『哲ねこ 七つの冒険』刊行のごあいさつ。



  みなさま。
 本当に長いことお待たせしました。
  今日まで待っていてくれて、本当にありがとうございました。
「真夜中は猫のはじまり」から、すでに14年。「マイ・ディア・ママ」からも、早や、六年。
「哲ねこ」を書き始めた時は、ワールドカップ日韓共催の年でした。それが、今年は、ドイツ大会。
でも、とうとう、皆さんのところへ、「哲ねこ」をお届けできる運びとなりました。
 この四年半、私をはげましてくれたり、力づけてくれたり、さまざまな情報を寄せてくれたりした、私をとりまく数えきれないほど多くの友人、知人、隣人の方々に、心から御礼申し上げます。

*      *      *

  「哲ねこ」を書こうと思い立ったのは、「真夜猫」の読者の皆さんが、そろそろ大人になって、結婚して子どもを産んで、育てる立場になってきたからでした。
 
 「トム」や、「真夜猫」の子どもの気持ちを持ったまま、大人になって子育てをするのは、至難の技です。でも、私たちは大人になったからといって、決して、子どもの敵にはなりたくない。どうしたら、いつまでも子どもの味方でいながら、親という立場を生きていくことができるのか。
 その答えが、「哲ねこ」です。

 だから、「哲ねこ」は、子どものための書でありながら、それ以上に大人のための書でもあります。 大人になってしまったけれど、どうしたら、子どもの味方でいられる、いい人間でいられるのか。そのことをどこまでも求めていきたいと思っています。

 この世界のすべての決まりを作り、この世界を動かしているのは大人たちです。ほとんどの子どもたちには、何の決定権も与えられていません。その中で、地域によっては、子どもたちは、戦争の犠牲となったり、病気や、空腹に苦しんだりしています。
 一見、何不自由なくしあわせに暮らしているように見える、日本の子どもたちも、大人たちの作った世界の中で、それ以上の自分のしあわせをみつけることさえ思いつかないほど、せまい考えの中に閉じこめられて生きています。 


 それは、母たちも同じです。
 子育てがつらいのは、小さな世界にがんじがらめになっているからです。

 「哲ねこ」は、そんな、子どもたちや、お母さんたちを大空へ解放しようと思っています。

 私たちが、誰でももっている可能性。そのほんの糸口を、私は「真夜猫」で提示しました。
 今回は、私たちが持っている可能性のいくつもの道を、皆さんにお伝えしたいと思います。

 
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 あなたが、ミルルと一緒に、哲ねこの七つの冒険に出かけて、やがて、あなた自身のアレーテイアを手に入れた時、あなたにとって、この世界が、まったく違う意味合いで輝き始めることを私は約束したいと思います。
 自分の人生の輝きは、自分の脳で、自分の思想で生み出すものです。
 どうか、一人でも多くの子どもたちや、お母さんたちが、哲ねこの冒険に参加して、自分の思考が新たに輝きだして、まったく新しい自分をみつけることができますように。
  ミルルも私も、哲ねこたちも、せいいっぱい、応援します。
 
  Good luck!    

                     2006.7.7.   飯野真澄。




森へ帰る

『哲ねこ 七つの冒険』(C)2006.飯野真澄.NHK出版。Illustrated by MICHIRU.