當記事の梗概

長野縣で作られてゐる飮用水「活」には以下のやうな問題がある。

信州諏訪の怪しい水を追へ!

私の故郷でもある信州諏訪では「波動強命水 活」(以下單に「活」)といふ飮用水が製造されてゐる。

私は以前からこの商品の異樣さが氣になつてゐたが、この夏休(2007年)に「ギリギリ科学少女ふぉるしぃ」といふ樂曲を聽いてこれを思ひ出した。通つてゐた高校の文化祭で會つた同期生の友人にこの水について話し、大いに盛上つた。翌日、この水の廣告が掲載されてゐる生活情報誌『月刊ぷらざ』を持參したところ、學校のスタッフをも卷きこんで大いに笑つた。

本記事ではこの怪しい水「活」について調べたことを述べたいと思ふ。

概論

」はエー・イー・エム(株)が發賣してゐる、ペットボトル入の水(清涼飮料水)である。500ml2000圓である。波動.Iと波動.IIとがあるが、違ひは謎である。また、そのシリーズには廉價版として1800ml3000圓の「活の湯」があり、これは入浴用である。

「活」はかれこれ十年以上販賣され續けてゐる。

エー・イー・エム社の公式サイトはhttp://www.katsuaem.com/

水にどのやうな加工が施されてゐるかは公表されてゐない。ただ、公式サイトの波動強命水「活」とは?の記事では次のやうに述べられてゐる。

』には当社独自の特殊製法(企業秘密)により、健康細胞の正常波動エネルギーを強力に関与させてあります。この水の波動は細胞の波動と共鳴します。

エー・イー・エム社はクチコミによつて全国に広まっています(『月刊ぷらざ』2007年8月號)と言ひ、事實、漫畫家桜沢エリカ、作家群ようこ、美容家たかの友梨などの有名人が愛用を表明してゐるといふ。

信州ではCMが多く流れてをり、これを知らない者は少い。BGMとして勢ひのあるCMソングが流れてをり、ももっちといふ藝人がジャグリングのパフォーマンスをしてゐる映像などが流れる。尚、ももっちのサイトはhttp://www.geocities.jp/juggling1117/であるが、重いため注意が必要。

店頭に竝ぶ「活」。
店頭に竝ぶ「活」。下諏訪町内にて撮影。左の二列が波動.Iで、右の一列が波動.II。
「活」の幟。
「活」の幟。同町内にて撮影。尚、この幟は「活」のある商店ではなく靴屋に立つてゐる。この地で波動は諏訪大明神以上の信仰を集めてゐるかもしれない。

藥事法違反の疑ひ

岡谷・諏訪・茅野・下諏訪・辰野・富士見・原・小淵澤周邊エリアで無料配布されてゐる生活情報誌『月刊ぷらざ』には毎週、これの廣告が掲載される。そのヴァリエーションは富んでゐて、毎囘その内容は樣々である。CMを澤山流してゐることも合せて考へると、かなり儲つてゐることが分る。が、私の知る限りでは毎囘、裏表紙と册子内部とに一ページづつ廣告がある形式は變らない。

そして、興味深いことにこの二枚の廣告は内容がまるで違ふのだ。この畫像のとほり、裏表紙(左)の方の聯絡先は毎月エー・イー・エム社であるのに對して、册子内部(右)の方の聯絡先は毎囘超エネルギー水研究会といふ謎の團體なのだ。

裏表紙には、「活」が健康に良いとは(非常に強く仄めかすのみで)書かれてをらず、「活」のボトルが堂々と大きく印刷されてゐたり、商品の案内があつたりする。

一方、册子内部にはとんでもない效用や極めて怪しげな理論、四コマ漫畫があるが、「波動強命水」や「活」といふ語が全く出て來ないのだ。さう、實はこれは「活」の廣告であつて、同時に「活」の廣告でなく、これは本当の強波動水の証明といふ意見廣告なのだ。こちらでは怪しげな水を強波動水と呼んでゐる。どう見てもこの「強波動水」は「活」なのだが、次の畫像のとほり、明かに「活」と書かれてゐるだらうと思はれる場所は黒い點になつてゐる。

超エネルギー水研究会のサイトでも、明白に「活」でしかないものを宣傳してゐるが、「波動強命水」や「活」の名は登場しない。

つまり、建前では、裏表紙と册子内部とは無關係の團體が無關係に出してゐる廣告であるといふことになる。どう見ても漫畫に出て來るボトルが「活」のそれであり、また、四コマ漫畫のタイトルが「かっちゃんち」と「活」を思はせ、機關紙の名が「活力」であるのにも關らずである。

しかし、この兩者は明かに同一の組織である。超エネルギー水研究会の諏訪健康相談室の住所(超エネルギー水研究会 健康相談室參照)と、エー・イー・エム社の住所(波動強命水「活」參照)が一致する。また、冗談のやうな話だが、超エネルギー水研究会のサイトのアドレスはhttp://www.katsu.co.jp/なのだ。更に、超エネルギー水研究会は所在地が東京都墨田区東駒形でありながら、メールアドレスがlcv.ne.jpで終る。LCVは長野縣諏訪・辰野地域のISPであり、エー・イー・エム社も利用してゐる。同一の組織であることを隱すつもりもないらしい。

事實、薬事法を遵守するため、商品のホームページ上に体験談等を掲載することや、体験談記載のホームページを直接リンクすることができません。何卒ご理解をいただきたくよろしくお願い申し上げますとしてメールアドレスを記入させるフォームがあるが、それにメールアドレスを入力すると、次のやうなメールが送られてくる。

直筆体験談掲載ホームページは、
超エネルギー水研究会 http://www.katsu.co.jp/

この度は、『活』の直筆体験談掲載ページのアドレスをお問い合わせいただき
ありがとうございます。『活』は、発売開始より十余年、大変多くの方に
健康維持や美容にお役立ていただいているお水です。
弊社には、愛用者からの喜びのハガキや手紙、お電話が毎日数多く
寄せられています。ただし、薬事法を遵守するため、『活』のホームページ上
には体験談等を一切掲載しておりません。
直筆体験談は、上記のページに商品名を伏せて掲載しております。
どうぞご覧ください。

エー・イー・エム社即ち超エネルギー水研究会は、どうしてこのやうな意味不明な行動をするのか。これには既に何度か出て來た「藥事法」といふキーワードが關る。


藥事法では、以下のやうに定められてゐる。

第68条
何人も、第14条第1項又は第23条の2第1項に規定する医薬品又は医療機器であつて、まだ第14条第1項若しくは第19条の2第1項の規定による承認又は第23条の2第1項の規定による認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

藥事法では、厚生勞働大臣に認められてゐない效能を謳つた廣告が禁じられてゐるのである。つまり、醫藥品や醫藥部外品などとして厚生勞働大臣に認められてゐない「活」に健康效果があると言つて廣告すれば、藥事法違反なのだ。

だから、册子内部には「波動強命水」や「活」の文字が出て來ないのだ。「波動強命水」でも「活」でもない「強波動水」ならば、どんな效能を謳つても違法ではないといふわけである。そもそも『月刊ぷらざ』2007年6月號の册子内部には堂々と(薬事法を遵守するために、商品名を「●」と表示しています)と書いてしまつてゐる。

勿論、私はこのやうな形であつても違法行爲の虞が強いと考へる。「強波動水」が「波動強命水 活」を意味することが誰の目にも明白である以上、これが「活」の廣告でないといふ言ひわけは立つまい。この違法行爲に對しての、藥事法第85條に基づいた、行政、司法の早急な對應が待たれる。


どちらにせよ、このやうな法律の拔穴くぐりもどきをしてゐる以上、エー・イー・エム社即ち超エネルギー水研究会に、眞つ當な商賣をするつもりがないのは明かである。

健康效果はあるか

次に再掲する『月刊ぷらざ』2007年8月號の册子内部を見れば、この水の波動理論が出鱈目であるのは自明である。

水が波動なるものを記憶するといふのもあり得ない話であるし、それが人體に影響を與へるといふのも妙な話だ。「波動」系水商売を斬るー量子力学の正しい理解のために水商売ウォッチング内)では以下のやうに述べられてゐる。

一方、電子や原子が2つあった場合には、どうやって区別できるだろうか。まず、電子、陽子、中性子といった粒子の区別をするには、それぞれの質量、電荷、スピン、といった量を比較するしかない。これらの量は粒子固有の量であり、違った値であれば粒子の種類が違うことになる。原子核の場合も同じで、質量、電荷、スピンが違っていれば、違う元素だったり、同じ元素でも同位体という別のものになってしまう。

原子を比べる場合は、原子核が同じなら、電子の状態で区別するしかない。ところが、電子は、エネルギーだけで決まる励起状態や基底状態の違いがあるだけだ。外からうまくエネルギーを与えると励起状態になるが、これをそのまま保つ方法は存在せず、放っておくとすぐ元の基底状態に戻ってしまう。とても、何かの情報を蓄えることなどできない。

では、分子を持ってきたらどうか。 ある分子と別の同種の分子を構成する原子間の距離や角度は、原子や電子の種類によって決まっており、どの分子でも同じである。だから、「情報・記憶」によって変わるものではない。(注:もし、分子自身に情報を記録することができるとしたら、もともと、2種類以上の構造をとれるように設計された分子が、その構造を変えるという方法でなら可能だろう。しかしこれは、水の場合には全く当てはまらない)

分子単独ではできないのなら、複数の分子の配列によって情報を記憶することを考えたらどうなるだろうか。水の場合を考えると、分子間水素結合のネットワークは1ピコ秒のオーダーで生成・消滅しているから、構造を保持できない。むしろ、すぐに以前の状態を忘れてしまうものだといってよい。

もともと、原子や分子には、「情報・記憶」を保持するような自由度が無いのだ。

原子や分子において、違いを記述するための自由度が元々少ない理由は、ミクロな世界では不確定性関係というものがあって、あるスケール以下のことがらを測定して区別できないということによる。この、不確定であるということは、物質が波動性を持つということそのものである。

さて、有名なものであるが、プラシーボ效果(僞藥效果)といふものがある。實際には藥でも何でもないものを藥だと僞つて投與すると、心理的な原因から效果が出るといふものである。500ml當り2000圓もするのだから「活」のプラシーボ效果は絶大なものであらうと容易に想像できる。「活」あるいは「強波動水」の健康效果として喧傳されてゐるものは、實際にはプラシーボ效果か、あるいは偶然治つた時期に「活」を飮んだものであらう。


それにしても一般の波動水市販の波動転写機とは實に傑作ではないか。

問題

「活」の原料について、公式サイトには「諏訪の水」とあるが、どうやら元は水道水であるらしい(波動強命水「活」(大野元一郎薬局)參照)。水道水を純水にし、それに波動を波動を強力に関与させたものだといふのだ。ただの水なのだから、病状を惡化させることがほとんどない。ゆゑにこそ問題が顯在化しないことが問題と言へよう。アレルギーなどによつて病状を惡化させてゐれば訴訟に踏切る者もゐようが、水であるのでさうなりやうがない。

そして、その値段も、高いと言つても何萬圓もするわけではない。これも、問題が顯在化しないといふ問題を招いてゐる。「活」は何千萬圓もする靈感商法の壺などと違ひ、何本か買つたところで自己破産に陷るほどの經濟的打撃を家計に與へるわけではない。

「別に惡化もしてゐないから」「高々2000圓だから」といふことで、騙されてゐるのに被害の意識がない消費者の問題があるのである。

「活」を購入しようと思つてゐる諸氏、あるいは購入してゐる諸氏には深く再考を促したい。ただの水道水500mlに2000圓もの大金を出して良いものか。そして、その詐欺まがひ集團に活動資金を投入して良いものか

我が諏訪地域からこのやうな擬似科學が消えてなくなること、それだけが私の望みである。

參考(タイトル五十音順)

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