
麻疹(はしか)アウトブレイク (2007.5.24)
麻疹(はしか)の流行が止まらない。
ここ数年は1年を通してほとんど診ることのなくなっていた麻疹の患者が毎週何人も外来を受診する。都内の大学、高校では学校閉鎖が相次いでいる。麻疹流行のニュースに過剰に反応し、発熱が続いただけで「はしかではないか」とパニックに陥る人もいる。
以前から日本における麻疹ワクチンの接種率は欧米に比べて低く、日本は麻疹後進国と言われていた。しかしながら、最近の若者の摂種率は95%前後に達しているというにもかかわらず、今また麻疹感染が再興してきているのは、麻疹ワクチンが1回摂種すれば必ずしも抗体が一生持続する完全な終生免疫ではないことと、近年まで麻疹の流行が激減していたために若者がふだんの生活の中で麻疹ウイルスに曝露される機会がなくなり、抗体を新たに獲得する機会がなくなったためだという。何とも皮肉な話である。
皮肉な話と言えば、小児科では近年若い医師たちは麻疹の患者を診察する機会がなく、麻疹の特徴的な所見である癒合した発疹や口の中にできるコプリック斑は医学書のカラー写真でしか見るチャンスがなかったのだが、最近の流行のために彼らも外来で実際の麻疹症状を目の当たりにする機会を得ることになっている。
それにしてもこの流行はいつになれば収束するのだろう?
小児を中心とした流行ならば患児の登園、登校を禁止し、自宅療養で隔離することによって他の人への伝播を防げるが、一人暮らしの多い大学生が罹った場合にはそうもいかない。食料を求めてコンビニや飲食店に行くこともあるだろうし、制止する者が身近に居なければ気晴らしに外出することもあるだろう。麻疹は空気感染によって伝播するので、感染した者が人混みに入っていった時の感染力ははかりしれない。
ところで、アメリカでは子どもを学校へ入学させたり、何らかの団体活動に参加させるためには予防接種を義務づけられることがあり、万が一、自分の子どもが集団感染の発端となった場合には他の親から訴えられる可能性すらあるという。
残念ながら我々日本人は欧米に比べて、自分や自分の家族が感染症に罹ったら大変だと思う反面、他の人にうつしてはいけないというコミュニティの一員としての意識が稀薄であり、これも流行に歯止めがかからない一因ではないだろうか?
