インドネシアの教育
教育の歴史

インドネシアの学校教育制度は、オランダが植民地政策によって、
規制したこともあって、未だ歴史が浅く、1854年にオランダが
植民地統治法を制定したことに伴い、インドネシアで最初の学校が
設立されたが、オランダ人の子弟だけを教育の対象にしていた。

1880年代にインドネシア人を教育の対象にした、最初の学校が
設立されると共に、3年制の村落学校と5年制の標準学校からなる
学校教育の基礎が制度化された。

1890年の統計資料によると、インドネシア全国で約700校の
学校があり、約40,000人の児童・生徒が在籍していた。

20世紀に入ると、社会情勢の変化に伴い、オランダの植民地統治
政策も変更を余儀なくされ、論理政策が採用されたことによって、
インドネシア人を対象にした、小学校や中学校が数多く建てられ、
教育計画、教育内容、教員養成制度等の諸制度が組織化された。
また、この頃に国立インドネシア大学(UI)の前身となる学校や
国立バンドゥン工科大学(ITB)の前身である高等工業学校等が
設立となり、現在へ至る教育の基礎が確立された。

国立インドネシア大学(UI)は、1924年に設立のジャカルタ
法科学校と1927年に設立のジャカルタ医科学校が前身であり、
1940年に総合大学構想が制定されたことに伴い、1950年に
両校が併合して法学部と医学部へ改編された後、1951年2月に
文学部の新設を行い、インドネシアで最初の総合大学として創立と
なり、その後、経済学部等の諸学部が順調に増設されて行った。
現在の国立インドネシア大学(UI)は、11学部を抱えた大学へ
発展しており、インドネシアで最高の権威を持った国立総合大学で
ある。

一方、国立バンドゥン工科大学(ITB)は、1920年に設立の
バンドゥン工業高等学校が前身であり、その後、1940年に総合
大学構想が制定されたことに伴い、1945年に国立インドネシア
大学(UI)へ吸収併合されて工学部となるが、1959年3月に
分離して国立バンドゥン工科大学(ITB)が創立された。
国立バンドゥン工科大学(ITB)は、インドネシアのみならず、
東南アジア諸国に於て最高の権威を持った理工系の国立専門大学で
ある。

インドネシアの大学制度は、先ず、優秀国立大学が10大学あり、
次に、一般国立大学と国立短期大学等が合計67大学あり、更に、
私立大学と私立短期大学等が合計1,228大学ある。

優秀国立大学(10大学)の所在地


大 学 名 地 域 名 所 在 地
 インドネシア大学  首都特別圏  ジャカルタ
 バンドゥン工科大学  西ジャワ州  バンドゥン
 パジャジャラン大学  西ジャワ州  バンドゥン
 ボゴール農科大学  西ジャワ州  ボゴール
 ガジャ・マダ大学  ジョクジャカルタ特別地域  ジョクジャカルタ
 ディポネゴロ大学  中部ジャワ州  スマラン
 11月10日工科大学  東ジャワ州  スラバヤ
 アイルランガ大学  東ジャワ州  スラバヤ
 ハサヌディン大学  南スラウェシ州  マカッサル
 アンダラス大学  西スマトラ州  パダン
優秀国立大学が所在する地域を見ると、10大学の内、ジャワ島に
8大学が集中しており、それ以外の地域とバランスに著しい格差が
ある。


教育の基本

1945年8月17日にインドネシアが『独立宣言』を発表すると
同時に公布した、『1945年憲法』の条文では、「国民の教育を
受ける権利」と「政府の教育を与える責務」を明確にしている。
形式的には、インドネシアの独立と同時に義務教育もスタートして
いるが、実際には、1950年の教育法が制定してから学校教育の
制度化が始まっている。

インドネシアの基本教育で、最も重要な授業学科として指定されて
いるのは、『パンチャ・シラ』(五つの徳)である。
全ての国民は、『パンチャ・シラ』の理念に従って、宗教、道徳、
礼節等に関する「情操教育」を必ず学ぶことである。
『パンチャ・シラ』は、インドネシアの国是であり、国家と国民の
基本理念となり、「建国五原則」、または、「国家五原則」として
制定されている。

『1945年憲法』の条文では、国立学校、私立学校に関係なく、
小学校、中学校、高等学校等、全ての教育機関で、全学年が等しく
『パンチャ・シラ』を教える責任を明確にしており、また、全ての
国民が『パンチャ・シラ』を学ぶ義務を定めている。
インドネシアの人々は、『パンチャ・シラ』を学習して、実践する
ことが最優先の習得課題になっている。
その結果、インドネシアでは、子供の頃から相互に助け合う精神が
自然と身に付いて行くように習慣化されている。

多民族の統一によって、建国した国家である、インドネシアでは、
諸民族(種族)内の日常会話も67の母語と各地方語(種族語)を
意思疎通の手段として使われている。

従って、インドネシア人にとってのインドネシア語は、ある意味で
外国語とも言える。
この結果、バイリンガリストやマルチリンガリスト等は、日常的な
傾向であると言える。

インドネシア政府は、異なる民族(種族)間の共通語として必要な
国語である、インドネシア語の普及教育を最も優先する政策として
掲げており、諸民族(種族)へ浸透を目標にして、インドネシアの
国家標語(スローガン)である、『多様性の中の統一』を全面的に
アピールして、国語である、インドネシア語の啓蒙運動に取り組む
一環のなかで、学校等の教育に於ても国語教育の普及を最も重要な
課題としている。

従来のインドネシアでは、義務教育を小学校(6年制)のみとして
定めていたが、1994年から始まった第6次、第7次、第8次の
「国家開発5か年計画」に基づいて、15か年間の教育開発計画が
進行しており、2009年までに義務教育を中学校(3年制)まで
引き上げるとしている。
現状は、一部の地方を除いたほとんどの地方で義務教育への改革を
進めているが、現在に於ても都市と地方では、著しい格差があり、
小学校を含むほとんどの学校で、校舎や教室等の教育施設が整って
おらず、構造的な問題を抱えている。
この結果、地方では、多数の学校が2部制の授業を余儀なくされて
おり、また、都市でも、一部の学校で2部制の授業を行っている。
更に、家庭の貧困による経済的な事情から義務教育の小学校ですら
満足に就学できない児童もいる。
これらの現実を考えると、中学校も義務教育にした、9年制の教育
計画を実施するには、施設や設備の整備と教員の量や質を確保する
ことが最も重要な課題になっている。

インドネシアの学校制度は、国立学校と私立学校のみに分別されて
おり、従って、例えば、州立学校・県立学校・市立学校等のような
公立学校に類似する学校は、制度的に設立されていない。



教育制度

就学年齢 教  育  機  関 就学期間
  4歳〜 6歳  幼稚園 1年制・2年制
  6歳〜12歳  小学校 6年制
 12歳〜15歳  中学校・職業中学校 3年制
 15歳〜18歳  高等学校 3年制・4年制
 15歳〜19歳  職業高等学校 3年制・4年制
 18歳〜22歳  高等専門学校 2年制〜4年制
 18歳〜21歳  高等技能専門学校 2年制・3年制
 18歳〜21歳  短期大学 3年制
 18歳〜23歳  総合大学・単科大学・専門大学 4年制・5年制
 18歳〜26歳  総合大学の歯学部と医学部 6年制・7年制
 18歳〜26歳  歯科大学 6年制
学校の種類

教育レベル 教育機関 学校の種類
 初 等 教 育  幼稚園  幼稚園
 小学校  小学校
 イスラム教小学校
 中 等 教 育  中学校  普通科中学校
 イスラム教中学校
 職業中学校  技術科中学校
 商業科中学校
 家政科中学校
 高等学校  普通科高等学校
 イスラム教高等学校
 職業高等学校  技術科高等学校
 建築科高等学校
 造船科高等学校
 航空機科高等学校
 グラフィック科高等学校
 農業科高等学校
 商業科高等学校
 家庭技術科高等学校
 家政科高等学校
 手工芸科高等学校
 工芸科高等学校
 音楽科高等学校
 伝統芸能科高等学校
 社会奉仕科高等学校
 高 等 教 育  高等専門学校  高等専門学校
 高等技能専門学校
 アカデミー  短期大学
 (各種の単科学科のみ)
 大  学  総合大学
 専門大学  工科大学
 農科大学
 水産大学
 教員養成・教育大学
 経営者・秘書養成大学
 芸術大学
 外国語大学
 イスラム教大学
 歯科大学
 専 門 教 育  各種学校  専修学校
 専門学校
 職業学校
就学率

学校の種類 純就学率 粗就学率
 幼稚園  19.0 %  19.0 %
 小学校  94.0 % 112.9 %
 中学校・職業中学校  45.1 %  73.0 %
 高等学校・職業高等学校  29.2 %  40.5 %
 大学・その他高等教育機関    21.0 %
〔国民教育省資料『教育統計便覧2000/2001』〕


小学校の就学率は、政府資料による公式数値であり、形式的には、
就学しているが、実際には、家業(主に農業等)の手伝いや家庭の
貧困による経済的な事情によって未就学の児童もおり、実数値は、
不明であるが、推定では、約75%程度と見込まれる。

純就学率と粗就学率の差異:
純就学率は、児童・生徒等、在籍人口のなかで、標準学齢期となる
在籍者のみを学齢期人口で割っている。
粗就学率は、児童・生徒等、在籍人口を学齢期人口で割っている。
現実的には、家庭や貧困等の諸事情によって、学齢適齢期を超えて
就学する児童・生徒がおり、あるいは、留年する児童・生徒がいる
ため、結果的に100%を超えた数値となっている。

大学とは、総合大学、単科大学、専門大学等の総称であり、また、
その他高等教育機関とは、短期大学、高等専門学校、高等技能専門
学校等の総称である。



教育計画

教  科 学  校 小学校 中学校
学  年
 パンチャ・シラ公民教育  2  2  2  2  2  2  2  2  2
 宗教教育  2  2  2  2  2  2  2  2  2
 国語(インドネシア語) 10 10 10  8  8  8  6  6  6
 外国語(英語)              4  4  4
 算数・数学 10 10 10  8  8  8  6  6  6
 理科      3  6  6  6  6  6  6
 社会      3  5  5  5  6  6  6
 工芸・芸術  2  2  2  2  2  2  2  2  2
 保健体育  2  2  2  2  2  2  2  2  2
 地域裁量教育  2  2  4  5  7  7  6  6  6
 合計授業時間  〔週〕 30 30 38 40 42 42 42 42 42
〔日本の公立学校に相当する、国立学校の例:国民教育省資料〕


〔授業風景〕


識字率

年 代 都市平均 農村平均 全国平均
 10歳 代  99.25 %  97.34 %  98.06 %
 20歳 代  98.61 %  94.03 %  95.93 %
 30歳 代  95.45 %  85.90 %  89.42 %
 40歳 代  93.05 %  78.45 %  83.70 %
 50歳 代  75.30 %  53.12 %  60.43 %
 全 年 代  93.79 %  83.55 %  87.35 %
識字率の数値は、国語(公用語)となる、インドネシア語に対する
比率である。

年代の高さに比例して識字率が低くなる傾向は、教育制度の普及と
学校等、教育施設関連の整備状況に起因している。
特に、50歳代以上の識字率が著しく低い理由は、60歳代以上の
人達が、オランダの植民地時代であったため、教育を受ける環境に
恵まれていなかったこと、また、インドネシアのオランダへ対する
『民族解放独立闘争』から『独立戦争』へ至る時代に伴って、国内
情勢の混乱時期と教育制度の制定時期等に関連している。

一方、農村の識字率が都市に比較して低くなる理由は、生活水準の
地域的格差と学校等、教育関連施設の地域的な格差が起因となり、
就学率の低さに影響している。



学校情勢

  国立学校 私立学校 合 計
実 数
(校・人)
比率
(%)
実 数
(校・人)
比率
(%)
実 数
(校・人)
比率
(%)




学校数   110,966  74    38,988  26   149,954 100
児童比      211        98        182  
教員数  1,031,965  88   140,723  12  1,172,688 100
児童比      23        27        23  
児童数 23,433,297  86  3,814,722  14 27,248,019 100






学校数     8,586  43    11,382  57    19,968 100
生徒比      510        256        365  
教員数   230,756  56   181,309  44   412,065 100
生徒比      19        16        18  
生徒数  4,376,040  60  2,917,359  40  7,293,399 100





学校数     2,924  26     8,322  74    11,246 100
生徒比      663        285        383  
教員数   119,317  38   194,676  62   313,993 100
生徒比      16        12        14  
生徒数  1,939,664  45  2,370,701  55  4,310,365 100






学校数       77   6     1,228  94     1,305 100
学生比    11,644       1,241       1,854  
教員数    46,838  30   110,918  70   157,756 100
学生比      19        14        15  
学生数   896,623  37  1,523,438  63  2,420,061 100

学校数   122,553  67    59,920  33   182,473 100
教員数  1,428,876  69   627,626  31  2,056,502 100
就学数 30,645,624  74 10,626,220  26 41,271,844 100
〔国民教育省資料『教育統計便覧2000/2001』〕

 |羈惺擦蓮普通科中学校と職業科中学校を併せた数値である。
◆々眦学校は、普通科高等学校と職業科高等学校を併せた数値で
  ある。
 大学・他は、総合大学、単科大学、専門大学、短期大学、高等
  専門学校、高等技能専門学校等の合計数値である。
ぁ“耄─福鵝砲蓮⊂数点第一位で四捨五入している。