呼吸のしくみB


本文へジャンプ

【呼吸の調節】

私達の呼吸は特に意識しなくても一分間にだいたい安静時14〜16回の呼吸を行っています。人生80年とすると一生で約6億回呼吸をすることになり、かなりの回数です。

普段、無意識に行われている呼吸を制御している大本は、呼吸中枢と呼ばれ、人体では脳幹部という大脳と脊髄の接合部、ちょうど後頭部を触って少しへこんだような場所があるあたりの高さに位置しています。脳幹部とは大脳と脊髄との間にある橋や延髄といった部位を指し、人体の生理機能を維持する大事な場所です。ここには特に呼吸にとっての中枢部、呼吸中枢があって、休み無く息を吸いなさい、吐きなさいと命令を出し、脊髄から横隔神経や肋間神経を介して呼吸筋に伝えられる仕組みになっています。


私たちが呼吸をする場合、意識的に早めたりゆっくり深呼吸してみたりすることができますが、これは呼吸中枢をさらに上位の大脳皮質がある程度コントロールできうるからです。脳は皮質や辺縁部、脳幹部などといった領域に分けられますが、それぞれが全く個別に働いているわけではなく、それぞれにネットワークを組んでいて互いに影響しあっていると考えられます。そのため感情や情動の変化によって呼吸のリズムが変わったり、自分の意思によってある程度随意的に呼吸を制御する事も可能なわけです。この意識的な調節、随意性調節は、無意識下の通常の呼吸を抑えるほどの強力な力がありますが、長時間息を止めたりすることが出来ないように、長く続けることは出来ません。


【呼吸運動の二重構造】
呼吸運動には、呼吸筋の動きを制御する2重の構造、つまり無意識に営まれる自律的な運動と、意識的に呼吸を制御する大脳からの随意的な運動の2つからなっています。これは他の自律神経系、たとえば心臓の動きを早めたりゆっくり動かしたりできないことを考えれば、かなり特異的な性質といえます。

自律神経とは体の生理機能を維持する上で大事な神経であり、呼吸や循環、消化や吸収といった内臓の動きなどを支配します。生命維持に欠かせない生体の運動は私たちが意識しなくても滞りなく働くようにこの自律神経が支配しているのです。自律神経は主に2つに分類されます。一つは交感神経で「戦闘時、臨戦態勢の神経」であり、瞳孔が開き、心臓の動きを早くなって血圧をあげたりするほうの神経、逆に副交感神経のほうはゆったりとし安静にしているときに優位に働く神経で、この2つの神経がバランスをとって、日々の生命活動を支えています。肺に分布する自律神経は副交感神経である迷走神経と頚、胸髄から発する交感神経が重要です。呼吸運動の場合、両者は微妙にバランスを取っていますが、吸息時には交感神経が優位に、呼息時には副交感神経が優位に働くと言われています。

一般に私たちの筋肉は横紋筋と平滑筋、および心筋の3つに分類されます。横紋筋はおもに骨格筋を、平滑筋は内臓の筋肉などを構成します。横紋筋は随意筋といって、中枢神経の支配によって私たちの意志に従って動かすことが出来ます。一方平滑筋は、不随意筋と言って自分の意志では動かすことが出来ない筋肉で、消化器系の臓器に分布し自律神経によって支配されている筋肉です。心筋も自立的に働く不随意筋です。呼吸筋(横隔膜や肋間筋)は横紋筋にもかかわらず、例外的に自律神経の支配も受けています。それによって自分の意志で動かすことが可能であり、さらに無意識下で自立的に動き、夜間寝ているときも滞りなく呼吸が営まれているわけです。

次ページ                          前ページ