ロゴスキー・コイルを使った高周波電流計

記 2003年08月25日〜  ja3npl

  0.001A〜10Aが測定できる高周波電流計を製作しました。

  雑音低減の試みを重ねています。アンテナと雑音源との結合を阻止しようとしているのですが、同軸フィーダーやコントロール・ケーブルに送信波や雑音信号が重畳してしまっています。この重畳した高周波の電流値を知り、コアを使って効果的に対策を採る必要が生じ、試行錯誤の末、左の写真のものを作りました。

<追加>  改造を加えました。 次項目をクリックすると別ウインドウが開きます。
  Ver 1.1  ・・  デジタル表示の基板を追加しました。(2004/04/07)
  Ver 1.2  ・・  ソフトに改造を加えました。数値をより細かく表示。C compiler CC5Xを使って16bitの計算。(2004/04/18)
  Ver 1.3  ・・  ロゴスキー・コイル検出部に絶縁トランスを入れました。(2005/04/09)


  これからの内容は次の通りです。

<その1.ロゴスキー・コイルとは>

  左図の模式図の通りです。

  さらに、詳細には、「Rogowski Coil」、「ロゴウスキー・コイル」、「空芯変流器」等でWebを検索下さい。

  私は、30年程前に、仕事でロゴスキー・コイルを使っていました。電力会社の大型発電機の出力端は、約20kVで、30〜40kAの電流が流れます。直径が500mm程のアルミ導体に流れる電流を左図の要領で測っていました。

  出力波形は、主回路の微分となり、AC50/60Hzの定常電流の測定のみでしたが、最近は進歩して、積分回路を付加し、直流分の入った複雑な波形、インパルス波形の主回路電流を測れるようになっています。

  このAC50/60Hz用のコイルを、HF帯に使ってみようと言うのは、少々飛躍しすぎなのですが、やってみたら、出来た..という次第です。



<その2.ロゴスキー・コイルの試作と特性>

  試作コイル#1です。
ビニール・チューブ;外径6φ(内径3φ)
エナメル線;#28(0.35φ)、10mを密巻き、(結果約500回巻き)、
仕上がり寸法;直伸長さ220mm、ループ状内径65φ
インダクタンス;41uH(計算値/自作ソフト)、直伸39.6uH/ループ状37.6uH(実測値/自作Lメーター)
直流抵抗;1.3Ω

  材料は全てホームセンターにて入手。



  端末の処理状況です。

  構造は模式図のとおりで、先端のリード線はビニールチューブの中を通って折り返している単純構造です。

  赤色のものは、ループ状にするときのガイド棒です。手元のエアースプレーの吹きつけチューブを切って差し込みました。



  MFJ-259を使って、このコイルの特性を見ました。共振点が23MHzあたりに在り、インピーダンス;100Ω、それ以外は500Ω以上を示しています。
  また、回路シミュレーションで分布LCを模擬して見たところ、さらに状況が良く分かりました。
  次図がシミュレーション回路、2.5uH/16個/40uH、0.7pF/16個です。さらに、下左図が周波数特性、下右図が50Ωで終端したときの周波数特性です。


  シミュレーションでは、この他に、途中の分布コイルに信号源を入れて、ロゴスキー・コイルの出力端の特性を見ていますが、50Ωで終端した特性と同一です。このコイルは1〜20MHzは使用可能です。


  試作コイル#2です。
今度は共振点が45MHzあたりのコイルを目標とします。
ビニール・チューブ、エナメル線のサイズは#1と同じです。線の長さは半分の5mとしました。ループ状内径は小さくしたくないので、間隔巻きとしました。墨つぼに使う、かせん坪糸#15(化学繊維3本撚り約0.5mm径)を線間に使いました。(テグスよりは扱いやすい)
仕上がり寸法;直伸長さ270mm、ループ状内径75φ、215回巻き
インダクタンス;9.6uH、直流抵抗;0.7Ω



  端末の処理状況です。

  構造は、試作コイル#1と同じです。
#1と違うのは、間隔巻き、1.5D-2V、51Ωの終端抵抗を接続、これらをタイラップで固定している事です。



  MFJ-259を使って、このコイルの特性を測定、共振点が48MHzあたりに在り、インピーダンス;100Ω、それ以外は500Ω以上を示しています。
  回路シミュレーションの結果は、上述と同じ状況(共振点が48MHzに変わったのみ)なので省略です。
  ここでは、途中の分布コイルに信号源を入れて、ロゴスキー・コイルの出力端の特性を見た結果を示します。次図がシミュレーション回路、0.6uH/16個/9.6uH、0.7pF/16個です。さらに、下図が周波数特性です。
  このコイルは1〜40MHzで使用可能です。



<その3.ロゴスキー・コイル用アンプの製作>

  ロゴスキー・コイル単体を受信機の入力に接続して、雑音探知を行ってみましたが、ずいぶんとゲインが不足していました。何らかのアンプ等付加装置が必要と思われましたので、次の2本立ての構想で、微少のノイズから数Aの電流まで扱える装置にすることにしました。
  1. ログアンプ・IC;AD8307を使って、レンジの切替なしの電流計とする。
  2. 広帯域プリアンプを内蔵して、受信機に接続可とする。
  ログアンプの扱いは初めてでしたが、メーカーのデータ・シートに回路例などがあり、分かりやすい解説がしてありましたので、全て、これに従いました。(http://www.analog.co.jp/productSelection/datasheets/AD8307.pdf)
  uPC1651Gは秋月電子のキットを購入しました。最初は、2段40dbのアンプにしましたが、1段20dbで充分でした。

  以下は、回路図と出来上がり構造の写真類です。

  正面、裏面、そして、基板裏側のuPC1651G周りの写真です。クリック/拡大。




<その4.出来上がった高周波電流計の較正>

  ロゴスキー・コイル試作#2の出力レベルは見当が付きませんでした。ログアンプ;AD8307とのインターフェイスには、アッテネーターが要るのか、あるいは、アンプが要るのか、分からないまま、動作させてみてからです。

  一方、ログアンプ;AD8307と100uA計との関係は明解です。AD8307の出力は0.25V〜2.5Vで、100uA計は25kΩシリーズで、丁度、2.5Vでフルスケールになる回路としています。しかも、AD8307の感度は正確な25mV/dbとのカタログ値ですから、0.25V/10db、2.5V/100db、つまり、100uA計の目盛にぴったりと合う設定の回路定数です。

  以下、実際の較正作業です。
  較正の基準には、Daiamond社SWR計SX-200のPower Meter表示を使いました。(表示は実効値であろうと推定。)

  左の写真の様に、50Ωダミーロード、芯線を分離した同軸ケーブル、パワーメーターを接続にして、同軸中心導体に流れる電流を検出する方法です。
  トランシーバー;IC-756PROの出力(1.5W〜120Wまで可変)につなぎ、ワット数を電流に換算して、較正をしました。

電力(W);P=IxIxR、R=50Ω、です。
電流(A);I=Root(P/R)です。



<較正結果表1>
供給電力;IxIxR1.5W5W10W50W100W
電流;I0.17A0.32A0.45A1.0A1.41A
メーターの振れ62uA68uA70uA77uA80uA

  一発で、大変うまく出来ています。言うことなしです。
  つまり、10Wと100Wで、丁度、10uA(10db)の差となっています。さらに、1Aが適度な振れの77uA(77db)となっており、アッテネーターもアンプも不要です。1.5Wと100Wとの差18.24dbの計算値と合っています。

  周波数特性があります。上表は14MHzでの較正結果です。77uAの所が他の周波数帯では次のようになっています。
3.5MHz;77uA、7MHz;77uA、(14MHz;77uA)、21MHz;82uA、28MHz;85uA 。
回路シミュレーションでも、この傾向が見られていました。

  実測は、1.5W〜100Wの間でしたが、25mV/dbの傾きを信じて、次表のように100uA計を較正して読むことにしました。
<較正結果表2>
電力;IxIxR0.00005W0.0005W0.005W0.05W0.5W5W50W500W5000W
電流;I0.001A0.003A0.01A0.03A0.1A0.32A1.0A3.2A10.0A
uA(db)目盛172737475767778797
注;21MHzでは82/1.0A、28MHzでは85/1.0Aとする。

  メーターのアクリルカバー上に、0.001Aから10Aの概略表示をしておき、100uAの表示を見ることで、用が足りています。




<その5.その他、追加事項>

  1. ロゴスキー・コイルの代わりにZCAT3035を使った場合

      従来は、ZCAT3035に4回巻きのコイル、ダイオードを抱いた小型のラジケータを愛用していました。

      このコイルをロゴスキー・コイルの代わりつなぎ、較正をしてみた結果が下表の通りです。



      51Ωの終端抵抗を入れています。

      なお、ZCAT3035に4回巻きのコイルについて、MFJ-259でインピーダンス測定を行いましたが、1.8MHzから170MHzまで全域で500Ω以上です。きっと、周波数特性に凹凸があるのでしょうが、不明です。



    <較正結果表3>
    電力;IxIxR1.5W
    電流;I0.17A
    uA(db)目盛94(3.5〜28MHzの間、同じレベルの94でした。)

      これを100uA計全域に割り振りすると、次表の様になります。巻き回数などを変えて、さらに、感度を変えることも可能でしょう。
    <較正結果表4>
    電力;IxIxR0.05uW0.5uW5uW0.05mW0.5mW5mW0.05W0.5W5W
    電流;I0.03mA0.1mA0.32mA1.0mA3.2mA0.01A0.03A0.1A0.32A
    uA(db)目盛192939495969798999

  2. ロゴスキー・コイルの高周波電流計を使用してみて
    •   内径が大きく、ケーブルを束ねたまま、あるいは、アルミ支柱等の誘導電流を確認できるのが、便利良しです。使用例は別項の記事を参照下さい。
    •   おそらく、周辺を漂うUHFの電波を拾うのでしょう。ロゴスキー・コイルをつないだ状態で0.001A程、振れてしまいます。HF帯だけを通す、ローパスフィルターが有効かも知れません。
    •   ロゴスキー・コイルを金属に近付けると(浮遊容量結合)、メータが振れます。アルミ箔でファラデーシールドを作ると効果がありましたが、未だ、実用化できていません。アルミ箔はすぐに破れてしまいます。今は、ロゴスキー・コイルのリード線に雑音防止コアを入れ、短くして、装置全体を宙に浮かして、影響を少なくして使っています。
    •   受信機を接続しての、雑音探査も、上記と同じです。

      受信機は写真のIC-R10と、親のIC-756PROを使っていますが、スペクトラム・スコープでスポットの雑音を見つけ、Sメータ目盛がより詳細である等の理由でIC-756PROの方がはるかに使いやすい状態です。



    •   ロゴスキー・コイルは、二重、三重に巻けば、丁度、2倍、3倍に出力が増えます。また、複数のコイルを直列にして大口径にすることも出来ます。

  3. これから楽しみの展開について
    •   このように、ログ表示の直線性が良いと、デジタル・ボルト・メーターで表示も出来ます。1Aを0dbとして、-70db〜0db〜+20dbの表示です。OPアンプにバイアスを加え、差動アンプにするのは簡単です。マイコン、パソコンを使えば、電流値表示も可。
    •   高周波電流計だけでなく、高周波電圧計、インピーダンスメーターも同じ回路で製作可能なので、高周波テスターとしてまとまりそうです。
    • ロゴスキー・コイルは、まだまだ改良可能です。巻き回数を減らして、周波数特性をVHFまで良くしたいのですが、@フェライト・ビーズをコイルの中に数珠つなぎにして内蔵する、Aコア入りのFCZコイルを数珠つなぎにする等の策が有りそうです。

  4. 私の自作品の形
      当然ですが、部屋の中での、アルミ板の穴あけや、やすり掛けを、家の奥さんは許してくれません。集合住宅暮らしでは、雨風のない時にベランダに出て、洗濯干し物の邪魔にならないよう急いで工具を並べ、さっと作業し片付けることになります。
      この工作は、いかにして穴あけの個数を少なく、穴径を小さくして、ガリガリ加工音や切粉の量を少なくしようかと考えてしまいます。
      結局、今回の例のようになっています。最近は見かけませんが、外装のないトラック用台車が道路を走っていたのを思い出します。ハンドル・リンクや車軸の構造が見えて興味をそそられました。
      きれいなケースを日本橋で売っているのに..埃や、線くずが入ったらどうするの..と思われる方々には申し訳ありません。このロボコン形で、我が家は苦情が出なくなりました。

以上

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