潜水艦映画用語集

潜水艦映画で出てくる専門用語のかんたんな解説。

これくらいと、あと基本的な潜水艦の仕組みを知っておけば、
潜水艦映画を観ていて「?」になることはほぼないと思います。

 

右舷・左舷【うげん・さげん】starboard・port
 船の右側・左側を示す言葉。船に乗っている人から見て、船の前進する方向を向いた状態で左側が左舷、右側が右舷。船を外から見ている人にとっては、正面から向かって右側が左舷になる。ちなみに英語で右舷はstarboard、左舷はportもしくはportside。潜水艦映画では頻出。

魚雷【ぎょらい】 torpedo もしくはfish
 
潜っている潜水艦が使える攻撃手段として一番わかりやすいのが魚雷だ。モーターと舵がついていて、自身で水中を進むことのできる爆弾。現代の原潜に搭載されている魚雷は、敵の船のスクリューが回っている音を頼りに、魚雷自身が方向を修正しながら進むホーミング魚雷が基本だが(これの例としてわかりやすいのは「クリムゾン・タイド」)、第二次大戦時はこの技術がまだ本格的には実用化されておらず、「だいたいこの辺を通るだろう」と予想して撃っていたわけで、外れることも多かった。ナチスドイツではすでにホーミング魚雷も使われていたようだが、Uボート映画に出てくる魚雷はいずれもホーミングではないタイプの魚雷である。

 なお、爆発のきっかけにもいくつかの方法があって、近くに金属を感知したら起爆するタイプと、魚雷の頭に何かがぶつかったら、その衝撃で起爆するタイプのふたつがメジャー。映画で使われているのは、ほとんどがわかりやすい後者だが、この起爆装置がきちんと動かないことが、史実でもけっこう多かったらしい。だから、不発だったかどうかが明暗をわけるシーン(「U-571」など)や、不発の原因を調べるエピソード(「勝利への潜航」など)は、どちらも史実をもとにしたものだ。

魚雷発射【ぎょらいはっしゃ】 fire
 
「魚雷を発射せよ」という命令は、ドイツ語では「Los」、英語だと「Fire」だが、実際には火薬を爆発させているわけではない。たとえば第二次大戦時は、空気圧を利用して魚雷を飛び出させ、あとは魚雷のもっているモーターで前進させていた。だから魚雷を撃つと空気がもれちゃって、潜っている位置を特定されやすくなるわけだけど、旧日本軍はこの空気を漏らさずに魚雷を撃てる技術を持っていて、ドイツ軍に技術供与した。

爆雷【ばくらい】 depth-charge
 
海上の船から、潜っている潜水艦を攻撃するための兵器として、とくに第二次大戦時を扱った映画によく登場する。ドラム缶に爆薬と深度感知装置を詰め込んだもので、潜水艦がいそうな深さに深度を設定したうえで、船から海中に向かって投げ込むと、爆雷はセットした深度まで潜った後、そこで爆発する。潜水艦に直撃しなくても、深いところを進んでいる潜水艦の場合は周囲の水圧も受けているから、ある程度離れたところで爆発しても水圧でつぶれる。

 船から爆雷を投下する方法はいくつかあるが、最も単純な「船尾から単純にボトボト落とす」場合(「U-571」のドイツ駆逐艦など)、自身も爆発による危険にさらされるため、投下後できるだけすばやくその地点を去ることができるよう、最大速力で進んでいる場合が多い。ボトボト落とすだけでなく、火薬を使って船からできるだけ遠い地点に投げ込むタイプ(「眼下の敵」など)もあり、後者の一種であるヘッジホッグは、24個同時に投げ込むことができた(「ローレライ」で登場)。

 もちろん、1隻の船に詰める爆雷の数には限りがあるので、水面下で攻撃に耐えている潜水艦は、投下された爆雷の数をひとつずつ数えている場合が多い。「U・ボート」などで、潜望鏡の近くの黒板に書かれている数字や意味不明な字っぽいものは、この爆雷を数えたメモだ。

 一方、上にいる船にとって、爆雷で潜水艦を撃沈できたかどうかを確実に知る方法はない。撃沈すれば燃料の油や乗員の死骸などが浮いてくるはずなので、それを見て「撃沈したと思われる」と判断するしかなかった。そこで潜水艦側は、これを逆手にとって偽装工作をしかけ、爆雷攻撃から逃げるという戦法がとれた。その実際は「深く静かに潜航せよ」や「U-571」など、多くの映画で観ることができる。

機雷【きらい】
 水中における地雷みたいなもので、海中もしくは海底に設置される。第二次大戦中にもよく使われ、当時をテーマにした映画、とくにアメリカ映画では必ずといっていいほど出てくる。海の中に浮かんでいる、トゲの出た球状のものがそれだ。船が触れたときはもちろん、近くを通るだけでも爆発する磁気反応式のものもあった。この機雷を敷設するのを専門にする潜水艦=機雷敷設艦というのも、ナチスドイツなどがたくさん使っていたが、この機雷のせいで沈没する潜水艦も少なくなかったようだ。

ASDIC【アスディック】
 Anti-Submarine Detection Investigation Committeeの略だが、そこが開発した対潜探信機をさす。第二次対戦中、対Uボート用にイギリスの軍艦が取り付けていた。水中に向かって一定の音を出し、その反響音によって下に潜水艦がいるかどうかを調べた。「U・ボート」など第二次大戦時の映画でよく出てくる「キーン」とか「ポーン」というかん高い音は、たいていがこのアスディックの音だ。

SONAR【ソーナーもしくはソナー】
 上記のASDICと同じような目的と構造のもので、こちらは米軍が用いた。SOund NAvigation Rangingの略。音で潜水艦の周囲のあらゆるものを調べる担当者のことをソナー員というのはここから来ている。

 現在も音を使って海底の地形や敵の様子などをさぐるのに使う機器やそれを扱う担当者のことをソナーと呼んでいるが、機器としてのソナーには大きく2種類ある。周囲の音をひたすら聞いて探るのが受聴ソナー(パッシブソナー)、自身で出した音の反響によって敵などの位置を調べるのが探信音波(アクティブソナー)、もしくはピン(Ping)。ピンを打った方が周囲の状況を把握しやすいが、自分自身の位置も受聴中の敵に知られるおそれがある。

 「ビロウ」では、まだ自分を察知していないと思われる敵のピンの音にタイミングを合わせてピンを打つことで、敵に存在を知られていない状態を維持したまま、海底までの深さを調べる、というシーンが出てくる。また、「敵対水域」でK-219の艦長がピンを続けて2回打つシーンがあるが、これは周囲の艦に対して「退避せよ」と警告する意味を持つ。

圧壊深度【あっかいしんど】
 これ以上水深を下げると、潜水艦が外部の水圧に耐えきれなくなってつぶれてしまう(圧壊する)水深のこと。第二次大戦時のドイツUボート(VIIC型)の安全深度は90メートルとされていたが、150メートルくらいまではいけたらしい。映画「U・ボート」では280メートルまで潜るシーンが登場するが、実際にこのくらいまで潜れたという記録もあるようだ。現代の潜水艦も、日本の海底探査艇「しんかい」のように何千メートルも潜れるわけではなく、アメリカの攻撃型原潜であるロサンゼルス級でも600mくらいまでだ(「クリムゾン・タイド」では、オハイオ級戦略原潜の圧壊深度は1850フィート=約550mだというセリフがある)。

 なお、この深度の差を利用して敵の潜水艦を撃沈するというアイデアが「ユリョン」に見える。

おとり弾【おとり】countermeasureもしくはdecoy
 ホーミング魚雷は、船のスクリュー音めがけて自動的に方向を変えながら進む。これを逆手にとり、船の実際の位置とは違うところでスクリュー音を発生させることで、迫ってくる魚雷をよけるのがおとり。現代の原潜モノで戦闘シーンのある映画なら、必ず出てくる。スクリューが2つある艦の場合は2個一組、1つの艦なら1つずつ、潜水艦の両側面(右舷・左舷という)から発射することができる。「レッド・オクトーバーを追え!」や「クリムゾン・タイド」で出てくるせりふ 「Launch starboard countermeasures!」 というのは、右舷のおとりを発射せよ、という命令だ。

自沈【じちん】scuttle ship
 潜水艦を自らの手で沈没させること。潜水艦はそれ自体の技術をはじめとして、他国に対して秘密にすべきものが多いので、攻撃されて逃げ場がなくなった場合などには、せめて敵の手に渡らないよう、自沈させることが多い。潜水艦映画では、「レッド・オクトーバーを追え!」でショーン・コネリー艦長が亡命の意図をごまかすシーンで象徴的に使われている。なぜこれが「レーニン賞ものです」と医師に感嘆されるかというと、通常は「U-571」の最後のシーンのように、自分の命は生かしたまま、艦だけを沈める場合がほとんどにもかかわらず、ショーン・コネリー艦長は自らの命を犠牲にして(艦と運命をともにして)、レッド・オクトーバーの秘密をアメリカから守ろうとしている、と医師がまんまとだまされたため。なお、吹き替えではScuttleを「自沈」ではなく「撃沈」と訳しているため、ショーン・コネリーは医師に「アメリカの艦を沈める」と宣言したことになってしまい、前後の意味が通じなくなっている。

 ま、上に挙げた「U-571」は、自沈させたんじゃなくて艦を放棄したんですけどね。

艦長【かんちょう】Skipper、Commander
 英語はともかくドイツ語の話を少し。「U・ボート」では、大半の乗員が艦長のことを「カロイ」と呼んでいるが、これは海軍大尉を意味するKapitanleutnantを縮めたもの。艦長はこのとき大尉だったという設定なんだけど、Kapitanだけだと「艦長」という意味にもなる(「ビロウ」や「眼下の敵」などで、艦長のことを「カピテン」と呼んでいるのはこれだ)。なお「U・ボート」では、機関長がときどき「コマンダンテ」と呼んでいるシーンもあるが、その場合は「Kommandant」で指揮官の意味。

浮力【ふりょく】bubble
 アメリカの潜水艦の艦内のシーンで、しばしば「Three degree down bubble」とか「Zero bubble」といった命令が出てくる。ここでいうbubbleは潜水艦の用語で浮力のこと。なので、前者は潜航するときの潜り方の度合いを指定する命令(浮き上がるときは「up bubble」になるわけだ)。また、後者は水中で浮きも沈みもしていない、すなわち深度が安定している状態をさす。潜望鏡を覗くときなんかが後者に相当する。

 これの日本語字幕では、後者を「泡は出てません」と訳しているのだが、たまたま前者のような用法が出てこないから間違っちゃったのだと思う(bubbleを泡と訳しちゃうと、前者は訳しようがないので、そこで気づくはず)。

DSRV【ディーエスアールブイ】
 Deep Submergence Rescue Vehiclesの略で、直訳すれば「深海に潜航することが可能な、救助用の乗り物」。Rescue Sub(救助用潜航艇)とよぶこともある。潜水艦のハッチにコバンザメのようにくっつくことで、艦内に閉じ込められた人々を救出することができる、特殊な小型潜水艦。米海軍では1970年から使われはじめ、現在はMysticおよびAvalonと名づけられた2隻が在籍している。潜航可能な深度は5000フィートというから、1500m以上の深海でも救出作業を行なうことができるわけだ。1隻あたりの操縦士は2名で、ほかに24名の人間を乗せて運ぶことができる。日本の自衛隊も2隻のDSRVを保有している(こちらは12名の輸送が可能)。

 母艦ピジョン号を含めてDSRVが大々的に登場する映画は「原子力潜水艦浮上せず」だが、ほかに「レッド・オクトーバーを追え!」でも、本来的な使われ方ではないけど登場する。後者の方が絵としてDSRVの仕組みを理解しやすい。

 

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