1ステージ制の麻薬性

 

 

Jリーグは05年シーズンから2ステージ制ではなく

1シーズン、1ステージ制となった。

今回はその1シーズン制の麻薬性についてとりあげようと思う。

 

 

1ステージ制については散々今まで議論されてきた。

01年のジュビロのようにあれだけ勝ち点がダントツだったのにも関わらず、

2ステージ制の問題により年間優勝を逃してしまった事例などから

1ステージ制を強く望む声があちこちであがったのにも納得がいく。

 

しかし、その1ステージ制移行すべしの理由が

「世界主流だから」

「年間勝ち点がトップなのに優勝できないのはおかしい」

このような、あくまで“矛盾点をなくす”という

カッチリと理論めいた説き方が多かった。

 

もちろんそれ自体に問題あるわけではないんだけど、

でも、もっと感情に訴えかけるような・・・・・・

データとか数字に捉われないような説き方、つまり

1ステージ制に移行することは

サッカーによりハマっていき、よりサッカーに漬かっていける」

そんな風に思わせる説き方はないのか?

 

 

と、そんな時、当時感銘を受けたのがこの文章。

031216日、サッカーマガジン952号。

奇しくもマリノスの完全優勝を報じる号だ。

そこに載せられていた、えのきどいちろうさんの文章である。

03年のJ2最終節、フロンターレvsサンフレッチェを観戦した後のもの。

 

 

 

 

「僕が言いたいのは

 J1もそろそろ1シーズン戦ったほうがいいということだ。

 

 

 見える世界が違う。

 台無しになるものの大きさが違う。

 昇格を決めた新潟も広島も地獄の淵を見たことと思う。

 

 

 そのなかで死力を尽くし、最終節、それぞれの信じるサッカーを表現した。

 2ステージ制に足りないのはその濃密さだ。

 

 

 

 “セカンドステージはどこが優勝してもおかしくない大混戦” 

 と、マスコミは持ち上げたけれど、僕に言わせれば

 脳天をぶち割られ、

 ハートに風穴が開いた川崎サポーターこそが

 サッカーの本当の麻薬性を知ったのである。

 

 

 

 思えば残留争いだけがJ1という舞台で1シーズンの戦いをしている。

 次週、大分スタジアムの「大分×仙台」には

 魔がさしたような何かがぽっかり出現するだろう。

 

 

 それがサッカーっていうんじゃないか。

 それがサッカーだと思って一生離れられなくなるんじゃないか。

 勝者と敗者のコントラストを胸に刻み、

 いつまでも忘れられないんじゃないか。」

 

 

 

なるほど・・・・

「サッカーの本当の麻薬性を知ったのである。」 か・・・・。

これが今回のコラムの表題でもある。

 

J2ではあと一歩で昇格を逃したチームの

選手、スタッフ、ファン、サポーターに

強烈なトラウマを植えつける。

あと一歩というところで、見事目標をクリアすることができるか、

もしくは全てがガラガラと音を立てて崩れるか。

 

監督・選手は当たり前だけれども

昇格することができた場合は「100点」と言い、

昇格に失敗した場合は「0点」と形容する。

 

 

新潟・反町監督

「昇格できれば今シーズンは満点。できなかったら0点。」

 

 

元新潟・秋葉

3位もビリも同じ。

上がれなかったら今までやってきたことがプロとしてパーになる。」

 

 

C大阪・西村監督

「理想のサッカーがあるとは思うんですけど、

 今年については、やはりJ1に昇格する。それが全てだと思います。」

 

 

いずれも昇格ギリギリのところで凌ぎを削っているチームの

選手・監督のコメントである。

だからこそ、ショックも大きく、そしてまた麻薬性を知ることにもなる。

 

これは当該サポーターでなければわからないものだ。

 

 

99年の1121日、J2最終節・モンテディオ戦の大分市営陸上競技場。

ロスタイムにフリーキックから同点弾を浴びた

トリニータサポーターの気持ち。

 

02年の43節、天王山となったC大阪vs新潟の長居。

ロスタイム、トゥルコビッチによってダメ押しとなる3点目が入った時の

アルビサポーターの気持ち。

 

03年の43節、ベルマーレ戦。

坂本のミラクルゴールが決まって引き分けに終わり、

そして最終節、サンフレッチェに勝ったけれども届かなかった

フロンターレサポーターの気持ち。

 

04年の43節、水戸戦。

ロスタイムに自殺点が入って引き分けに終わり、

そして最終節にホームで3位アビスパとの直接対決に敗れ去った

モンテサポーターの気持ち。

 

同じく04年、レイソルとの入れ替え戦、

ホーム・アウェー共に完敗したアビスパサポーターの気持ち。

 

もちろん今までのJ1が軽いということを言いたいわけではなく、

この1ステージ制によってより一層優勝の喜びも大きいものとなり、

それと同時に優勝を逃した時のショックもより一層大きいものとなる。

そしてサッカーの本当の麻薬性を知ることになる。ということだ。

 

 

 

現在、J1はこの時点(31節終了時)ではこのような順位となっている。

 

1位  ガンバ大阪     勝ち点 57  +24

2位  セレッソ大阪    勝ち点 56  +8

3位  鹿島アントラーズ  勝ち点 55  +20

 

優勝の喜びはさぞかし大きいものだろう。

 

そして同時に優勝逃した時のショック、

脳天をぶち割られ、ハートに風穴が開き、サッカーの本当の麻薬性を

ガンバかアントラーズどっちかが味わうことになる。

 

(失礼を承知で言えば、セレッソはガンバとアントラーズに比べれば

 そこまで優勝を逃した時のショックは強烈ではないだろうと個人的には考える。)

 

 

J1開幕から長い間首位をキープし、

独走してきたアントラーズ。

もし優勝を逃した場合、そのショックは大きい。

今まであれだけ安定し、したたかな強さを見せつけて勝ちを積み重ねてきたのに・・・・

小笠原も移籍を封印したのに・・・・・

届かなかった。

相当な傷跡を残す。

 

そのアントラーズをじわじわと追い上げ、

首位にたったガンバ。

もし優勝を逃した場合、そのショックは大きい。

あれだけの強さ、破壊力を見せつけてきたのに・・・・・

アラウージョが去る前に、チーム初タイトルが後少しでとれたのに・・・・・

ナビスコカップも後一歩というところで敗れたのに・・・・・

リーグ戦もとることができなかった。

相当な傷跡を残す。

 

 

ガンバとアントラーズのどっちが

優勝を逃した時の辛さを味わうのかはわからない。

そして、それはさぞかし辛いものだと思う。

でも、えのきどさんの文章をそのまま使えば、こういうこと。

 

それがサッカーだと思って一生離れられなくなるんじゃないか。

勝者と敗者のコントラストを胸に刻み、

いつまでも忘れられないんじゃないか。

 

(UP日 05年11月22日)

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