研究ノート01-2 
筆者より読者の皆様へ
  この度 、大阪医科大学名誉教授の
松本秀雄先生が、Gm研究の集大成として、先生のライフワークである「日本人の起源」に関する総説論文を、日本学士院 “Proceedings of the Japan Academy, Series B”(Vol. 85 (2009) , No. 2 )に発表されました。
  
  この論文は英文によるものであり、筆者は、自分自身の理解のために翻訳を始めましたが、翻訳を進めるうち、我々一般人が学士院の論文集に触れる機会など殆どなく、この訳文をこのホームページに掲載すれば、読者の方々にも興味深いものになるのでは、と思うに到りました。

  下記翻訳文は、日常、英文に接したこともない筆者が、専門用語を含む英文の学術論文を訳したものであり、日本語として熟(こな)れていない箇所や専門的にどうかという箇所も多々あるかと思います。
  そうした訳文に係る一切は、すべて筆者の責任であることをここに確認いたします。


  以下には、原文と訳文を対訳のかたちで掲載しておりますので、筆者の至らない分は、読者の皆様が原文から読み取っていただければ幸いです。
  また、この論文は日本学士院のwebサイトで既にオンライン公開されており、直接参照されたい方は、
 http://www.jstage.jst.go.jp/browse/pjab/85/2/_contents/-char/ja/ こちらから参照ください。 (日本学士院のホームページには、同ページ右上の″発行機関ホームページ″から行くことができます。)
      
 

 


 The origin of the Japanese race
based on genetic markers of immunoglobulin G


免疫グロブリンGの標識遺伝子に基づく日本民族の起源

 
By Hideo MATSUMOTO
松本秀雄著


(Communicated by Osamu HAYAISHI, M.J.A.)




           目次
 01  .要約
 02 .はじめに
 03 .材料と方法
 04 .結果
 05 .日本の集団の特徴
 06 .韓国人集団の特徴
 07 .中国の漢人集団の特徴
 08 .世界の少数民族
   -1 .コーカソイドとの混血集団
   -2 .北方の少数民族
   -3.南方の少数民族
   -4 .アメリカのインディアン
   -5 .モンゴロイドのGm遺伝子の構成


 09 .討論
  -1.二重構造モデル
  -2 .Gm型
  -3 .HLA多型
  -4 .根井正利
  -5 .ミトコンドリアDNA
  -6. Y染色体
  -7 .常染色体
  -8 .言語学
 10 .謝辞
 11 .参考文献
 12 .略歴

          (この目次は筆者が追加作成したもの)



  Abstract:  要約
 This review addresses the distribution of genetic markers of immunoglobulin G (Gm) among 130 Mongoloid populations in the world.
 These markers allowed the populations to be clearly divided into 2 groups, the northern and southern groups.  
 The northern group is characterized by high frequencies of 2 marker genes, ag and ab3st, and an extremely low frequency of the marker gene afb1b3; and the southern group, in contrast, is indicated by a remarkably high frequency of afb1b3 and low frequencies of ag and ab3st.

  この総説は、世界のモンゴロイド、130集団について免疫グロブリンG(Gm)の標識遺伝子の分布について得られた成績を集大成したものである。
 このGm標識遺伝子は、モンゴロイドの集団が北方型集団と南方型集団の二つのグループに明確に分けられることを示す。
 北方型モンゴロイドは、二つの標識遺伝子agとab3stの頻度が高いことと、afb1b3の頻度が極端に低いことで特徴付けられている。
 一方、南方型モンゴロイドは対照的に、afb1b3の頻度が極だって高く、agとab3stの頻度が低い。

 Based on the geographical distribution of the markers and gene flow of Gm ag and ab3st (northern Mongoloid marker genes) from northeast Asia to the Japanese archipelago, the Japanese population belongs basically to the northern Mongoloid group and is thus suggested to have originated in northeast Asia, most likely in the Baikal area of Siberia.

 Gm遺伝子agとab3st(すなわち北方型モンゴロイドの標識遺伝子)の北東アジアか ら日本列島への地理的分布とその遺伝子の流れから判断して、日本人の集団は基本的には北方型モンゴロイドのグループに属し、北東アジア、それもシベリアの バイカル地方に起源を持つ可能性が極めて高いということが示唆される。


Introduction はじめに
  Various theories as to the origin of the Japanese race have been advanced on the basis of the morphology of excavated bones.
 The most accepted theory at present  is the "dual structure model"by Hanihara.1) 
 All of these theories are, however, dependent on morphometrical differences between bones, which are well known to be easily subject to nutrition.

 日本民族の起源に関するいろいろな学説は、発掘された人骨を形態的に調べることによって発展してきた。
 現在、世間一般に最も受け入れられている学説は、埴原和郎による「二重構造モデル」である。
 しかし、二重構造モデルを含む全ての学説は、化石人骨間の形態学的な差異に基づくもので、栄養状態によって容易に左右されることはよく知られている。

 In 1959, the ABO blood group system was first applied to human classification. Since then, polymorphic markers harbored in macromolecules such as proteins and  glycoconjugates including blood group systems have been used for this purpose.
 The reason is based on the fact that the blood group system is inherited as a  Mendelian trait and that the gene frequencies vary among different populations.
 As reviewed by Mourant et al.2)  no individual system except the genetic markers of immunoglobulin G (allotype; immunoglobulin G marker; Gm)was found to characterize human populations.

  それに対し、1959年に、まずABO式血液型が人類の分類に適用された。それ以来、この血液型のような高分子の蛋白質や複合糖質で見られる遺伝的多型が、人間の分類に用いられるようになった。
 それは、血液型がメンデルの法則に則って遺伝する事、またいろんな集団間で、遺伝子頻度が異なるという事実があるからである。
 しかしムーラント等によって研究報告されたように、免疫グロブリンGの遺伝標識(アロタイプ;免疫グロブリンGマーカー;Gm)を除いて、人間の集団を特徴付けられるものは発見されていない。


 Based on the study of Gm in Hungarian Gypsy populations, van Loghem et al.3)  stated that the Gm data contributed much to clarifying genetic differentiation of the populations and that Gm was thus applicable to the study of the origin and  migration of populations, or to evaluate the extent of racial admixture within  populations.

  ハンガリーに住むジプシーについてのGm研究に基づいて、ファン・ロッハム等は、Gm遺伝子のデータは、集団の遺伝的な識別を明確化するのに役立ち、且つ Gm遺伝子のデータは集団の起源や移動を調べたり、集団が持つ人種的な混血の割合を計算することにも適用できると、Gm型の有効性について述べている。

 
We found 2 novel Gm (s) and Gm (t) types in 1966,4)  which were then designated as the Gm ab3st gene; and further studies of the geographical distribution of this gene  suggested to us that it is a northern Mongoloid marker.
 When I was invited to the USSR in 1983, about 1,000 serum samples collected from Mongoloid minorities in the Baikal area were given to me for study of Gm by Professor Rychkov of the then Soviet Scientific Academy.

 我々は、1966年に二つの新しいGm型である、Gm(s)とGm(t)を発見した。それらはGm ab3st遺伝子と称されることになった。そしてこの遺伝子の地理的な分布の研究が進むと、この遺伝子は北方型モンゴロイドの標識遺伝子となることがわかった。
 私が1983年に、ソ連に招待されたときのこと、当時のソビエット科学アカデミーのリチコフ教授からGm遺伝子研究のためにと、バイカル地域のモンゴロイド系少数民族から集めた、約1,000にのぼる血清サンプルを分与していただいた。

  During the course of studying these samples, with our aim fixed on Gm genes that characterize Mongoloid populations, we obtained an unexpected  result allowing us to approach the roots of Japanese people.5),6)
 Based on further cooperative studies with the Russian labs on the dispersal of Mongoloids in Asia,7)  we confirmed the highest frequencies of the Gm ab3st gene among the 3 Buryat populations in the Baikal area; and the geno-cline of Gm ab3st was shown to be in good order, leading to the conclusion that our hypothesis has validtiy.

 我々の目的を、モンゴロイド集団を特徴付けるGm遺伝子の研究に絞って、これらのサンプルについて研究していくうちに、我々は、日本人のルーツにアプローチすることが可能になるのではという、思いもよらなかった成果を得た。
 アジアにおけるモンゴロイドの拡散をロシアの研究所と共同研究を進める中で、我々は、バイカル地域に住む3つのブリヤート集団が、Gm ab3dt遺伝子で最も高い頻度を示すことを確かめた。
そして、Gm ab3st遺伝子の遺伝子勾配に整然とした傾向があることが見られ、我々の仮説が妥当であるという結論に至った。







 Materials and methods 材料と方法

 About 20,000 individual sera from 130 populations were tested for Gm types by using the agglutination inhibition test with the reagents described previously. 8)
 This test is based on classical antigen-antibody reaction and allows unequivocally the identification of 8 Gm types: a, b1, b3, f, g, s, t and x.
 A total of 9 different phenotypes, each of which comprises 2 to 6 types, were detected in Mongoloids and explained by 4 genes, as described below.

 130の集団から採集された約20,000人の血清資料についてGm型検査が行われた。その検査は以前に発表した論文に記載したような試薬を用いて、凝集阻止試験によって行われた。
 この検査は、古典的な抗原抗体反応に基づくものであるが、8つのGm型、すなわちa、b1、b3、f、g、s、t、xの識別を正確に行える。(注:これらの8つのGm型は、必ず一定の組み合わせでセットになって遺伝子を形成し、親から子に正しく遺伝する。)
 合計9つの表現型−これらの型は2個(ag)〜6個(afb1b3st, axgfb1b3)のGm型で構成されている−がモンゴロイドに於いて認められ、これらの表現型は以下に述べるように4つの遺伝子で説明される。

 
Each gene frequency (ratio of a gene in each population) was calculated by using the maximum likelihood method. 8)
 Phenotypic distribution in a population was tested for Hardy-Weinberg equilibrium by using a computer program through the courtesy of Kurcznsky and Steinberg.9)

 それぞれの遺伝子頻度(すなわちそれぞれの集団における遺伝子の割合)は最大尤度法を用いて計算された。
 各集団における表現型の割合に関しては、クルチンスキーとスタインバーグの好意によりコンピュータープログラムを使って、ハーディ-ワインバーグ平衡が成立するかを検討した。

(訳者註:この項は、非常に専門的で筆者は何も説明することが出来ません。遺伝子関連の用語等については、読者各自でお調べください。)





  Results 結果

 A total of 9 different phenotypes, ag, axg, agb3st, agfb1b3, axgb3st, axgfb1b3, ab3st, afb1b3st, and afb1b3, could be well accounted for by 4 genes, i.e., ag, axg, ab3st, and afb1b3, through the segregation patterns among the offsprings of Japanese families.
 The populations studied were all in good Hardy-Weinberg equilibrium.
 The Gm gene frequencies of each of the 130 populations are presented in Tables 1 to 5, and the geographical distributions of the populations are shown with the ratios of the genes in each population as circlegraphs in Figs. 1 and 2.

 合計9つの異なる表現型(ag、axg、agb3st、agfb1b3、axgb3st、 axgfb1b3、ab3st、afb1b3st、afb1b3)は、日本人集団の家系調査の成績から、4つの遺伝子すなわちag、axg、ab3stと afb1b3によってよく説明される。
 研究された集団はすべて、良好なハーディ-ワインバーグ平衡を示した。
 130の集団のすべてのGm遺伝子の頻度は、表1〜5(
)に提示した。そしてそれ
らの集団の地理的分布は、
図12 に、各集団の遺伝子割合の円グラフで表示した。
 (訳者注:表や図は拡大してご覧ください。)

  These results clarified that Mongoloid populations can be divided into 2 groups, the northern and southern groups.
 The northern group is characterized by high frequenies of the Gm ag (blue in the Figures) and a low frequency of the Gm afb1b3 gene (red in the Figures).
 On the contrary, the southern group is characterized by an extremely high frequency of the Gm afb1b3 gene and low frequencies of the Gm ag and ab3st genes.
 Of particular note is the frequent occurrence of the Gmab3st gene exclusively in the northern group.
 Thus, Gm ag and ab3st are the northern genes and Gm afb1b3 is the southern gene.

 これらの結果は、モンゴロイドの集団が2つのグループ、北と南のグループに分けられることができることを明確にした。
 北のグループは、Gm ag遺伝子(図中の青色)とGm ab3st遺伝子(図中の黄色)の頻度が高く、Gm afblb3遺伝子(図中の赤色)の頻度が低いことで特徴づけられる。
 逆に、南のグループは、極端に高い頻度のGm afblb3遺伝子と低いGm agとab3st遺伝子によって特徴づけらている。 
 北のグループの中にだけ、Gm ab3st遺伝子が高い頻度で見られることは、特に注目に値する。
 以上述べたように、Gm agとab3stは北方型の遺伝子で、そしてGm afb1b3は南方型の遺伝子ということが出来る。





  Characteristics of the Japanese population.10),11) 日本人集団の特徴

 The results obtained from 26 Japanese populations living in Japan are shown in Table 1and Fig. 1.
 The Ainu population12)  and the 8 island populations (Sadogashima, Kamishima, Tanegashima, Yakushima, Amamiohshima, Miyakojima, Ishigakijima, and Yonakunijima) were not included for the calculation of the mean frequencies in the general Japanese (17 populations, general Japanese), because the Ainu are indigenous Japanese people and the 8 islanders are isolated and small in number.
 The mean frequencies of the Gm genes observed among the 17 Japanese populations were0.458 for Gm ag, 0.176 for Gm axg, 0.260 for Gm ab3st, and 0.106 for Gm afb1b3.
 These 17 Japanese populations were shown to be genetically homogeneous (x2=90:63, d.f.=136, p > 0:999), when compared with each other.

 日本に住んでいる26の集団から得られた結果は、表1図1に示した。
 アイヌの集団と8つの島の集団(佐渡島、神島、種子島、屋久島、奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島)は、一般的な日本人(17集団)の平均頻度の計算には含めなかった。アイヌは先住の日本の人々であり、8つの島の住人は隔離集団で、且つ人数も少ないからである。
 17の日本の集団で観察されるGm遺伝子の平均頻度は、ag0.458、axg0.176、ab3st0.260、afb1b3は0.106であった。 また、これらの17の集団は、互いに比較しても遺伝的に等質性を示す集団であることが示された。(x2=90.63、d.f.=136、p>0.999)
(訳者注:χ2(かいじじょう)、d.f.(自由度degree of freedom)、p(確率probability) は、確率的に有意であるかどうかを意味するようだが、これも専門的であり且つこの論文をわれわれ一般人が理解する上に不可欠ではないので、以後、訳文には表示しない。この数値が必要な方は、原文の方をご覧いただきたい。)
 
 
Heterogeneities, however, were found when the 17 Japanese populations were compared with the Ainu (x2=71.2、d.f.=2、p<0.001) and with the Miyakojima population(x2=37.2、d.f.=3、p<0.001); whereas homogeneity was observed between the Ainu and the Miyakojima populations(x2=3.15、d.f.=3、p>0.369).
 In other words, the Ainu and the Ryukyu islanders (Miyakojima, Ishigakijima, and Yonakunijima) differed from the general Japanese populations in Gm gene pattern.
 Both Ainu and Miyakojima populations showed a more remarkable northern type, characterized by a higher frequency of one of the northern genes, Gm ag (blue in the Figures), and by a lower frequency of the southern gene, Gm afb1b3(red in Figures).

 しかし、17の日本人の集団はアイヌや宮古島の集団と比べると、異質であることが認められた。一方、アイヌと宮古島の集団の間には等質性が観察された。
 別の言い方をすると、アイヌと琉球島民(宮古島、石垣島、与那国島)は、Gm遺伝子パターンでいうと一般の日本人の集団とは異なっている。
 アイヌと宮古島の集団は、両方ともより顕著な北方型であることを示す。それは北方型遺伝子の一つ、Gm ag(図中の青色)の頻度がより高く、南方型遺伝子Gm afb1b3(図中の赤色)の頻度がより低いことで特徴付けられている。

  In particular, the frequency of the other northern gene, Gm ab3st (yellow in the Figures), was much higher in the Ryukyu islanders than in the general Japanese populations.
 Another view of this is that the general Japanese populations have a higher frequency of the southern afb1b3 gene than the Ainu and the Ryukyu islanders, resulting from some admixture at rates as low as 7−8% with south Asian populations having the Gm afb1b3 gene in high frequency, but yet all of these Japanese populations studied had the Gm pattern of the northern Mongoloid.

 特に、もう一つの北方型遺伝子Gm ab3st(図中の黄色)の頻度が、一般の日本人の集団に比べ、琉球島民の方が非常に高かった。
 これは別の見方をすれば、一般的な日本人の集団は、アイヌや琉球島民より南方型のafb1b3遺伝子をより高い頻度で持っていることを意味し、それはafb1b3遺伝子を高い頻度で持っている南方のアジア人集団と7〜8%程度の低い割合で混血した結果である。
 しかしもちろん、研究されたすべての日本人の集団が、北方型モンゴロイドのGmパターンを持っていることに変わりはない。

 On the other hand, in sharp contrast to the 3 Ryukyu Islanders, a native tribe in Taiwan, theTakasago,13),14) and a Taiwanese population (descendants of people who migrated from southern China about 300 years ago)15)  showed a typical southern Mongoloid pattern, as dipicted in Fig. 1, in spite of the fact that there is only an 80-km distance between Taiwan and the southwestern-most inhabited island of Japan (Yonakunijima).
 This difference in pattern was reflected in heterogeneities observed between the Yonakunijima islanders and the Takasago population(x2=957.178、p<0.0001)  and between the Ainu and Takasago populations(x2=1572.650、p<0.0001).
 Based on these Gm results, it is hard to consider that peoples from the south migrated through the Ryukyu islands northwards to mainland Japan.

 一方、琉球3島の島民と非常に対照的に、台湾の土着の種族・高砂族といわゆる台湾人(およそ300年前南中国から移住した人々の子孫)は図1に示したように、典型的な南方型モンゴロイドのパターンを示す。
 事実、台湾と日本の最南西の居住者の島(与那国島)とは僅か80kmしか離れていないのにである。
 パターンのこの違いは、与那国島の島民と高砂の集団、アイヌと高砂の集団の間で見られる異質性を反映したものである。
 このGm遺伝子の結果から、南方の人々が琉球の島々を経由して、北方にある本土日本に移住してきたと考えることは困難である。





  Characteristics of the Korean population.16)  韓国人集団の特徴

 Seven Korean populations in Cheju Island, Pusan, Kwangju, Kongsan, Chonju, Wonju, and Kannung of South Korea, and 1 Korean population in Yanji of northeast China were tested for the Gm types (Table 2 and Fig. 1).
 These 7 Korean populations in different regions throughout South Korea showed homogeneity(x2=30.83、d.f.=48、p>0.9).
 Homogeneity was also found between the 7 South Korean populations and the Korean population in Yanji, China (x2=4.9、d.f.=3、p>0.179).
  In spite of the northern Mongoloid pattern in both Japanese and Korean groups, a highly significant heterogeneity was identified between these 2 groups(x2= 288.7、d.f.=3、p<0.001).

 7つの韓国人集団−韓国の済州島、釜山、光州、慶州、全州、原州、江陵−と中国東北部の延吉の朝鮮族について、Gmのタイプが調べられた(表2図1)。
 韓国全土にまたがる諸地方のこの7つの集団は、等質性を示す。 7地区の韓国人集団と中国・延吉の朝鮮族の間にも、等質性が認められる。
 日本人と韓国人の両グループ共、北方型モンゴロイドのパターンを示すにもかかわらず、これらの2つのグループの間には、非常に著しい異質性が見られた。

 The frequency of the Gm ab3st gene (yellow in the Figures) in the Korean population was 14.5% on average, which is intermediate between the mean frequency in the general Japanese (26%) and the highest frequency in a Han population (11.7%,Beijing in China).
 Similarly, the mean frequency of Gm afb1b3 (red in the Figures) among Koreans (14.7%) was intermediate between that of Gm afb1b3 in the general Japanese (10.6%) and the frequency of Gm afb1b3 in the Beijing Han (24.1%). 

 韓国人集団のGm ab3st遺伝子(図中の黄色)の頻度は平均して14.5%で、それは一般的な日本人の平均頻度(26%)と漢人のなかで最も高い頻度(11.7%,北京)を示す中間にある。
 同様に、韓国人のGm afblb3(図中の赤色)の平均頻度(14.7%)は、一般的な日本人のそれ(10.6%)と北京の漢人のそれ(24.1%)との中間であった。

 The Korean populations showed the northern Mongoloid pattern, like the general Japanese, but higher frequencies of the southern marker gene, Gm afb1b3 (red in the Figures), than the Japanese populations.
 It seemed to be during the formation of the contemporary Korean population that such a Gm pattern intermediate between Japanese and the northern Han in China emerged.
 Japanese and Korean populations were originally identical or extremely close to each other.
 The difference in Gm pattern between contemporary Japanese and Korean populations resulted probably from frequent influxes of Chinese and/or northern populations into the Korean Peninsula.

 韓国人集団は、一般的日本人と同様、北方型モンゴロイドのパターンを示すのに、 南方型の標識遺伝子Gm afblb3(図中の赤色)については、日本人の集団より高い頻度を示す。
 このことは現代韓国人が形成される過程で、日本人と中国の北方系漢人の中間に位置するようなGmパターンが誕生したと思われる。
 日本人と韓国人の集団は、当初は同一だったか、あるいは互いに非常に近かった。 しかし、おそらく、中国人乃至北方の集団が朝鮮半島へ頻繁に流入したことから、現代の日本人と韓国人の集団の間にGmパターンの違いが生じたものと考えられる。
(訳 者注:中国東北部の集団のGm afb1b3遺伝子の頻度は、表3や図1を見れば分かるように、意外にも日本人や韓国人よりはるかに高い。その地方から朝 鮮半島に多量に流入してくるのだから、韓国人のGm afb1b3遺伝子の頻度は、日本人より高くならざるを得なかったに違いない。)





  Characteristics of the Chinese Han population. 10),11),17)   中国の漢人集団の特徴

 The major ethnic group in the vast territory of China is the Han, making up 93% of the population, while the remaining 7% is composed of 55 minority ethnic groups.
 Chinese history has witnessed repeated ethnic movement, colonization, migration, and frequent dynastic changes.
 Such factors as mixed settlements and communal habitation on a finite scale are behind the multiracial but Han-dominative spread over the wide areas.
 The outcome is visible in both geographical distributions of the populations in China and distinctive geno-clines of the Gm genes among the populations, as described below.

 中国の広大な領域に住む主要な民族集団は、漢人が、人口の93%を占めており、 残りの7%が55の少数民族集団から構成されている。
 中国の歴史には、度重なる民族の移動、植民地化、移住と頻繁な王朝の交代が見られる。
 限られた地域の中に民族が交じり合って居住したり、共同生活をするようなことの原因は、 多民族とはいえ広大な地域に漢民族が支配的に広がっていることが背景にある。
 その結果は、以下に記すように、中国の集団の地域分布と集団間のGm遺伝子の独特の遺伝子勾配の両方が認められる。

 The Han also have the 4 same Gm genes as the Japanese and Koreans (Table 3 and Fig. 1).
 The 17 Han populations tested for the Gm types are distributed from north to south in China.
 In sharp contrast to the Korean and the general Japanese, both of which are homogeneous for Gm, the Han
clearly display latitudinal geno-clines extending from Haerbin in the northern area to Guangzhou in the southern area with reciprocal changes in frequencies of the northern and southern marker genes.
 One northern marker, Gm ag (blue in the Figures), decreased southwards in frequency from 0.471 to 0.168, together with another northern marker, Gm ab3st (yellow in the Figures) from 0.117 to 0.033; but the southern marker, Gm afb1b3 (red in the Figures), increased southwards in frequency from 0.214 to 0.730.

 漢人も、日本人と韓国人と同様、4つの同種のGm遺伝子を持っている(表3図1)。
 Gm型を検査された17の漢人集団は、中国の北から南まで分布している。
 朝鮮人と一般的日本人、両者がGm遺伝子に関して等質であるのに対し、極めて対照的に、漢人には、北方と南方の標識遺伝子の頻度が逆方向に変化するという、北方のハルピンから南方の広州に及ぶ緯度方向の遺伝子の勾配が、明らかに存在する。
 北方型標識の一つ、Gm ag遺伝子(図中の青色)の頻度は、0.471から0.168へ、もう一つの北方型標識遺伝子Gm ab3st(図の中の黄色)の頻度は、0.117から0.033へ、共に南に行くに従って減少する。
 一方、南方型標識遺伝子である、Gm afb1b3の頻度は、0.214から0.730へ南にいくに従い増加する。
 
 
Eventually, the Han populations existent in northern Asia were more influenced by the northern Mongoloid; and the Han populations in southern Asia, more by the southern Mongoloid.
 Comparison of a Han population in Beijing with Korean and Japanese populations showed highly significant heterogeneities (x2=32.85、d.f.=3、p<0.001 and x2=114.58、d.f.=3、p<0.001, respectively).
 Such heterogeneities among the Han populations and between the Beijing Han and the 2 other populations are reflected in the distinctive reciprocal geno-clines.

 結局、現存の北方アジアの漢人集団は、北方型モンゴロイドによってより影響され、南方アジアの漢人集団は、南方型モンゴロイドからさらに影響された。
 韓国人および日本人集団と、北京の漢人集団を比較すると、非常に顕著な異質性を示す。
 そのような漢人集団にある異質性、あるいは北京の漢人とほかの2つの集団の間にある異質性は、特徴的な逆方向の遺伝子勾配に反映されている。




 Minority ethnic groups in the World.  世界の少数民族

Admixture populations with Caucasoid コーカソイドとの混血集団

 The distributions of the Gm genes among minority ethnic groups in Central and  Southwest  Asia and in North and South America are shown in Tables 4 and 5 and in Figs. 1 and 2.  
 As stated above, the Gm pattern of Mongoloid populations is characterized by the 4
Gm genes, i.e., ag, axg, ab3st, and afb1b3; and that of Caucasoid populations by 3 Gm genes, i.e., ag, axg, and fb1b3.
 Thus, the Gm ab3st and afb1b3 genes are specific to the Mongoloid, and the Gm fb1b3 gene (white in the Figures) is specific to the Caucasoid; whereas, the Gm ag and axg genes are found in common between the 2 groups18)  and are thus ''old'' genes.

 中央アジア、南西アジアや南北アメリカの少数民族のGm遺伝子の分布は、表4および5図1,2で示した。
 上述のとおり、モンゴロイド集団のGmパターンは、4つのGm遺伝子すなわちag,axg,ab3st,
afb1b3によって特徴付けられ、コーカソイドの集団は3つのGm遺伝子、ag,axg,fb1b3によって特徴付けられる。
 
このように、Gm ab3stとafblb3遺伝子はモンゴロイドに特有で、Gm fblb3遺伝子(図中の白色)はコーカソイドに特有である。
 一方、Gm agとaxg遺伝子は両方のグループに共通して見られる、「古い」遺伝子である。
 
  A total of 5 Gm genes were found in 12 ethnic groups, and an irregular combination of the 2 common genes with the Mongoloid ab3st and Caucasoid fb1b3 genes was observed in a Uralian population.
 These combinations of the Gm genes indicate that the 13 ethnic groups are admixed populations of Caucasoid and Mongoloid.
 Similarly, judging from their Gm patterns, it is reasonable to assume that Huis are basically Mongoloid with some Caucasoid admixture; whereas Uighurs are basically Caucasoid with some Mongoloid admixture.

 合計5つのGm遺伝子が12の民族集団で見られるが、モンゴロイドのab3stとコーカソイドのfb1b3と2つのありふれた遺伝子(ag, axg)をもつという一般的な混血集団(5遺伝子)とは異なる4つの遺伝子をもつ、ウラルの集団が観察された。
 Gm遺伝子のこれらの組み合わせは、それら13の民族グループがコーカソイドとモンゴロイドの混血集団であることを示している。
 同様に彼等のGmパターンから判断して、フイ族(Huis 
訳者注−新彊ウイグル自治区昌吉Changji市) は基本的にはモンゴロイドで、多少コーカソイドと混血していると想定される。一方、ウイグル族は基本的にはコーカソイドで、多少モンゴロイドが混血している。

 Indian populations in India and its neighboring regions are basically Caucasoid; however, many of them, e.g., Kalitas, Brahmin, Nepal, Tamil,Sinhalese, and Hindu, have admixed with the Mongoloid.  
 Only a few populations, e.g., Muslim and Ahom, are basically Mongoloid admixed with Caucasoid.  
 In the case of the Brahmins, which have the highest social status in the Hindu cast system, the fb1b3 gene frequency is 52% (white in the Figures), the highest in Indian populations.
 Two populations from westernmost locations in our study, Iranian and Uralian, are basically Caucasoid with a northern Mongoloid admixture.

 インドやその近隣地域に住むインド人集団は、基本的にコーカソイドである。
しかし、たとえばカリタスやブラーミン、ネパール、タミル、シンハレース、ヒンズーの多くは、モンゴロイドが混ざっている。
 ただ、2,3の集団、たとえばムスリムやアホムはコーカソイドと混血したモンゴロイドである。
 ブラーミン、かれらはヒンズーのカースト制度のなかで最も高い社会的地位にあるが、彼等のケースではfb1b3の頻度が52%(図の中の白色)とインド人集団の中では最高値である。
 我々の研究範囲で最西端の2つの集団、イラン人とウラル人は基本的にはコーカソイドで、北方のモンゴロイドとの混血集団である。





 Northern minority populations 北方の少数民族

 A total of 17 populations among the Buryats, Yakut, Even, Evenki, Olunchun, Tungus, Dawoer, Udehe, Mongols, and Tibetans showed high frequencies of the ag and ab3st genes and a low frequency of the afb1b3 gene, i.e., the northern Mongoloid pattern.
 Among them, Buryat populations in the Baikal area are recognized as the most remarkable northern-type holder.
 A northernmost Buryat population (north Baikal) displayed the highest frequency of the Gm ab3st gene, which indicates gene flow from the Baikal area to the Japanese Archipelagos (Fig. 2).

 ブリアート、ヤクート、エベン、エベンキ、オロチョン、ツングース、ダフール、ウデヘ、モンゴル、チベットを含む17の集団は、高い頻度のagおよびab3st遺伝子と低い頻度のafb1b3遺伝子を持つ、北方型モンゴロイドのパターンを示す。
 彼等のうち、バイカル地域に住むブリアートは、もっとも顕著な北方型の持ち主と認められる。
 最も北に住むブリアート集団(北バイカル)は、最も高い頻度のab3st遺伝子を示し、その遺伝子は、バイカル地域から日本列島に向けて遺伝子の流れがあることを示す。(
図2

 The Buryats, numbering approximately 500,000, are the largest minority group in Siberia.
 It is said that the Baikal area has always been suitable for human subsistence because of rich foods and mild climate even in winter, when it is 10℃ higher there than in the surrounding regions.
 It may thus be imagined that peoples in the Baikal area and around the upper neighborhood of the Yenisei River could certainly have survived even during the Last Glacial Maximum time.

 およそ人口500,000を数えるブリアートは、シベリアで最も規模の大きな少数民族集団である。
 バイカル地方は、食料は豊富で、冬季でも周辺地域より気温が10℃高く、気候も温暖なため、常に人間の生存に適した地域だといわれる。
 バイカル地域とエニセイ川の上流付近の民族は、最終氷河期の最寒期の間でさえ、このように確実に生き残ることが出来たと考えられる。

 
The Yakut tribe originally lived in the Baikal area, migrated while mixing with Even and Evenki populations, and settled widely around north Asia. 
 Now they comprise the Saha Republic (population,380,000) that covers almost half of Asian Russia.

 ヤクート族は、元々バイカル地域に住んでいたが、エベンとエベンキ集団と混血しながら移住して、北方アジアに広く分布することになった。
 現在、彼らはロシアのアジア地区のほとんど半分をカバーするサハ共和国(人口、380,000)を構成している。

 The Evenki (population, 30,000 in Russia) and Tungus (25,000 in China) are the same tribe.
 The Olunchun in China are supposedly like the Evenki in Russia.
 The Gm ab3st gene observed at high frequency of 44% in the Olunchun population is probably due to a bottle neck phenomenon because of their small population size of only 2,400 individuals.

 エベンキ(人口、ロシアに30,000人)とツングース人(中国に25,000人)は、同じ種族である。 
  中国のオロチョンも、ほぼロシアのエベンキと同じである。
 Gm ab3st遺伝子がオロチョン集団で44%の高頻度で観察されるのは、わずか2,400人の少ない人口サイズのため、ビンの首現象の結果であろう。

 
Two Tibetan populations in Lasa and west Tibet have a more remarkable northern Mongoloid pattern than the 4 Mongolian populations, but a Tibetan population in Hezhue and the 4 Mongolian populations have higher frequencies of Gm afb1b3,which indicates admixture with the Han.

 ラサと西チベットの2つのチベット人集団は、4つのモンゴル人集団より以上に顕著な北方型モンゴロイドパターンを持っている。一方、Hezhue(訳者注:合作 甘粛省)のチベット集団と4つのモンゴル人集団は、漢人との混血を示す、より高い頻度のGm afblb3を持っている。






 Southern minority populations 南方の少数民族

 With regard to Southeast Asia, Chuang is the largest minority tribe (14 million) among minority groups there and has an extremely high frequency (94%) of Gm afb1b3 (the southern-type gene, red in the Figures).
 Gm afb1b3 was observed still at a high frequency in the populations of Micronesia, Melanesia, Indonesia, Cook Islands, and Hawaii in the Pacific Ocean. 

 東南アジアに関して、チワン族は少数民族グループの中で、最大規模の部族(1400万)で、Gm afblb3(南方型の遺伝子 図中の赤色)を極端に高い頻度(94%)で持つ。
 Gm afb1b3は、太平洋のミクロネシア、メラネシア、インドネシア、クック諸島とハワイの集団で、高い頻度で観察される。


 Negritos in the Philippine islands, whose ethnic origin has been controversial, have the Gm ag, axg, and afb1b3 genes with the southern afb1b3 gene higher than the other 2 genes, but lack the Gm ab3st gene, characteristic of northern Mongoloid.
 Based on this Gm pattern, Negritos can be considered to be southern Mongoloid whose ancestors became dispersed to the archipelagos in fairly ancient times, similarly as did the Indonesians, Micronesians, and Polynesians.

  民族の起源が論争の的だったフィリピンの島々のネグリトは、Gm遺伝子ag、axg、afb1b3をもっているが、南方型のafb1b3遺伝子を他の2つの遺伝子より高く持っている一方、北方のモンゴロイドに特有のGm ab3st遺伝子は持っていない。
 このGm遺伝子のパターンに基づくと、ネグリトは南方系のモンゴロイドと考えることができる。彼等の祖先はインドネシア人や、ミクロネシア人、ポリネシア人と同様、かなり古い時代に島々に分散したモンゴロイドであると考えられる。

 Figure 2 allows us to conclude that the center of dispersal of the Gm afb1b3 gene is in the Yunnan and Guangxi area of southern China.

 図2から、我々は、 Gm afb1b3遺伝子の拡散の中心は、中国南部の雲南省と広西チワン族自治区の地域にあると結論する。

 





 American Indians アメリカのインディアン

 The Gm data on the American Indians are shown in Table 5 and Fig.2. American Indians are generally classified as Mongoloid. The most obvious specific place of departureof their ancestors was anywhere in Siberia.
 The South American Indians have only 2 Gm genes, agand axg.
 They are considered to be ancestors to American Indians who crossed the Bering land bridge since they have the same Gm pattern as theAustralian aborigines.19) 
 Then the more specialized Mongoloid arrived later, carrying the Gm ab3st gene to North America.

 アメリカのインディアンのGmデータは、表5図2に表されている。
 アメリカのインディアンは、通常、モンゴロイドと分類される。
 彼らの先祖のはっきりした出発地は、シベリアのいずれかにあった。
 南アメリカのインディアンは、2つのGm遺伝子、agとaxgだけを持っている。
 彼らはオーストラリアのアボリジニと同じGmパターンをもつことから、同じころに、ベーリング陸橋を渡ったアメリカインディアンの祖先であると考えられる。
 それから、より特殊化したモンゴロイドが後に、Gm ab3st遺伝子を北アメリカへ運んだ。






 Gm gene composition of the Mongoloid モンゴロイドのGm遺伝子の構成

 Populations dispersed over broad areas of Asia and North and South America are regarded as Mongoloid characterized by 4 Gm genes, i.e., Gm ag, axg,ab3st, and afblb3. Of particular note are the geno-clines, which are observed for the 2 northern Gm ag and ab3st genes, and the southern Gm afb1b3 gene, in Asia and America.
 Based on our Gm data, the degree of genetic differentiation between the Mongoloid populations was approximated for our Gm data by using the fixation index (Fst ) of Wright.20)
 The calculations indicated that the degree of genetic differentiation among the Mongoloid populations concerned was very great and almost equivalent to those of the worldwide differentiation for the Rh and Duffy systems reported by Cavalli-Sforza and Bodmer.
21)

 アジアや南北アメリカの広大な地域に分散した集団は、4つのGm遺伝子すなわちag、axg、ab3st、afb1b3で特徴付けられたモンゴロイドであると考えられる。
 特筆すべきは、アジアとアメリカで、北方型のGm遺伝子ag、ab3stと南方型のGm遺伝子afb1b3が観察され、遺伝子の勾配が見られるということである。
 我々のGmデータに基づくと、モンゴロイド集団間の遺伝子の分化の程度は、ライトの固定インデックス(Fst)を用いて近似値が得られる。
 計算結果は、関係するモンゴロイド集団間の遺伝子の分化の程度が、非常に大きく、カヴァリ・スフォルツァとボドマーにより報告されたRh式血液型やダッフィ式血液型の、世界的な規模の分化の程度にほとんど等しいことを示した。

 Furthermore, these results may provide evidence that the differences in Gm gene frequencies, particularly those for Gm ag, ab3st, and afb1b3, are due to factors such as natural selection and gene flow (one gene permeating into another race or nation crossing over the barrier between them from some race or nation) rather than random genetic drift.
 Thus, it can be inferred from such geographical differences in frequencies of the 3 genes that 2 distinctive Mongoloid populations existed among the paleo-Mongoloid of East Asia in the past. 

 さらにまた、これらの結果は、Gm遺伝子頻度(とりわけGm ag、ab3st、afb1b3の)の違いは、ランダムな遺伝的浮動とい うよりも、むしろ自然淘汰や遺伝子の流れ(ある人種や民族からほかの人種や民族へ、それらの間の障壁を越えて、ある遺伝子が浸透していく)のような要因に よるという、証拠を提供する。
 それは、かって、東アジアの古モンゴロイドの中に存在した、2つの特徴的なモンゴロイド集団が持っていた3つの遺伝子(ag, ab3st, afb1b3)の頻度の地理的な違いから推測することが出来る。

 As shown in Fig. 2, the Mongoloid was divided into northern and southern groups.
 A clear geno-cline was found for the Gm ab3st gene, which is a marker gene for the northern Mongoloid. 
 Namely, the Gm ab3st gene is found at the highest frequencies in the Baikal area, and then flows regularly to the Mongol, Tibetan, Yakut, Olunchun, Tungus, Korean, Japanese, and Ainu still at high frequencies; although the gene frequency decreased markedly from mainland China to Taiwan and Southeast Asia, and from North to South America.
 The center of dispersal of this Gm gene is considered to be in the Baikal area.
 On the basis of these Gm findings, the Japanese belong basically to the northern Mongoloid and originated most likely in the Baikal area.

 図2で示すように、モンゴロイドは南北のグループに分けられた。
 明瞭なな遺伝子勾配がGm ab3st遺伝子に見られた。そして、それは北方モンゴロイドの標識遺伝子である。
 すなわち、Gm ab3st遺伝子はバイカル地域で最も高い頻度で見られ、そこから、規則正しくモンゴル人、チベット人、ヤクート、オロチョン、ツングース、韓国人、日本人、アイヌへと高い頻度を保ったまま流れている。 だが、中国本土から台湾と東南アジアへ、また、北アメリカから南アメリカへ、その遺伝子頻度は顕著に減少する。
 このGm遺伝子の分散の中心は、バイカル地域にあると考えられる。
 これらのGm遺伝子の成績に基づくと、日本人は基本的に北方型モンゴロイドに属し、その故郷はバイカル地域の可能性が最も高い。






 Discussion 討論

 Regarding the roots of the Japanese, Hanihara1)  proposed the ''dual structure model'', which suggests that the Jomon (12,000-2300 years ago) and Yayoi (2300-1700 years ago) peoples originated from South Asia and North Asia, respectively.
 This model assumes that people of the South Mongoloid lineage settled Japan first, later followed by a considerable number of immigrants of the North Mongoloid lineage and that the Mongoloid of both lineages mixed with each other to form the present-day Japanese people.

 日本人のルーツに関して、埴原和郎は「二重構造モデル」を提唱した。そしてそれは縄文時代(12000−2300年前)と弥生時代(2300−1700年前)に人々が、それぞれ南アジアと北アジアから渡来したことを示唆した。
 このモデルは南方モンゴロイド系統の人々が最初に日本に定住し、その後、北方モンゴロイドの系統の、それもかなりの数の人々の渡来が続いたと仮定する。そして両方の系統のモンゴロイドが互いに混ざりあい、現代日本人を形成したとする。

 Furthermore, the Ainu are assumed to be Jomon people of the South Mongoloid lineage that had evolved with little or no mixture with other races.
 This model was based on the computer multivariate analysis of the results of osteometry, an outdated, uncertain method.
 It is known that such physical measurement values easily change with nutrition, environment, and culture in a short time, as is well understood from the physique of the present young generation.

 さらにアイヌは、ほかの民族とほとんど混血せずに進化した、南モンゴロイド系統の縄文人であると仮定している。
 このモデルは、時代遅れの、不確かな方法である骨計測の結果をコンピュータ多変量解析したものに基づいている。
 そのような身体的な計測値は、現在の若い世代の体格から十分理解されるように、短い期間で、栄養や環境や文化によって、簡単に変わることが知られている。

 Instead of morphological studies, polymorphic markers harbored in macromolecules such as proteins and glycoconjugates including blood group systems have been widely applied during the last century to studies of genetic variation in human populations because of their simple Mendelian inheritance. 
 Among them, Gm types are unique genetic markers that can define a Mongoloid population in terms of its origin by the combination pattern of the gene types and the ratios of them, even though Gm is a classical marker.

 形態的研究の代わりに、血液型のような蛋白質や糖質複合体にある多型の標識が、単純なメンデル遺伝をするため、人類集団の遺伝的変異の研究に、前世紀には広く適用されていた。  
 それらの血液型のなかで、Gm型は古典的な標識ではあるが、Gm遺伝子のパターンとそれらの遺伝子の割合によって、モンゴロイド集団の起源を明確にできるユニークな遺伝マーカーである。

 In sharp contrast to the ''dual structure model'', our data on the geographical distribution of Gm gene types throughout the Asian and American Continents, and Pacific islands show that the Japanese population belong basically to the northern Mongoloid group; that the Ainu, as well as the Ryukyu islanders, are genetically closer to the northern Mongoloid group than to the general Japanese population; and that Taiwanese have a Gm gene composition characteristic of the southern Mongoloid group.
 The extent to which Japanese were admixed with the southern group is estimated at as low as 7−8%, assuming the admixture with southern groups having the highest frequencies of the Gm afb1b3 gene.

 「二重構造モデル」と非常に対照的だが、アジア大陸やアメリカ大陸、それに太平洋の島々の地域に見られるGm遺伝子の分布データは、日本の集団が基本的に北方モンゴロイドのグループに属することを示す。
 またアイヌは琉球島民と同様で、これらの集団は遺伝的に、一般的な日本人集団よりも、より著しい北方型モンゴロイドグループに属する。そして台湾人は南方型モンゴロイドグループに特有のGm遺伝子構成を持つ。
 現日本人が南方グループと混血した程度は、それもGm afb1b3遺伝子を最も高い頻度で持っている南方グループと混血したと計算して、7−8%程度と低く見積もられる。

 The results of a population study by Bannai et al.,22)  who analyzed HLA polymorphisms, suggested that the Ainu might share the same ancestor in eastern Asia with native Americans (Tlingit and Amerindians).
 Their  findings indicate that the indigenous Japanese people, i.e., the Ainu, belong to the northern Mongoloid group, and are in good agreement with our results that the Ainu have the northern Mongoloid Gm genes at higher proportions than the present-day Japanese people.

 HLA多型を分析した坂内誠等による研究結果は、アイヌがアメリカの原住民(トリンギットとアメリカインディアン)とともに東部アジアで同じ祖先を共有したかもしれないことを示唆している。
 彼らの研究結果は、土着の日本人すなわちアイヌが北方型モンゴロイドグループに属していることを示す。そして、この結果はアイヌが現代の日本人より高い比率で北方型モンゴロイドのGm遺伝子を持っているという我々の結果と良く合致する。

 Tokunaga et al.23)  recognized that 20 Mongoloid populations could be divided into 2 major groups(north and south) by phylogenetic analysis on the basis of HLA systems and indicated that the Japanese belong to the northern group.
 Phylogenetic analysis by Nei,24)  using gene frequencies of many conventional blood group systems, found that all 3 Japanese populations (Ainu, main-island Japanese, and Okinawans) originated from northern Asia, thus invalidating Hanihara's dual structure model.

 徳永勝士等は、20のモンゴロイド集団が、HLAをベースとした系統樹分析によって、(北と南の)2つの大きなグループに分けられることを認めて、日本 人が、北方のグループに属することを示した。 多くの血液型の遺伝子頻度を使った根井正利による系統樹分析では、3つの日本の集団(アイヌ、本土日本人、 沖縄人)全てが、北方アジアから起源した事を見出し、埴原の二重構造モデルを否定した。

 Nei also described that the Japanese are essentially descendants of northeast Mongoloids rather than southeast Mongoloids.24)  
 Therefore, one may call this the ''out-of-Northeast'' theory. 
 This view is similar to my earlier conclusion,10)  although mine is based on the geographical distribution of only the Gm genes in eastern Asia and the Pacific.

 根井はまた、日本人が本質的に、南東モンゴロイドよりむしろ北東モンゴロイドの子孫であるとした。
 それゆえ、人はこれを”out-of-Northeast theory”と呼ぶだろう。
 この見解は、私の以前発表した論文の結論と同じである。私の研究は、東アジアから太平洋地域におよぶ集団について、Gm遺伝子だけでの地域分布に基づいたものであったが。

 Recently, analyses of mitochondrial, Y chromosomal, and autosomal DNA markers have rapidly accumulated, the former two defining maternal and paternal lineages, respectively.
 Harihara et al.25)  showed from analysis of mitochondrial DNA (mtDNA) polymorphisms that the Ainu are closely related to East Mongoloids, and claimed that the Ainu are descendants of ancient Mongoloids who lived in the Japanese Islands in the Paleolithic and Jomon  periods.

 最近、ミトコンドリアやY染色体、常染色体のDNAマーカーの分析が急速に増えてきた。そして、前2者はそれぞれ、ミトコンドリアは母系遺伝を、Y染色体は父系の遺伝をすることに限定される。
 針原伸二等
は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)多型の分析から、アイヌが東方モンゴロイドと近縁であることを示し、そしてアイヌが、旧石器時代と縄文時代に日本列島に住んでいた古モンゴロイドの子孫であると主張した。

 According to Shinoda and Kanai26) and Shinoda,27)  many of the human skeletal remains excavated from the Nakazuma Jomon site had the mtDNA M10 gene, which is present in 1.3% (a low frequency) of the Japanese, and had a nucleotide sequence identical to that of the DNA of the Buryat living in the Baikal area. In addition, cluster analysis of mtDNA gene frequencies showed that the gene composition of the mainland Japanese was almost the same as that of northeastern Chinese and Korean populations.

 篠田謙一と金井理の分析や、最新の篠田の著書によると、中妻遺跡から発掘された縄文人骨の多くは、日本人の1.3%(低頻度)にしか存在しない、mtDNA M10遺伝子を持っており、またバイカル地域に住んでいるブリアートのDNAもそれと同一の塩基配列を持っている。
 そのうえ、mtDNA遺伝子頻度のクラスター分析は、本土日本人の遺伝子構成が中国北東部や朝鮮人の集団とほとんど同じであることを示した。

 On the other hand, the gene composition of a southern Chinese population closely resembled that of  indigenous Taiwanese, and obviously differed from that of the Japanese. 
 Okinawans were completely different from indigenous Taiwanese and the southeastern Mongoloid, suggesting that it was from mainland Japan, not from the south including Taiwan that people migrated to the Okinawa Islands.
 More recently, based on the comparative analyses of a voluminous number of complete and partial mtDNA sequences, Tanaka et al.28)  described a striking coincidence of their results with our northern origin of Japanese.

 他方、南の中国人集団の遺伝子構成は、原住の台湾人の遺伝子構成によく似ていて、明らかに、日本人の遺伝子構成とは異なる。
 また、沖縄人は原住の台湾人や南東のモンゴロイドと全く異なる。それは、沖縄諸島に人が移住したのは、台湾を含む南方からではなく、本土日本からであったことを示唆している。と篠田らは述べている。
 つい最近では、田中 雅嗣等は、膨大な数の全mtDNA配列と一部のmtDNA配列についての成績を比較分析した結果をベースに、我々の日本人の北方起源と彼らが得た結果が顕著な一致を示すと述べている。

 Similarly, Hammer et al.29)  outlined the peopling of the Japan on the basis of Y chromosomal lineages, inferring that 3 major groups, D, C, and O-47z, began expansions 〜20;000, 〜12;000,and 〜4;000 years ago, respectively.
 They hypothesized that the primary candidate region of Paleolithic Japanese founding Y chromosomes having C and D groups should be placed in the area between Tibet and the Altai Mountains with varying levels of admixture between these and other Y chromosomes carrying O-47z group from Southeast Asia.
 Further Japanese samples would remain to be analyzed for drawing conclusions from Y chromosomal data.

 同様にハマー等は、Y染色体の系統を根拠に日本への移入について略述した。3つのグループ、Y染色体D,C,O-47zを持つグループはそれぞれ、20,000年前、12,000年前、4,000年前に日本列島に移入したと推定されている。
 彼等は、CとDのY染色体グループをもった、旧石器時代の日本人はもともと、チベットとアルタイ山脈の間の地域に住んでいて日本へ移入し定着した、とし た。そして、東南アジアから移入してきたY染色体O-47zグループをもつ人々と様々なレベルで混血して現日本人となった。
 ただし、このY染色体データから日本人の形成についての結論を引き出すためには、分析されたサンプル数が少な過ぎることを付け加えておく。

 Evidence from both mtDNA and Y chromosomes indicates that earlier Japanese came from around northern Asia, not from the South, which is not  inconsistent with our Gm results indicating that the Japanese including the Ainu and the Ryuku islanders belong basically to the northern Mongoloid group with a little additional admixture of the southern gene, Gm afb1b3.
  Genome-wide analyses of autosomal DNA markers at about 640,000 sites among 17 Asian populations demonstrated distinct latitudinal changes in the ratio of their northern and southern ancestries in proportion to the north-to-south localities of the populations, and in addition homogeneity and a higher proportion of the northern ancestry in Japanese. 30)

 mtDNAとY染色体の両方の分析から、初期の日本人が南方からでなく、北方アジアの辺りから来たことを示す。それはアイヌと琉球島民を含む日本人が、南方の標識遺伝子(Gm afblb3)を若干もっているものの、基本的には北方モンゴロイドグループに属するというわれわれのGm遺伝子の結果と矛盾しない。
  参考文献30)の、
最 近Scienceに発表された論文によると、17のアジア人集団について、常染色体のDNAマーカー約640,000箇所の多型の分析をして、アジアの集 団が北から南へ位置を変えるに連れて、北方系統と南方系統の割合が、その緯度の違いで、明確に変化することを示した。加えて、日本人は均質であり、北方の 系統をより高い割合でもつことを示した。

 Grubb,31) who first disclosed the Gm system, stated that the Gm genes were characteristic enough for discriminating between Mongoloid and Negroid, making it possible to clarify the process of migration of ethnic groups.
 Further, quoting our distribution map of the genes,32)  he pointed out that Gm ab3st was characteristic of northern Mongoloids and varied gradually in its frequency among them and that many interesting relations between those populations were well shown on the map.
 
 Gm遺伝子の発見者であるグルーブは、Gm遺伝子がモンゴロイドとネグロイドを区別するのに十分な特性があり、民族グループの移動のプロセスを明確にする事が出来ると表明した。
 さらに我々が作った遺伝子の分布地図を引用して、彼は、Gm ab3stが北方型モンゴロイドを特徴づけ、北方モンゴロイドの間でその頻度が次第に変化し、そして、それらの集団間に多くの興味深い関係
(訳者注:日本人がバイカル地域から移入したという)が地図上によく示されていると指摘した。

 He expressed his scientific approval of our data and conclusion that the Japanese population belongs basically to the northern Mongoloid and originated in the Baikal area and furthermore indicated that our study represented excellent probes of the Gm system.

 彼は、我々のデータと、日本人の集団が基本的に北方モンゴロイドに属しており、バイカル地域に起源するという結論に、科学的な見地から賛意を表し、さらに我々の研究により、Gm遺伝子体系が優れた威力をもつことを示した。

 Linguistic studies also have negated the ''dual structure model''.
 Although there has been the legend of the theory of the southern origin of the Japanese people, based on the similarity between Japanese and South Eastern words, Yasumoto,33),34)  a quantitative linguist, considers that closely similar words encountered in Japanese and South Mongoloid language were brought, along with the rice culture, by a small number of Chinese people from the lower Yangtze River region in the Yayoi era when they emigrated.

 言語学の研究も、「二重構造モデル」を否定した。
 日本語と東南アジアの単語と類似性があるということで、日本民族が南方起源であるという伝説があったが、安本美典−計量言語学者−は、日本語に見られる 南方の蒙古型民族との類似した単語は、弥生時代に長江下流域から移住してきた少数の中国民族によって、コメ文化をとともに持ち込まれたとしている。

 However, the distribution of languages that use the same ''subject-object-verb'' word order as Japanese is roughly in agreement with that of races with the genetic patterns of the northern Mongoloid group, as shown in Fig. 1; and Chinese is an entirely different language, as it uses the ''subject-verb-object'' word order.
 The important point of Yasumoto's paper is that the distribution of languages classified according to grammatical structure, which is fairly resistant to change, agrees with our Gm results.

 しかし、日本語と同じ「主語-目的語-動詞」という語順を使う言語の分布は、図1で示すように、北方型モンゴロイドグループの遺伝子のパターンの分布に、おおざっぱに一致する。また一方、中国語は「主語-動詞-目的語」の語順を使う、まったく異なる言語である。
 安本の論文の重要なポイントは、変化しにくい文法構造からみた言語集団の分布が、われわれのGm遺伝子の分布と一致することである。
(訳者注:単語は容易に取り込まれ伝搬されるが、その集団のもつ言語構造(文法)は容易には変わらない。)

 As mentioned above, abundant DNA evidence has been reported in recent years. None of these data oppose the Gm data; rather, they support it. 
 Mongoloids generally have northern and southern ancestries in each population with varying ratios depending mainly to their latitudinal locations; northern populations have a unique gene, Gm ab3st(yellow in the Figures).

 上記のように、DNA鑑定が、近年、数多く報告されている。 これらのデータのどれも、Gm遺伝子のデータに反しないし むしろそれらは、Gmデータを支持している。
 モンゴロイドは、どの集団も北方系の祖先と南方系の祖先を持っており、その割合は、主として緯度の位置に従って変化し、且つ北方の集団は、ユニークな遺伝子、Gm ab3st(図中の黄色)を持っているということを。

 Although data from mtDNA and Y-chromosome polymorphisms differ from the Gm data in the extent to which a southern contribution has been made to the Japanese, the geographical distribution of the 2 northern Gm genes leads us to conclude that the genes  flowed from northern Asia even to the most southwestern island (Yonakunijima) of Japan, followed by culturally great but genetically small streams from southern Asia.

 しかし、mtDNAやY染色体多型から得られたデータは、日本人形成に関与した南方系の影響の程度は、 Gm遺伝子データとは異なっている。Gm型からみた日本人の形成は、日本人のもつ2つの北方系Gm遺伝子が北方アジアから日本の最南端の島(与那国島)に まで浸透していることから、南方の影響は文化的には大きいが、遺伝的には南方からの移入は小さいとしている。

 In summary, our results demonstrate that the Japanese race belongs basically to the northern Mongoloid group and originated in northeast Asia, most likely in the Baikal area of Siberia.
 In the case of migrations of human populations, migrants would not have been allowed to escape from changes in a wide range of habitats and climates, and thus would have to have adapted to their new environments.

 要約すると、我々が得た結果は、日本民族は基本的に北方型モンゴロイドのグループに属し、その源流は北東アジアに、特にシベリアのバイカル地域に起源する可能性が最も高いことを示した。
 人間集団の移動の場合、移住者は、生息地や気候が広いレンジで変化することから逃がれることは許されないし、このように
(訳者注:北東アジアから日本列島にというように)新しい環境に適応して生きて行かなければならないのである。

 Such adaptation would have been expressed in the very phenotypes of Gm since immunoglobulins play an important role in environmental adaptation.
 Further accumulation of DNA data on much more samples from both modern and ancient humans and the interdisciplinary scientific approach will provide the evidence needed to test our model to explain the origins and dispersal of the first Japanese.

 そうした適応は、免疫グロブリンが、環境に適合していく上で重要な役割を演じており、まさしくGm遺伝子の表現型として表されている。
 さらに、現代人や古代人のより多くのサンプルから、DNAのデータが蓄積され、学際的で且つ科学的な研究がなされることが、初期の日本人の起源や分散を説明する我々のモデルを評価するのに必要な証拠を提供するだろう。





      (訳者注:以下の謝辞と参考文献および略歴は、固有名詞が多く、翻訳になじまないので、原文をそのまま載せます。)

 Acknowledgement 謝辞

 I would like to express my gratitude to Drs. K. Takatsuki, T. Ohta, K. Katayama, G. Ishimoto, K. Suzuki, and S. Ito for their warm collaboration, and Mrs. T. Miyazaki for her earnest help with the Gm typing.
 I would also like to express my sincere gratitude to Drs. A. G. Steinberg, R. Grubb, and E. van Loghem for their warm and enlightening guidance that started about 40 years ago and has continued up to this day.
 I am deeply grateful to the following doctors for their thoughtful support and provision of valuable serum samples: Dr. R. Grubb (Greenland Inuit); Dr. B. S. Blumberg (North American Indians); Dr. F.M. Salzano (South American Indians);Drs.T.Zhao,X.Xu,andG.Woo(Chinese populations); and Dr. D. Shou (Takasago and Taiwanese).
 I am also heartily thankful to Dr. L. Frye for his critical reading of this manuscript during its preparation.

 




 
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                                    (Received Feb. 25, 2008; accepted Dec. 18, 2008)

 





    Profile 略歴

 Hideo Matsumoto was born in 1924.
 
After graduating from Osaka Medical College in 1952, he started his career at Department of Legal Medicine in Osaka University School of Medicine and in 1953 commenced studies on blood group systems for personal identification and for paternity testing.
 
He was appointed as an educational assistant of Osaka
   
University School of Medicine, Department of Legal Medicine in 1955 and then he received MD degree from Osaka University School of Medicine in 1958.
 
After that, he was appointed as an associate professor of Osaka Medical College, Department of Legal Medicine.
 
In the meantime, he studied human genetics and immunoglobulin allotypes (Gm) for two years at Case Western Reserve University in Ohio, U.S.A. as a visiting fellow (1962-1964).
 He was appointed as a professor of  Osaka Medical College, Department of Legal Medicine in 1973.
 
Thereafter, in 1977, he received PhD degree from Tokyo Metropolitan University.
 
He was elected as the President for the 28th General Meeting in 1983 ofthe Japanese Society of Human Genetics.
 
Dr. Matsumoto received the Commendation from the Ministry of Justice in 1977 and the Medal from the Police Agency, Secretary in 1984. He received the Testimonial from the Ministry of Health and Welfare in 1987.
 
He was elected as the President of Osaka Medical College in 1989 and offcially retired at the expiration of his term of office in 1995. Since then, he has been an Emeritus Professor.
 
As additional honors, Dr. Matsumoto was elected as the President of International Symposium on DNA polymorphisms (at Hakone) in 1990, and was made an Honorary Citizen of Toulouse,France in 1989, and an Honorary Member of the International  Society of Forensic Haemogenetics in 1990.
 He was conferred the Decoration from the Emperor of Japan in 1999.
                      

                                                                以 上