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大阪弁のアクセント体系


大阪弁のアクセントは共通語のアクセントと反対であると思っておられる方がおられますが、これは大きな間違いです。
勿論、反対のものもありますが、そうでないものも多くあります。
大阪弁には、大まかに5つのアクセントの型があります。

(1)大阪弁の5つのアクセントの型

共通語では、大まかに有核類無核類の2つの型がありました。
しかし、大阪弁では、これに加えて、高く始まるもの(高起式)と低く始まるもの(低起式)があり、
これらの組み合わせになっています。
つまり、大阪弁のアクセントは共通語と異なるだけでなく、バリエーションが大変多いのです。
(参考文献:山下好孝(北海道大学助教授)「関西弁講義」)

この講座では、1拍目に核があるものと2拍目以降に核があるものを分類しており、
低起式で1拍目にアクセントは来ませんので、合計5種類のアクセントの型ということになります。

有核類 無核類
1拍目に核 2拍目以降に核
高起式 頭高アクセント
(●○○○)
中下がりアクセント
(●●●○)
平板アクセント
(●●●●)
低起式 中高アクセント
(○○●○)
尻上がりアクセント
(○○○●)
(○○○◎)

(比較:共通語)
有核類 無核類
1拍目に核 2拍目以降に核
1拍目が高い 頭高アクセント
(●○○○)
1拍目が低い 中高アクセント
(○●●○)
平板アクセント
(○●●●)

さて、「関西弁講義」の山下先生は、関西弁のアクセントを次のように記号化しています。
なかなか便利だと思います。でも、直感的に分かりづらいので、本講座では使用しないことにします。

(関西弁のアクセントの記号:山下好孝先生)
有核類 無核類
1拍目に核 2拍目に核 3拍目に核 4拍目に核 ・・・
高起式 H1 H2 H3 H4 H... H0
低起式 - L2 L3 L4 L... L0


(2)頭高アクセント(高起式有核類)

頭高アクセントは、高起式で、アクセントの核が1拍目にある(1拍目の後に下がり目が来る)アクセントです。
但し、1音節語の場合には、音節の途中に下がり目が来るように発音します。

核の位置 1音節 2音節 3音節
1拍目 歯:は[▼]/はぁ[●○]
毛:け[▼]/けぇ[●○]
胃:い[▼]/いぃ[●○]
足:あし[●○]
池:いけ[●○]
山:やま[●○]
蛍:ほたる[●○○]

1音節語の場合には、共通語の語彙と一致するものが多く、
2音節語の場合には、共通語では2音節目にアクセントが来る語彙が多いようです。

これらに助詞をつけてもアクセントは変わらず、助詞は全て低く発音されます。
歯が:は・が[●・○][▼・○]
胃へ:い・へ[●・○][▼・○]
蛍から:ほたる:から[●○○・○○]
池より:いけ:より[●○・○○]


(3)中下がりアクセント(高起式有核類)

これは、最初、平板アクセントのように高く、途中で下がり、最後まで低く発音するアクセントです。
共通語の中高アクセントに相当するアクセントです。
(共通語の中高アクセントの場合には、1拍目は低く発音しますが、
 大阪弁の中下がりアクセントは、1拍目から高く発音します。)
例えば、
核の位置 3音節 4音節 5音節
2拍目   首筋[●●○○]  
3拍目 花びら[●●●○] 観覧車:かんらんしゃ[●●●○○]
扇風機:せんぷうき[●●●○○]
ハナミズキ[●●●○○]
4拍目 ランドセル[●●●●○]

これらに助詞をつけてもアクセントは変わらず、助詞は全て低く発音されます。
ランドセルが:らんどせる・が[●●●●○・○]
観覧車へ:かんらんしゃ・へ[●●●○○・○]
ランドセルから:らんどせる・から[●●●●○・○○]
観覧車より:かんらんしゃ・より[●●●○○・○○]


(4)平板アクセント(高起式無核類)

共通語のアクセントと最も類似語の多いのが、平板アクセントであると思います。
ただし、大阪弁の平板アクセントは、1泊目から最後まで高く発音されることが特徴です。
例えば、
核の位置 1音節 2音節 3音節 4音節 5音節
なし 蚊:か[●]
血:ち[●]
顔:かお[●●]
袖:そで[●●]
香り:かおり[●●●]
時計:とけい[●●●]
洋服:ようふく[●●●●] 散髪屋:さんぱつや[●●●●●]

これらは、共通語でも平板アクセントで発音される語です。
しかし、最初から高い音で発音されるので、かなり特徴的な発音として捉えられると思います。

また、この型のアクセントに限らず、1音節の語は、単独で用いられる時には、2音節のように長音化して発音するのが普通であり、
平板アクセントの場合には、
蚊:かぁ[●●]
のように発音されます。

このアクセントを持つ語に助詞をつけた場合、助詞のアクセントの型にかわわらず、これらの語のアクセントも、助詞のアクセントも変わりません。
蚊が:かぁ・が[●●・●]
死へ:しぃ・へ[●●・○]
顔から:かお・から[●●・●○]
顔より:かお・より[●●・○○]
のようになります。

(5)中高アクセント(低起式有核類)

ここから、1拍目を低く発音する型です。
中高アクセントは、低く始まり、途中で1音節のみ高く発音するアクセントです。
大阪弁に特徴的なアクセントです。
核の位置 2音節 3音節 4音節 5音節
2拍目 顎:あご[○▼]/あごぉ[○●○]
雨:あめ[○▼]/あめぇ[○●○]
あほ[○▼]/あほぅ[○●○]
トマト[○●○]
梯子:はしご[○●○]
お茶碗:おちゃわん[○●○○]
手習い:てならい[○●○○]
カレンダー[○●○○○]
3拍目 お湯のみ[○○●○]
目ぐすり:めぐすり[○○●○]
かまきり[○○●○]
手袋:てぶくろ[○○●○]
カブト虫:かぶとむし[○○●○○]
4拍目 御味噌汁:おみそしる[○○○●○]
お弁当:おべんとう[○○○●○]
5拍目

2音節語の場合には、2音節目の途中に下がり目があります。
中高アクセントで3拍以上の語の場合には、最後の拍に核が来ることはありません。

これらに助詞をつけてもアクセントは変わらず、助詞は全て低く発音されます。
但し、2音節語の場合には2音節目の途中の下がり目は次の音節に移動(下がり目の待機)します。
一般に2音節語に助詞がつく場合、2音節目を長く伸ばして発音することはありません。
顎が:あご・が[○●・○]
はしごへ:はしご・へ[○●○・○]
顎から:あご・から[○●・○○]
はしごより:はしご・より[○●○・○○]


(6)尻上がりアクセント(低起式無核類)

これは、共通語のアクセントにないもので、大阪弁にかなり特徴的なアクセントの型です。
低く始まり、最後の手前まで低く、核がありませんが、最後に少し尻上がりに発音します。
例えば、
核の位置 1音節 2音節 3音節 4音節
なし 目:め[▲]/めぇ[○●]
手:て[▲]/てぇ[○●]
地:ち[▲]/ちぃ[○●]
箸:はし[○●]
空:そら[○●]
海:うみ[○●]
電車:でんしゃ[○○●]
掃除:そうじ[○○●]
元旦:がんたん[○○○●]

などです。

これらに、高いアクセント(平板、頭高など)の助詞をつけると、アクセントの位置が次の音節に移動(上がり目の待機)します。
[△] 途中から上がる
目が め・が [○・◎] 「め」は低く、「が」が上がる
目が痛い め・が・いたい [○・○・●○○] 「が」も低くなり、「い」を高く

はし [○◎] 「し」が上がる
箸を はし・を [○○・◎] 「し」まで低く、「を」で上がる
箸を持つ はし・を・もつ [○○・●・○◎] 「し」は低く、「を」を高く
箸を使う はし・を・つかう [○○・○・●●●] 「を」まで低くなり、「つかう」を高く

電車 でんしゃ [○○◎] 「しゃ」が上がる
電車に でんしゃ・に [○○○・◎] 「しゃ」まで低く、「に」で上がる
電車に酔う でんしゃ・に・よう [○○○・●・○◎] 「しゃ」は低く、「に」を高く
電車に乗る でんしゃ・に・乗る [○○○・○・●●] 「に」まで低くなり、「乗る」を高く
但し、低いアクセント(尻上がりなど)の助詞をつけると、アクセントの位置は変わりません。
電車へ:でんしゃ・[○○●・○] 電車より:でんしゃ・より[○○●・○○]

さて、2音節の尻上がりアクセント(空 [○●])]と、2音節の中高アクセント(雨[○●])は、どちらも [○●]と表記すると、どちらなのか区別がつきません。
そこで、区別する必要がある場合については、尻上がりアクセントはアクセントの核があるわけではないので、黒記号は使わず、空[○◎]のように表記し、
中高アクセントの場合には、雨[○▼]のように表記したいと思います。
[◎]も高く発音して下さい。

2音節 3音節
尻上がりアクセント
(低起式無核類)
箸:はし[○◎]
空:そら[○◎]
海:うみ[○◎]
針:はり[○◎]
漢字:かんじ[○○◎]
中高アクセント
(低起式有核類)
顎:あご[○▼]
雨:あめ[○▼]
阿呆:あほ[○▼]
井戸:いど[○▼]
鮫:さめ[○▼]
足袋:たび[○▼]
窓:まど[○▼]
先刻:さっき[○○▼]


(7)箸、橋、端?

よく話題になるこの3つの「はし」、大阪弁では?
 
大阪弁
共通語
はし[○◎]→はし・が[○○・◎]・・・尻上がりアクセント はし[●○]→はし・が[●○・○]・・・頭高アクセント
はし[●○]→はし・が[●○・○]・・・頭高アクセント はし[○●]→はし・が[○●・○]・・・中高アクセント
はし[●●]→はし・が[●●・●]・・・平板アクセント はし[○●]→はし・が[○●・●]・・・平板アクセント