恐ろしいレーザー腐食

2001.4/22


 うわさに聞いていたレーザーディスクのレーザー腐食(英語で、Laser Rot。レーザー腐敗ともいう。)に初めて出くわしました。レーザー腐食とはいったいどのようなものであるのか、レーザーディスクの耐久性や、DVDの場合の問題と併せて触れていきます。

○レーザー腐食とは

 CDを始め、LD、DVD、MD、MO、CDRなど、現代の私たちは、非常に多くの光ディスクを媒体とする記録メディアを利用しています。そして、レーザーという非接触の手段で読み書きする特性から、こうしたメディアは半永久的もしくはそれに近い寿命と耐久性を持っていると思いがちです。 実際、針で物理的に接触して音を拾うアナログレコード、録画再生時にヘッドやガイドメカニズムと擦り合わされ、保存時も負担のかかる巻き取り状態で保持せざるを得ないテープに比べれば、 傷やひどい埃に気をつければ、はるかに安定して長持ちするように思えるのは、直感的に無理のないところです。ただ、本当にそうであるのかどうかについては、実は吟味の必要なところなのです。少なくとも、あまり一般的に知られていないアキレス腱が存在することは事実なのです。
 どういう弱点があるかについては、同じ光ディスクでも、それぞれに異なります。収録のための物理的方式の差、デジタルとアナログの差、記録密度の差、単一ディスクと貼り合わせによる両面ディスクの差、エラー訂正方式の違いなど、メディアとしての特性というのは普通考えられている以上に大きいのです。これらのうち、 このコーナーに関連のあるDVDについては、ここでも少し触れますが、いずれ改めて詳しく記事にしたいと思います。

 さて、今回のテーマであるレーザー腐食ですが、これは本質的には必ずしもレーザーディスクのみに限った事項ではないものの、通常は、レーザーディスクにまつわる重要な問題として取り上げられます。発生頻度が圧倒的に高いのでしょう。
 いったいどういうものか。ちょっと聞くと、プレーヤーのレーザーを浴びた結果、メディアが傷むのではないかという勘違いをしそうですが、そういうわけではありません。ピックアップであるレーザーとは無関係です。一言でいうと、記録面そのものが変質したり、あるいは表面に汚れが付着した結果記録面が痛んだりして、画像や録音が劣化するものです。原因としては、次のようなものが挙げられます。
 これらは、通常、相互に関連があり、複合して発生します。直射日光や湿度など、保存状態に大きな影響を受けることはいうまでもありませんが、特定の製造メーカーの製品メディアが著しくこのレーザー腐食に弱いという事実もありました。あまり品質の良くないものでは、記録面となるアルミ膜の純度が高くなく、あとあとの変質や錆の原因となる不純物を含んでいるわけです。
 カビと錆、および接着剤については多少説明が必要です。LDでは、2枚のディスクを貼り合わせて1枚のディスクにしています。だからLDはCDなどに比べると、かなり厚めです。問題はこのとき使われる接着剤の品質で、残念ながら、変質しやすく、また吸湿性が高いのです。このため、LDは扱いが悪いと反ってしまいます。また、吸湿性の高さから、水を呼び寄せて接着剤自体や樹脂表面、あるいは記録面のアルミにカビや錆を発生させてしまうのです。

○舞い込んだ腐食ディスク

 さて、問題のディスクですが、別に求めて腐食したLDを手に入れたわけではもちろんありません。入手経路はYahoo!オークションでした。あえてタイトルは伏せますが、ある洋画の2枚組LDを落札したのです。
 到着したLDを再生してみた私は、すぐ異常に気づきました。黒い雪のようなノイズが、画面の全体を継続的に覆っているのです。ちょうど、トラッキングの大きくずれたビデオを再生しているような感じです。裏返してみましたが、状況は全く同じです。音も、デジタルの入っていないアナログのみですが、妙な雑音が連続して出てきます。別の作品のディスクを再生してみて、プレーヤーの問題でないことはすぐ確認できましたので、メディア側の問題であることは間違いないようです。
 多少のノイズならそれほど構う気はないのですが、残念ながら画像、音声ともとても鑑賞に耐える品質ではありません。もしこれがビデオテープなど記録可能なメディアであれば、違法コピーのものだと思ったでしょう。実際、こうした製品様のLD複製の製作は可能だったっけ、としばらく真剣に考え、ディスクをしげしげと眺めたくらいです。
 ただ、不思議なことに、後述のようにジャケットが汚れているほかは、ディスクそのものはどうみても新品同様、中古にありがちな擦り傷もまったくないといっていいほどの状態です。
 いずれにしても、すぐに返品の段取りに入らなければならないというレベルでした。

○レーザー腐食の画像

 実際にレーザ腐食のディスクの画像はどのようなものか。下記に掲載します。

レーザー腐食を受けた画像  640x480の元の画像では、実はもっとはっきり確認できるのですが、縮小すると、細かいノイズが紛れてしまっています。それでも、黒と虹色の多数の光点が画面を覆っているのがわかります。1フレームごとにこれらのノイズがランダムに存在しますから、実際に動画で再生すると、何倍もの量のノイズが生じて見えます。
 この1枚だけ見ると、よくわからない、という可能性があると思います。正常な画像にも静止画ではカラーノイズなどが出がちですし、キャプチャー時にもノイズが乗ることが多いためです。それで、比較のための画像を載せようと考えましたが、あとでわかったのは、今回の2枚組LDのうちの2枚目、第3面は、ほとんど傷んでおらず、ほぼきれいに見ることができたのです。それで、その面から、まったく同じ条件でキャプチャーし縮小した画像を準備することにしました。同じ作品の同じディスクからの画像と見比べればわかりやすいと思いますので、比較して、違いを見てみてください。
 アナログ記録であるLDの場合、デジタルの場合のようなエラー訂正はありませんので、劣化した部分はそのままノイズとして現れます。記録面を錆、カビなどが覆うと、このように顕著に現れるわけです。

レーザー腐食を受ていない画像  このLDは、オークションの内容説明にも書かれてはいたのですが、下の写真でわかるように、茶色いシミが点々とついています。これは、湿度の高い状態におかれていたことを意味します。やはり保存状態に問題があったと言っていいでしょう。

 ちなみに、オークションの出品者には悪気は全くなかったようで、LDがこのような状態であったこと自体認識していなかったようです。というか、確認のためのプレーヤーそのものを所有していないようでした。
 メールで連絡を取ると、非常に恐縮され、ただちに返金に応じてくれました。また、状況を確認するために画像を送ることを申し出ましたが、その必要はない、また、送料も節約のため返品無用、ということで、全面的にこちらの言い分を信用してくれました。結局、こちらに送る際の着払いでかかった送料も折半に、ということになり、送料千円の半分ずつ、おたがいに500円だけ損したことになりました。もっとも、貴重な(?)レーザー腐食のサンプルが手元に残り、こうして記事を書けたことを考えると、私の方が得だったかもしれません。
 いずれにしても、大変良心的な出品者であったことは幸いでした。

シミのジャケット

○DVDのレーザー腐食

 ちなみに、DVDもLDと同じアルミの記録面であり、また同様に2枚のディスクを貼り合わせて1枚のディスクを作っています。理論的にはLDと同じく、レーザー腐食の危険性はあることになります。ただ、DVDでは、アルミの純度がはるかに高くなっていて、劣化の原因となる不純物は少ないそうです。ディスクを構成するプラスチックも品質がいいものが使われていて、さらに、接着剤は、接着力にすぐれている上、吸湿性はLDのものの1/10くらい、と言われています。
 一般には、「現在の所有者が生存中にレーザー腐食などに見舞われる心配はない」とされています。ただ、なんといっても新しいメディアです。LDだって登場したとき、もっと耐久性のあるものだと見なされていた時期がありますし、これから先、何が起こるかは正確なところはだれも予言できません。また、実際に深刻な劣化の問題が発生しているという恐い情報も、実は入手しています。これについては、またの機会に紹介します。

○これからのLDとのつきあい方

 いずれにしても、LDの寿命は半永久的、などと勝手に思いこんでいたら痛い目に遭う可能性が高いことは確かです。また、見た目ほどタフなメディアではなく、保存には細心の注意が必要なことを今回の出来事は物語っています。横積みにしたり、上に重量物を置いたり、直射日光に当たるところに放置したり、屋外の物置にしまったり、ということは絶対さけるべきです。
 今回のLDは、かなり古い上、保存状態も悪いケースです。その後の改善で、新しい製品については耐久性も向上しているかもしれません。しかし、いずれにしてもこれからプレーヤー自体が入手しにくくなり、中古は別にして、新しいLDを購入する機会もまれになるはずです。 幸いなことに、LDにはコピーガードの類はかけられていないので、重要なものについては、D−VHSやDVDレコーダーなどのデジタルメディアに保存していくということも考えておいた方がいいかもしれません。もっとも、うちのようにあまり買い込んでいないところでも、70枚や80枚はありますので、プライオリティをつけて少しずつ時間をかけてやって行くしかなさそうです。
 同時に、オークションやショップで中古を買うときは、少なくともジャケットの傷んだものを避ける、できるだけ持ち主に落札前の画質チェックを要求する、入手したらすぐに再生してみて品質を確認する、などの対応の大切さを再認識した出来事でした。


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