研究ノート01.
Gm遺伝子(日本人の源流)-要約編- 

   参考文献:
 

書籍名

日本人は何処から来たか 

出版社 

NHKBOOKS 

著者・編者 

松本秀雄 

初版年月 

1992.10 


 この松本秀雄氏の研究はまさに労作といえましょう。膨大なデータを駆使して「日本人のGm
遺伝子」が世界民族の中でどう位置づけられるかを明快に指し示してくれます。そのことによっ
て日本人の仲間がどこに分布しているか、日本人の源流といえる分布の中心地は何処なのか
が、見えてきます。
 
   Gm型という血液型とは 
 
 血液型というとABO型というのがポピュラーですが、これは赤血球に関わる血液型の一つの 
例です。血液型には非常に多くの種類があって、白血球に関わるものもあり、血清に関わるも 
のもあります。 
 本論のGm型というのは血清に関わる血液型の一種で、免疫反応に重要な役割を果たしてい 
ると説明されています。 
 
   Gm型の有用性 
 
 Gm型が日本人の起源の探究に有用な理由は、その遺伝子が人種によって異なるという特 
性をもっているからです。それは次の(遺伝子)表現型で表されます。 
 
     蒙古系     ag、axg、afb1b3、ab3st 
     白人種     ag、axg、fb1b3 
     黒人種     ab1b3、ab1c、ab3s 
 
  さらに蒙古系と白人種が混血したような場合、Gm遺伝子はag、axg、afb1b3,ab3st,fb1b3と 
いうように混合した形で表現されます。 
また、同じ蒙古系であっても民族によって遺伝子の頻度(構成比)がそれぞれ違い、蒙古系同 
士で混血するといわゆる「遺伝子の流れ」が形成されます。 
 
 三番目の特徴は、骨などの形態的なものが環境の変化などに大きく左右されるのに対し、D 
NAやたんぱく質などの情報高分子は環境に左右されず、時間に比例してほぼ一定の速度で 
変化するという性質を持っています。 
 
 したがってGm遺伝子はきわめて安定的であり、人種の識別や混血の程度、また集団の移動 
の跡づけなどを判断するのに大変高い信頼度をもっていると云えます。 
 
   日本人のGm型 
 
 日本人は極めて大雑把にいえば、先住の縄文人に弥生時代初めから渡来人が流入し、混血 
などを繰り返して奈良時代頃、現代日本人の祖先が形成されたと考えられます。 
その結果、たとえば血液型A遺伝子の分布は西日本地方を中心に、遠ざかるに従って頻度が 
低下する、いわゆるクライン(地理的勾配)があることがわかっています。 
 
 ところがGm遺伝子に関する限り日本全国(含む沖縄)各地でほぼ有意の差が認められませ
ん。この現象について松本氏は、日本民族が長い年月をかけて等質性を高めて行った、且つ 
異質性を持った別の集団との混血の機会が少なかったと説明されています。 
 
 しかし、縄文人集団に対しかなりの割合で(一説によれば1:1)渡来人が混血したことは周知 
のことであり、私は縄文人と渡来人が“Gm遺伝子”に関する限り、あまり差のない集団であっ 
たと理解する方が無理がないのではないかと思います。 
 
   日本人の源流はどこか 
 
 蒙古系の民族集団は南米から東南アジアまで太平洋をぐるりと取り囲むように分布していま 
す。そしてGm遺伝子のうちafb1b3遺伝子を高い頻度で持つ南方型の集団とag遺伝子を高い 
頻度で持つ北方型の集団があることがわかります。 
 さらに北方型の中にはab3st遺伝子を多く持つ集団と少ししか持たない、或いはまったく持た 
ない集団まであります。 
 
 日本人はGm遺伝子でみると、明らかに北方型で且つab3st遺伝子を高い頻度でもつ集団だ 
と定義することが出来ます。 
 そして日本人のGm遺伝子頻度と相似する集団はバイカル湖周辺に分布する民族集団であ 
り、「日本人の源流はバイカル湖畔にある」といえると松本氏は結論付けています。 
 
   南方起源説との関係 
 
 埴原和郎氏の二重構造説は、日本人の南方起源を定説化した学説としてあまりにも有名で 
あり、一般の方々が日本人は南方起源だと信じる根拠にもなっています。 
しかしこの松本・Gm遺伝子説はかなりの説得力をもって埴原・二重構造説を否定しています。
この松本説は1985年に発表されましたが、その後も論争が続き日本人の起源について未だ 
決着がついていません。