HAMMARLUND  SP-600JX-17



【諸元】
  Model :SP600JX-17
  Years :1950-72
  Price :$1140
  Freq :6BAND/0.54-54Mhz
  Type :Single/Double Conv.
  IF   :3955/455khz
  Filter:Crystal
  Tubes :20

  BAND1 :0.54-1.36Mhz
  BAND2 :1.35-3.45Mhz
  BAND3 :3.45-7.40Mhz
  BAND4 :7.40-14.8Mhz
  BAND5 :14.8-29.7Mhz
  BAND6 :29.7-54.0Mhz

【家が建ったスーパープロ
昭和30年初めに、SP-600の中古機が立川の杉原商会で販売されていまして、当時の値段で30万円でした。欲しくてたまらなかったんですが、そのころ土地付きの新築住宅(40坪)が45万円で入手できた時代です。
とても買えるものではないのですが、なんと、買って使っていたOMがいたのです。
「そうか、買える人もいるんだ!」。これが「いいなぁ〜」「ほしいなぁ〜」から「買いたいなぁ」「買ってやるぞぉ〜」に変わって行き、そして「病気は進んでしまった」のです。

【魅力】
第2次大戦後の米軍の主力受信機として、R274(SP600/SX73/HRO60)シリーズ・・・・ R388(51J1〜4)シリーズ・・・・  R390(R389/390/391/392/390A)シリーズ・・・・ 51Sシリーズ・・・・ シンセサイザ機種へと変遷する中で、電気的・機械的構成が見事な最高級受信機の一つです。
特にターレットコイル切替式フロントエンドによる広帯域受信、大型フライホイールによるスムースなメインダイヤル、VLFからVHFまでカバーするバージョンの多さなどの素晴らしい機能を備えた名機です。
また、軍用仕様であることから、使用されている部品とその材質は素晴らしいもので、受信機の特性として現在でも実用機として優れた性能を有しています。

1.ダイヤルタッチ
まずは素晴らしいダイヤルタッチです。
極めてシンプルな3枚構成のギヤーと実に巧妙で単純なスプリングで構成されたギ\ヤートレインを使っています。(近い内に写真が出ます)これを真鍮の円盤でドライブしているのですが、大きなフライホイールを使っているため実にスムースで、3回くらいのタッチでバンドの端から端までスイープ出来る位です。
私の経験した「ダイヤルタッチの良さ」ではベスト4(私が思っているだけ)の中に入ります。(ちなみにベスト4とは、ナショナルNC303/ハマーランドSP600/ハリクラフターズSX73/エディストーン770X)

2.フロントエンド
つぎはターレット式のコイルユニットを使ったフロントエンドです。
パネル側からOSC、MIX、RF2,RF1と4段のコイルがターレットにマウントされ、真空管を搭載したプラットホームの下に抱きかかえられるように配置され、プラットホームに設置されたタイト製のナイフスイッチのような接点にコイル端子が挟み込まれる構造です。つまり、いずれのバンドでも、各段の回路とは最短距離で接続される構造で、トラッキング調整はプラットホーム上側のアジャストホールから長いドライバーで調整するようになっています。


この構造もさりながら、同調回路に使用されているバリコンとコイルがまた素晴らしいのです。バリコンはハマーランド社の最も得意とするパーツの一つです。
4連8セクションの長大なバリコンは、全面パネルに一番近い2セクションを発振回路用にセットされ、ロータ側、ステータ側共に焼き鈍しが施され、温度係数を少なくなるように工夫されています。(この部分だけ羽の色が黒ずんでいるのでよくわかります)
また、コイルユニットはターレットに1バンド・1列・4個で構成され、6バンドで合計24個のコイルユニットがマウントされています。このコイルはステアタイトの基台にコイル・エアートリマがセットされ、ロック金具でターレットに取り付けられています。

3.Sメーター
このメーターのDB表示が実に良く合っています。アンテナ端子にSSGを入れてATTで減衰していくと、ものの見事に数値通りに変化します。
このことから、有効な測定器としていろんな実験に使用していたのではないかと思われます。
本格的な測定の場合は、受信機の入力回路に可変減衰器を接続して、メーターの指示値が前と同じになるように可変減衰器を調節して、その可変減衰器の数値を読みとるという置換法測定が一般的です。
しかし、アマチュアや簡易測定をする場合には、Sメーターの読みをそのまま使うことで代用してしまうことがままありますが、この様な場合の測定精度としては申し分がありません。

4.オーディオ出力
昭和30年代には、NHKを初めとする放送局の中継回線は当時の電電公社の回線を使用していました。その当時では中継回線の故障が合った場合には、電電公社の中で代用回線に切り替えることになっていました。
しかし、それもだめだった場合の最終バックアップ用として、このSP600がNHK送信所に鎮座していました。(実際にJOCKの桶狭間送信所で見たことがあります)
つまり、東京からの電波を受信してそのオーディオ出力を自局の電波に乗せて送信する方法です。こんな具合ですから、受信機のオーディオ特性は取扱説明書を見てもわかるように、きちんと周波数特性などを表示してあります。

【弱点】
1.シャーシー
他のメーカにも言えることなのですが、シャーシーに埃がたまるとそれが湿気を吸収して、シャーシーのアルミの表面を浸食します。それがシャーシーの表面全体を覆い、ちょうどナメクジが歩いた痕のような傷となって残ります。これを俗に「ミミズがはしる」と言ったりします。
一般的には、MFP塗布やコーティング処理等の表面処理がしてあれば、まずこんなことにはならないのですが、SP600の場合は、シャーシーの表面処理が充分とは言えないない機械が多く、出回っている中古の機械にはこの種のシャーシーの傷が多く見られます。
MFP処理は「トロピカル仕様」と言って、アメリカ国内の様な乾燥地域以外で使用する場合に、機材の表面全体に皮膜塗料を塗布して、腐食や絶縁低下の防止を図っています。
「見ずテン」で購入する場合には、「MFP処理がしてある=黄色く塗装してあるように見える」か、「ミミズ」の程度を確認をすることも良いかもしれません。

2.コンデンサ
黒いチューブラコンデンサがくせ者です。このコンデンサーは年月を経るとクラックが入ってそこから湿気が入り込み絶縁低下が起こります。
初期・中期のタイプはほとんどがこのコンデンサを使用しています。出来ればこれは取り替えた方がいいでしょう。
しかし、後期のタイプになりますとセラミックコンデンサを使用したものになります。このタイプですと比較的この様な絶縁低下と言った現象は少なくなっています。
また製造時器の目安としては電源トランス・平滑チョークの形状が前期は丸形、後期はダイヤカットになっています。

【メンテポイント】
1.真空管
もっとも注意が必要な球は「6BE6・・5750」です。これは1stMixと2ndMixに使用されています。
真空管試験器でOKであるということで、良品と判定した球に差し替えてトラッキング調整して「よし!」と言う前に、良品と判定した球を何本か差し替えて見て下さい。受信感度は変わるし、雑音レベルは変わるし、こんなに変わるかと思うほどです。
それらの中からさらに良いものを選び出して何本かスペアに確保することが肝心です。といっても雑音や変換利得があまり良くないからと言って、真空管が規格割れと言うわけではありません。ただこの受信機の環境では余り良くない特性を示してしまうと言うだけのことなのです。

2.ターレット受け側接点
バンド切り替えスイッチを回すとなんか変な感触だったり、「ガリッ」的な感じだったりしたら要注意です。
この受信機のターレットの受け口接点は、ナイフスイッチの受け口の構造をしていますから、片方の接点が何らかの理由で折損しますと、もう片方の接点が寄りかかるところがなくなってしまいます。このときターレットコイルの接点が回ってきますと、その接点と衝突して「ガリッ」と言うことになります。
使用頻度が少ないと何とか接触していますが、回すたびに衝突を繰り返しますから、最後は折れ飛んでしまいます。この種の機械に遭遇しましてプラットホームの接点を修理したことがあります。この受け口接点はハムフェアのようなところかコレクター同士で譲ってもらうかになりますが、もしもフリーマーケットなどにころがっていたりしても、だれも目を付けませんから物を知っていればただみたいな金額で買うことが出来ますね。

【その他】
1.仕様について
SP600/SX73/HRO60は、アメリカ政府が仕様を示して同時期に各社に発注しました。そのため、受信周波数範囲・受信機の構成等のスペックは同じとなっています。
従って、各受信機ともそれぞれ特徴を持ちながら、いずれも甲乙つけがたい名機揃いとなっています。「三台揃い踏み」も夢の一つかも。

2.バージョンについて
 JX =JAN LEVEL/6 CRYSTAL
 JLX=長波バージョン(0.1M-0.4M 1.35M-29.7M)/6 CRYSTAL
 VLF=超長波バージョン(0.01M-0.54M)
 −17=ダイバーシティバージョン
 その他多くのバージョンあり。

3.「スーパープロ」ってなに
ハマーランド社が1920年代後半に発表した通信型受信機のひとつに「Comet」という受信機がありました。そのプロ用として「Comet-pro」と言う機種が1932年に発売され好評を得たのです。その「Comet-pro」を越えるpro。つまり「Super-pro」
が出現したのです。以後このスーパープロはその後SP600に至るまで続くことになります。
手元にあるComet Pro/SP110/SP200/SP600を並べてみました。

2000.11.01 初版
2000.11.08 2版
2002.11.13 3版


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