3月5日火曜日−10日土曜日

NEXT2012Nara

 

奈良女子大学の記念ホールであった研究会に出席した.一般化エントロピー,情報幾何,複雑系, 非線形の人々の五日間の集まりであった.最初にTsallisさんの意欲的なプレゼンがあった.ブラックホールから素数までq エントロピーによって結び付けられた壮大な構想が出された.どこまで拡大するのだろうか.怖いもの見たさの感じが出てきている.甘利先生のプレゼンはq 指数族の例題から情報幾何の広大な包容力を示されたものだった.また現役に復活された強いイメージがあった.それから続く話題も面白いものが多く出され,十分に堪能できた.Thurner さんのシャノン・キンチン公準から導かれた不完全ガンマ関数によるエントロピーの特徴づけは衝撃的だった.村田さんのグラフ・ディフュージョンの話もエスプリのあるものだった.藤澤さんのガンマ推定のロバスト性も分かりやすい説明だった.長岡さんは双対平坦性と測地的平坦性を問い直す鋭い視点を提示した.小原さんのq バージョンのアファインはめ込みによるとフィッシャーの勾配方程式が共形的にあらわれて興味深いものがあった.私も例のベキ・クロスエントロピーによる創発クラスターについて話題提供した.須鎗さん,古市さん,佐藤さん,小原さん,戸田さんたちの献身的なオーガナイズによる研究会はタイトではあったが楽しくもあり,今後の研究に強い影響を与える予感がした.

 

二日目の研究会の終わった夕方,早足で甘利先生たちと二月堂のお水取りを見に行った.松明の明かりに歓声を上げる人々の中で厳かでサービス精神に満ちた儀式が続いた.

 

 

 

後で知ったことだが,お水取りは752年から今年まで絶えることなく続けられているそうだ.最尤法が出て,そろそろ100年経つとか研究仲間とささやいているが時間スケールのコントラストが印象的だった. 

 

 

 2月17日金曜日-18日土曜日

 久留米大学医学部の集中講義

 

 予ねてお約束の集中講義に久留米大学に出かけた.というかこの日程は三研究所合同研究会の日程と重なり変更していただいたのだった.しかし今度は藤田先生の偲ぶ会と重なってしまい,残念ながらそちらには出席できなかった.かなり以前から決めないといけない日程は調整が難しくなるものだ.これも元はといえば昨年の大震災の影響だった.

 

  ともかく何とか漕ぎ着けた講義の内容は「バイオインフォマティクスのための統計的方法と機械学習の方法」である.予想を超えて,多くの学生さんとスタッフの方が聞いていただいたことがうれしかった.講義中に色々な質問がでて,説明の足りなかった所や前の文脈との関係について指摘することを忘れていたところが直ぐに補強できた.もっと準備しておくべきだった反省しながらも,一方で若い人たちの熱心さが非常に印象的だった.柳川先生も講義に参加され,適切なところで本質的なコメントをされ,改めて鋭い直観力に圧倒された.この10年間の研究で生じた疑問の本質的な部分が柳川先生の短い言葉でコメントされ,研究の意義そのものの問いかけがあった.このスリリングなやりとりの中である種の清清しさを感じていた自分がいて,この10年間の自分の研究の形を追っていた.いったい何をやっていたのだろうか? 最近よく省みる点がここでも現われた.今回いただいた機会でこの素朴な問いかけに少し答えが見つかったような気がした.

 

 大きな期待感で世の中に迎えられたバイオインフォマティクスは現在,より実用的な要求に答えるための転換期を迎えている.バイオインフォマティクスが始まった頃は,生物学・医学の研究者が一生かかっても調べ尽くせない遺伝子発現やゲノムのデータが一回の実験で得られ,その網羅的な知識から画期的な研究成果が産出されると多くの研究者が大きな夢を抱いたが,その後10年余りの研究の流れを見ると現実はそんなバラ色ではなかったように思われる.本質的に困難な問題はデータの不均衡にある.そう,p≫n問題というわけだ.この問題に自分の時間を使いすぎたような気がしていたが今回の若い人たちの気合に触れ,まだまだあきらめるのは早いかなと思い直している.ともかく自分を見つめなおす良い機会が得られたことに感謝しなければ.

 

 

 

 2月2日木曜日−3日金曜日

 三研究所による合同会議

 

 インド,台湾,日本の統計研究所による合同会議が統数研であった.二日間,タイトなスケジュールで集中的な研究会が行われた.数理統計の難題の解決からスパース学習の先進的な研究まで色々な話題提供があり,参加してとても有意義な会議であった.ただ,この時期,特に今年は寒かったので暖かい国から来訪された人たちは,さぞ大変だっただろう.でも,大震災で延期された会議が無事に終わり,一つの区切りがついた感じがしている.私も昨年の今頃に申し込んだ話題をそのまま話した.それでも昨年の4月に用意していたスライドファイルを少し改訂できたことに満足している.今回,パワーダイバージェンスを提唱したBasuさんと親しくお話ができて今後が楽しみである.

 

  

 

 1月4日水曜日−18日水曜日

 久々にイングランドにて共同研究する

 

  N 回目のUniversity Warwickの訪問だった.2年ぶりとなる.いつものように成田空港から発ち,スキポール空港を経由してバーミンガム空港に到着した.入国手続きをすませ到着ロビーへ向かうと,ちょっと不安げなジョン・コーパスさんの顔がしばらくして私の姿を見つけるや,すぐに笑顔になる,そしてがっちりと握手.これも決まった儀式である.そしてKenilworthのB&Bに車で運んでもらい,部屋に入るやいなや爆睡して目が覚めたのは早朝4時だった.さて,これから2週間足らずの時間だが研究への集中モードを高めようと気力が漲る.

 

  今回はひどい時差ぼけにも悩まされず,天候も珍しく好天続きであった.あのEnglish weatherは今回はどこに行ったのだろうか.Kenilworthと大学の間を何度か歩いたときは夕焼けさえ見た.徒歩で片道,一時間と少しかかるが良い運動となる.歩いて体が疲れることは考え過ぎた脳にとっては良い薬となるようだ.途中,A429をまたぐフットパスを見つけ,土曜日にその周りを散歩した.B&Bの主人に聞くと緑の歩道橋は最近出来たそうだ.乗馬は禁止とか書いてあったがよく見ると農業に限り許可をとると乗馬も良いそうだ.こういった細々としたことまでも決めるパブリック・フットパスへの市民の関心の高さには感心する.当然のよう,HS2(高速鉄道計画)反対のプラカードも見つけたが,とにかく長閑な風景が楽しめた.広々とした芝生に今朝おりた霜でマウンテンゴリラのシルバーバックのように白く縁取った風景がどこまでも続く.イギリスの最も好きな風景の一つだ.退職したらCotswoldsの町々をゆっくりと旅行してみたいと思っている.

 

  かくしてコーパスさんとの集中ディスカッションの毎日が続き,意欲的な考察が楽しめた.あるときは一瞬にして疑問が氷解し,あるときは全く解決の方向さえ見失う局面を繰り返しながら一歩一歩,結論に近づいた気がした.何気ない一言があたかも終局まで読みきったような予言になることがあるのだ.滞在の最終日はセミナーの招待を受けた.話題は今回のプロジェクトの内容から選んだ.懐かしい面々が多く参加していただいたことがとてもうれしかった.かくして18日水曜日の朝,バーミンガム空港に運んでくれたコーパスさんと少し議論した後,再会を誓い別れた.今回も充実した時間が作れてほんとうに良かった.さて自然数 N は実際には幾つなのだろうか.いやもう正確に数えるのはよそう.2008年から続くスランプに終止符は打てるのだろうか.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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from October 2005

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