ADIC

噂のADIC、本当に変化があるのか試してみました。


↑ADIC SG-3

この製品は、メーカー説明によると燃料噴射タイミングを進角させるようで、それによりトルクアップ

がなされるということです。

その理由は霧化効率が上がるからと解説されていますが、実際のところ、慣性過給なども含めたポート

内部での吸気流の詳細についてはまだよく解明されていない部分も多くあります。

なぜ早めに噴射すると霧化が促進されるのかという前に、似たような一般論でインジェクターと吸気

バルブからの距離というのはエンジン特性に大きな影響を与えることが知られています。

単純な話、より吸気バルブから遠い位置にインジェクターを配置すると、それだけ長い距離ポートの

内部で霧化するチャンスができますので、吸気バルブに飛び込むときにはかなり気化しやすい状態に

なっていて、燃焼しやすい混合気になります。 ただしその反面、レスポンスという点では劣りますし、

とくに流速の遅い低中速域ではポート壁面に付着してしまうガソリンが多くなりますので、同じ空燃比を

得るためにはそれだけ多くのガソリンを吹かなければならず、とくに実用域の燃費が悪化します。

つまり、実用燃費を考えるとインジェクターの位置は限りなく燃焼室に近いところから噴射したほうが

有利なわけで、その究極がいわゆる直噴エンジンとなるわけです。

ちなみに、昔からよく使用されている追加インジェクターをスロットル前のインテークパイプなどに

つけるのは手軽ではありますが、この方法ではサージタンクの形状によって最終的に各シリンダーに

入るガソリンの濃度、つまり空燃比がバラついてしまうので、追い込んだセッティングを出すには適

しておりません。

 

市販エンジンのほとんどは吸気バルブの直前にインジェクターをつけていますが、これはレスポンス

が良くなり燃費にも貢献しますが、上記とは逆の理由でとくに高回転での霧化という点では劣ります。

ですので、一部の高性能エンジンなどで使用されているツインインジェクターは、2つのインジェクター

の位置をずらすことで、この矛盾を両立しています。

当然、こういうシステムではそれぞれのインジェクター噴射時期をコントロールすることも重要です。

 

さて本題ですが、私が考えるに噴射タイミングを早めるということは、たとえばまだバルブが開かない

直前に噴射をはじめて、ポート内部の温度や圧力変動を利用したり、バルブの傘にぶつけて一部のガソ

リンを予め気化しておこうということなのではないかと考えます。

ポート内部でガソリンが気化するということは、当然ながらターボなどで加圧され高温となった吸気の

温度を潜熱により下げることができますので、結果としてより低い温度の混合気がシリンダーに入る

ことでわずかとは言え酸素密度が向上しますので、程度は別としてパワー(トルク)アップもする期待

はありますし、また、温度が下がるということはノッキング限界を高めることが可能となるわけです。

また、たとえばノズル径の大きい大容量インジェクターなどに変えた場合、流速の遅い低速、低負荷時

などは当然ノーマルインジェクタよりも燃料の粒子が荒くなり、そのせいでシリンダー内へ届くまでの

タイミングが遅れたり霧化効率が悪化することは考えられるので、それを改善することにも繋がるかも

知れません。 これらの点を総合して考えれば、ADICの進角作用は理屈にはあっていると言えます。

フルコンであればこのへんも含めてコントロールできるので問題はないのでしょうが、サブコンでの

調整の場合は、せいぜいクランク角センサーをずらすくらいしか方法はありません。

しかし単純にクランク角センサーをずらすだけでは点火時期も変化してしまいますので弊害が出ます。

 

また、これがどのくらいの角度で補正しているのか解りませんが、当然のことながら、流速の低いとき

と流速の高いときでは最適なタイミングも変わってきます。

それに対応させるためか、タイミングを変えるための切り替えスイッチのようなものがついています。

モード1=進角 大(主に高速向け)、モード2=進角 小(主に低中速向け)となります。

もちろん、これは高速、低中速という別け方だけでなく、そのエンジンの仕様によって適したモードと

いうものもあります。


●取り付け

K6Aエンジンは3気筒用のSG-3というタイプを選びます。 汎用品なので配線はカプラーオンではなく、

ECUの配線から必要な線を見つけだして1本1本配線します。

メーカーの適合表にはJA22の適合確認はまだ載っていませんが、同年式のHA/HB21Sアルトワークス

(後期)やEA21Rカプチーノと同じです。

整備書の純正のECU配線表を見ながら線を見つけ、1本1本ギボシなどで結線する作業となります。

※ただしメーカーで確認をとっていない以上、当ページを見た方が同じようにJA22に取り付けて、

結果トラブルが出ても当方では一切責任もてませんし問い合わせにも応じません。 自己責任で!!

 

↑参考までに私のクルマの場合のインジェクター信号線位置です。

基本的にはJA22全車共通なはずですが、年式、装備などによって異なることがありますので

面倒がらずにちゃんとディーラーなどで整備書を見せてもらい車台番号で照らしあわせることです。

万が一間違えるとADICだけでなく、ECUそのものを破損する可能性がありますので慎重に。

 

点火系、燃料系の違いはありますが、進角に関するコントローラーとして考えると、なんとなく

APEXのS-ITCを思い出します。

S-ITCは点火時期をコントロールするものですが、これはクランク角センサーからの信号を基準に

進角、遅角させてECUに入力します。

(ただ、S-ITCは回転数レンジによって進角、遅角を独立してコントロールできるのが特徴です)

ということは、クランク角センサーからの信号はセンシングのみに使い、ECUへ送る信号には変化を

与えなければ点火時期には影響を出さずに噴射時期のみをコントロールできます。

以上から考えて、当初私は必要な信号線はこのように考えてました。

1)電源+ 2)アース 3)クランク角入力 4)クランク角出力

5)#1インジェクター入力 6)#1インジェクター出力 7)#2インジェクター入力

8)#2インジェクター出力 9)#3インジェクター入力 10)#3インジェクター出力 

 

しかし、現実にはクランク角の入出力は必要ありませんでした。 進角させるのにクランク角

をセンシングせずにどうやっているのかがやや疑問ではあります。

とは言え、とりあえず説明書通りにこれらの配線の間にADICをかますことになります。


 

↑取り付けたところ。

手前に出ているコードはモード切り替えスイッチへ繋がっています。

モード1とモード2の切り替えは本体のディップスイッチでおこなうようになっていますが

それを手元で切り替えるようにできるというものです。

ただ、走行中に頻繁に切り替えるのは一瞬とは言え、インジェクターへの通電が停止します

し、ECUやADICに不都合をもたらすことも考えられるのでできるだけやらないほうが良い

(取説にもそう書かれています)です。

切り替えるのはアイドリング時など、エンジンに負荷がかかってないときにしましょう。

圧力スイッチなどを利用して、ブーストが一定以上になるとモード1に自動的に切り替え…

などは誰でも考えそうですが、これは危険だと思います。

エンジン動作中にモード切り替えスイッチを操作すると、一瞬、空燃比にも変化が現れます。

もちろんすぐに補正されますが、逆に言うときちんとADICが動作している証拠とも言えます。

 

ちなみに、この本体には電源スイッチやADIC作動、非作動の切り替えスイッチもありません

ので、たとえば走行中にADICのON/OFFを切り替えてテストということは基本的にはできま

せん。 やるとすればインジェクターの信号線に切り替えスイッチをつける等になります。

当初はこのADICの電源をON/OFFすればADICの作動時と非作動時の違いを試せるのでは

ないかと思い、発売元のジェイロードに問い合わせましたが、たとえばトラブルなどで電源

が切断されるとモード1で固定になるという返事でした。(本当でしょうか?)


●走行しての変化

まず、ECUの配線を外してますので、再学習させることが必要です。

今回ははじめからGRIDの空燃比計LM1をつけていましたので、これのおかげで学習の様子が

実によくわかります。

エンジンをかけて放置、しばらく走るまでの間は理論空燃比にはならず、だいたい12.5〜14の

間をうろうろしています。 暖機が終わって走りだし、だいたい15分くらいすると補正が働い

てくるようで、元通りにアイドリングや巡航時に14.7付近に安定します。

これが安定するまでは明らかに加速時などに力がないなど、本調子でないことがわかります。

なお、この学習はエアコンON時とOFF時の両方で必要です。 エアコンOFFできちっと空燃比

の学習が終わってもエアコンONにするとまた空燃比が狂いますので、この場合はエアコンON時

でも同じように学習させます。 当然この学習が終わるまではADIC本来の効果は得られません。

 

さて、それから純正状態とADICを取り付けた後での空燃比の変化を知っておきたいというのが

あります。

メーカーコメントでは「燃料の噴射量は変わらないのでエンジンに対してのリスクはない」と

書いていますが、厳密に言えば仮にインジェクター噴射量(=噴射時間)が変わらなくても、

噴射タイミングが変わればシリンダー内に入る混合気の状態、つまり、吸入後や圧縮中に生じる

スワールやスキッシュなどの混合気の流れの中での霧化状態が変化します。

そうなるとシリンダー内の燃料密度分布も変わりますので、点火後の火炎伝播にも変化が出る

はずですので、燃焼に寄与するガソリン量も変化しますので、結果として空燃比にも影響が

出ます。

どういうことかと言うと、シリンダー内に入ったガソリンは100%が燃焼するわけではなく、

その一部は燃焼しないか、あるいは不完全燃焼のまま排気されるわけです。

(むしろ100%の効率で燃焼するほうがありえないので)

混合気の燃焼速度は空燃比が一定であれば基本的に変わりませんが、燃焼室内は、温度や圧力

が常に変動しますので、それらによって燃焼に寄与する効率=燃焼圧力となる効率=トルクと

なって取り出せる効率が変わります。

ですので、メーカーが言っているタイミングの変化や、霧化状態の変化の結果、燃焼状態が変

われば残留酸素の濃度には変化が出るはずですので、 条件によっては空燃比に変化があらわれる

ことが考えられます。

たとえば、今までと同じ噴射量でより霧化効率が上がって取り込まれたガソリンの燃焼効率が

上がったとすればそれだけ完全燃焼し残留酸素が減少しますので、空燃比計の表示は薄い方向へ

ずれるはずです。

また、上記の考察でも書きましたように、ポート内部で気化した一部のガソリンが吸気温度の

冷却のために揮発した場合も、空燃比は薄い方向へずれていきます。

空燃比というのは噴射された燃料の量で決まるものではなく、最終的に燃焼室内で完全燃焼した

燃料の量によって変わるものですので。

ですので、とくにECUチューンしていて、部分的にせよ空燃比が薄めになっていたりするエンジン

の場合はADICを装着したら確認のためにも空燃比もいちおうモニターしたほうが良いと思います。

 

●まずはADIC取り付け前の状態

同じ条件でテストしなければ意味がないので、とりあえず4速全開までとします。

まずは4速全開全負荷時で11.5〜11となるようSFC-MULTIで調整しておきました。

これがADIC取り付け後にどう変化するかを見るわけです。

 

●ADIC取り付け後

まずは街乗りに向いていると思われる「モード2」状態での変化ですが、もちろん、O2センサーの

フィードバック領域では空燃比はECUが自動的に補正しますので変化はありません。

その後、同じように4速全開全負荷で何度か加速して試しましたが、中間加速や、全開加速でも

ほとんど変わらないようです。

 

次に高速向けの「モード1」でもテストしましたが、こちらも空燃比自体には大きな変化は見受

けられませんでした。

ただ、ブーストが0.5以下の低ブーストの領域での加速ではやや薄くなったようで、トルク感が

減少した領域があります(1000rpmから2000rpmの間でほんの僅かですが、ややトルクの谷

を感じましたので)ので若干ですが、濃くして対処しました。

この理由は前述したように、流速の遅い領域では早めの噴射時期だと有効に燃焼室内に取り込ま

れるガソリン量が若干減ることからだと思われます。

次に5速全開ですが、気温が高いこの時期、私のクルマでは油温が上がってしまってあまり伸び

きらせるまではできなかったのですが、とりあえず5速7200rpmあたりまで回した限りでは

ほとんど空燃比的には変化は見られませんでした。


●体感としての変化

上記では、主に空燃比の数値の変化を見ましたが、では、肝心な実際乗ってみての体感はどう

なのかということになりますが、結果としてはそれほど悪くないと思いますが、かと言って

強くお薦めできるほどのものでもありません。

私のクルマの場合は、デスビを3度ほど進角させているのでクランク角センサーもそれだけ予め

進んでいることから、進角の小さいモード2でも充分なのではないかと考えていました。

ですが、いろいろ試していて最終的には4000rpm以上での伸びが感じられるモード1のほうが

フィーリングは良いと思います。

私のエンジン仕様の場合、4000rpm〜5000rpmを境にモード1とモード2の違いがハッキリ

しており、モード1の場合このくらいの回転数を境に、大袈裟にたとえるならVTECの切り替え

のような感じでエンジンの特性が変わります。

悪く言えば今まで以上にドッカンターボが強調されたと言えます。 ただ、これは低中速トルク

が減少したためのものではなくて、明らかに高回転でのフィーリングが向上したためです。

これはたとえば5速全開時などでのタコメーターの上昇具合を見てもわかります。 外気温が

高いにもかかわらず、回転の伸びが違ってきますので。

 

対してモード2は、確かに街乗りだけで使用しているぶんにはモード2のほうがフラットトルク

気味になるので乗りやすいのですが、モード1を試した後ではなんとなく上がモッサリ感じて

面白くありません。

たしかに低中速でのトルク感は増した印象はあるのですが、それとて所詮は軽自動車のレベル

での話ですので、劇的に変わるというほどのものでもありません。

結局、私の好み(と私のクルマの仕様)ではあまりモード2はパッとしませんでした。

 

結論として常に4000rpm以上をキープするような走りの場合はADICなしと、ADIC(モード1)

との差はそれなりに感じられるでしょう。

だからといって大きな変化は望めませんが、金額を考えるとコストパフォーマンスはそこそこ

ではないかと思います。

この類の製品によくある「高いわりに見合った効果がない」と言われないちょうどいい値段設定

というところでしょうか。

 

ただ、ピークパワー的にどうとか最高速が上がるとか、そこまでの実感はないです。

どちらかというと、そこまでに達する中間パワー、中間トルク的な向上の要素のほうが大きいと

思います。 もしピークパワー等、目に見える効果を要求、期待するのでしたら先にチューニング

ECUを入れるべきです。

このADICは空燃比や点火時期を変化させることが目的ではないので、どちらかというとアクセル

に対するトルクの立ち上がりレスポンスを向上させようとするフィーリング的な意味合いが強い

(人間というのは、トルクが同じでもアクセルワークにレスポンスよくトルクが立ち上がるエンジン

ほどトルクそのものが大きくなったと感じるものなのです)ので、多少は変わるとは言えエンジン

の絶対的性能を大きく上げることはほとんどできないと考えたほうが良いです。

メーカーのデータではランエボで10馬力ほど上がったと出ていますが、あれはあくまでノーマル

車両ですし、仮に280馬力車で10馬力ということは、その比率は約3.7%、つまり64馬力車で

僅か2.3馬力、仮に100馬力程度のエンジンでも3.7馬力程度がいいとことなります。

この程度のパワーの差では理論上、最高速度付近の空気抵抗のもとではさすがに数字上の差を生む

ほどのことはできません。

経験上、体感的にかなり明確に変化を感じるためには最低10%程度の出力(トルク)の向上がない

とすべての人に(敏感な人、鈍感な人などいろいろいますので)ハッキリ体感してもらうのは

難しいものです。

 

このパーツはチューニングECUを載せている車両よりもノーマルECUの車両のほうが効果が感じ

やすいのではないかと思いますが、少なくとも私が感じた限りでは世間一般で聞かれるこの製品に

対しての評判はちょっと誇張気味かなと思ったのが正直なところです。

(どんな物でもそうですが、販売店などは売るためにややオーバーな宣伝をするのが世の常です)

ただ、ADIC本体は基本的に汎用なので、効果の程度についてはもともとの車両のECUに依存する

ところがありますので、相性というか適性というか、要するに結果として大きく変化を感じられる

クルマとそうでないクルマはどうしても出てしまうと思います。

つまり、すべての車両で同じ効果が得られるというわけではないことは念頭に入れておいて下さい。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~