吉田傑俊著『市民社会論 その理論と歴史』大月書店、2005年、3400円
本書の特徴の一つは、<非国家・非市場>を基調とする現代的市民社会論を、<古典古代的>・<近代ブルジョア的>・<マルクス的>市民社会という歴史的に発展してきた市民社会概念、とりわけマルクスのものに照らして批判的に検討していることである。もう一つの特徴は、マルクスの理論そのものを主題的に考察し、市民社会論と階級社会論の関係と、市民社会論の独自の意義を示そうとしていることである。全体は「理論的問題」と「歴史的展開」に分かれているが、歴史にかんする記述も、上の二つの問題意識に貫かれている。そのことは、とくにアーレントとハーバマスの議論や、戦後日本における市民社会論について論じるしかたに現われている。内容豊かな本書であるが、ていねいな校正によって単純な誤記や文法の乱れをなくせば、記述内容に対する信頼感がいっそう増したことであろう。唯研ホームページ上で本書について行なわれている「論争」にも注目。
『全国唯研ニュース』2006.