岡中 勇人 (大分トリニータ GK

 

2005年、11月24日。

トリニータから一つのニュースが流れた。

 

「岡中勇人選手 現役引退のお知らせ」

 

そうか・・・・・・。

引退・・・・・か・・・・・・・。

 

今、改めてこの岡中という素晴らしいゴールキーパーに敬意を表し、

彼の名場面を振り返ってみようと思う。

 

 

0204年にかけて大分トリニータの正GKを務めた男。

数々のビッグセーブを連発し、神と呼ばれた男。

03年にチームは低迷するも

スーパーセーブを連発し、チーム年間MVPに輝いた男。

 

 

03年のトリニータは得点がかなり少なかったものの、

失点もまたべらぼうに少なかった。

 

それは三木、サンドロといった守備陣の奮闘もあるが、

この岡中という神が最後尾に控え、

そして絶大な安心感を放っていたのが大きな要因だ。

はっきり言って岡中がいなかったら

03年トリニータの残留はありえなかったと思う。

 

 

なんといってもここ一番!

といった舞台で強く、頼りになるGK

技術的なレベルでいえば楢崎や曽ヶ端のレベルではないかもしれないが、

精神力のレベルではJ最高だろう。

 

岡中の神がかった試合ベスト3をあげろといわれたら・・・

 

 

1、

03年残留争い天王山

2nd stage サンガ戦での黒部のPKセーブ

 

これはハンパじゃなく痺れた。

 

トリニータ○1−0●サンガのコラムで詳しい内容は書いてあります。)

PKをセーブした瞬間見せた、

あの岡中の雄叫び・・・・・漢だ、漢すぎる。

 

きっと黒部はこのPKを止められた瞬間、

そして岡中の咆哮シーンを何日も

忘れることができなかっただろう・・・。

 

 

 

2、

J1初勝利をかけた、03

1st stage ガンバ戦でのマグロンのPKセーブ

 

これも神だった。

 

J1初挑戦となった03年。

開幕戦はベガルタにアウェーで0-1の敗戦。

2節のホーム開幕戦はジェフに0-4と惨敗。

この時、岡中は負傷により欠場していた。

 

1点もとれないばかりか、

チームは守備に自信を持っていたのに

まさかの4失点・・・・・・。

おまけに次節の相手は強豪ガンバ。

チームに重く、苦しいムードが漂った。

 

そんな時に神が復活した。

負傷から戻ってきた岡中がスタメンに復帰し、

最後尾に神が控えているという安心感からか

チームは勢いよく攻め立て、51分には21とリードする。

 

しかし!53分、サンドロが遠藤の足をひっかけてしまいPK宣告。

キッカーはエース、マグロン・・・・・

 

岡中がこのPKを止める!

 

これでさらに勢いづき、

ガンバ相手に3−2という勝利を、

J1初勝利を挙げたのだ。

 

この試合、トリニータの勝利を信じていた人はわずかで、

totoの投票ではガンバの勝利に賭けた人がなんと81%!

驚異的な数値だ。

ガンバ相手に、そしてこんな派手なスコアで勝ったというニュースに皆驚いた。

笑ったのはガンバの試合速報ページ。

 

「右サイドから遠藤がドリブル突破した際、サンドロが足を引っ掛けPK。

 マグロンが岡中の反応を見てシュートしたが、動かなかった岡中の正面に。

 魔さかのPKミス。」

 

“魔さかのPKミス。” 

 

ああ、わかる。わかるよ。ガンバオフィシャルの中の人。

それだけ驚き、取り乱してしまったんだよな。

かなり取り乱して、タイプミスしちゃったんだよな。

そんな風に、どれだけガンバ側が岡中にしてやられて

驚いたかがわかるエピソードの一つと言えよう。

 

 

 

3、

J1昇格に王手をかけた、02

第4クール アルディージャ戦での完封勝利

 

これも素晴らしかった。

 

この試合、何度バルデズを擁する

アルディージャ攻撃陣に苦しめられたことか。

前半に山根がヘディングでねじ込み、トリニータが1点リードして

昇格をグッと引き寄せるのだが

その後はアルディージャが昇格させまいと攻める攻める。

そんな猛攻を気迫のセーブで止め、弾き、守り倒したのが岡中神。

 

普通とは逆のエンドをとっていたので、

ゴール裏のトリニータサポーターは目の前で岡中の

ビッグセーブを何度も目撃することに。

こんな魂のこもったセービング、間近で見せられたら

涙流し、岡中に一生ついていくと思うよ。

 

 

この3つかなぁ・・・

あ、あと

 

03年最終節・残留決定戦

ベガルタ戦での小村のシュートセーブ

 

これも凄かった。

セットプレーの混戦から放ったベガルタDF・小村のシュート。

これをヒザで弾き返した。

完璧に枠にいっていたし、入ったと思ったが

抜群の反応でゴールを死守。

 

この試合終了後の神のインタビューは以下の通り。

 

岡中

「いやー・・・・・疲れました・・・・。

 本当に疲れました。」

 

とか言いつつ、全然疲れたように見えなかったのが凄い話。

あくまで表には出さず、

「顔で笑い、心で泣く」 そのものだった。

 

 

こうやって書いている今でも

彼のビッグセーブの光景が色あせず浮かんでくる。

しかし悲しいかな、僕が岡中のプレーを見始めたのは02年からなのだ。

だから90年代のガンバ所属時代、岡中が

いったいどれだけ素晴らしい活躍をしていたのか知らないし見たこともない。

それが本当に残念だ。

 

 

04年は当時のベルガー監督

鹿島から新加入のベテラン・高嵜の方をよく起用し、

ポジションを奪われて岡中の出場機会はあまりなかった。

(それでも2ndstageのエスパルス戦では

平松のシュートをガッチリ弾き返すなどの活躍を見せ、見事完封勝利に貢献。)

05年には江角、そしてトリニータユースからの生え抜きである

西川という若い2人のゴールキーパーが成長し、

出場機会を得たこともあって岡中の出番はほとんど無くなってしまった。

 

だが、それでもまだクラブに必要な選手だったと思うし、

引退は本当に残念に思う。

また、現役引退記者会見での、

溝畑代表取締役の言葉が凄く心をうつものだった。

 

 

 

トリニータ・溝畑代表取締役

 

「昨日、岡中選手より現役を引退したいと申し出がありました。

岡中選手は、トリニータがJ1昇格、J1残留等

貴重な4年間の中で多大な貢献をして頂きました。

 

2001年11月末だったと思いますが、大阪で初めて会いました。

トリニータのJ1昇格に向けて4度目のチャレンジをしたい。

今必要なのは、経験と自信のある軸になれる選手。

ぜひ九州出身の選手としてトリニータに力を貸してほしいと申し出ました。

 

それに対して岡中選手がガンバで築き上げた実績に対して、

もう一回最後の勝負をかけたいと快く申し入れに対して承諾してくれました。

厳しい戦いの中、一貫してチームをキーパーとして鼓舞してくれました。

そしてこの年ディフェンスが固くなり、失点が少なくなったのは、

岡中選手のリーダーシップによるところが大きかったと思います。

 

なによりも私が感心したのはどんな局面でも岡中選手と

キャプテンだった浮氣選手二人が苦しい局面になった時に鼓舞してくれていました。

昇格という時に精神的にも技術的にも一番力になってくれました。

そして昇格一年目我々がまだ監督を始め

ほとんどの者がJ1を知らない初めての体験の中で、

文字通りJ1での戦いについて大いに選手を引っ張ってくれました。

 

 

今でもこの年に覚えていることが二つあります。

 

ひとつは開幕から連敗し大変厳しい中、

古巣であるガンバ戦でPKを止めてくれた瞬間。

あの試合がJ1ホ―ム初勝利となりました。

古巣に対して勝ったことでトリニータに来たことに自信を深めてくれたと思います。

 

また、熊本での京都戦、1対0でむかえた京都のPKで、

思わず我々一同 「岡中頼む、止めてくれ」 と祈り、

これで勝ち点3か1かでクラブの歴史が変わるという思いで見つめていました。

そして見事に岡中選手がPKを止めてくれました。

残留を決定する上であのプレーは大変重要だったと思います。

 

残留を決めた仙台戦も怒涛のような相手の攻撃を1点で抑えてくれました。

一年目の残留において彼が果たしたものは非常に大きかったと思います。

 

 

それから三年目、四年目と怪我と戦っていました。

怪我との戦いの中で、非常に関心したことは、

試合に出なくても不平不満を言うことは一度もなかった。

そして若手の西川選手、江角選手を舞台に立たせるべく、サポートしてくれていました。

そして昨日晴れ晴れした顔で現役を終えたいということでした。

 

私が申し上げたいことは、彼がトリニータで過ごしてくれた四年間は、

トリニータの歴史の上でも非常に大きな役割と貢献をしてくれたということ。

クラブを代表して、岡中選手に対して感謝の気持ち、

そしてこれからは日本を代表する指導者そしてフロントとして大分、

日本という大きなフィールドでサッカー界を支えてほしいという話を致しました。

 

本当に岡中選手ありがとう。」

 

 

 

溝畑・・・・・・・ッ!!

 

よくここまで言ってくれた。

本当にその通りだ。

 

昇格という精神的重圧がかかる中、引っ張ったのは岡中だよな。

ガンバ戦、サンガ戦、ベガルタ戦はやっぱり

忘れられない素晴らしい活躍だったよな。

クラブの歴史史上に残る名選手だったよな。

 

岡中にとっても記者会見でここまで言われると本当に嬉しいと思うよ。

選手冥利に尽きると思うよ。

 

 

 

今週発売のサッカーダイジェスト812号では

西川と岡中の対談が載せられている。

僕はまだこれを読んでいない。

読むときっと悲しくなると思うし、ちょっと泣いてしまうかもしれない。

それで、岡中へ

 

「今までありがとう。そしてお疲れ様でした。」

 

って言うんだろうな。きっと。

今までありがとう岡中。

 

(UP日04年9月30日  リニューアル05年11月25日)

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