コピーガードについて

2000.09/02


 今回は、テープやDVDなどのビデオソフトにかけられているコピーガードについて、 その仕組み、それにまつわる著作権法や、コピーガードキャンセラーという代物などについて 少々触れてみたいと思います。
 なお、くれぐれも注意していただきたいことは、記事の趣旨は、コピーガードなるものに対する 単なる好奇心が大半、そしてわずかな残りの部分は、コピーガード破りという行為に対する警告と、過剰な規制 強化の風潮に対するささやかな不満の表明です。コピーガードを外したい人への情報提供や、そうした 違法行為の教唆(そそのかし)ではないので、決して誤解のないようにしてください。その種の情報は この記事からは得られません。

●DVDからDVにダビングしてみると…

 唐突ですが、私はコピーガードキャンセラーなるものを持っています。これは、後で述べる法改正 以前に購入したもので、今は購入(というか販売または譲渡)すると違法になる可能性がありますが、 所持しているだけでは確か違法ではないはずです。
 それで、先日、DVのデジカムを買ったので、そのコピーガードキャンセラーを使って、 DVDからのダビングを試みました。しかしこれについては、失敗しました。失敗したからこそ こうしてHPで公開できるのであって、これも後述しますが、成功した場合は、その時点で 現在の法律では違法行為になるのです。

 私がコピーを試みたのには、二つの理由があります。まず、私的にコピーするだけでも 違法であるということを知らなかったこと(後でいろいろ調べているうちにわかった)、もうひとつは、 コピーガードキャンセラーを使えば、DVDからDVへのダビングは可能だと思っていたということです (でなきゃ、初めから無駄な努力はしません)。

コピーガードあり正しく録画できません

 しかし、ちゃんと(?)キャンセラーを通しているにもかかわらず、DV側では、 『コピーガードあり正しく録画できません』とかなんとかいうメッセージが 出ます。それで、録画した後再生してみると、画面がモザイク状になって、 原型をとどめていません。機種によっては、一定時間動いた後自動停止するものも あります。

コピーガードモザイク

 実のところ、DVを扱う機会は前からあって、DVがコピーガードを検出し、 保護動作することは知っていました。ただ、うかつなことに、これはよく知られた マクロビジョンという方式のコピーガード(主としてVHSに有効)を、DVが検出し、 機能するものだと思っていたのです。したがって、アナログでの入力であれば、キャンセラーを通せば、 録画はできるだろうと思いこんでいました。ところが、マクロビジョンを外してしまうはずの キャンセラーを通しても、依然DVのプロテクトは働きます。ちゃんとコピーできないならそれはそれで しかたないので素直にあきらめますが、一体その正体は何なのか、むしろそちらの方にむらむらと好奇心が 湧いてきました。

●改正著作権法

 ここで、現在のコピーガードにまつわる法律について触れます。
 1999年10月に行われた法改正により、コピーガードキャンセラーは、販売が 違法になりました。このことをご存知の方は多いと思います。実際に、販売したため 逮捕された業者もいました。しかし、この法律によりどのような 規制が敷かれたのか、私たちの生活にどう影響するのか、正確に知っている方は、案外少ないのではないかと 思います。
 そこで、簡単に整理してみますと、
  • コピーガードキャンセラーの販売、譲渡は違法となる。
  • コピーガードキャンセラー、または同等の機能を持つ機器やソフトで、 故意にプロテクトを外す行為を行うと、それだけで違法となる。
という二点に集約されます。厳密には、前者は不正競争防止法、後者が著作権法です。
 これだけではピンとこないと思いますので、具体例をあげますと、
  • あなたがコピーガードキャンセラーをもっていたとして、それをだれかに売ったり あげたりしたとすると、それは犯罪となる。
  • コピーガードキャンセラーを持っていること自体は(おそらく)問題ないが、 それでコピーガードを外せると知っていて、それを使ってコピーを行うと、たとえ私的なもので あっても、その行為自体がすでに違法となる。
ということです。どうです、なかなかシビアでしょう。特に、後者のコピーするだけで違法、 というのは、偽札は作るだけで行使しなくても違法、という法律を連想させる厳しさです。
 例えばの話、ねゆばっかの妻が、夫が不正なコピーを行った、とタレこんだとして、 警察の手入れがあり、レンタルショップで借りたコピーガードつきの作品の複製テープが 見つかったとしたら、確実にアウトです。古い作品であれば、まだしも『法改正の 前にコピーしたものなんですぅ〜』とかなんとか言い訳の余地もありますが、それが 「シックス・センス」なんかだったりしたら、もうお手上げです。間違いなく法改正以後のリリース作品 ですから。
 こうしたことを考えると、「好意」で知人なんかにコピーガード外しした不正複製テープを ばらまいたりしたら、それはわざわざ自分で犯罪の密告文書をばらまいているようなものです。 心当たりのある方は、今からでも遅くないですから、回収に走ったほうがいいかもしれません。 しかしそう考えると、なかなか巧妙な法律ではあります。

●法律の適用例、非適用例

 話のネタとしては面白いので、このあたり、単なる興味本位でもう少し突っ込んでみます。

 まず、コピーガードを外す行為ですが、けっこう回りくどく、「コピーガードを外せると知っていて」 (法律では「その事実を知りながら」という表現になっている)などとなっていますが、これには わけがあって、コピーガードを外すことが目的でないのに外れる場合があるのです。例えば、 古いテープの画質劣化の大きな原因のひとつがテープの傷みや延びによる同期信号の劣化ですが、 これを補正してやって、画質を改善しようという技術があります。長くなるので詳細は省きますが、 TBCと呼ばれるこの機能はビデオデッキなどにもついているものの、コピーガードをキャンセル しないように処置されています。しかし、外付けの機器でこの補正を行うものについては、いっしょに コピーガードも外してしまうものがあります。コピーガードを外せるなんて知らずにこの機器を使ってコピーし、 それで捕まったのではかないませんから、こういうただし書きがあるわけです。私の所有している もののように、「Copy guard canceller」などと書かれている機器を使ってしまうと、このような 弁解は通じません。デジタルコレクター、くらいの名前なら何とかなるのでしょう。

 複数の映像機器からの入力を、リアルタイムで切り替えることのできるデジタルビデオ スイッチャーなども、おそらくこうした使い方が可能です。入力する機器ごとの同期信号が 異なり、そのままでは切り替えたとき画像が乱れるので、いったんフレームメモリに書きこみ、 自分で発生させた同期信号を乗せて送り出すからです。ただし、この種の機器は、キャンセラー 外しが目的で買うには、今のところ高価すぎます。

 一方、ダブルデッキなどで、コピーガード信号ごとコピーしてしまう機種があります。この場合、 私的なコピーであれば、コピーガードを外したことにはならないため、違法ではありません。 ちょっと妙な気もしますが、それが法律というものの宿命なのでしょう。
 同様に、8ミリビデオやベータへのコピーもうまくいく場合がありますが、これも複製先のテープに コピーガード信号を含んでおり、これをさらにVHSなどにダビングしようとするとうまく行きません。 何年か前、実際に『マーズアタック』のDVDを据え置きのHi−8でダビングし、それをHi−8ビデオ カメラで再生したことがありますが、まったく問題なく使えました。目的は、旅行先で友人と 映画を楽しむことでした。正直このときは、DVDにコピーガードが入っていなかったのかと勘違い しましたが、ビデオカメラの出力をたまたまVHSデッキのムービー入力につないで再生しようとして、 ばっちりコピーガードがかけられていることに気がつきました。
 ちなみに、このときの据え置きデッキはEV-NS9000、ビデオカメラはCCD-VX1という機種でした。

 なお、私のうちにはED−βというベータの機種のデッキ(EDV-9000)がありますが、実はこれを使った コピーガード外しの手段があります。まず、ビデオソフトからこれにいったんダビングします。このデッキには 通常、マクロビジョンが効かないので、上記のようにうまくいきます。次に、このED機で、 デジタルスロー再生をします。スロー再生といっても、最大速度にすると1倍で、しかもこのときは音声も 出ます。デジタル再生は、いったん画像フレームをメモリに読み込み、改めて同期信号を生成して送り出すため、 この時点でコピーガード信号も除去されてしまいます。これでコピーガード外し一丁あがり、です。
 法律的に見ると、問題は、これを意図してコピーガード外しに使ったかどうかです。こういう回り くどいことをしても、コピーガード外し以外のメリットがあれば言い訳が可能ですが、上記の画像補正機器の ような大義名分はちょっとなさそうです。いくらDVなみの解像度を誇るED−βでも、しょせんは アナログ機、二度もダビングすれば画質の劣化は顕著です。つまり、これも違法行為と判断されるでしょう。

●DVの検出するコピーガード信号

 話を元に戻します。DVDからDVにダビングするときに邪魔をした、コピーガード信号の正体は なんでしょう。
 その前に少しだけ補足すると、DVDの場合、コピーガードは通常、マクロビジョンだけで なく、カラーバーストというのが重ねて加えられています。マクロビジョンが同期信号を狂わせる 仕組みであるのに対して、カラーバーストというのは、カラー検出信号を狂わせ、色のついた 縞模様を発生させます。マクロビジョンだけを外せるコピーガードキャンセラーを使った場合、 この縞模様が発生することになります。
 ちなみに、マクロビジョンについて言えば、VHSのソフトテープは、ビデオソフトの信号自体に コピーガード信号を含んでいます。つまり、発生源はテープのソフトそのものです。これに対し、DVDでは、 プレーヤーがソフトのデジタルフラグをみて、このマクロビジョン信号とカラーバーストを発生させます。 つまり、もともとの映像信号に含まれているわけではなく、プレーヤーが発生源なのです。このため、 ネット上などでよく販売されているリージョンフリーなどの改造プレーヤーでは、マクロビジョンもフリーと なっているものが存在するのです。DVDにこのコピーガードをかけるときは、ソフトメーカーはマクロ ビジョン社に権料を払います。

 さて、やっと本題です。DVへのダビング時に効果を発揮したコピーガード信号ですが、この正体は、 CGMS−Aという信号でした。最後のAはアナログのAで、CGMS−Dという デジタル用の信号も存在します。
 この信号の組み込みには、NTSCの525本ある走査線のうち、上に隠れて表示されない走査線を 使います。これはクローズドキャプションという英語字幕を表示させるための信号と同じ要領です。
 この信号は、直接録画側の機能に影響を与えるわけではありません。この信号を無視すれば別に問題なく 録画できます。しかし、DVなどでは、この信号をモニタし、検出したらなんらかの方法で 録画できなくするよう、自主規制します。
 このような手法には、大きな利点があります。マクロビジョンやカラーバーストなどでは、べつにダビング しなくても、通常に再生するだけで画質に悪影響を与えてしまうことが多いのです。一応、間にデッキなどを かまさず直接テレビにつなげば問題ない、とされていますが、注意深く見ると、画面の端がちらちらしたり、 輝度が不自然だったりして、程度の低いトラブルをまま起こします。また、ラインダブラーという、ノン インターレース表示が可能なモニタでちらつきを防いで画質をあげるために使われる装置を使うと、ひどい 悪さをすることがあります。実際、それがいやで、画質維持の目的でキャンセラーを使う人もいますし、 コピーガードを外すことで画質が向上する以上、そうした処置を講じたくなる人がいるのも 当然でしょう。その点、CGMSは原理的に画質に影響を与えることはありません。
 さて、こうした仕組みのため、通常のコピーガードキャンセラーを通しただけでは、DVでの 録画はできません。また、いったんVHSなどにコピーガードキャンセラー経由で録画してから、 あらためてDVにコピーしようとしても、ビデオテープの信号にはCGMS−Aが含まれているので、 これもうまくいかないことになります。ただ、これは推測ですが、CGMS−Aのみを外せるような キャンセラーがあったとしたら、DVに正常にダビングし、そこからさらにVHSなどに コピーすることは可能なのではないでしょうか。DVを経由する段階で、マクロビジョン信号が 継承されるというのは、デジタルビデオの機能上、考えにくい気がします。ただし、 DVはもしかしたらマクロビジョン信号も検出して、保護または自己発生するかもしれません。 レンタルビデオとDVでコピーしてみればわかるはずです。私は意味がないので 試していませんが。

●コピーガードキャンセラーは入手可能か

 既述のように、コピーガードキャンセル機能を持つ、画像補正機器はあります。もちろん、 コピーガードを外す機能がある、などとは書かれていません。ただ、故意なのかどうか、 「この機種に関する、ある特殊な機能については、一切お答えできません」とわざわざ 朱書きしているような例はあります。私の知っている現在も販売中の機種では、CGMS−Aは外せませんが、 買ってきてそのままつなげば、マクロビジョンとカラーバーストは外してしまいます。 日本橋、秋葉原など大きな電気街のジャンクまたはディスカウント系の販売店で、2万円くらいで売られて います。

 CGMS−Aを外せるものはないのか、というと、これはある、ともいえるし、ないとも言えます。 どういうことかというと、これも画質補正機として売られているのですが、買ってきてつないだだけでは 何の効果もないのです。そこで、ある改造をすると、マクロビジョン、カラーバースト、そして CGMS−Aのすべてが、キャンセルできるようになるのだそうです。価格は1万5千円くらいです。
 どうすれば改造方法がわかるのか。製品にはもちろん説明はついていません。改造説明書の入手方法が あるらしいのですが、私は知りません。
 このあたりの情報については、このサイトから 辿ると、知ることができるといううわさもあります。

●過剰な規制に残る不満

 さて、最初の話に戻りますが、私がなぜDVにダビングしようとしていたのか。それにはいくつかの 理由があります。ざっと列挙すると、以下のようなものです。
  • コンパクトなDVにダビングして、旅先などで鑑賞する。
  • 社内有志で会社のプロジェクターを借り、会社で上映会をする。
  • 大好きなSFXシーンを集めたカスタムテープを作る。
  • 会社で英会話コンテストをする。
 会社での上映会は、ビデオデッキがあるので、マクロビジョンのキャンセラでダビングするという 手段もありますが、違法行為はしたくないし、大画面ではビデオテープでは画質が悪いのです。
 英会話コンテストというのは、会社で紹介している英会話の表現を、映画のいろいろなシーンから 集め、流して当ててもらうものです。日本語字幕を消せるDVDではうってつけなのです。
 このように、いずれも完全に私的なもので、また大半は一時的なものです。(そもそも、保存用に 使うには、DVテープは高すぎます。)レンタルショップやソフトメーカーにダメージを与える ような形で知人に配ったり、ましてや海賊版を出して販売したりということなどはありえません。
 しかし、あまりに過剰な規制により、個人的で無害な楽しみや利用にまで網がかぶせられることには、 若干の不満もあります。確かに、適切なルールとそれを実効たらしめる取り締まりは必要です。
 最近の新聞記事によると、中国ではブランドもソフトも模造し放題で、 ソフトはほとんどが不正コピー、さらには医薬品や肥料、食品にまで粗悪な模造品が現れているそうです。 挙句の果ては多数の死者まで出しているとのこと、その最大の原因は取り締まりの甘さだそうで、そんな 社会はぞっとします。それでは、有望なアーティストも生まれようがないでしょう。
 しかしものごとにはやはり適度なバランスというものもあるような気がするのです。 そのうち、友達にDVDやCDを貸すのも違法となり、それぞれのビデオソフトは、購入時にIDを登録 した自分のプレーヤでしかかけられなくなるかもしれません。すでに、PPV(ペイ・パー・ビュー)の コピーガードは、録画しておいて都合のいい時間に見るとか、途中でトイレに行ったりコーヒーを入れたり、 ということを許さないシステムになっています。

 私は、高画質高音質派なので、テレビやレンタルで見て本当に気に入れば、DVDを購入します。また、 ねゆばっかの妻も、ここ数年で何百枚とCDを買ってきています。ソフト産業には貢献するタイプの消費者だと 思いますよ。にもかかわらず、ささいな私的、趣味的かつ無害な楽しみも徹底して否定するような やりかたには、反発も覚えてしまうのですが、いかがでしょうか。



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