副首都計画試案 ( The West Capital Alternative )

平成25年 4月 24日
平成26年 1月 12日
公共建築研究所 所長 藤田伊織
副首都計画試案 概要

平成24年 3月7日に、東京湾北部でマグニチュード(M)7級の地震が発生すれば、震源のプレート(岩板)境界が、従来想定より約10キロ浅いことが明らかになったためとして、東京湾岸の広範囲で、従来想定の震度6強より大きい震度7の揺れが予想されるとの研究成果が公表されました。

平成24年 7月19日、東日本大震災を教訓に地震防災対策の抜本的な見直しを進める中央防災会議の防災対策推進検討会議は、大震災後に切迫性が高まったと指摘される首都直下地震に備え、首都圏が壊滅的な被害を受けた場合などに緊急災害対策本部を置く代替拠点候補として、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の5政令都市を挙げました。これらの5政令都市は、緊急災害対策本部を受け入れる余力があり、代替拠点候補としての可能性はもちろん大ですが、それぞれ、大都市としての抱える問題もあります。また、国の出先機関が集積してはいますが、代替施設の準備はまだなんら具体性がありません。

首都直下型などマグニチュード(M)7級の地震が南関東で4年以内に発生する確率は30年以内に70%という予想に戻りました。それでも、副首都については伊丹跡地利用も含め他の案もありますが、数年のうちに完了可能なものを考えるべきです。 東北大学地震・噴火予知研究観測センターの松澤暢教授の平成24年2月14日の講演では、「4年で云々ということではなく、発災の危険は5倍くらい高まっている。」とのことでした。

また、内閣府の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」は平成25年3月18日、南海トラフを震源域とする巨大地震(マグニチュード9クラス)が発生した場合にライフラインやインフラついて最大で220兆3000億円の経済被害が出るとの想定を発表しました。都道府県別では愛知県30.7兆円、大阪府24.0兆円、静岡県19.9兆円の被害が試算されています。すなわち名古屋、大阪は被災想定地に含まれているのです。

2012年 4月 5日に、「東京圏の中枢機能のバックアップに関する検討会 二次取りまとめ」が国土交通省から発表されていますので、その内容を*印で付け加えます。ただし、この検討会では*「バックアップ場所としての特定の地域の選定」はしない、とされています。


1.副首都の名称 いわゆる「副首都」の「副」というのは、第2順位の意味であって、大災害の際など、一時的にも正式な首都となるべきことから、不適切である。したがって相応の名称が必要である。
名称としては、「西首都西京都)」を東京都に対応したものとして提案する。当然ながら、西日本に位置することが前提となる。

2.平常時の位置づけ 副首都を「西首都」として決定、整備しても、防災訓練時のみ、のような形で現実に使われなければ、有事には機能できないおそれがある。そのため、年に一度は、特別国会等を「西首都」において開催し、実質的審議を行う。
*「東京圏の中枢機能の一部又は全部の恒常的な移転とは異なる概念として考える。」また、この試案は「ウォームスタンバイ」に相当する。」

3.皇居との連携 国会に関しては、天皇陛下が国事機能を行っていただけるよう所要の施設の確保を行う。そのため、京都御所の皇居機能の確保を提案する。したがって、「西首都」は京都の近隣となる。
京都迎賓館を仮の御所としていただくことも検討する。
*皇室については、「それぞれの主体において検討されるべき」としている。ただし、「どのような連携が必要となるかについて、具体的なイメージをもって積み重ねていくことが必要」としている。

4.所要施設 国会議事堂、首相官邸、議員会館(議員宿舎機能を一部有する)及び行政機関の一部のための施設を「西首都」におく。
最高裁判所については、「西首都」に含めない。
行政機関の大部分は、必要に応じて、大阪にある国の出先機関を活用する。
すべての施設は、「仮」で良いが、セキュリティを強化あるいは確保した通信機能は、最先端の施設を事前に整備しておく。
*「最低限必要な中枢機能の継続が確保されるよう」にする。「例えば、オペレーションルームや執務室、会議室、記者会見場、・・・ヘリポートや宿泊施設」も必要としている。

5.関係機関の一部本格的移転 日本銀行については、大阪支店を活用して、本店を大阪市に恒久的に移転する(ワシントンとニューヨークの関係を参照)。
日本政策投資銀行ほかの移転も検討。全体として、経済金融の中心機能は首都や「西首都」とは別地に分離配置すべき。

6.副首都 試案
○京都市宝ヶ池にある、国立京都国際会館を中心施設として考える。国立京都国際会館は国際会議運営については施設管理を含め京都市の財団法人に委託しているが、施設そのものは国有財産である。
相手のある問題ではあるが、有事には会議予定をキャンセルしていただくなど、包括的協議が必要となる。
また、一年の中の一定期間、臨時国会のために使うこととする。これには法律をもって決定することが必要となる。
国立京都国際会館には、本会議、委員会などに必要な諸室がすでにある程度備わっているが、有事に対応するための施設を増設し、定常的には、世界標準の5000人の国際会議が開催可能な大規模な会議施設を付加する。

○閣僚や国会議員ならびに関係者のための宿泊機能を最小限確保するため、隣接するホテルに有事対応の協力をお願いし、事前の包括的契約を行う。なお、このホテルは322室を有する。
また、京都市内の宿泊施設は近年充実してきているところ、有事の際の協力を依頼する。

○交通インフラについては、まず、JR京都駅から地下鉄が国立京都国際会館駅に直結しているので、大量公共輸送機能はすでに確保されている。
道路については、京都駅南あるいは東まで、高速道路が接続しており、そこまでは問題ないが、そこから北への市内の一般道路が混雑する。
空港については、関西国際空港、神戸空港、伊丹空港が近畿圏内にある。
追加的、あるいは長期的インフラ整備としては、京都市内のアクセスの代替として、滋賀県側からのアクセスを容易にするために、大津バイパスから比叡山下を大深度地下トンネルで通し、修学院付近に接続することを提案する。比叡山は信仰上重要な存在であることに鑑み、既存の国道30号線直下などを中心にルートを検討する。




伊丹空港利用構想に関して 伊丹空港の将来の跡地を活用する案がありますが、これについては問題があると考えます。

まず、現在の空港としての廃止は政策決定としてあるわけですが、その跡地を単に建築物を新たに集積する場所とすることは、あまりにももったいないように思います。将来、どのように航空旅客・物流システムが発達するかはわかりませんが、別の形態の航空機が出てきて、騒音などを解決して、新たな空港インフラスペースが必要になったときのために、何らかの形で残すべきと考えます。
したがって、少なくとも現在の滑走路を残して、その上に盛土をして、緑地として後世に引き継ぐのが一番いいかもしれません。しかし、本来は、副首都をめざすなら、東京における成田と羽田の関係や、米国ワシントンのダレス空港とレーガン空港の実例をよく考えるべきです。平成23年12月の韓国大統領も伊丹空港に来られたはずです。関空と神戸は両者とも海上空港であり、地震・津波災害の際には同時に一時的でも使用不能になる可能性もあります。

関東圏と比較すると、近畿圏には信じがたいほど飛行場が少ない現状です。近畿の4つ目の赤丸は八尾飛行場ですが1500m未満の滑走路で、ジェット機は離着陸できません。そして津波対応という意味では、関空の標高は4.5m、神戸は5.0mで、関西空港では、防潮堤が追加的に整備されてはいますが、4〜6mで、それ以上の高さの津波が到来すれば、機能停止になります。
いまさら伊丹空港を廃止しても、残念なこともあります。なぜなら、大阪北ヤードの建築中の高層ビルは高々200メートル弱、これは伊丹空港の存在による建築物の高度規制の結果で、もっと南の阿倍野の再開発は300メートルの超高層が建築中です。何で梅田は200メートル弱で阿倍野が300メートル超なのか考えていただきたい。これから規制を緩和しても200メートルのものは300メートルにはなりません。

とにかく、大阪は、行政の副首都ではなく、日本銀行の大阪移転や法人事業税の優遇政策などで、ニューヨークやデュッセルドルフのような、日本の経済首都を目指すのが本筋だと考えます。



副首都 構想 
( 京都市北部 宝ヶ池地区 )

現在の駐車場部分に追加施設を整備
周囲の山の景観と同化
屋上は緑化と太陽光発電
5000人規模の大会議開催可能施設を内包

左手奥:国立京都国際会館 右手奥:グランドプリンスホテル京都
手前左:現在は駐車場


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