研究ノート12-4 
筆者より読者の皆様へ
  このホームページのtopページに、以下の囲いのお願いをしておりましたが、これまでのところ残念ながら、申し出ていただける方がありませんでした。
 先般、読者の方(匿名)から、 Y染色体のハプログループDに関する中国語の論文を紹介していただきました。まずもって御礼申し上げます。この論文の中にある図から推測すると、Y染色体のD系統の起源や分散について極めて興味深い内容を含んでいると考えます。
 ただ筆者は、中国語の素養は全くなく、この論文を理解することが出来ません。
 どなたか、この論文を翻訳ないしは要約して寄稿していただける方はありませんでしょうか。
 ご協力いただけませんでしょうか。募集させていただきます。          筆者拝 
(2009.10.9)
 ・ご紹介いただいたURL:http://comonca.org.cn/PDF/2008/COMONCA02-011.pdf

 ところが先日、はてなダイアリー(Blog)のなかの“ナンジャモンジャ”氏が2010-01-08付けでこの件を取り上げて、中国語論文の中に英文の論文名と出典が記述されていることを指摘し、その出典のwebページまでご紹介いただいているのに気付きました。
   http://www.biomedcentral.com/1741-7007/6/45
 中国語論文とこの英文論文との関係は明らかではありませんが、やはり「Y染色体のハプログループD」に関するもので、中国系研究者が共同執筆した、なかなか興味深い内容の論文でした。
 しかも、崎谷満の最新刊「DNA・考古・言語の学際研究が示す新・日本列島史--日本人集団・日本語の成立史」にも既に引用されており、Y染色体D系統の研究として貴重なものであることがわかりました。

 そこで松本秀雄先生の「Gm遺伝子」に関する英文論文に続いて、自分が理解することを主目的に翻訳を試みました。
 ここに公開させていただきますが、例によって拙い翻訳です。どうぞその点は、読者ご自身でカバーしていただくようお願いします。
 また、添付されている「図3 ネットワーク分析」は、まことに美しい系統図ですので一見願います。
 なお、原文の表題が長すぎる表現ですので、トップページの表題は「Y染色体 東アジアに於けるD系統分布の謎を解く」としました。

 改めて、この英文論文をご紹介いただいた、ナンジャモンジャ氏に感謝申し上げます。

      
 

 


Y chromosome evidence of earliest modern human settlement
in East Asia
and multiple origins
of Tibetan and Japanese populations



東アジアに定住したもっとも早期の現生人類
とりわけチベット人集団と日本人集団の共通の起源に関する

Y染色体上の証拠について


 
執筆者
Hong Shi(1 , Hua Zhong(2 , Yi Peng(1 , Yong-Li Dong(3 , Xue-Bin Qi(1 ,
Feng Zhang(4 ,
Lu-Fang Liu(5 , Si-Jie Tan(3 , Runlin Z Ma(2 , Chun-Jie Xiao(3 ,
R Spencer Wells(6 , Li Jin(4
 


                            所属
1 ) State Key Laboratory of Genetic Resources and Evolution, Kunming Institute of Zoology and

  Kunming Primate Research Centre, 中国科学アカデミー, 昆明, 中華人民共和国

2 ) Institute of Genetics and Developmental Biology, 中国科学アカデミー, 北京, 中華人民共和国 

3 ) Human Genetics Centre, Yunnan University, 昆明, 中華人民共和国

4 ) State Key Laboratory of Genetic Engineering and Center for Anthropological Studies, School

  of Life Sciences, Fudan University, 上海, 中華人民共和国

5 ) Huaihua Medical College, Huaihua, 湖南, 中華人民共和国

6 ) The Genographic Project, National Geographic Society, ワシントン, アメリカ合衆国




  目次

  1. 要約
     背景
     結果
     結論
  2. はじめに
  3. 分析方法
  4. 結果
  5. 議論
  6. おわりに






  Abstract:  要約
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Background  背景
 The phylogeography of the Y chromosome in Asia previously suggested that modern humans of African origin initially settled in mainland southern East Asia, and about 25,000–30,000 years ago, migrated northward, spreading throughout East Asia.
 However, the fragmented distribution of one East Asian specific Y chromosome lineage (D-M174), which is found at high frequencies only in Tibet, Japan and the Andaman Islands, is inconsistent with this scenario.
 アジアにおけるY染色体の系統地理学は、アフリカ起源の現生人類が最初、東南アジアの大陸部に定住し、それから約25,000〜30,000年前には北方へ移動し、東アジア全域に広がっていったことを、これまで示していた。
 しかしながら、このようなシナリオでは、東アジアに特有のY染色体系統(すなわちD系統ーマーカーM174)が、チベットと日本列島およびアンダマン諸島にだけ、高い頻度で見出されるというような分布の断片化を説明することが出来ない。

  Results  結果
 In this study, we collected more than 5,000 male samples from 73 East Asian populations and reconstructed the phylogeography of the D-M174 lineage.
  Our results suggest that D-M174 represents an extremely ancient lineage of modern humans in East Asia, and a deep divergence was observed between northern and southern populations.

 本研究でわれわれは、73の東アジア民族集団から5,000人の男性のサンプルを集め、Y染色体D系統(マーカーM174)の系統地理学的理論を再構築した。
 われわれの結論では、D系統は東アジアの現生人類の非常に古い系統を示しており、北方の集団と南方の集団の間には、遠い昔の深い分岐の跡が観察されたのである。
  
  Conclusion 結論
 We proposed that D-M174 has a southern origin and its northward expansion occurred about 60,000 years ago, predating the northward migration of other major East Asian lineages.
 The Neolithic expansion of Han culture and the last glacial maximum are likely the key factors leading to the current relic distribution of D-M174 in East Asia.
 The Tibetan and Japanese populations are the admixture of two ancient populations represented by two major East Asian specific Y chromosome lineages, the O and D haplogroups.

 われわれは次のように提唱する。すなわち、D系統は南方に起源があり、D系統の北方への拡散は、約60,000年前に起こった。そして、ほかの主要な東アジアのY染色体の系統の北方への移動の先駆者であったと。
 おそらく、最終氷期最寒期と新石器時代の漢文化の拡張がキー・ファクターとなって、東アジアにおけるD系統の現在見られる、遺物のような分布を導いた可能性が強い。
 チベット人の集団と日本人の集団は、主要な東アジアに特有のY染色体系統-OハプログループとDハプログループ-をもつ、二つの古代の集団が混交したものである。




Introduction はじめに
 The Y chromosome Alu polymorphism (YAP, also called M1) defines the deep-rooted haplogroup D/E of the global Y-chromosome phylogeny.
 This D/E haplogroup is further branched into three sub-haplogroups DE*, D and E (Figure 1).
 The distribution of the D/E haplogroup is highly regional, and the three subgroups are geographically restricted to certain areas, therefore informative in tracing human prehistory (Table1).
 Y染色体のAlu(反復)配列多型(YAPとかマーカーM1とも呼ばれる)は、ハプログループD/Eがグローバ
ルなY染色体の系統発生の中でも、深い根源的な位置にあることを示す。 
 このD/Eハプログループは、さらに三つのサブ(下位)のハプログループ、DE*,D,Eに分けられる(
図1)。
 D/Eハプログループの分布には、高い地域性があり、その三つの地域のサブグループは、特定の地域に限定されている。それゆえD/Eハプログループは、人類の先史時代を辿るの
に有用と考えられる。(表1
*筆者はこのホームページのなかで「ハプログループ」という言葉や概念を出来るだけ使わないようにしてきた。しかしこのページは翻訳であるので、原文に添って使用する。

 The sub-haplogroup DE*, presumably the most ancient lineage of the D/E haplogroup was only found in Africans from Nigeria, supporting the "Out of Africa" hypothesis about modern human origin.  
 The sub-haplogroup E (E-M40), defined by M40/SRY4064 and M96, was also suggested originated in Africa , and later dispersed to Middle East and Europe about 20,000 years ago.
 Interestingly, the sub-haplogroup D defined by M174 (D-M174) is East Asian specific with abundant appearance in Tibetan and Japanese (30–40%), but rare in most of other East Asian populations and populations from regions bordering East Asia (Central Asia, North Asia and Middle East) (usually less than 5%).
 まずサブ・ハプログループDE*、これはおそらく、D/Eハプログループのなかでは最も古い系統で、アフリカ人ではナイジェリアからだけ見出された系統である。それは、現生人類の起
源に関する「出アフリカ」仮説を支持するものである。
 サブ・ハプログループEというのも、アフリカに起源するということが確認されている。その後、その系
統は約20,000年前ごろ中東やヨーロッパへ拡散したと考えられる。
 さらに興味深いことは、サブ・ハプログループDは、東アジア特有の系統で、特にチベット人と日本人に豊富(30-40%の頻度)に見出されるが、また、他のほとんどの東アジア集団でも、あるいは、東アジアの境界付近の地域(中央アジア、北アジア、中央アジア)でも、稀な頻度(
普通は5%未満)ではあるが見出されている。

 Under D-M174, Japanese belongs to a separate sub-lineage defined by several mutations (e.g. M55, M57 and M64 etc.), which is different from those in Tibetans implicating relatively deep divergence between them .
 The fragmented distribution of D-M174 in East Asia seems not consistent with the pattern of other East Asian specific lineages, i.e. O3-M122, O1-M119 and O2-M95 under haplogroup O .
 D系統の範疇にあるとはいえ、日本人は何回もの突然変異(たとえばマーカーM55,M57,M64など)によっていくつものサブ系統に分かれているし、一方チベット人のサブ系統はまた異なっており、
それは、日本人との間に遠い昔の深い分岐が関与していることを推測させる。
 東アジアにおけるD系統の分断化された分布は、ほかの東アジアに特有の系統のパターンーたとえばハプログループOの下位に
O3,O1,O2が繋がるーとは無関係に見える。
     

                  
 
Besides Tibetans and Japanese, D-M174 is also prevalent in several southern ethnic populations in East Asia, including the Tibeto-Burman speaking populations from Yunnan province of southwestern China (14.0–72.3%), one Hmong-Mien population from Guangxi of southern China (30%) and one Daic population from Thailand (10%), which could be explained by fairly recent population admixture . 
 さらにチベット人と日本人に加えて、D系統は、東アジアのいくつかの南方系少数民族集団にも認められる。それらは、たとえば南西中国の雲南省のチベット・ビルマ語を使う民族(14.0-72.3%)、中国南部の広西チワン族自治区の モン・ミエン族(30%)、タイのダイック語族(10%)など、ごく最近の民族混交で説明できる民族が含まれ
る。

  However, a recent study reported a high frequency of D-M174 in Andamanese (56.25%), people who live in the remote islands in the Indian Ocean and considered one of the earliest modern human settlers of African origin in Southeast Asia.
 Another study by Underhill et al. suggested that the D-M174 lineage likely reached East Asia about 50,000 years ago.
 This implies that the YAP lineage in East Asia could be indeed very ancient.
  しかしながら、最近の研究では、アンダマン諸島の人々に高い頻度(56.25%)でD系統が認められることが報告されている。彼らは、インド洋の離島に住んでおり、東南アジアに最も早い時期に移り住んだアフリカ起源の現
生人類のひとつだと考えられている。
 アンダーヒル等による別の研究では、D系統は、約50,000年前に東アジアに到達した可能性が高
いことが示唆されている。
 これは、東アジアのYAP系統の起源がまさに、非常に古いことを意味している。

 Our previous studies showed that the dominant and East Asian specific Y haplogroup O-M175 (44.3% on average) reflected possibly the earliest modern human expansion in East Asia .
 Unlike the prevalence of O-M175 in most of the East Asian populations, populations with relatively high frequencies of D-M174 are mostly located at the peripheral regions of mainland East Asia with fragmented distribution, implying two possible explanations of human prehistory.
  われわれのこれまでの研究では、東アジアに特有で且つ支配的なY染色体ハプログループ、O系統(平均の頻度44.3
%)は、ことによると東アジアで最も早期の現生人類の拡散を反映している可能性を示していた。
 東アジアの集団のほとんどにO系統が広がっているのに反して、D系統を比較的高い頻度で保
持する集団は、ほとんど東アジアの大陸部の周辺地域に、分断化された形で分布している。このことは、人類の先史に関して二つの解釈が出来ることを意味している。

 Firstly, like O-M175, D-M174 may also be just one of the lineages going northward during the suggested Paleolithic migration of modern humans in East Asia .
  Subsequently, due to population substructure (the last glacial is likely a key factor) and recent expansion of Han culture, the distribution of D-M174 was fragmented into the current geographic pattern.
  
まずひとつのシナリオは、O系統と同様に、D系統もまた、東アジアにおける現生人類の旧石器時代の移動に関し、北向きに行動した系統の、まさに一つであった可能性がある。
 次いで、(最終氷河期がひとつのキー・ファクターとなった可能性が高いが)集団の下部構造(基本構成)が形成され、そこへ最近の漢文化の拡張の影響が加わり、D系統の分布は、現在の地理的パターンに分断化されてしまったと考えることである

 
 The other possible scenario would suggest an independent earlier migration different from the one we proposed previously.
 To address this question, we conducted a systematic sampling and genetic analysis of more than 5,000 male individuals from 73 East Asian and Southeast Asian populations.
 Based on the Y chromosome SNP and STR data and the estimated ages of the major D-M174 lineages, we proposed that there was an independent Paleolithic northward migration of modern humans in East Asia, predating the previously suggested northward population movement.
 もう一つのシナリオは、われわれのこれまで提唱してきたシナリオと違って、まったく独自の早い時期の移動があったと考えることである。
 その疑問に答えるため、われわれは、73の東アジア人と東南アジア人の集団から、5,000人以上の
男性のサンプルを採取し、遺伝子分析を行った。
 主要なD系統のY染色体のSNPとSTRデータと主なD系統の推定年代に基づいた分析から、われわれは次のことを提唱する。すなわち、旧石器時代に東アジアの現生人類(D系統)は、これまで提示してきた北方への集団移動(O系統を含む)に先
行して、独自の北方移動を行っていたと。
 
(*筆者注) SNP・・・Single Nucleotide Polymorphism 一塩基多型(スニップとも呼ばれる)
         STR・・・
short tandem repeat 縦列型反復配列(マイクロサテライトともいう)








 Methods 分析方法 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――-―――-―-----------------------------------------
 Samples  サンプル
 
In this study, a total of 5,134 unrelated male samples were collected from 73 populations, covering the major geographic regions in East Asia and Southeast Asia (Table 2and Figure 2).
 As shown in Figure 2, most populations were sampled from southern and southwestern China where about 80% Chinese ethnic populations live with inhabited histories longer than 3,000 years .  
 Samples from previous studies were also included, including 91 YAP+ samples (16 Japanese, 54 Tibetans, 3 Koreans, 1 Guam, 1 Cambodian, 4 Thais and 12 samples of China) from Su et al. and 116 YAP+ samples (35 Africans, 13 Caucasians, 9 Indians, 26 Middle East and 33 Central Asians) from Wells et al. (Table 2).
 .この研究では、東アジアと東南アジアの主要な地域(表2、図2)の73の民族集団から、合計5,134人の無作為に抽出された男性のサンプルが収集された。
 図2からわかるように、大部分の集団が中国南部および西南部ーその地域は、中国の少数民族の約80%が3,000年以上に亘って住み続けた歴史を持つーから収集された。
 以前の研究から引き継いだサンプルも含まれている。それは、スー等から提供された91人のYAP+のサンプル(日本人16人、チベット人54人、朝鮮人3人、グァム人1人、カンボジア人1人、タイ人4人、中国人12人)とウェルズ等から提供された116人のYAP+サンプル(アフリカ人35人、白人13人、インド人9人、中東人26人、中央アジア人33人)である。(表2)
     


(訳者註:このMethodsの項の以下の部分については、非常に専門的で筆者の知識では、翻訳することが出来ません。興味のある方は、原文から読者各自で読み取ってください。翻訳は、次のResultsの項に飛びます。)
 原文のサイト:http://www.biomedcentral.com/1741-7007/6/45






  Results 結果
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 Table 1lists the reported YAP+ frequencies in worldwide populations (refer to table note for references).
 Africans have the highest frequency of YAP+, and all of them belong to the sub-haplogroup E-M40.  
 In contrast, D-M174 is in general East Asian specific with sporadic occurrence in adjacent regions, i.e. Central Asia, Middle East and Northeast India.
 The average frequency of D-M174 in East Asians is 9.60% with high frequencies in Tibet (41.31%), Japan (35.08%) and Andaman Island (56.25%), but rare in other East Asian populations (< 5%).
 表1は、世界全体の集団におけるYAP+の出現頻度をリストアップしたものである。(表の注記を参照・・・YAPの頻度データは、すでに公表されている研究から採ったものである
 アフリカ人はYAP+を最も高い頻度で保持している。そして彼らはすべて、サブ・ハプログループEに属している。
 一方、D系統は、東アジア全体に特有の存在であり、中央アジアや中東、北東インドなど東アジアに隣接する地域でも、散発的に点在している。
 東アジアにおけるD系統の平均頻度は、9.60%であるが、チベット(41.31%)、日本(35.08%)、アンダマン島(56.25%)が高い頻度を示す一方、ほかの東アジアの集団の頻度は、希薄(5%未満)である。

 After genotyping the Y chromosome biallelic markers (M174, M40, M15, M57 and p47), the 719 Yap+ samples were assigned to 6 sub-haplogroups, i.e. DE*, E-M40, D*-M174, D1-M15, D2-M57 and D3-p47 (Figure 1).
 Further typing for eight STR loci of the 719 YAP+ generated the complete STR data sets for 697 samples.
 As shown in Table 2, consistent with previous reports  the prevalence of D-M174 is mostly in western and southern China and Japan.

  Y染色体の遺伝子マーカー (M174, M40, M15, M57 and p47)が遺伝子型で仕分けされた後、719のYap+サンプルは、6つのサブ・ハプログループ-すなわち、DE*, E-M40, D*-M174, D1-M15, D2-M57 and D3-p47-に割当られている。 (図 1).
 さらに、719のYAP+を八つのSTR遺伝子座に分類することにより、そのうちの697のサンプルが完全なSTRデータのセットとして整えられた。

 表2
、これは以前のレポートと一貫性のある表であるが、これにみるように、D系統は大部分が、西部中国と南部中国および日本に分布している。

 
The distribution patterns of the four D-M174 sub-lineages (sub-haplogroups) (Figure 1) are different from each other.
 D1-M15 is widely distributed across East Asia including most of the Tibeto-Burman and Daic speaking populations (Table2).
 D*-M174 and D3-p47 are mainly distributed in Tibeto-Burman populations with sporadic occurrence in the Daic populations.
 D系統の下位系統(サブ・ハプログループ)が4つあり(図1)、その分布のパターンは、それぞれ異なっている。
 D1系統は、チベット、ビルマとダイック語族のほとんどを含む、東アジア全体に広範に分布している(表2)。
 D*とD3系統は、ダイック語族で散発的に見受けられることを含め、主にチベット・ビルマに分布している。
 In surprise, we observed two DE* in the Tibetan samples, which was previously only observed in Africa (Nigerians), but not in other world populations.
 In contrast, D2-M57 only occurred in Japanese, an implication of the early divergence of this lineage from other D-M174 sub-haplogroups (Table2).
 We identified four E-M40 individuals in the northwestern Han populations, a reflection of recent gene flow from Central Asia.
 驚くべきことには、チベット人のサンプルの中に、DE*系統が2つだけ認められることである。この系統は、これまでにアフリカのナイジェリア人にだけ観察され、ほかの世界の集団には観られない。
 一方、D2系統は、日本人だけが保持している。これは、他のD系統のサブ・ハプログループに比べ、この系統が早い時期に分岐したことを意味する(
表2
 われわれはまた、北西中国の漢民族のなかにE系統を示す4人を特定している。かれらには、中央アジアからの最近の遺伝子の流れが反映している。

 
To reveal the detailed structure of the D-M174 lineage in East Asian populations, we conducted the network analysis combining the SNP and STR haplotype data (Figure 3).
 D*-M174 has a deep structure with no loops in the network.
 The D*-M174 lineage contains distinct STR haplotypes of Tibeto-Burman (mostly Tibetan), Daic and Andamanese respectively, and no haplotype sharing (i.e. shared by individuals from different geographic/linguistic populations) was observed, implying that D*-M174 is an ancient lineage.
 われわれは、東アジアの集団におけるD系統の詳細な構成を明らかにした。これは、SNPおよびSTRハプロタイプのデータを結合してネットワーク解析をした結果である(図3)。
 D*系統は、ネットワークの輪を持たない形の深層構造になっている。
 D*系統は、チベット・ビルマグループ(ほとんどチベット人)とダイック語族とアンダマン島民それぞれの異なるSTRハプロタイプを含んでいる。しかし、(例えば、異なる地理的集団あるいは異なる言語集団間に共通する)ハプロタイプは見出せない。それは、D*系統が、大変古い時代に分岐した系統であることを意味している。


 As the most common lineage, the network of D1-M15 is also deep-structured and a clear south vs. north divergence can be inferred though sporadic haplotype sharing exists.
 In contrast, D2-M57 is restricted to Japan and D3-p47 is prevalent in Tibet and its adjacent regions with sporadic appearance in Central Asian and Daic populations.
 The short-distanced and star-like network structure of these two sub-haplogroups indicates a long-term local existence and population expansion of the D-M174 lineage in these two geographically far away regions.
 The non-Tibetan Tibeto-Burman populations, e.g. Naxi, Pumi and Qiang only have a subset of the Tibetan haplotypes, again indicating a recent gene flow from Tibet as recorded in the literature.
 最も一般的な系統であるD1系統のネットワークにも、遠い昔の深い構造的なものがあり、そのD1系統が明瞭に南と北への分岐したことが、共有のハプロタイプの存在が疎らではあるが認められることから、推論することができる。
 対照的に、D2系統は、日本に限定されており、D3系統の方は、中央アジア人とダイック語族に散見されることを含め、チベットとその隣接地域で繁盛している。
 この二つのサブ・ハプロタイプが網の目の細かい星型の構造をしているということは、それぞれが長期間ローカルな存在で、且つ地理的に遠く離れた二つの地域で、D系統が人口拡大をしたことを示している。
 非チベット人−チベット・ビルマ集団、たとえばナシ族、プミ族、チャン族だけは、チベット人のハプロタイプを一部保持している。それは、文献にも記録されているようにチベットから最近遺伝子の流れがあったことを再度示している。

 
We next sought to estimate the age of the D-M174 sub-lineages.
 The coalescence analysis shows that the age of D*-M174, D3-p47 and D1-M15 are the oldest (66,392 ± 1,466, 52,103 ± 1,327 and 51,640 ± 2,563 years).
 The age of the Japanese specific lineage D2-M57 is the youngest (37,678 ± 2,216 years) (Table3).
 Notably, these estimated ages are much older than that of O3-M122, the other East Asian specific haplogroup we reported before (25,000–30,000 years)
 .われわれは、次にY染色体Dの下位系統の分岐の年代を推測しようとした。
 コアレンシエンス(合体)分析は、D*、D3、D1の年代が順に最も古いことを示している。(それぞれ66,392 ± 1,466, 52,103 ± 1,327 , 51,640 ± 2,563 年).
 日本人に特有の系統であるD2の分岐年代は、最も若い年代である。(37,678 ± 2,216 年)
(表3)
        
 しかし、これらD系統の推定分岐年代は、以前にリポートしたもう一つの東アジアに特有のハプログループ、O3の分岐年代(25,000-30,000 年)よりかなり古いのである。

 








 Discussion 議論
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 The biased distribution of D-M174 bears the different possible inferences of the human population prehistory in view of the origin and migratory pattern in East Asia.
 The hypothesis of northern origin of D-M174 is not supported by our data because D-M174 is rare in Central Asian populations (Table 1) and the few Central Asian D-M174s are all located at the peripheral positions of the Y-STR network (Figure 3).
 D系統が偏った分布を示すことは、東アジアにおける現生人類の起源や移動のパターンに照らして、人間集団の先史に種々の推論を生み出すことになった。
 D系統が北方起源であるという仮説は、われわれのデータではまだ支持出来ない。何故なら、D系統は、中央アジアの集団において稀にしか認められないからであり(表1)、わずかに認められる中央アジアのD系統もすべて、Y-STRネットワーク(図3)の周辺のポジションにしか存在しないからである。(筆者注・・・図3白○の分布位置)

 Our data also disapproves the notion of Indian origin since no D-M174 was detected in the 996 individuals across India.
 The sporadic occurrence of D-M174 in northeastern Indians (two D-M174s in 232 individuals tested) is because those populations are in fact Sino-Tibetan speaking populations (Table1).
 The lack of gene flow between Tibet and India is likely due to the efficient geographic separation by the Himalayas.
 われわれのデータではまた、D-M174系統がインド全域から集められた996のデータの中に検出できなかったということから、インド人の起源のこれまでの考え方に同意できない。
 一部、北東インドの人々にD系統がごく散発的に見られるのは(232のサンプル中、二つ)、それらの集団が事実上、中国・チベット語を使う集団の方に属しているからであろう(
表1)。
 チベットとインドの間に遺伝子の流れが切れているのは、ヒマラヤ山脈によって地理的に効果的に分断されたためという可能性が高い。

 
On the other hand, the aborigines living on Andaman Island are genetically isolated in view of their Y chromosome haplotypes.
 Though phenotypically different from other Southeast Asian populations, the Andaman Islanders posses most of the major East Asian specific Y chromosome lineages including D-M174, O3-M122 and O2-M95, a strong indication of a relic Paleolithic population .
 Also, the Daic and Hmong-Mien speaking populations are ancient southern populations in view of linguistic and archaeological evidences .
 一方、アンダマン島に住んでいる原住民は、彼らのY染色体ハプロタイプから見て遺伝的に孤立している。
 すなわち、アンダマン島民は、他の東南アジアの集団と遺伝子の表現型が違うけれども、彼等は、D系統、O3系統、O2系統−これらは、旧石器時代の遺物のような集団であることを強く示すが、主要な東アジア特有のY染色体の系統のほとんどを保持している。
 また、ダイック語やモン・ミエン語を使う集団は、言語学や考古学的な証拠に照らして古代の南方系集団といえる。
 The network analysis indicates a clear divergence of D1-M15 between northern (Tibeto-Burman) and southern (Daic and Hmong) populations (Figure 3).
 Hence, the alternative explanation of northern origin of D-M174 is unlikely considering the absence of YAP+ in North Asia and the sporadic appearance of D-M174 in Central Asia .
 Consequently, the southern origin of D-M174 can be established, which is consistent with the proposed initial settlement of modern humans in mainland Southeast Asia and the migration pattern of other Y chromosome lineages.
 ネットワーク分析は、D1系統内に、北方(チベット・ビルマ語系諸族)の集団と、南方(ダイック語族とモン族)の集団との、明瞭な分岐があることをを示す(図3 筆者注・・・スカイブルーの○群と黒、グレーの○群の分離状態)。
 そのうえ、北アジアでYAP+が欠落していること、中央アジアでD系統が散発的にしか出現しないことを考慮すると、D系統の北方起源説を説明する代わりの言い方はありそうにない。
 それから導かれる結論は、D系統が南方起源であることに導く。それは、現生人類が最初、東南アジアの大陸部に移住し、それからほかのY染色体の系統も移住してきたという考えと一致する。

 
There were studies arguing against the southern origin of East Asian, in which higher gene diversity was observed in northern populations compared with southern populations.
 As we discussed in our previous report, the data from Karafet et al.  suggested a false impression of the high diversity of northern populations without taking the recent admixture from Central Asia into consideration.
 しかし南方の集団に比べて北方の集団のほうが、遺伝子の多様度がより高いという、東アジア人の南方起源説に反対する研究があった。
 われわれがこれまでのレポートで議論したように、カラフェット等のデータでは、中央アジアからの最近の流入混交が考慮されていないため、北方集団の高い多様性について誤った印象を与えたのである。


 The study of Xue et al.  has the similar drawback though both Y-SNP and Y-STR data were used.
 In Xue et al (2006), the high gene diversity was claimed for Mongolian, Uygure and Manchurian, and all of them have recorded recent extensive admixture with Central Asian and Han Chinese populations.
 シュー等の研究には、Y-SNPとY-STRデータの両方が使用されたが、同様の欠点を持っていた。
 シュー等(2006)の研究によると、モンゴル人やウイグル人、満州人には高い遺伝子多様度があることを主張している。それは、彼等が皆、中央アジア人と漢民族集団との間で近年、大規模な混交があったと記録されているが、まさにその結果である。

  In addition, the southern populations studied in Xue et al. (2006) were limited and the within population bottleneck effect caused by long-time geographic isolation might have a great impact on gene diversity estimation.
 When plenty southern populations were studied, we observed a higher diversity in those populations compared with the northern populations.
 加えて、シュー等で研究された(2006)南方集団は、かなり限定的であり、しかも、その集団の中では、長年の地理的孤立によって引き起こされたボトルネック効果が、大きな影響を遺伝子多様度の算定に与えていたのである。
 沢山の南方の集団が研究された結果、われわれは、北方の集団と比較して南方の集団に、より高い多様性があることを観察した。

 
The gene diversity based on the STR data in the southern populations is comparable with those in the northern populations.
 Tibetan has the highest diversity (0.525 ± 0.294), followed by Daic (0.484 ± 0.272), Japanese (0.419 ± 0.239) and Hmong Mien (0.347 ± 0.206).
 Gene diversity of other East Asian populations was not calculated due to small sample size.
 南方集団のSTRデータに基づいた遺伝子多様度は、北方集団の多様度に匹敵する。
 チベット人が最も高い多様性(0.525 ± 0.294)を持ち、ダイック語族(0.484 ± 0.272), 日本人(0.419 ± 0.239), モン・ミエン族 (0.347 ± 0.206)がそれに続く。
 その他の東アジア人の集団の遺伝子多様度については、サンプル数が少ないため、計算されていない。


 The higher diversity in Tibetan is largely due to the much larger effective population size of D-M174 in Tibetan compared with other populations.
 Tibetan and Japanese lived in two geographically far away regions and their D-M174 lineages belong to two different sub-haplogroups.
 These two sub-haplogroups all have a short-distanced and star-like network structure, which indicates a long-term local existence and recent population expansion (Figure3).
 チベット人が持っているより高い多様性というのは、他の集団に比べてチベット人のD系統が非常に大きく且つ影響力のある集団規模であったことが主因である。
 チベット人と日本人は地理的に遠く離れた地域に住んでいた。そして、彼らの持つD系統は、2つの異なるサブ・ハプログループに属している。
 この2つのサブ・ハプログループはどちらも、網目の細かい星状のネットワーク構造をもっている。それは彼等が、長い期間ローカルな存在であったことと最近、人口拡大があったことを示している。(図3

 It should be noted that the estimation of gene diversity is subject to potential bias, e.g. the age difference of the D-M174 sub-lineages.
 The finding of two DE* in Tibet, which was only observed in Africa, supports the antiquity of D-M174 and suggests that the D-M174 lineage is among the earliest modern human settlers in East Asia.
 Additionally, the biased distribution of D-M174 and its ancient coalescent time suggests an independent Paleolithic migration of modern humans in East Asia.
 遺伝子多様度の推定については、潜在的バイアス、たとえばD系統の下位系統の分岐時期の違いなどを分析対象としていることに注意すべきである。
 アフリカでだけ観察されたDE*系統が、チベット人の中に2人見出されたという発見は、D系統の古さの証であり、、D系統が東アジアに最も早く到達した現生人類の移住者の中の一つであることを示している。
 さらに、D系統の偏った分布と分岐前の時期の古さは、東アジアの現生人類の集団の中で、D系統が、旧石器時代に他の系統とは独立して移動した集団であったことを示している。
 
 
Our previous data on the O3-M122 lineage suggested a prehistorically northward migration (about 25,000–30,000 years ago) of modern humans in East Asia, which explains the current phylogeography of the major East Asian specific Y chromosome lineages (O3-M122, O2-M95 and O1-M119).
 However, the data on D-M174 cannot be explained by the hypothesized migration pattern.
 Firstly, D-M174 is rare in the central part of eastern Asia, especially in Han Chinese populations.
 Though this could be explained by genetic drift, assuming D-M174 moving along with O3-M122 during the proposed northward migration, the prevalence of D-M174 in Tibet and Japan requires recurrent mutations or independent random enrichment of D-M174, which is unlikely.
 O3系統に関するわれわれのこれまでのデータは、東アジアの現生人類が有史以前(約25,000-30,000年前)に北方への移動をしたことを示した。それは、主要な東アジアに特有のY染色体の系統(O3、O2、O1)の現在の系統地理学的分布を説明することが出来る。
 しかしながら、D系統のデータのほうは、移動パターンの仮説を説明することが出来ない。
 まず第一に、D系統というのは、東部アジアの中心地域、とくに中国漢民族では稀な存在である。
 これは、たとえば、現生人類の北方への移動の間、O3系統と一緒にD系統も移動したと仮定して、その間の遺伝的浮動でもって説明できたが、チベットや日本でのD系統の勢力拡大を説明するには、突然変異が重なって起こるとか、D系統独自の偶発的発展が起こったとかが(あまりありそうにないが)必要である。
 *筆者注 遺伝的浮動・・・研究ノート12-2で説明しているように、遺伝子が偶発的に消失し集団から消え
                 てしまう、あるいは一つの遺伝子に集約されるというような現象をいう。

 An independent earlier northward migration is more reasonable in explaining the current distribution of D-M174 in East Asia.
 We speculate that due to the later northward migration of O3-M122 and the Neolithic expansion of Han Chinese, the trace of the D-M174 migration in the heartland of East Asia was wiped out by the later and likely much larger migration of O3-M122.
 The current peripheral distribution pattern of D-M174 in East Asia is consistent with the proposed notion.
 Also, the age estimation supports that the northward migration of D-M174 may predate the migration of O3-M122.
 したがってわれわれは、D系統が他の系統とは別に独立して、早い時期に北方へ移動したとすることが、東アジアにおけるD系統の現在の分布を合理的に説明できると考える。
 すなわち、O3系統がD系統より遅れて北方へ移動し、新石器時代になると漢民族(O3が中心)が膨張したことにより、東アジアの中心地域のD系統の痕跡は、遅れてやってきた、おそらく非常に大きな規模のO3系統の移動によって、一掃されたのである。
 東アジアのD系統の現在の周辺地域への分布パターンは、以上の考えと一致する。
 また、その推定される年代は、D系統の北方への移動が、O3の移動より年代的に遡りうることを支持する。

 
The East African megadroughts (about 135–75 thousand years ago) during the early late-Pleistocene was suggested compelling modern humans out of Africa.
 And the early modern human could occupy coastal areas and exploited the near-shore marine food resource by that time .
 Then, modern humans was suggested expanding along the tropical coast, and the earliest modern human fossil found out of Africa was about 100,000 years ago.
 The period of 80,000–10,000 years ago during the last glacial might have a huge impact on modern human migration, and the sea level had fallen 50–200 meters below present , which resulted in larger dry lands and possibility for human migration between currently separated lands by ocean, e.g. between Japan and the mainland.
 後期更新世の早い時期(約135-75千年前)の東アフリカで起きた大干ばつが、現生人類の出アフリカの説得力のある説明である。
 そして早期の現生人類は、沿岸地域を占有し、出アフリカの頃には、沿岸付近の海産資源を利用していた。
 それから、現生人類は、熱帯の海岸に沿って広がった。最も早い時期の現生人類の化石は、約10万年前のアフリカから見つかっている。
 最終氷河期、すなわち80,000-10,000年前は、現生人類の移動に非常に大きな衝撃を与えた。そして海水面は、現在より50-200mも低下していた。その結果、大きな乾燥地が姿をあらわした。たとえば、日本と大陸の間は、現在では海で隔てられているが、当時は人類の移動が可能であった。

 
Human fossil records and previous genetic data suggested that the earliest modern human settlement in East Asia likely occurred less than 60,000 years ago.
 For example, the oldest Australian fossil (Lake Mungo 3) was dated about 45,000 ± 3,000 – 62,000 ± 6,000 years ago, and the mitochondrial DNA and Y chromosome analysis of current Australian ethnic populations suggested the colonization of Australia about 50,000–70,000 years ago.
 Our age estimation of the D-M174 lineages is consistent with this notion though there might be independent migrations of modern humans into East Asia and into Australia.
 人間の化石記録とこれまでの遺伝子データによると、東アジアへの最も早期の現生人類の定住は、60,000年前以降のことであった。
 たとえば、最も古いオーストラリア人の化石(レイクマンゴー3)は、約45,000 ± 3,000 - 62,000 ± 6,000年前と計測されているし、現在のオーストラリアの少数民族集団のミトコンドリアDNAやY染色体の分析では、彼等のオーストラリアへの入植は約50,000-70,000年前であったことを示している。
 東アジアやオーストラリアへの現生人類の移動は、それぞれ別々に独立して行われたかもしれないが、われわれのD系統の年代推定は、以上の考えと一致している。

 
The estimated ages of the D-M174 lineages are older than those previously reported based on both Y chromosome and mtDNA variations in East Asia.
 To see whether it is over-estimated, using the same method, we calculated the divergence time between DE* and E-M40. The estimated age is 27,176 years, which is much younger than the D-M174 lineage, but consistent with the previous estimation (27,800–37,000 years ago).
 Hence, the antiquity of D-M174 likely reflects the true prehistory of human populations in East Asia.  
 このD系統の推定年代は、これまでに東アジアのY染色体とmtDNAの両方を組み合わせた分析から報告されていたものよりも、より古くなっている。
 それが過大評価であるか否かにかかわらず、われわれは同じ方法で、DE*とE系統の分岐時期を計算した。
 結果は、27,176年前である。これは、D系統よりはるかに遅いが、これまでの推定(27,800-37,000年前)と一致している。
 したがって、D系統の古さは、東アジアにおける人間集団の先史時代の真の姿を反映したものである可能性が高い。

 The age estimation model developed by Zhivotovsky (2001) is not sensitive to effective population size and recent population expansion though the effect of population substructure cannot be totally ruled out.
 The antiquity of D-M174 was also supported by a previous study in which the origin of D-M174 was estimated more than 50,000 years ago.
 チボトフスキーによって開発された(2001)年代推定モデルは、集団固有の構造的影響を完全には排除できないため、有効な集団のサイズや最近の人口膨張に対して敏感に反映するモデルではない。
 (そのモデルで計算された)D系統の古さは、D系統の起源が50,000年前より以前であると推定されたこれまでの研究とも、また一致する。

 
The divergence time of haplogroup D is about 60,000 years ago, considering the wide though fragmented geographic distribution of D-M174, the proposed Paleolithic migration would be the first northward population movement of modern humans after their initial settlement in southern East Asia.
 As the last glacial occurred during 80,000–10,000 years ago, the northward migration of D-M174 is consistent with the proposed notion that modern humans might exploit the food of "Mammoth Steppe".
 Besides the later population expansion, the cold weather during the last glacial may also contribute to the current fragmented distribution of D-M174.
 ハプログループDの分岐年代は約60,000年前であり、D系統が広範囲に断片的に散らばって分布していることを考えると、D系統の旧石器時代の移動は、最初に東アジア南部に定着し、その後現生人類としてはじめて、北方へ集団で移動を始めたのであろう。
 80,000-10,000年前に起こった最終氷河期に、D系統が北向きの移動を始めたという事は、現生人類がマンモス草原の食料を求めて起こした行動であるという考えに一致する。
 後世の人口膨張以外に、最終氷河期の間にあった特に寒い気候が、D系統の現在見られる分布の断片化をもたらしたのかもしれない。
 Interestingly, a recent archaeological finding supported that modern humans explored the Tibetan plateau about 30,000–40,000 years ago, which is much earlier than previously suggested, but consistent with our hypothesis.
 The after-glacial sea level rise eventually led to the separation between Japan and the main continent, which explains the relic distribution of D-M174 in current Japanese populations.
 The archaeological data suggested that the initial colonization of modern humans in Japan occurred about 30,000 years ago, consistent with our age estimation of D2-M57 (37,678 ± 2,216 years ago).
  Taken together, the current Tibetan and Japanese populations are probably the admixture of two ancient populations represented by D-M174 and O3-M122 respectively.
 最近の考古学的発見によれば、興味深いことに、約30,000-40,000年前現生人類がチベット高原を探索していたという。その時期は、これまでに示された時期よりはるかに早いが、われわれの仮説には合致している。
 後氷期の海面上昇は、最終的には、日本と大陸とを隔てさせることとなった。それは現在の日本人集団の中にD系統が遺物のように分布していることの説明になる。
 考古学データは、約30,000年前の日本列島に、現生人類が初めて到達したことを示している。これは、D2系統のわれわれの推定年代(37,678 ± 2,216 年前)と一致する。
 同時に、現在のチベット人集団と日本人集団はそれぞれ、おそらくD系統とO3系統の二つの古代の集団が混血して出来上がったのだろうと考えられる。






 Conclusion おわりに
 
In summary, we demonstrated an ancient Paleolithic population migration in East Asia, predating the previously suggested northward population movement.
 The current fragmented distribution of D-M174 is likely due to the combination of later Neolithic population expansion and the last glacial.
 要約すると、われわれは、東アジアで、これまで提唱されてきた北向きの集団移動に先行して、より古い、旧石器時代の集団移動があったことを実証してきた。
 D系統が現在分断化されて分布している状況は、最終氷河期に起こった人口膨張とその後の新石器時代の人口膨張の組み合わせ、両方に起因する可能性が高い。
                                                以上
 


         (筆者注:以下、謝辞や参考文献がありますが、割愛します。興味のある方は、原文に当たってください。)
                 原文 http://www.biomedcentral.com/1741-7007/6/45