インド映画ってどんな映画?

インド映画は一つの作品にロマンス、笑い、涙、アクションなど、様々な要素が入っています。
そしてたいていがハッピーエンド。
一概には分けられませんが、大まかにインド映画にはどのようなジャンルがあるのか見てみることにします。


ハリウッド映画とどこが違うの?

ある種のハリウッド映画がカーアクションや大掛かりな火薬を使って、
見るものに興奮と刺激を与える炭酸飲料だとしたら、
インド映画はホットミルクのようなものかもしれません。
独特の香りと、ややくせのある甘みに最初はちょっととまどうかもしれませんが、
飲めば体が温まり、心の栄養が満たされ、言いようもない幸福感に包まれる・・・。
何よりも家族全員で楽しめる。
家族そろって映画を見に行くことが多いインドでは、この「みんなで見られる」ということは
非常に大きなポイントです。つまり、基本的に誰もが楽しめる映画なのです。

 ラブストーリー

インド映画の中で圧倒的に多いのはラブストーリーです。

一番多いケースは一目惚れ。
次に多いのは、幼なじみで、あるいは偶然の出会いは最悪でケンカばかりしていたけれど、
次第に心ひかれていく・・・といった感じ。
なんだか単純ですね。でも恋愛は理屈じゃないですから。

もちろん映画の数だけ愛の形は様々ですが、ハリウッド映画との一番の違いは‘せつなさの感情’でしょうか。
これは日本や韓国など、アジア圏に共通かもしれません。
現在人気の韓国ドラマにもせつなさが満ちあふれています。
最近の日本のドラマになかったこれらの感情が、見事に日本人女性の心に響いたのでしょう。
わき起こる熱い想いに胸を痛める・・・というのは自己主張の国の恋愛観とはだいぶ違うような気がします。

インド映画の恋愛にも、せつない想いが散りばめられています。
単純というと言葉は悪いですが、ひねくれていない分、その気持ちがダイレクトに見るものの胸に届くのです。

khnh 病魔に侵されている主人公は彼女を心から愛していたが、
その病気ゆえ、彼女を好きな友人とのキューピッド役になる。
実は彼女も主人公を愛していたが、主人公はわざとつれない振りをする。
一方で友人も彼女が主人公を好きなことを知っていた。
次第に彼女は誠実な友人に心を動かされていくが、
それを暖かい目で見守る主人公。
「生まれ変わったら彼女は僕のものさ・・・。」
誰も悪くない三角関係のラブストーリー。
「Kal Ho Naa Ho(明日が来なくても)」

 家族愛

これもインド映画に多いテーマです。
家長の絶対的権限は昔の日本にもありました。
このあたりの感覚もあまり違和感なくつかめるんじゃないでしょうか。
大家族というのもよくある設定です。
「ミモラ」なんてお城のような家に親戚一同、一体何人住んでるんだって感じです。
そして家族関係のあり方も、アジアと欧米では違うような気がします。
個人を尊重すると言うよりは、あくまで家族の一員としての個人が存在する。
その結びつきは大変強いものです。
しかし、インドもだいぶ事情が変わってきているようです

定年を迎え余生を、独立して家庭を持っている息子たちと住みたいと言い出した父親たる主人公とその妻。
誰が面倒を見るのか、嫁も含めて押しつけ合い。
同居にいたるも、嫁とも孫ともそして実の息子とも生活のリズムや考え方の違いで主人公は次第に居場所を失っていく・・・。
「Baghban」

核家族化など、インドの家族のあり方にも変化が訪れたことを表す映画でした。

 身分違い

ラブストーリーと家族愛を合せた作品もたくさんあります。
その代表的なものが身分違いの愛。

ご存知の人も多いと思いますが、インドにはかつてカーストという制度がありました。
現在、公にはそれを認めてはいないものの、なお根強く残っているのも事実です。
映画であからさまなカーストの違いを描くことはほとんどありませんが、
そこに確実に存在する身分の差により、家族の反対を受け、
苦難に立ち向かっていくというというパターンはよくあります。

k3g ヒーローは大金持ち、ヒロインは下町の娘。結婚をしようとするも
家族の反対にあい、駆け落ち同然に一緒になり、一時の幸せを得た。
でも自分たちだけ幸せになればよいのではない。
家族の賛成を得られてこそが、本当の幸せだ。
Kabhi Khushi Kabhie Gham... (時に喜び、時に悲しみ)」

 インド・パキスタン、宗教対立、テロリスト

島国で、単一民族、宗教心の薄い日本人にとって、
こうしたテーマはどうしても根本的になじみにくいものです。
重いテーマといえども、基本的にインド映画は娯楽作品として出来上がっているので
詳しい背景を知らなくても楽しめます。
しかしこの本質的なニュアンスは私達外国人にはつかむことができないのかもしれません。

おもしろいのは、インド映画である以上、どうしても正義はインド、敵はパキスタンという構図になるのですが、
パキスタンをやっつけて終わりというような簡単な話にはならないのです。
インド映画はパキスタン人もよく見ていますし、長年に続く両国の微妙な緊張関係に考慮してか、
公にはできない友情関係を描いたり、捕虜としていたインド人がインド国境を渡ることを見逃したり、
単純な悪役として扱っていないのが興味深いところです。

国家・独立運動の悲劇の犠牲者。人を愛することなど許されない。
女性であろうがテロリストとしてしか生きていけない人生。
初めて心を動かされた人は一途な心を持つジャーナリストだった。

でも、愛してはいけない。計画は進んでいくのだ。
Dil Se.. (ディル・セ)」
歴史的事実を元に作られた、ヒンドゥー教とイスラム教の対立の中の異教徒同士の結婚と悲劇。
引き裂かれる家族。「bombay(ボンベイ)」

両作品とも監督はマニ・ラトナム、主演はマニーシャ・コイイララでした。
彼女は哀愁をおびた役柄が良く似合います。
マニーシャ主演「1942 A Love Story」も英国から独立する混乱の時代の話です。

 アクション

ハリウッド映画のように、最初から最後まではらはらしっぱなしという作品はどちらかというと少なく、
どの作品でも映画の1シーンとしてアクションが存在します。
ジャッキー・チェンのごとく、型のある乱闘シーンが大げさに描かれることが多いです。
爆発の規模はハリウッド映画にはかないませんが、車2〜3台くらいの大破はよくあります。
ここにあげた作品も全体的にはアクションとしながらも、ロマンスなども盛り込まれています。


「Sholay」という作品はインドで超ロングランを記録しましたが、
黒澤明監督の「七人の侍」をベースにした「荒野の七人」をベースにした作品です。
ならず者だった若者2人が、村の平和を乱す盗賊をやっつけるという、
ストーリー自体は非常にシンプルなものです。
この映画はフィルムフェア賞の50年間の最優秀映画賞に輝きました。
その普遍性、シンプルさゆえ多くのインド人に愛された映画なのでしょう。


他には、インド征服を狙う悪者を透明人間になってやっつけるという
そのあり得なさに思わず笑ってしまう
「Mr.インディア」や、
最近ではバイクアクション
「Dhoom」で、
インドの町を時速300キロの改造バイクが疾走するという
痛快な作品が人気になりました。

sholay
dhoom
mrindia

 SF・ホラー

SFやホラー映画はとても少ないです。また、これらに必須のCGや特撮は稚拙なことも多く、インドのIT技術はまだ映画に生かされていないのではないかと疑います。
しかし、インド映画には人海戦術という手がある。
エキストラの数では間違いなくインド映画が世界一でしょう。

そんなインド映画ですが、インド版E.T.たる
「Koi... Mil Gaya」が大ヒットしました。
これは「E.T.」をインド風味付けにした作品です。
宇宙との交信の暗号が‘オーム’というのがいかにもインド。

koimilgaya

ジェイソンのような殺人鬼が出てくるホラー映画はいまだに見たことがありません。
こうしたジャンルが好きな人にはインド映画はもの足りないかもしれません。
もっともホラーに匹敵するような女の怨念が描かれたAnjaam(アシュラ)」のような作品ならありますが。

この作品は日本でも公開されましたが、当時離婚騒動の渦中にいた沢田亜矢子さんがなぜか特別宣伝部長となっていました。

ほぼハッピーエンド

インド映画は勧善懲悪。ほぼハッピーエンドです。
結末が読みやすいといえば、読みやすいのですが、
ハッピーエンドとはいえ、「そう終わらせるか・・・」と驚くような結末を用意してくれたりします。
安心して見ることができつつ、その過程を楽しむことができます。

だから、‘結末は見るものの想像にゆだねる’といった中途半端な終わり方はほとんどありません。
この手法は良い作品であればうまく余韻を残すことができるのですが、
ヘタな作品でこれを使うと、見ているほうははっきりしなくてイライラし、消化不良をおこしてしまいます。
その点、インド映画ならすっきりさわやかに完結してくれます。

先に韓国ドラマのことに少しふれましたが、韓国のものは悲劇が多すぎて、見ていてつらいことも多い。
もちろんインド映画にも悲しみの要素は含まれますが、
基本的に幸せな気分で映画を見終えることができます。

つらいことが多いこの世の中、せめて映画を見ている間くらい
日常の嫌なことを忘れて楽しい時間を過ごし、幸せな気分に浸ってみたいと思いませんか?

 はじめに見るならこの3作品

ここまでインド映画のジャンルということでいくつかのインド映画を紹介してきましたが、
実際日本で手にとって見ることができる作品は少ないのが現状です。
そこで最後に、国内で比較的簡単に手に入る、日本語字幕付きのオススメの作品をご紹介します。
インド映画をほとんど見たことがない人は、まずはこれらの作品を見てほしいと思います。
きっと楽しんでもらえるはずです。
大手音楽ショップやレンタル店、ネットのamazonなどで探してみてください。

さあ、ここからインド映画の第一歩が始まります。そしてどんどんハマっていってください。

muthu 「ムトゥ 踊るマハラジャ」 

公開当時、渋谷に長蛇の列ができました。この映画を見てインド映画ファンになった人も多い。
映画のカルチャーショックを受ける人が続出。
日本にインド映画というものの存在を認知させた功績は大きい。
バカバカしいほどおもしろい、マサラテイスト満載の作品。
「ミモラ〜心のままに」 

正統派インド映画ラブストーリー。
圧倒的な映像の美しさ、ミュージカルシーンのすばらしさ、
元ミス・ワールド、アイシュワリア・ラーイの美貌にひきこまれる。
ハリウッドでも韓国でもない、インドの愛の物語に酔いしれてください。
monsoon 「モンスーン・ウェディング」 

ミュージカルシーンがない作品なので、違和感なく見ることができると思います。
ですが、インドらしさ、インド映画の楽しさは十分に堪能できます。
インドの結婚式をとりまくストーリーは、むしろ外国人からみて興味がわくところ。
2001年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作(グランプリ作品)