2.2 頼まれると断れない

日頃から「頼りにされる」存在である
無理なとき、緊急なときに仕事を「頼まれる」
「周囲からの信頼」に応えて働く
「断る」ことは自分と周囲との関係を損なう
逆に自分の方から周囲の他人に頼むことはない
一方的な信頼関係

Case 2-2-1
 なぜ「頼まれると断れない」のだろうか。
 そもそも仕事を頼まれるとはどういうことなのだろうか。
 まわりはその人が断れないことを前提として、頼むのではないか。
 そういう日々の行動の積み重ねによってますます、周囲はその人に依存するのではないのか。
 つまりあの人に頼むと断られないという経験が積み重なって、周囲はその人に仕事を安易に依頼するようになる。
 だが、過労死者にとって「頼まれた仕事を断る」とは、どういうことなのか。
 あるいは、「ほかの人に仕事を任せる」ことができないのはなぜか。
 頼む−断る−任せる、ということがある人間関係のもとで行われる。
 それはどういう人間関係なのか。
 一方的な信頼関係のもとで、特定の人に仕事が集中する。
 「頼まれるが頼まない」という関係。
 自分が信頼されているのであれば、周囲の他人を信頼してもいいではないか。
 信頼が信頼と交換されるのではなく、周囲の信頼に応えて必死に働く姿がそこにある。

Case 2-2-2
 なぜ、「俺ががんばらなければ」と、自発的に仕事に取り組むのか。
 本当に「俺」しかがんばる人はいないのか。
 「頼まれると嫌といえない」人が「頼りにされる」
 逆に、頼りにされるがゆえに、嫌といえない関係が出来上がる
 真面目で仕事に意欲をもやし、上司の評価も高いがゆえに周囲から信頼される
 (「頼り」=「信頼」と考えてよいのか)

 人員不足の現場、機械化を嫌う年配職員の「気持ちを察して」自発的に仕事に取り組む
 「気持ちを察する」とは、周囲の期待を慮って「頼み」を先取りすることである
 「俺ががんばらなければ」どうなる(と思っている)のだろうか
 年配職員をはじめとする職場の人たちが困るだろう
 だがなぜ、ほかの人たちが困るのを見過ごせないのか
 周囲が困るのを放っておけない自分がいる
 人員不足の現場では誰かが頑張らざるをえない
 それを自発的に引受ける自分が現場の負担を背負い込む

Case 2-2-3
 患者に慕われる、患者への配慮、ほかの医師とのちがい、「呼べばすぐ来てくれる」、一日も休まない
 配慮するから慕われる、慕われるから配慮する、医師−患者関係
 患者への配慮・・・ポケットマネーでのお見舞い、手術後の見回り
 ほかの医師の分まで働く
 何につき動かされてそこまで働くのか、「配慮」のもつ力(献身、尽くす)
 仕事と配慮とはどう関係するのか
 配慮と献身によって働きすぎると理解してよいのか
 過剰なまでの配慮と、一方的な献身(見返りを求めない)

Case 2-2-4
 自分の休みの時でも、緊急の出勤依頼を断り切れない
 人手不足、新人が定着しないなかで、(他)人のことを考える(配慮)
 「人のことを考える」がゆえに「会社を辞めるとは言えない」のだろうか
 急な出勤を頼まれても、ほかに人がいないという人手不足を考えると、断り切れない。
 だがなぜ他でもない自分が、仕事を引き受けるのか。「自分の休み」ではないのか
 「自分」と「(他)人」との関係
 自分の周囲の人たちは、よそよそしい「他人」ではなく「自分」につながる「人」そのものである
 「会社との自己同一化(井上達夫)」というよりも、「自他不可分(大平義隆)」の「他人指向性(リースマン)」
 「人のこと」を代表させる表現が「会社」であるが、それは決して経営や管理者を意味するのではない

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