(番外編)ブローバイガスの処理について

オイルキャッチタンクの取り付けとブローバガスについて。


●くりかえし質問があったことの中に「オイルキャッチタンクをブローバイに繋ぐとき、ヘッドカバー

からサージタンクに出ているホースはそのままでいのか」というのがありましたが、結論からいうと

そのままで結構です。

今回はそれも含めまして現在のエンジンのブローバイガス還元システム全体について書きたいと思います。

↑K6Aエンジンのブローバイガス抜き用のパイプはこの2系統あります。

(※写真のヘッドカバーはバフ加工してあります)

 

●ブローバイガスの吸引方式には大別してオープンタイプ、シールドタイプとクローズドタイプがあります。

最近のエンジンはクローズドタイプが主流で、もちろんK6Aエンジンもこのタイプです。

 

シールドタイプというのはごく単純な方式で、昔からよくあるヘッドカバーから直にエアクリーナー

ケースあるいはサクションパイプにただパイプが戻ってきている1系統だけのものです。

それに対して、クローズドタイプはブローバイパイプが2系統あり、1系統(写真でいうとメイン系統)

はシールドタイプ同様ですが、もう1系統(サブ系統)はPCVバルブ(チェックバルブです)を挟んで

サージタンクに繋がっています。

このPCVバルブは、アイドリング時等にブローバイガスを吸引すると同時に、エンジンブレーキ時など

サージタンク負圧が高すぎるときは過度にブローバイガスを吸い込み過ぎるのを制限するオリフィスの

役目もしています。 ですので、基本的にこのバルブを外してはいけません。

この2系統目が重要で、これがあることによってサージタンク内圧の負圧が強く、サクションパイプ側の

負圧が弱いときにはこちらのサブ系統のほうからクランクケース内圧が抜かれてメイン系統のほうから

エアクリーナーを通過した綺麗な空気が入ってくることで、クランクケース内部のベンチレーション、

つまり「エンジン内の換気」を積極的におこなうことで、エンジンオイルの汚損や劣化を防ぎ、オイル

の寿命を延ばす効果があります。

また、スロットルを開けて加速する等、サージタンク負圧が弱まり、さらにブーストがかかったりして

サクションパイプ側の負圧が大きくなってくるとPCVバルブは逆止弁として閉じて、メイン系統のほう

からクランクケース内部のブローバイガスを抜き、またクランクケース内圧を下げるように流れを移して

いきます。

つまり、運転状況によってメイン系統とサブ系統はそれぞれブローバイの流れが逆になるということです。

実際のところ、街乗りなどの領域ではターボエンジンと言えどもそのほとんどの時間は負圧領域で運転

するため、このPCVバルブ経由のブローバイホースのほうが多く仕事をしています。

PCVバルブは地味な存在ですが、エンジンにとっては非常に重要な働きをしているのです。

<PCVバルブの基本的な構造>

↑基本的にはワンウェイバルブですが、ノズル部があることが重要で、負圧とスプリング張力のバランス

で弁体のストローク量が変わり、比較的弱い負圧の状態では最大の流量を確保し、強い負圧(アイドリング

やエンジンブレーキ時等)ではブローバイが過度に流れるのを防ぐために流量を絞る構造になっています。

 

なお、サーキット走行時などのエンジンブローでクランクケース内圧が異常に高くなった状況ではPCV

バルブに遮られてオイルがうまく排出されませんので、このPCVバルブ側のホースをそのままキャッチタンク

に繋いでもあまり意味がありません。

クローズドサーキット走行に限って言えば、このPCV系統は殺してしまうか、あるいはPCVバルブを外して

2系統ともにキャッチタンクに繋ぐほうがよりエンジンブローした際にオイルをまき散らす可能性は低く

できます。

ただ、ストリート走行で言えばPCV系統を殺すことはクランクケース内のペンチレーションをおこなえなく

してしまうのでエンジンオイルの寿命を極端に縮めることとなりますので、キャッチタンクへは通常通り、

メイン系統(ヘッドカバー〜サクションパイプ間)のパイプのみをつければ充分です。

 

また、クローズドタイプはこの作用によって、クランクケース内は常に大気圧からやや負圧になるように

設計されております。

クランクケース内部の圧力はやや負圧になっているくらいがちょうどよく、シリンダー磨耗などが進んだ

エンジンや、オーバークールでピストンが充分に熱膨張していないようなエンジンでは、ブローバイガスの

吹き抜けが多くなり、クランクケース圧力が高くなりますので、ブローバイガスに含まれるオイルミストの

量が多くなります。

結果、オイルキャッチタンクなどに溜まるオイルの量も多くなりますし、とくにターボエンジンにとっては

このクランクケース内圧上昇によってオイルの戻りパイプが圧力を受けるため、オイルのリターンに支障を

きたし、タービンの潤滑にも悪影響を与え、最悪はタービンブローの原因にもなります。

当然、各部オイルシールやタービンシャフトなどからもオイル漏れしやすくなります。

また、ピストンが下降するときにもかなりの圧力が発生しますので、このときにクランクケース内の圧力

が高いと、これもピストンの動きを妨げることになりますので、パワーロスになります。

このクランクケース圧力によるパワーロスは高回転では無視できないほどのもので、10000rpm以上回る

エンジンでは数馬力に相当すると言われています。

ちなみに、純粋なレーシングエンジンや一部の高性能エンジンにあるドライサンプエンジンでは、供給側の

オイルポンプより回収側のオイルポンプ(スカベンジングポンプ)の容量を大きくすることで、クランク

ケース内部のオイルだけでなくブローバイガスも一緒に吸引することでエンジン内部をやや強めの負圧に

保つように設計されていることが多いです。

 

それと、これが重要なのですが、このPCV系統のほうは上記でも書きましたように常にクランクケース内の

ブローバイガスをベンチレーション(換気)しておりますので、これを大気解放したりするとクランクケース

内に吹出したブローバイガスがそのまま滞りますので、これがオイルを汚す原因になり、そのガスに含まれる

未燃焼ガス(いわゆる生ガス)がオイルを希釈することになりますので、結果としてオイルの寿命を極端に

短くしてしまいます。

よく「ブローバイガスを吸気に吸わせるとパワーダウンするからエンジンに良くない」と言う方もいます

が、ブローバイガスの大部分は未燃焼ガスによるもの(燃焼時や排気時はピストンリングが密着しますが、

圧縮行程後半においてピストンリングのいわゆるフラッタリングが起きることで、ここで最大のブローバイ

の吹き抜けがおこるとされています)ですので、たとえばEGRなどのように排気ガスを吸い込むわけでは

ないので、実際のところは出力にそれほど大きな影響はありません。

むしろ逆に大気解放することで、前述したクランクケースの内圧の上昇をもたらし、そのほうがエンジンの

パワーダウンに繋がります。

実際に私の車で過去におこなったサクション圧力の検証では、全開加速に近い状態になるとブローバイホース

の繋がるサクションパイプ部の負圧は最大で約-530mmHgという強力な負圧になっており、これだけの

バキューム圧でクランクケース内圧力を吸い出しているのです。

また、ブローバイを大気開放にすると前述したようにクランクケース内のベンチレーションができなくなる

ことから、エンジンオイルの劣化促進などのマイナス要因のほうがはるかに大きいと私は考えます。

つまり、現在においてはブローバイガスを大気解放するのはエンジンにとって(もちろん環境にとっても)

百害あって一利なしと言っても良いです。

ですので、エンジンオイルの交換サイクルを延ばし、また、エンジンを長く使いたいのならばブローバイの

大気解放はしないで、きちんとインテーク(サクションパイプ)に戻すようにすべきです。

 

最新のエンジンのオイル交換サイクルが15000kmとか20000km、あるいはそれ以上となっているのは

このクランクケースベンチレーション性能およびブローバイガスの処理性能の向上によることが理由です。

ブローバイガスには未燃焼のHC分や水分が多量に含まれており、また、強い酸性でもありますので、これ

をうまく換気してやらないとオイルの劣化をどんどん促進させてしまうのです。

言い方を変えると、ブローバイガスの発生量の多いエンジン(シリンダーが磨耗したエンジン等)ほど

エンジンオイルが汚損、劣化しやすくなりますので、オイル交換サイクルを短くしてやる必要があります。

↑<参考>K6AエンジンのPCVバルブ

稀にPCVバルブは固着など動作不良を起こすことがあるので、定期的に交換しても良いかもしれません。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~