リゼット

谷桃子バレエ団


原振付
最振付

再演出・最振付
舞台美術
衣装美術
照明
指揮
演奏
ジャン・ドーベルヴァル
アレクサンドル・ゴルスキーによるスラミフ・
メッセレル、アレクセイ・ワルラーモフ
谷桃子
妹尾河童
緒方規矩子
中沢幸子
福田一雄
東京ニューシティ管弦楽団
リゼット
コーラ
マルセリーヌ(リゼットの母親)
ミッショー(金持ちのぶどう園主)
ニケーズ(ミッショーの息子)
リゼットの友達
コーラの友達
ジプシー
永橋あゆみ
三木雄馬
岩上純
平田貴義
山科諒馬
山本里香 田村梓 緒方麻衣 雨宮準
中武啓吾 岸田隆輔 須藤悠 吉田邑那
宮城文 敖強

牧歌的でペーソスも漂うこのバレエはとても素晴らしい。

昨年から創立60周年の記念公演を行っている谷桃子バレエ団が「リゼット」
を上演した。前回の上演は2001年の1月だから約10年ぶりの公演という
ことになる。

谷バレエ団にとってこの「リゼット」はことのほか思い入れの深い作品でもあ
る。

パンフレットに谷桃子自ら書いているが、1962年、スラミフ・メッセレルとアレ
クセイ・ヴァルラーモフが当時、楽譜も資料もまったくないところで、ふたりが
口三味線で歌いながら3日間で振り付けたのがこの作品だったという。

1962年11月に東京文化会館で初演され、リゼットを谷桃子が演じ、大好評
だった。

「ラ・フィユ・マル・ガルデ」の原題を持つこのバレエは、日本では「リーズの結
婚」で上演されることが多い。フランスでの初演はフランス革命の起きた1789
年だから、「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」といった古典バレエよりはるかに
古いバレエということになる。

記念公演では高部尚子(23日)、永橋あゆみ(24日)、瀬田統子(25日)が交
代でリゼットを踊っている。

どこか心癒される妹尾河童の舞台美術がとてもいい。舞台に本物の子馬が引
く馬車なども登場し、和やかさもいや増すのだった。

永橋がはつらつと、初々しくリゼットを好演した。

リゼットは村の若者のコーラと恋仲になっているが、母親は金持ちのぶどう園
主の息子でちょっとオツムの弱いニケーズとの結婚を望んでいる。

娘がコーラと会うのを妨害しようとする母親、その目を盗んでなんとかコーラと
会いたいリゼット。和やかな笑いを舞台に漂わせながら、物語は進んで行く。

永橋の見せ場はいくつかある。

幕開け早々の”リボンの踊り”。

コーラと二人でピンクのリボンを持って巧みに踊る。綾取りのようにリボンを使
って優雅に踊る。二人の愛の気持ちを結びつける感情表現の入った踊りでも
ある。

第二幕の収穫を祝う村のパーティーではリゼットとコーラのパ・ド・ドゥがある。

華やかで軽やかなポアントのステップ、そして華やいだジャンプ。みんなに祝
福されながら、コーラと踊るリゼットの弾むような喜びがあふれ、素晴らしい踊
りだった。

圧巻は最後の32回転。体がすっくとまっすぐになって、軸のぶれない回転が
実に美しかった。

そして、第三幕では華麗なリフトが息を飲む美しさだった。

永橋は2010年度の中川鋭之助賞受賞など最近舞台が充実しているが、きょ
うは踊りだけでなく細やかな演技にも心配りがみられた。

コーラの三木雄馬も充実しきっていた。

恵まれた容姿に加え、三木には華やかなテクニックがある。しなやかなジャン
プ、切れの良い鮮やかな回転など、この人の舞台は男性には珍しい華がある。

リゼットの母親役の岩上純もユーモラスに、クスクスと笑いを客席に振りまきな
がら、好演した。

「リゼット」の楽しみのひとつでもある木靴の踊りもユーモラスに、それでいて実
にみごとに演じ切ってみせ、客席を沸かせていた。

世界で一番古いバレエである「リゼット」が愛され続けているのは、もうひとり、
ニケーズの存在がある。

赤い帽子に赤いジャケット、いつも赤いパラソルを手に持ち、それを脚の股に
はさんで魔法使いのように風を切って走り回る。

ちょっとオツムが弱く、村のみんなから馬鹿にされている。

リゼットの母親や自分の父親は結婚を望んでいるが、物事は逆の方に進んで
行く。

最後はどんでん返しがあって、ニケーズは結婚の誓約書をちぎって捨てる。

みんなに祝福されて、リゼットとコーラたちが部屋から去って行く。

静寂に包まれ、誰もいない部屋。

そこにニケーズがそっと忍び込んでくる。きょろきょろと部屋の中を見回し、忍
び足で何かを探す。

そして、片隅に置き忘れた赤いパラソルを見つけると、ニケーズの顔はぱっと
明るく輝く。

ニケーズは赤いパラソルを手に取ると、それを股に挟んでにっこりと笑う。

リゼットのことも忘れ、これが自分の宝物とでも言うかのような笑顔だった。

この最後の最後の幕切れがあって、客席はホロリとくる。

きょうの舞台はとっても素晴らしく、このバレエを見られた幸せを噛みしめたの
だった。

       (2010年6月24日 目黒パーシモンホール)

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