小 樽 弁 事 典

か行
*見出しの下線部はアクセントの位置です

意味 【動詞】疲れ果てて死にそうになる。
説明 「疲れる」の最上級形。
滝のように流れる汗、ゼイゼイという息遣い、おぼつかない足取り、ゆでだこのごとき顔色を伴う。
語源 「臥」と「折る」の連結語らしい。
「臥」とは横たわることであるから、体を折るように横たわってしまうほどに体力を消耗することを表現している。
用例 ●(校庭20周走らされたあとで倒れこみながらひとこと)
 「が・・・、がおった!」
●(テンポ240で『Highway Star』やったあとでドラムセットに突っ伏しながら)
 「が・・・、がおった!」

意味 【形容詞】物の状態が悪いことを指す。
説明 道具などが満足に使えない状態にあること。デザインなどの感覚が古くて今風でないこと。思わず隠してしまいたくなるほどに見栄えがしないこと。「がっさい」とも言う。
語源 標準語の「ださい」と重なる部分もあるが、ファッションセンスよりも、道具や物体の、どうしようもなく出来の悪い様を言う。
用例 ●「お前の自転車がっさいなー」
●「隣のテレビがっさいけど、うちにテレビないからしかたない。見せてもらいに行くか」
●「今日の小屋(ライブハウス)のピアノ、がっさかった!ろくに調律してないようだな」

かしがる 意味 【動詞】傾く。
説明 家屋などの物体の状態などに使うのであって、「陽が傾く」「運気が傾く」という場合には使われない。
語源 「(首を)かしげる」あたりが語源かと思われる。
「かしげる」は意図的に傾けることであるのに対し、「かしがる」は「自然発生的にそうなった」という意味あいが強く、別項「〜さる」の用法に似ている。
用例 ●「この家は鉄骨だから、大きな地震が来てもかしがったりしないね、きっと」
●「ステージの床が歪んでるので、シンバルスタンドがかしがってますね」

意味 【動詞】仲間に入れる。加える。
説明 子供の遊びに仲間が加わる時によく使われた。「かでる」と言う地方もあり、こちらが本流のようだ(札幌の自治体ホール『かでる21』の語源はこれ)。
語源 「数える」が語源か。或いは「加」+「混ぜる」とも考えられる。どちらかといえば後者が優勢。
用例 ●「ねぇー、僕も鬼ごっこにかぜてー!」
●「俺もアンサンブルにかぜてもらっていい?」
 「おまえ譜面読めないからダメ!」

かつ 意味 【動詞】責任をなすりつける。
説明 責任転嫁は卑怯なふるまいだが、この表現は主に子供の世界でのことなので、たわいもない問題で使われることが多い。
語源 推測不能。「か」+「つける」と思われるが、「か」が何のことなのか見当がつかない。「転嫁」の「か」か?
用例 ●「ミヨちゃんは何でもすぐ人にかつけるから、もう一緒に遊ぶのやーめた」
●「なんで決まったテンポでやってくれないの?」
 「あなたの歌い出しのフレーズではテンポがとれませんよ。人にかつけるのはやめましょう」

がっちゃき 意味 【名詞】痔。
説明 人前でこう指摘された人は一様に恥ずかしい思いをすることになるため、転じて「恥ずかしいこと一般」を指す。
また、(痔を患ってもいない)相手を罵倒する際の殺し文句としても使われる。
語源 推測不能だが、なんとなく語感に血の匂いがする。
用例 ●「このがっちゃきが!何言ってんだ!」
●「トランペット吹きががっちゃきになりやすい、というのは迷信らしい」

かっちゃ 意味 【動詞】強く引っ掻く。
説明 爪を立てて“かっちゃいた”あとには流血の惨事が待っているが、これは多くの場合、相手の血であり、黒板を爪で引っ掻くといった生易しい事態にはあまり使われない。要するに戦闘用語。
語源 「掻く」の語尾変化と見られるが、「かっ飛ばす」「こっ恥ずかしい」などと同様、「かっ」+「ちゃく」という解釈も可能。では「ちゃく」とは何か?と言われても答えられっこない。「掻いて血が出る状態」という説もある(わけがない)。
用例 ●「えーーん!動物園で猿にかっちゃかれたよー!」
●「昨日カミさんにかっちゃかれた痕だよ」
●「あのピアニスト!いい線かっちゃいてるよ!」
 (この場合は、ところかまわず引っ掻きたくなるほどグレートだ、という最上級の誉め言葉)

かっぱが 意味 【動詞】ひっくり返す。
説明 剥がして裏返しにすること。物の天地を逆にすること。
語源 「かっ」+「剥がす」。畳の隙間に手を差し入れて、力任せに思い切り引き上げ、畳を裏返しにする様を思い描くとサイコー。
用例 ●「子供が茶碗をかっぱがしちゃって、卓袱台から畳までご飯が飛び散っちゃってさ」
●「あまり演奏がひどかったので、お客がテーブルかっぱがして、大変な騒ぎだったよ」

意味 【動詞】かき混ぜる。
説明 「かまかす」とも言う。
語源 主に液状のものをかき混ぜる動作。
標準語で言うところの「(はったりを)かます」も、「周囲を混乱させる、煙にまく」というニュアンスがあるので、ここらへんから由来していると考えられる。
用例 ●「鍋にお肉や野菜を入れて、中火でゆっくりかましながら・・・」
●「手が空いてんだったら、風呂かまかしといてよ!(湯船のふたにしている板を使って、お湯の温度を均一化させておけ、という意味)」
●「よーし、なまぬるいセッションだから、俺がここで一発かましてくるか!」
 (これはどこでも普通に使うが、本人はいい気持でも周囲が混乱することが多い)

ます 意味 【名詞】魚の一種のことではなく、「大きなずたぶくろ」のこと。
説明 主に石炭や芋などを積めて運ぶ袋。竹で編んだ大きな背負い籠の中にこの袋を入れたものを言うこともある。
語源 昔は、浮浪者がこの中に生活用品一式を入れ、それをかついで町をうろうろしていた。
すなわち「かます」とは、現在のホームレスの手提げ袋のことだが、子供にとってはその中に何が入っているのか不気味であったので、用例のように、親が言うことを聞かない子供に向かって放つ「殺し文句」に使われていた。
用例 ●「言うこと聞かない子は、かますのおじさん呼んで、連れてってもらうよ!」
 「ぎょぇ〜〜〜ん!やだー!!」
 (「かます」の中には、言うことを聞かない子供がたくさん干物と化して入っていたのである。)

きかない 意味 【形容詞】勝気なこと。気が強く強情なこと。
説明 自我が強く、人に反抗的な気性。主に女性に対する形容詞で、「きかない」女性はいいお嫁さんになれない、という揶揄の意味がこめられている。
語源 「(気が)利かない」のではなく、「(ヒトの言うことを)聞かない」が語源。「女は男に従うを第一義とする」とされた古き良き時代のなごり。
用例 ●「お母さん、私我慢できないからあそこの家に怒鳴り込んでくる!」
 「まったくこの子は。・・・そんなきかない子に育てた憶えはないけどねぇ・・・」
●「サックスソロの後の女のピアニスト、すごいアグレッシヴなソロやってたね」
 「きっと負けたくなかったんでしょう。きかない性格が現れてたよ」

きくらせん 意味 【名詞】ぎっくり腰。
説明 若い世代ほど「ぎっくり腰」を使うが、現在90歳以上の年代では「きくらせんき」が一般的。
語源 「きくら」は「ぎっくり」「ぎっくら」の擬音語から変化したもの。
「せんき」は漢字で書くと「疝気」であり、落語「疝気の虫」にも登場する漢方医学での病気名で、下腹部の激痛を伴うもの。同じような部位の激痛を伴うのでこう呼んだのであろう。
用例 ●「あばあちゃん、いつもお達者でいいですね」
 「はいはい、おかげさんで。でも時々きくらせんきで大変ですけどねぇ」

やける 意味 【動詞】もどかしくてイライラする。
説明 主に、他人事ながらも心配でたまらないが、それが嵩じてつい手を差し伸べたくなるような様子。
語源 漢字では「肝焼ける」だと思われる。
すなわち焼けている肝は外から水をかけるわけにいかないというわけ。どうにも出来ない程もどかしい思いが伝わってくる。
用例 ●「あいつの手つきを見てると危なかしくて、ホントにきもやけるわ」
●「ギターのカッティングが一定しないので、周りの人間はきもやける」

げっ 意味 【名詞】最下位。
説明 又は最下位の人。ビリ。ドンケツ。「げれっぱ」とも言う。
語源 「下っ端(げっぱと読む)」が語源。
用例 ●(運動会で)「はい、一等の人から順番に並んで座ってね!げっぱの人は一番端っこだよ」
●「はい、次の曲のソロオーダーは、あなたがげっぱね」

意味 【形容詞】疲れた。くたびれた。
説明 「怖い」という意味では断じてない。別項「がおる」ほどではない時に使われる。坂道を登りきった時に必ずといっていいほど無意識に口にする言葉であり、坂の町小樽の面目躍如たるものがある。従って体言に連なることもほとんどなく、独立して出現する。
語源 語源推測不明。
「こわい」には「強い」という漢字も当てはまるので、こちらのニュアンスが大きいかもしれない。
また鈴木健次氏の日本語に関するサイト『「バベル」への周遊』によれば、日本語の「こ(KO)」には「存在の発生」という概念、「わ(WA)」には「大量の危険」という概念があるそうで、それらを合わせると、日本語(標準語)としての「こわい」は、「大量の危険の存在」という概念になるという。
小樽弁としての「疲れた」という意味にしても、「体の赤信号」であるからあながち無関係とも言えない。
用例 ●(坂道を登りつめてひとこと)
 「あー、こわかった!」
●(10曲ぶっ続けに吹きまくったファーストトランペット奏者がひとこと)
 「あー、こわい!ちょっと休ませてくれ」

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