる市民憲章がまちづくりにおいて果たすべき役割は益々大きくなっていると思われます。

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●Q−19 市民憲章はNPOとどのような関係がありますか?
○A−19
 近年、各地でまちづくりに関係のあるNPO法人(特定非営利活動法人)が増え、地域活動や福祉活動も含んだ様々なまちづくり活動にボランティアで携わる市民が多くなってきました。
 それらの多くは、意義のある社会貢献をしたいという有志の熱意からスタートし、運営資金の捻出に苦労しつつも、多くの市民の善意に支えられ、辛抱強く地味な活動を続けているというのが実情ですが、従来、個々のNPO法人の具体的な活動目的や活動対象が異なるため、それぞれが非常に近い志や思いを持つメンバーでありながら、組織間の連絡や連携は決して多くありませんでした。
 しかしながら、市民憲章の推進活動とまちづくりに関係のあるNPO法人の実践活動とは本質的に同じ出発点を持つものであり、活動の方針や方法もよく似ていますから、今後は「緩やかなグループ」として連携していくことが望ましいと思われます。

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●Q−20 市民憲章はよく改定されるのですか?
○A−20
 日本の市民憲章の「定型の祖」とも言うべき「京都市市民憲章」が昭和31年5月3日に制定されから今年で50年になり、この間に約600の市民憲章が制定されてきましたが、これまでのところ、市町村合併等により新たな市民憲章を制定する必要が生じた場合以外に、市民憲章の内容が大幅に改訂されたり全く新しい市民憲章が制定されたりした事例はありません。
 寧ろ、市町村合併によって誕生した新市においても、中心的な旧市の市民憲章に若干の変更を加えただけでほぼそのまま継承している例がいくつも見受けられます。
 しかし、まちづくりにおける市民憲章の意義や役割を考えますと、やはり新市においては新しい市民憲章が制定されるべきであろうと思われます。
 一方、制定後相当な年月を経て市民憲章の内容が市民感覚や社会状況に合致しなくなったという声もしばしば耳にしますが、制定時に大変な御苦労をされた先人の思いを尊重する意味においても、できる限り「その時々に実践項目を手直しする」ことによって対応し、軽々しく市民憲章を改定することは避けた方がよいように思われます。

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●Q−21 市民憲章の良し悪しはどこで判断するのですか?
○A−21
 いろいろな考え方があるとは思いますが、市民憲章の意義と役割に鑑みて全国の事例を振り返ってみますと、市民憲章の良し悪しは「制定の過程」・「憲章文の内容」・「制定後の推進活動」の3点に基づいて総合的に判断されるべきであると思われます。
 それぞれについての具体的なチェックポイントとしては、例えば次のようなことが挙げられるかと思われます。
 第一の「制定の過程」については、「市長の強い意思で策定作業が始まっているかどうか」・「公募市民の獲得に熱意があるかどうか」・「市民憲章の専門家を招聘しているかどうか」・「現職の市議会議員が全会派から策定に関わっているかどうか」・「策定のための会議に十分な時間をかけているかどうか」・「策定過程に関わる情報を市役所内外に公開しているかどうか」・「アンケートやパブリックコメント等の手順や手続きを踏んでいるかどうか」など。
 第二の「憲章文の内容」については、「市民憲章自体の意義や役割がよく理解されているかどうか」・「基本構想や都市宣言との違いが明確に認識されているかどうか」・「前文を置く意味が了解されているかどうか」・「本文は目で読むものではなく声に出して唱えるものであるということがはっきり意識されているかどうか」・「簡潔で親しみやすく行動に結び付くイメージが喚起されるものであるかどうか」・「地域の特徴や個性が盛り込まれているかどうか」など。
 第三の「制定後の推進活動」については、「市長に推進活動の重要性が認識されているかどうか」・「策定作業の段階から推進活動が意識されているかどうか」・「策定に関わった人に継続的な推進意欲があるかどうか」・「推進活動に具体性があるかどうか」・「推進活動を支援する組織や団体があるかどうか」・「明るく楽しく進められるものであるかどうか」など。

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