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インドネシアの民話「サンクリアン」(Sangkuriang:タンクバンプラフの起源)

タンクバンプラフの起源

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 昔々西ジャワのほとんどが鬱蒼とした森に覆われていた頃、ラーデン・スンギン・プバンカラ(Raden Sungging Pebankara)という王様がその地を治めていました。彼は良い王様でしたが、同時に森での狩猟を好みました。

 その頃、この王様が良く狩りに行く森に呪いをかけられてブタに姿を変えられた女神が住んでいました。ある日、このブタ(女神)はこの王様が狩りで森を訪れた際にココナッツの殻に残した小便をココナッツミルクと間違えて飲んでしまいました。すると不思議なことに、ブタ(女神)は妊娠し、みるみるうちに可愛らしい女の子を産み落としました。王様が再び森を訪れた際、この女の子を見つけ、ダヤン・スンビ(Dayang Sumbi)と名付け宮殿で育てることにしました。

 やがて、ダヤン・スンビは美しい乙女に成長しました。彼女は編み物が好きでした。ある朝、彼女が編み物をしていると、突然 巻いた糸が窓から部屋の外に飛び出してしまいました。彼女の部屋は3階にあり、すぐに巻いた糸を追いかけることが出来なかったため、彼女は次のように叫んで助けを求めました。「その巻いた糸を取って来てくれたら、それが女性ならば姉妹のように、男性ならば私の夫とします。」 しかし、巻いた糸を拾って来たのはトゥマン(Tumang)という牡の犬でした。この犬も呪いをかけられ犬に姿を変えられた神だったのですが、ダヤン・スンビは、巻いた糸をくわえて来た犬を見て気を失ってしました。

 暫くして、ダヤン・スンビはこの犬トゥマンとの間に男の子をもうけます。サンクリアン(Sangkuriang)と名付けられた子どもはやがて立派な若者に成長します。彼は祖父と同様に森での狩りを好み、自分の父親とは知らぬトゥマンを連れて良く狩りに出かけていくのでした。

 ある日、サンクリアンは森で一匹のブタを仕留め損ねます。彼はトゥマンにブタを追いかけるように命令しますが、トゥマンは言う事を聞きません。(そのブタはサンクリアンの母ダヤン・スンビを産み落としたブタだったのです。)言う事を聞かないトゥマンに腹を立てたサンクリアンはトゥマンを殺し、バラバラの肉にして宮殿へ戻りました。

 サンクリアンが持ち帰った肉がトゥマンの肉とも知らず、ダヤン・スンビは料理してしまいますが、食卓でサンクリアンから「これはトゥマンの肉だ」と聞かされ驚愕します。驚き気が動転したダヤン・スンビはスプール(糸を巻きつける金具)をサンクリアンに投げつけ、それは彼の額に傷を付けました。そして、彼女はサンクリアンを追い出してしまいました。

 サンクリアンは悲観にくれ、何年にもわたってあちこちを放浪しますが、知らず知らずのうちに彼の生まれた土地に舞い戻ってきました。その地のある家で、彼は編み物をしている美しい乙女をみとめます。一目で彼女の虜になったサンクリアンは結婚の申し出を行ない、彼女もそれを受けました。しかし、彼女はサンクリアンの母ダヤン・スンビだったのです。

 サンクリアンを放逐した後、彼女は神の力によって永遠の美しさを与えられており、その為サンクリアンは彼女を自分の母とは気が付きませんでした。また彼女も放浪の末に変貌したサンクリアンの容姿からは、自分の息子であるとは気が付かなかったのです。 しかし、ダヤン・スンビは青年の額にある傷を見つけ、彼が自分の息子サンクリアンであることを知りました。

 彼女は何とかして、結婚を諦めるよう彼を説得しますが、真実を明かすことができず、サンクリアンは納得しません。

 一計を案じたダヤン・スンビは不可能な課題「一晩で、チタラム (Citarum)川を塞き止め、巨大な船を作ること」をサンクリアンに課し、結婚を諦めさせようとしました。しかし、サンクリアンが強力な魔法の力でこの課題を達成しそうになると、赤いヴェールを東の空にかざし、夜明けが来たかのように見せかけました。 「夜明けが来てしまった!」とサンクリアンは、企みが失敗したことに怒り、ほぼ完成しかかっていた船を蹴飛ばして逆さまにしてしましました。逆さまになった船は塞き止められてできた湖に落下、水が堤防を越えて氾濫し、サンクリアンを呑み込んで流れ去ってしまいました。

タンクバンプラフ
火口の眺め

写真:森石 英樹 氏撮影

 今、バンドゥンの北側にあるタンクバンプラフ(Tangkuban Prahu) 山はこのときにひっくり返された船によって出来たと言われます。(「prahu」とはインドネシア語で「船」の意味です。)


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