ジャズピアノのコピーと教則本について 投稿者:長谷川 こんにちは。以前こちらでお世話になった長谷川と申します。その節はどうもありがとうございました。またいくつか疑問があるのでよろしくお願いします。 ・あの時は、ザジャズセオリーをほぼマスターしたといいましたが、本当はぜんぜんスケールのことなどを分かっていませんでした。分かってないということも分かってなかったのです。そこで先輩にこれが分かりやすいよとのことで、同著者のザジャズピアノブックをお借りしたのですが、それでも分かりません。何かお勧めの本を教えていただけないでしょうか? ・ミミコピをするときは、いろんな人のミミコピをするより、一人か二人にした方がよかったりするのでしょうか?ある一人の音楽をたくさん聴いたほうが、その人がやっていること(演奏スタイル?くせ?)が分かって、身につくような気がするのです。でも、いろんな人のスタイルを学んだ方がいいような気もします。 ・それと、いろんな人のスタイルを研究して著者のオリジナルの曲を演奏している教則本(ATNの、ジャズ・コンセプション、ジャズピアノソロコンセプトを持っています)を やるのってどうなのでしょうか?こちらの方がミミコピするのも楽だし、偉人たちのエッセンスの様なものが詰まっているからいいと思う一方で、やはり本物を聞いた方がいいだろうという気持ちもあるのです。 ・コピーをしたら、それを研究するのがいいとの情報があるのですが、研究って、何を考えればいいのでしょうか?コピーするだけではだめなのでしょうか? 長々とすみません。アドバイスよろしくお願いします! 追加でお願いします。とにかく、これを覚えろ、練習しろということだけが書かれている本ってないでしょうか?前述の本だと、読んでるうちに前のことを忘れてしまったり、また理解できないことが多いのです。 |
長谷川さん、お久しぶりです。 ご質問にひとつずつお答えしようと思うのですが、あいにく私はピアニストではないので、(ジャズ全般の理論書やソングブックは別として)ピアニストのために書かれた本にはあまり目を通したことがなく、残念ながらお勧めの書は分かりません。 これに関しては、私のサイトからリンクしている下記に詳しい情報がありますので、ご参考になさってください。 「ジャズピアノ弾こうよ」 次にミミコピするピアニストを絞るかどうか、についてですが、もしも自分の大好きなピアニストがいる場合は、その人に絞って徹底的にコピーするのもいいと思います。 しかしこれは、あくまでも“大好きな”ピアニストがいる場合です。 「このピアノ好きだなぁ」と漠然と思う程度であれば、そのピアニストも含めていろいろなピアニストをコピーする方が、継続性があると思うのです。 フレーズをコピーするためにだけ1人のピアニストを選ぶのでは、そのコピー作業自体が「意識的な勉強」になってしまい、心の底からのめりこむことが出来ないと考えるからです。 長谷川さんの忍耐力を軽視するような文章になってしまって申し訳ありませんが、少なくとも私の場合はそうだということでご勘弁くださいね。 ですから、いろいろなスタイルのピアノ教則本をやるのもいい方法だと思います。 こうした本は読者を飽きさせないような工夫がなされていることが多いからです。 では、コピーしたあとで何を研究すればいいのでしょうか?箇条書きに挙げてみましょう。 1.コード進行に沿って使用する(使用出来る)スケールの研究 理論書には「コードとスケールの関係」が細かく解説されていると思いますが、実際にコピーされたフレーズでそれを確認しながら、スケールの変遷について学びます。 2.コード進行に沿ったフレーズの流れの研究 コードに適合したスケールを使っていて理論的には正しい演奏でも、不自然なフレーズになることは往々にしてあります。理論偏重の方が陥りやすい罠だと思っていますが、フレーズをどう紡げば自然なフレーズが出来上がるのかを、実際にコピーしたもので検証します。 3.バックのリズム(グルーヴ)に乗ったソロやコンピングフレーズの研究 バックのドラムが4ビートを刻んでいても、ピアノのフレーズがハネているとは限りません。むしろバップ以降はハネない(=イーブン)方が多くなっているのではないかと思いますし、全体のグルーヴ感とはこうした「個々の楽器のグルーヴのズレから生まれるもの」とも私は考えています。こうしたリズムの乗り方を実際に確認します。 4.フレーズとフレーズの間の空白部分の研究 フレーズの検証も大事ですが、空白、つまり音のない部分の検証も出来ます。空白の大切さ(=全体のソロにおける緊張感やセンス)を知ることも研究のひとつです。 最後に追加のご質問です。 読んでいるうちに前のことを忘れるのは、長谷川さんに限ったことではなく、大多数の人がそうではないでしょうか? これは「忘れる」のではなく、新しい知識がひとまず脳の中のどこかに格納されたということだと思ってみたらいかがでしょうか? つまり、いろいろな本を読んでいくうちに、これらの「忘れた」知識群は、脳の中で徐々につながっていくのだと。 そう思えば気が楽になって、どんどん本も読む気になりませんか(笑)? 「これを覚えろ」「これを練習しろ」ということがシンプルに書かれている本はないと思いますし、あったとしてもウサン臭さを感じますね。 近道はありませんから、がんばっていきましょう! |
こんなにすぐに、詳しいアドバイス本当にありがとうございます!よっちらさん、ほんまいい人です・・・。 「ジャズピアノ弾こうよ」行ってみました。たくさん本が紹介してあり、中には前から木になっていたものもあり、とっても参考になりました。 ミミコピは、とりあえず教則本を中心に、余裕があったら本物をこぴることにします。 コピーした後の研究についてなのですが、「Gm7だ!じゃあここはキーFのGドリアンだな!」と考えても、実際のフレーズはドリアンには含まれない音が含まれていたり、まったく違うものだったりします。スケールの判別基準は、どうすればいいのでしょうか? 最後の質問のアドバイスのおかげで、ちょっとやる気が出てきました。今は、ザジャズピアノブックを最初からやりなおしているいるところです。「いろいろな本を読んでいくうちに、これらの「忘れた」知識群は、脳の中で徐々につながっていく」というのに、勇気付けられました。ありがとうございます! |
回答が遅くなって申し訳ありません。 ひとつひとつの音を分析していくとスケールが判別出来ないのは、多分スケールアウトしているからだと思いますが、スケールアウトについてのルールはかなり複雑なものがあり、例えばドリアンモードのアドリブフレーズに含まれていい音といけない音の違いなども(私には)難しすぎてついていけません。 でも、そうした理論に完全に沿ったフレーズがいいかというと、必ずしもそうではないと思っています。 理論との整合性がはじめにありきではなくて、(うまく説明できませんが)モードのアドリブフレーズは、「ルート音(DドリアンならD)に帰結するような流れのもの」という解釈で作っていく方が、自分の気持に沿ったフレーズが生まれるのではないでしょうか? 「自分が正しいと思った音は使える」というのは極論かもしれませんが、モードにせよコードにせよ、音楽は「既成概念からの解放」が基本です。 (西洋のクラシック)理論的に間違った音やコード進行でも、それが新しいものとして認められるようになった例は枚挙にいとまがありません。 長谷川さんにはあまり理論にしばられないことをお勧めします。 長谷川さんの質問に深く関係する話を見つけましたよ。 今浜松で一緒にやることが多くなっている竹内さんというプロベーシスト(奥さんのピアニストのサイトですが、日記は旦那さんが書いてます)の日記をお読みください。 こちらの中の10/15と10/18の項です。私と同じような考え方のようでホッとしました(笑)。 |