シャムスカ監督  (大分トリニータ 監督)

 

 

05Jリーグの途中、トリニータの監督に就任。

就任してからわずか数ヶ月、いや、数日で

サッカーファンの大きな注目を集めたのがこのシャムスカ監督だ。

あまりにも素晴らしい建て直しぶりを見せつけたせいで。

シーズン終了後と遅くなったが、今改めてこの名将を詳しく取り上げようと思う。

 

 

シャムスカ新監督就任のニュースが発表されたのは95日。

まず、それまでのトリニータの経緯を辿っていこう。

 

05年始め、大分トリニータにファンボ・カン新監督が就任。

11節を終えて、リーグ戦515敗、勝ち点16とまずまず。

この時点では順位も8位で、内容に不満こそ残るも、

文句のでる成績ではない。

 

しかし、徐々にボロが出始め、

負けが込み、いつしかえらいことになってきた。

ファンボ解任がついに声高に叫ばれたのは18節のホーム・アルビ戦。

前半に先制し、今日は勝てるかもとの期待をもたせたが、

その後3点ぶち込まれて惨敗。

サポーターの怒りが爆発して

試合終了後、フロント・監督とスタンドで話し合うことに。

 

 

運命を大きく変えたのは

ここで負けたら地獄に片足突っ込むという21節、ヴィッセル戦。

この大一番を終了間際、神戸・栗原の決勝点により1−2と落としたことにより

 

順位は自動降格圏内の17位、

勝ち点は最下位ヴィッセルと同じになり

一気にJ2降格の可能性が高まる。

 

というか僕自身、

「ファンボのままだと・・・・・・間違いなく落ちる」 と思った。

 

そしてこの敗戦を喫した後、

深夜3時にファンボ・カン監督は原強化部長の元を訪れ、辞任を表明。

827日、21節でついに監督の座を降りることとなった。

この時巷での反応は

「遅すぎる・・・・・!」

 

9322節のジュビロ戦では

アーリー・スカンズが暫定的に監督を務め、

その2日後の95日、シャムスカ監督就任が発表されたのである。

 

そして公式戦初采配となった

アウェー・レッズ戦でいきなり勝利をあげたのを皮切りに

その後も勝ち続けて、残留争いからもサックリと離脱。

大きな注目を集め、現在に至るというわけだ。

レッズ戦で勝利した直後のトリスレを日記の方でまとめたのだが

この時は一過性のものだろうと思ってたし、まさかここまで凄い人だとは思わんかった。

 

 

 

一通りシャムスカ監督就任までの経緯を説明した後で

今度はシャムスカ監督就任以後の結果を紹介しよう。

というか、あまりに有名すぎて紹介するまでもないのだが・・・。

 

 

<ファンボ・カン就任時>

11 1-0 川崎

12 1-2 磐田

13 0-2 横浜

14 0-0

15 0-1 広島

16 0-2 G大阪

17 1-1 鹿島

18 1-3 新潟

19 1-2 川崎

20 1-1

21 1-2 神戸

22 1-2 磐田

<ここでシャムスカ監督就任>

23 2-1 浦和

24 2-0 名古屋

25 0-0 F東京

26 3-0 横浜

27 5-0 清水

28 2-1 G大阪

29 0-1 千葉

30 4-0 広島

31 1-1 鹿島

32 1-1 C大阪

33 2-1 大宮

34 2-4 東京V

 

 

 

うーむ・・・・・ これは・・・・・ッッ!!!

まさに激変ッッッ!!!

 

 

なんでファンボ就任時のドローが「▲」表示で、

シャムスカ就任時のドローが「△」なんだという突っ込み待ちの表なのだが、

なんとなくこっちの方がわかりやすいというか・・・・・。

気分的には当たってるというか・・・・。

 

シャムスカ監督就任前の12試合は

1勝 3分 8敗と酷すぎる成績だ。

まるで降格まっしぐらチームの成績である。

 

しかし!シャムスカ監督就任後の12試合は

7勝 3分 2敗!

まるで常勝チームのような成績を残した。

 

これは言うまでもなく快挙。

Jリーグの歴史に名を残す快挙だ。

これを巷ではシャムスカマジックと呼ばれる。

 

12試合中負けたのはジェフとヴェルディだけ。

しかもヴェルディ戦なんかは1.5軍メンツで挑んだものなので

そこまで大したものではない。

 

 

 

さて、次に肝心のシャムスカ監督そのものについて説明していこう。

 

まず、今までの監督歴だ。これが凄まじい。

 

 

ビトーリア 1992年〜1995年 → サンタクルス 1996

→ ミラソ―ル 1997年 → アメリカ 1997

→ リオ・ブランコ・エスポルテ 1997年 → アトレチコ 1998

→ アラゴアス 1998年 → ビトーリアTD 1999年〜2000

→ ビトーリア 2001年 → コリンチャンス 2001

→ ミラソ―ル 2002年 → ブラジリエンセ 2002

→ カシアス 2002年 → サンタクルス 2002年〜2004

→ サントアンドレイ 2004年 → サンカエターノ 2004

→ ゴイアス 2005年 → ボタフォゴ 2005

 

トリニータに就任する前までに

なんと17クラブの監督を務めてきたのだ。

酸いも甘いも歓喜も絶望も知り尽くした老監督ならまだしも

シャムスカ監督、06年現在まだ40才である。

それでいてこの指導歴。この建て直しぶり。とんでもない男だ。

 

そういえば04年にトリニータの監督を務めたハン・ベルガーも

53才だというのに監督経験22年という凄まじい猛者だった。

こういう、「お爺さんではないが監督経験はかなり豊富」

という名監督を連れてくることに関しては

トリニータはうまいと言えよう。

 

あと、

「前監督が酷いの?それとも現監督が凄いの?どっちなんだ。」

という意見をよく目にしたのだが、それは “どっちも” だろう。

 

 

シャムスカが就任してからチームの雰囲気は激変。

練習時にも良いムードが充満しているだとかは、

トリサポ、シャムスカファンの皆さんはよく知っていることだと思う。

 

前監督、ファンボ政権下ではどうだったのか。

これはスポーツライター坂下氏のレポートが詳しい。

 

・ 選手に感情的な対応をとった

・ 失敗した選手はすぐに外した

・ 外した選手に対し、理由を説明せず

・ ミーティングでは選手を名指しで批判

・ 試合ごとに「戦犯」が生まれた

 

改めて思い起こすと、本当にヤバイな・・・・・。

加えて、原田、パトリック、阿部、ドドという主力選手たちの退団。

残留できるかかなり微妙なところだったのに

よくここまで持ち直したものだ。

ひとえにムード・環境づくり、選手をうまくのせたということが大きい。

モチベーション作りに相当長けていると言える。

 

また、結果残したということだけでなく

トリニータのサッカーが

実に面白いサッカーである・内容も素晴らしいということも見逃せない。

基本フォーメーションは3−5−2。

ボール支配率はかなりのもの。

数字以上にボールポゼッションの高さを見せつけ、

テンポよくパスをつないでいて見てて面白い。

パスをつなぎ、パスをつなぎ、パスをつなぎ、

いつの間にかゴール前まで進出しててサクっとゴールが決まるなんてことも。

 

 

5−0で勝ったエスパルス戦、見ました?

衝撃のスコアであり、

トリニータのJ1歴史上初めて

相手を完膚なきまで叩きのめし、相手の意気を完全に殺いだ試合だった。

(掲示板で酉さんに指摘されて気づいたが、8−0で勝ったウイングでの神戸戦があった・・・・)

その試合の中で驚いたのが守る時のプレー。

 

 

もうね、守備の時間でもトリニータの選手達は

たっのしそ〜に守備してんですよ。これが。

 

攻撃の時にサクサク回してって楽しそうに見えるなんてことはよくあるが、

守備の時でこんなノリノリで守っているなんてシーンはそうお目にかかれない。

 

僕はこのシーンを見て、

ああ、とんでもないチームに化けたな・・・・と震え上がったね。

サカダイでは “その全てがあった” と題されていたがまさにその通り。

エスパルスの悪いところ、トリニータの良いところ全てがでた。

そこに全てがあった、その全てがぶつかったゲームだったと言える。

 

 

そして選手交代にしても非常に好感がもてる。

忘れられないのが熊本でのグランパス戦だ。

1-0でリードした後、後半半ばすぎたら普通はDFなどの守備要員を投入するでしょ。

ところがシャムスカの投入したのは

山崎雅人、木島良輔、西山哲平。

 

・・・・おい。

・・・・FW、FW、攻撃MFじゃんか!

“リードしてても攻めの姿勢を” とはいえまさかここまで強気にでるとは・・・・。

しかも結局後半44分にマグノがダメ押しとなる

2点目を突き刺して見事勝利を確定づけるのだからたまげる。

サカダイの採点表では

「リードした後FWを投入したところに監督の哲学をみた」

と評されていた。

 

 

また、発言もカッコいい。

カッコいい発言で有名なものとしては

 

「シャムスカマジックでは無く、大分マジックと呼んでくれ。」

 

「デザフィオ(挑戦心)こそが僕を成長させてくれる。」

 

「前に行くのを怖がらずに5人、6人、7人で攻撃するのが自分のサッカー」

 

「大分で私のオフはない。24時間すべてサッカーに捧げている」

 

などなど。

 

だが、僕が一番好きなのはこのコメントである。

J1 第29節、名将オシム監督との対決で注目を浴びたジェフ戦。

結局このゲームは大分 0 - 1 千葉とトリニータが敗戦を喫した。

試合後、どんなコメント残すのだろうと思ってみたら・・・・。

 

 

●シャムスカ監督

「千葉はすごいいいチームです。

    (中略)

今日はチャンスは沢山あったが、負けた原因はシュートの正確性だと思う。

試合前に選手に話したのは、細かいことを気をつける事で、この試合に勝てる。

失点の場面で壁を三枚入れたことが間違いだった

 

 

「失点の場面で壁を三枚入れたことが間違いだった」

 

 

細かいな!!!

 

ゴメン、これは笑ってしまった。面白かった。

壁の部分で間違いを認めたか。

個人的にこのコメントは非常に好きである。

 

 

ちなみにシャムスカ監督の相手チーム分析能力は非常に高い。

徹底して相手チームのビデオをチェックし、

選手には分かりやすい様にピンポイントに編集したDVDをベースに戦術を教えている。

そして彼一人だけではなく、周りのサポートも見事だ。

 

絶対に欠かせないのは実弟のマルセロ。

試合中、マルセロヘッドコーチを前半に観客席に忍ばせ、

観客席から見た視点で後半戦に修正。

ピッチレベルから見るシャムスカと観客席から見るマルセロ。

彼ら2人の分析が融合する。

このため、前半押されてても、後半はしっかり立て直しが出来て強いのである。

 

 

 

 

 

いかがだっただろうか。

このシャムスカという男に魅せられる人は多い。

結果、見せる内容、コメント、人心掌握術、彼の哲学・・・・

指揮をとってまだわずか数ヶ月ながら

シャムスカを信奉する人・・・・・僕もその一人である。

本当に見事な監督だ。

 

元々、ブラジルでは有名だったらしい。

来る前に騒げ

というサイトでかなり詳しく紹介されている。

(このサイトは凄くためになる)

実際に読んでみるとシャムスカの素晴らしさにため息がでるよ。

 

以下、引用

 

ペリクレス・シャムスカ

小〜中規模のクラブで采配を執り、

資金力に恵まれないチームを組織サッカーでまとめ、

一流チームと互角の戦いのできるチームへと育て上げた。

この頃に監督としてのスタイルを確立したらしく、

就任したクラブには急激な補強の停止と

過剰なマスコミへの情報露出の禁止を願い出ることが以後のシャムスカの常道となる。

 

キラ星の如く輝くマジカルなタレントを操ってナンボという

ブラジル人監督とは一線を画する組織サッカーをモットーとするが、

在籍選手それぞれの持ち味をフルに活かす

「個の為の組織」を作れる希有な監督である。

 

(中略)

 

選手の育成・再生に加えてアクの強い選手を掌握し使いこなす

マン・マネージメント能力にも長ける。

他の選手のゴールアベレージも高く、好むスタイルはかなり攻撃的、ポゼッション重視。

選手を型にはめず実力を十二分に引き出す手腕は神懸かり的なほど。

 

(中略)

 

好感度が持てるのが「現有戦力整備が最優先」という看板を掲げている点。

資金力がなく、伸び悩む選手たちを抱えた

小〜中規模クラブに赴いては競争力を高めた。

とりあえず名選手を補強すれば順位が何とかなることが多く、

結果場当たり的な補強に終始することの多いブラジルのサッカーにおいて

この姿勢を打ち出す同氏の方針は異端。

 

一方大変信念が強いらしく、コリンチャンス、サンパウロ、パルメイラス等々

国内強豪に加えてポルトガルのチーム、

さらにセレソン次期監督に至るまで引く手あまたながら一切を固辞。

マスコミに喧伝せず、選手の出入の激しさの無い「静かなクラブ」での仕事を望み続け、

納得いく環境でなければ決して契約しない頑固者。

 

 

 

 

改めてこの「来る前に騒げ」の文章を読むと

よくぞこんな素晴らしい監督がJリーグに来てくれたとただただ嬉しく思うばかり。

 

ここまで有能だと、恐れるのは他クラブからの引き抜きだろう。

監督の引き抜きというと、どうしてもベルデニックの件を思い出してしまうので

最初、「グランパス、今季終了後に引き抜くとか・・・・いや、むしろ既に動いているかも・・・」

と邪知したが結局トリニータに残留し、06年も指揮をとることが決定。

トリサポからすればほっとしただろう。

 

 

さてここで唐突に余談。

シャムスカ監督はアイスクリームとチョコレートが大好きである。

 

それを聞きつけたトリニータの溝畑社長は

「勝ったらアイスクリームパーティーを開こう」 と約束。

したらいきなり初戦で勝ってハーゲンダッツで祝杯を挙げる。

 

お開きの際、

「あと11試合勝って11回アイスを食べ続けよう!」

と誓ったそうだ。

既に現時点で天皇杯も入れれば8回もアイスパーティーやってる計算になるが・・・・。

血糖値は大丈夫かな。

(ちなみにこのパーティーは監督・社長・強化部長の3人のみでやってるクローズドなもの)

 

社長と強化部長が

「うぷ・・・・。さすがに濃厚なのを8連続はキツイ・・・・。」

「社長・・・・。次回からシャーベットに変えませんか・・・・。」

とこぼしている光景が目に浮かぶ。

そしてそれをよそにパクパク食べ、

「他には無いのかね?」

とおかわりをねだるシャムスカ。目に浮かぶ。

 

 

そういえばエルゴラで何と2号に渡り丸々一面使っての

シャムスカ・ロングインタビューが。

んで、そのインタビューの中で・・・・。

 

 

 

――― 大分でのお気に入りの食べ物は?

 

「『にんにくや』のパンの上にアイスクリームを乗せたデザートが最高だよ。

 ブラジルでは見たことなかったからね。」

 

 

 

 

シャムスカ先生!またアイスですか!

ホントに好きなんだな。

 

 

 

「ブラジルでは見たことなかったからね。」

このセリフ。

 

「ブラジル中のありとあらゆる種類のアイスを食べつくしたが、

 これはブラジルでは見たことなかったからね。」

と言っているように思えるのは気のせいですか。

むしろこの意訳で正しいよね?

にんにくやのそのデザートはこれ。美味しそう。

(リンク貼ってくれた酉さんありがとうございます)

 

 

 

以上より、トリニータから強奪を目論むクラブ関係者に忠告する。

交渉のテーブルでは必ず、とびきり上等なアイスクリームをチラつかせることだ。

シャムスカは引用文の通り、金や、設備、地位や名誉に惹かれて動く男ではない。

しかし、とびきり上等なアイスがあれば奇跡が、

シャムスカマジックが起こる可能性はある。

 

・・・・ここまで書いたが、

今後この小ワザが必要になるのはトリニータの側だった。

06年も結果を残したとなれば、シャムスカ引き止め工作に必死になることは間違いない。

その時はアイス方面へも一応、知恵を回すべきだ。

 

シャムスカ御用達の『にんにくや』と裏でタッグ組み、

トリニータ監督就任中はアイス増量だとかデザートは無料にするとか。

それこそ強化費から、『にんにくや』へ

アイスの新しいフレーバーや新アイスデザートなどの開発費を少しくらい回したっていい。

 

そうゆう本当にバカバカしくて、どうでもいいことにまで気を回せ。

 

 

頼むよ。

(UP日 05年2月11日)

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