Recognition

 

 

 

 

 

 

気付かされるとき

 

 

 

・学校の男子から告白されるあなると、それを 知ったじんたん、果 たして二人の
想い、そして恋の行方は・・・。劇場版終わって学校が再開した後の話です。

 





 

*****

 

 


 

「“少子化対策に関する意見を述べよ”、か・・・」

 ベッドの端に立てられた社会科の教科書。そのベッ ドにうつ伏せ状態になり、

顔を上げて目の前の課題を見せ詰める鳴子は、眉を寄 せて悩んだ。暦では秋に

入ったとはいえ、天気は未だ夏のように暑く、着てい るのは赤いノースリーブ

に白のショートパンツ。剥き出しの肩の上で少しでも 汗が乾かされるべく、柔

らかく膨らむ髪の一部を、普段手首に巻いているシュ シュで結んでいる。思え

ば、数週間前芽衣子への手紙を書き始めたときと同じ 恰好だ。顎の下で“ウサ

ミチ”のぬいぐるみを抱き、必死に教材と睨み合う鳴 子。

「少子化、ね・・・」

 そういえば、先日母が、今では嘗てのように、子供 が数人で仲良く外で遊ぶ

姿を余り見かけなくなった、と話していた。集まるの は誕生会といった特別な

イベントのみで、それも何十人もの大人数で返って愛 が伝わらない、と。

「確かに、“超平和バスターズ”の頃は・・・」

 鳴子は、幼少期を思い出すと、うつ伏せのまま後ろ に伸ばした脚の片方を上

に曲げ、少し微笑みを浮かべた。あの頃の自分たちの ように、笑ってはしゃい

で遊べたら幸せだろうな、という思いが込み上がる。

「そうだ!“大人も大人でいられる時間に限界がある から、幾つになっても、

胸のときめきを忘れないことが大切”・・・って、そ れでいいわけないか・・・」

 一瞬課題の答えが閃いたかのように鉛筆へ手を伸ば すが、直ぐに論点からず

れていることに気付き、鳴子は筆記用具の隣に置いて あった、“大人も子供も楽

しく食べよう”等と、今回の悩みを刺激するような宣 伝文句が書かれた“アザ

トイヤチョコレート”を一口食べる。

“それ食べるときのあんたがあざといよ!”

 先日、学校の女友達にそんなことを言われた。

“鳴子ってさ、ギャルっぽく着飾らなくてもかわいい よね!”

“そうそう、絶対男子にモテモテでしょ!”

「・・・馬っ鹿じゃないの?!・・・」

 学校の会話を浮かべて、ポロっと呟く鳴子。

「あざとい、って、何よ?!」

 端麗な顔立ちがかわいらしく膨れ上がる。

「まあ “ラブホ顔”よりはマシだけ ど・・・」

 ここでもふと思い出すのは、昨年仁太の口から出た あの言葉。今では当時の

ように傷付くわけではないけれど、あの言葉で彼は何 を意味したかったのか、

というより、彼の脳内に何があって、そんな言葉が出 たのか、未だに気になる。

「ふっ、何やってるんだろ、私・・・」

 鳴子は悩む表情を、優しさが伝わるちょっと恥ずか しげな微笑みに変え、う

つ伏せのまま両腕を教科書へと伸ばす。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

「安城って最近、ちょっと感じ変わったよな・・・」

 校舎の窓から、校庭のベンチで弁当を食べる鳴子を 眺める男子組。その内の、

運動に向いていそうながっしりして引き締まった体格 で、爽やかな表情の一人

が言った。

「なんか、素直に笑うようになったっつーか、穏やか になったかな?」

隣の友 人は肘で彼を突く。

「さてお前、チェックしてたな?」

「だってさ、あのルックスだし・・・」

「そりゃ、確かに・・・」

 決して嫌らしい目ではないが、じっくりと、下にい る鳴子の姿を見る二人。

「それにほら、去年、あんなことあって・・・」

「まあな・・・」

 両者が黙り込む。一年前、鳴子が援助交際をしてい るのではないかという噂、

心の底では真に受けたわけではないが、あの美しい容 姿に、当時の派手な恰好

の彼女に対し、素直に“気になっている”と認めるに は勇気が要て、“軽い女”

と決め付けたことでそうした気持ちを表に出した者も 少なくなかった。

「・・・結局、あれは俺だってデマだと思うんだけ ど、雄也が心配してンの

は、あのとき安城を庇った男のことだろ?」

「宿海な」

「ああそうだった!さすがお前、恋のライバルはパッ と名前出るよな!」

 昨年の後期に復学し、その後辛うじて二年生への進 級をも果たしたものの、

現在も相変わらず欠席の多い仁太は余り名前を覚えら れていないようだ。しか

し、一年前彼が観を呈して鳴子を守るように立ち上 がった一件は学校全体で噂

されたし、共にアルバイトをしている姿も多くの生徒 から見られている。ここ

で鳴子を想う雄也に対し、友人は真剣な顔で言った。

「けど、やっぱりあの二人デキてそうだぜ?」

「それは俺だって想定してるさ!」

 雄也は窓の外を眺めるまま答える。

「だけど、幼馴染みたいだし、一緒にいるからって付 き合ってるとは限らねえ

だろ?」

「そりゃ、まあ・・・」

「とにかく、今日、宿海来てないみたいだし、俺、安 城に正面から当たってみ

るぜ」

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 その日の放課後、鳴子は校舎の中庭の水道で手を 洗ってから下校する予定だ

った。共にいたのは、入学時から友人である春菜と亜 紀。昨年のように無理し

て付き合わされることは無くなったが、相手も鳴子の 心情を理解しており、今

もそれなりに仲が良い。

「ねえねえ、今日久しぶりにカラオケ行かない?」

「えっ?!」

 そう言われていつぞやの嫌な思い出がふと蘇ってし まう鳴子の表情を察し、

春菜は続けた。

「大丈夫、男とじゃなくて、三人で近くの所に行こう よ!」

 二人は今も派手な恰好を続けていながら、鳴子の一 件を見て無意識に防衛本

能が働くようになり、成人男性らと遠出するような遊 びは控えるようになって

いた。

「そうそう、鳴子が西野カナ歌うのあたしも聴きたい し〜」

 そう言って亜紀が鳴子の手を引っ張るときのこと だった。

「安城、ちょっといいかな?」

 突然の男子の声に振り向く三人。そこにいたのは雄 也だった。

「少しだけ、二人で話したいんだけど・・・ワ リィ・・・」

 彼は春菜と亜紀に対して申し訳なさそうに、場を外 して欲しい表情を見せる。

「あっ、じゃあ、鳴子、後でね!」

「え、ちょっと・・!」

 事情を察したように素早く去っていく二人の姿に困 る鳴子だが、男子生徒は

少し彼女に近づくと、真剣に見詰めてきた。

「あの、話って・・・」

「俺、隣のクラスの階堂雄也」

「し、知ってる・・・」

「え?嬉しいな!お前のこと、ずっと気になっていた から・・・」

 先程の二人とのカラオケの話といい、妙にあのラブ ホテルへ連れ込まれそう

になった夕方のことを連想させられる鳴子には、雄也 が一瞬、あのときの男と

重なり、怯えて後ろへ下がろうとする。相手は続け た。

「俺、お前のことが好きなんだ。付き合ってくれない か?」

「えぇっ?!」

 突然告白された鳴子は、やはり先程思い出してし まった日、帰りの電車で集

から似たようなことを訊かれたときの如く混乱に陥っ たが、はっきり断る余裕

もないまま、相手は再び話す。

「返事はゆっくり考えて!じゃあ・・・」

 青年はそう言い残し、戸惑う鳴子が声を出すのも待 たずして去っていく。

 

「鳴子やる〜っ!」

 雄也がいなくなって早速戻ってきた春菜と亜紀は、 当然ながら壁際で全てを

聞いていた。

「ほら、やっぱモテモテじゃん!」

「階堂ってさあ、顔も割とイケてるし、運動もできる から、結構女子に人気高

いよね〜」

「やめてよっ!」

 二人の煽りが鬱陶しく、鳴子はつんけんした態度で 目を閉じて先を歩く。傍

から見れば、告白されるのには慣れていても然程不思 議ではない美しい娘。し

かし内心ではひどく動揺している。

「何、タイプじゃないの?」

「そっ、そういう問題じゃないから!」

 怒った顔を真っ赤にして二人を振り切ろうとする鳴 子。春菜と亜紀は目を合

わせる。ではどういう問題なのか、それは大体見当が ついている。鳴子はこの

過去一年間も、二人にはっきりと話したことはない が、その想いは解りやすく、

女友達の前では言うまでもなく明らかだった。

「でもさ、一回くらいデートしてあげたら?宿海を嫉 妬させる為にもさ!」

「えっ?!きゅ、急に何を言い出すのよ?!」

 顔真っ赤にして、追いかけてきた二人を交互に見る 鳴子。仁太への好意を隠

せているとは思っていなかったものの、こうして言わ れると極めて恥ずかしい。

春菜と亜紀は、左右から優しく彼女を支える。

「ぶっちゃけ、鳴子は幾らでもいい男作れるくらいか わいいし・・・」

「そうそう、はっきり言って、あたしたち二人の良い 所を合わせ持ってるのよ

ね」

「・・・だから、宿海に拘る気持ち、アタシにはわか んないけど、鳴子がそう

いう気持ちならそれはそれで良くて、あっちが動かな いんだったらきっかけ作

りなよ!」

「そうだよ、鈍感な男でも“取られる”って思ったら 焦って自分から行動起こ

すんだから!」

「もうっ、二人とも何を言ってるんだか・・・;」

 少し太り気味だがその分胸も膨らみ、褐色肌が大人 の色気を与える春菜に、

細身でやや大きめの瞳をしたかわいらしい顔立ちの亜 紀。そして、余り自覚は

無いが、顔も美しく、豊胸に括れた腰の見事な女らし い体形を持つ鳴子。確か

に、容姿は前者の二人の優れた所を合わせ持ってい る、と捉えられるのかもし

れない。しかし同時に、鳴子は、彼女たちには最早理 解できぬ純粋な乙女心の

持主でもあった。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 翌日、仁太が学校に出席した。昨年は授業数の半分 近くを休んでしまった故

に、年度末は鳴子に大いに協力して貰った厳しい補習 や、全科目の追試を経て、

なんとか落第は免れた。二年生の学級は一部の生徒が 入れ替わったものの、彼

の復学や進級を支えた鳴子とはまた同クラスに入れる べきなのは、職員側の判

断でもあった。そうした中、二年生になった仁太は、 校則で定められた授業出

席数の最小限を守っていけるほどには登校するように なった。

「はい、じんたん、昨日来なかった分のプリント!」

 休み時間、欠席が多いことを快く思わないことが はっきり顔に現れた鳴子が、

怒った表情でも毎度の如く教材を渡す。

「お、いつもすまねえな」

「すまないって思うんなら、もっと真面目に学校来な さいよ!いつまでもあた

しが世話焼けると思ったら大間違いだからね!」

 その割には、頼んでもいない課題や試験範囲までい つもきちんと提供してき

ている、と突っ込みたくなる仁太だが、そうした鳴子 の態度の裏には自分を気

にかけている彼女の一生懸命な気持ちがあることに気 付かない筈もなく、それ

らの文句は常に聞き流している。

 そうして鳴子の説教が続く中、横から声がかかる。

「鳴子〜、結局階堂のことどうすんの?」

 寄ってきたのは春菜と亜紀だった。相変わらずこの 二人の相手をするのが苦

手な仁太は渡されたプリントに集中しようとするが、 同時に鳴子も気まずい表

情を取って眉を寄せる。しかし、二人はそれにも構わ ず話し続ける。

「中々男らしかったよねえ、行き成り出てきて鳴子に 告白なんて!」

「うんうん、階堂クンってかっこいいし、羨ましいな あ」

 告白と聞いて、仁太は無意識に教材から目を逸ら す。その瞬間を、春菜は見

逃さなかった。

「そうそう、宿海、昨日鳴子が告白されたんだよ?」

 仁太は一見平然とした表情だが、少し息切れしてい るかのように言い返す。

「だ、だから何なんだよ?!」

「だからあ、あんた小っちゃいときからの友達で しょ?何か言ったら?」

「別に・・・」

 春菜の言い方にほんのり苛立ちながらも、仁太は鳴 子を見て無関心に思える

声で言った。

「良かったな・・・」

 その言葉に、鳴子は電撃を受けたかの如く肩が動 き、目を大きく開いて頬を

膨らませる。“全然良くない!”と発せられそうな叫 びを、必死に抑えた。しか

し、心は無論悲しい。その場で仁太から激しい嫉妬を 求める筈もないけれど、

自分が他の男から好意を持たれることが、彼にとって 本当にどうでも良いこと

なのだろうか。そうして悩んで何を言い返せば良いの かわからず、女友達二人

が今後何を言い出してしまうのかも心配する鳴子。そ の緊張感はチャイムの音

と共に一旦途切れたが、授業が始まっても、彼女は ノートの記録と同時に仁太

の方にばかり目が行ってしまう。嘗ての悪質な噂が広 まったときの授業ほど重

くは感じないが、この夏、ワクドナルドで芽衣子への 手紙を綴ったときのよう

に、“じんたんが好き”と書いてしまいそうだ、とふ と思う。最終的には、そん

な自分に対して微笑みを浮かべ、心の中で“バカバ カ、私のバカ!”と唱えな

がら授業へ集中することにした。

 一方、仁太の方も、何らかの思いが引っ掛かるのを 感じて、教師の話に集中

できなかった。何だか、好ましくないと思える気持ち が湧き上がろうとしてい

ることに不安になる。鳴子が男から告白された件に対 し、本音は快く思おうと

しない、ということに気付かされ、それを認めたくな くて、憎らしく感じる。

“ふん、あいつはああ見えて男には丸っきり耐性がな くて、告白なんてされち

ゃ、あん時のラブホみたいにヤバいもんじゃないだろ うけど、ビビるだろうか

らな・・・”

 そうして、自分は鳴子のことを飽くまで古い友人の 一人として気にかけて、

彼女が男と交際することで不快な思いをしてしまわな いかを心配しているのだ、

と頭で割り切ろうとする。

“ははっ、あいつビビり屋だからな。見た目の割に男 と付き合うのは・・・”

 ここで仁太は考えが止まった。

“見た目の割に、って何なんだよ?!”

 自分が先程、無意識ながら、鳴子のことを素直に美 しいと認めてしまったこ

とに気付く。

 

 そうしてやってきた昼休み。誰にも邪魔されぬ非常 階段の裏で弁当を食べよ

うと外へ出た仁太は、春菜と亜紀が男子一人に寄って いく姿が目に入った。

「階堂ク〜ン、今度の日曜さ、天気もイイって言う し、皆でミューズパーク行

こうよ〜!」

 嫌らしくさえ思える言い方で誘う、いつもながら大 胆な春菜。

“あいつが、そうなのか・・・”

 仁太はつい雄也を凝視してしまう。

「ほら、勿論、鳴子も誘っておいたからさ!」

 フォローを入れる亜紀の言葉に、相手は納得したよ うな表情を見せた。つま

り、あの二人は、デートの手助けをしようというわけ か。

“ばかばかしい!学校の男子だし、行き先はミューズ パーク。あん時みたいに

援交の疑いが出るわけじゃあるまい!俺が気にして たってしょーがねーよ!”

 そう自分に言い聞かせようとする仁太。しかし、そ ういう状況だからこそ気

になってしまう部分があるという本心を何故か無視で きない。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 秩父の観光名所である美しい公園、ミューズパーク は、この秋も賑わった。

紅葉が全体を染めるにはまだ早いものの、自然の生命 力を溢れさせる鮮やかな

緑に茂った並木が見せる夏の気配もまた見事なもの だ。遠くからの観光客だけ

でなく、現地の住民も、休日の安らぎを求めて、或い は運動に励むべく、好ん

で訪れる。また、自然豊かで様々な花が美しく咲くた めに、デートスポットと

しても好まれている。

 この晴れた日曜の朝、ここへやってきた鳴子の頭に はそれらが横切った。無

論、彼女はデートの為に来たのではない。しかし、春 菜と亜紀が、嘗てのよう

な半ば強制的な言い方ではなく、純粋に頼んでいるよ うに受け止められたので、

誘いを受け入れた。正直なところ、彼女たち二人と先 日の話もはっきりしたか

ったのだ。そんな鳴子が、まだまだ夏の暑さが続くこ の日に纏っていたのは、

肌の露出はあれど際どくはない、清楚な白をベースに したノースリーヴワンピ

ース。肩の紐や胸元辺りは紫色に白い水玉、スカート の下部には紫のフリルが

間を空けて三段ついており、間には花柄模様が描かれ ている。胸の辺りは少し

窮屈に感じられ、鳴子の見事な豊胸が目立ってしまう が、そこは大きな黄色の

リボンがかわいらしさを強調することで、挑発的に見 えることはない。後にな

って、こちらも芽衣子が着ていたワンピースと似てい ることに気付いたが、今

やそれは、大切な親友への想いとして受け止め、寧ろ そのお蔭で、春菜や亜紀

とは違った、幼馴染への想いが籠った自分ならではの ファッションへ近づいた、

と自信が持てた。下ろした髪の左側にだけ星型の髪飾 りを付け、足にはスニー

カーを履き、町中で友人二人と合流して乗ったミュー ズパーク循環バス『ぐる

りん号』を、中央バス停で下車する。

しか し、下りた次の瞬間、衝撃を受けて立ち止まった。春菜と亜紀が自分を

先駆け て寄っていったのは、見覚えのある男子だった。

「やあ!」

 爽やかな顔で挨拶する雄也の姿に驚き、鳴子は困り 果てた表情で女友達を見

る。彼が同行という話は、一切聞かされていない。こ れは何の企みなのかと少々

怒りをも立てるものの、説明をして貰う余裕もなく、 気まずい心境を抱えて歩

き出す。こんな筈ではなかった。自分は友人二人と真 剣な話がしたかったのに、

今からどうしたら良いのだろう。

「大丈夫、ちょっと一緒に遊ぶだけだから!」

 肩を抱いて小声でそう囁く亜紀に、指揮を執るよう に先へ進む春菜。雄也は

彼女の後ろを歩いては時々鳴子へ振り向くだけで、今 のところ、強引なアプロ

ーチは見せない。一行は、四本の柱から水が噴き出 し、九体の女神像に見守ら

れた『ミューズの泉』の前に着き、水面から浮かぶ石 の上を通って中心まで上

る。

「ああ、そうだ、ねえ階堂クン、世界史で言ってた ミューズって何だっけ?」

 学校の授業で古代ギリシャに関して学んでいた頃だ が、春菜は、学内では成

績も優秀な方である雄也を引き立てようとするかの如 く質問する。

「あ、ミューズはギリシャ神話でそれぞれの芸術を司 る女神たちのことだよ」

 質問した側に対して話し始める雄也だが、途中何度 も鳴子の方をちらっと見

る。亜紀は彼の肩を軽く叩く。

「さっすが〜!それで、全部で何人だっけ?」

「ここの像と一緒で九人。正確には“九柱”って言う んだけど・・・」

「あ、そっか!それで・・・」

 ここで鳴子も少し緊張感が解れたか、拳で掌を叩い て言葉を発したが、直ぐ

に黙り込んだ。

“それで、あのコたちも九人なんだ・・・”

 鳴子の脳内に浮かんだのは、雑誌連載の漫画に登場 する高校生アイドルグル

ープ。確かにそのキャラクターたちも九人で、ミュー ズに因んでグループが名

付けられているが、鳴子はこの場で自分の漫画好きを 余り公言したくなかった。

しかし、お蔭で脳内を一旦切り替えることができたよ うで、この漫画が翌年か

らアニメ化されるという話を思い出しながら皆と共に 引き返す。

 所がそのとき、春菜は池の石を踏み外したようで、 片足で水中へ踏み込んで

しまった。

「うわっ、最悪!」

「春菜、大丈夫?!」

「もうっ、オキニの靴が台無しじゃん!」

 寄ってくる亜紀に対し、他の二人が見えない中ウィ ンクを送る春菜。

「うわっ、バンド切れちゃってるし、これ直さなきゃ 帰れないじゃん!亜紀、

手伝ってよ!」

「うん、もち!ほら、こっち来て!」

 春菜は、実際は水に濡れたこと以外何も問題がない そのサンダルを手に持っ

て、亜紀の肩に掴まりながら片足だけで歩く。

「時間掛かりそうだからさ、鳴子たちは先行ってて よ!」

「そうそう、後でバス乗るからさ、旅立ちの丘で落ち 合おっ!」

「えっ、ちょ・・・」

 鳴子は、芝居であることを全く見抜けていないわけ ではないが、もしそうで

ないとしたら、自分の我儘は余りに無礼だ。ここは素 直に、二人の言う通りに

行動した方が良いと感じた。

「なあ、安城?ミューズの森通りの方から行かない か?花とかきれいだろう

し・・・」

「あ、うん・・・」

 人気の少ない方の道を通る提案を一瞬恐れた鳴子 だったが、女の子が好きそ

うなものを考えている雄也は、気が利くのではない か、と認めざるを得なかっ

た。内心、こういった女性への気遣いは仁太も見習う べきだ、と少し思いなが

ら、雄也とはある程度距離を空けつつも彼に続いて歩 く。目指すは、『旅立ちの

丘』。ここ秩父で誕生し国中へ広まった卒業式の歌を 記念した、地域全体への見

晴らしが極めて美しい場所。そういえばあそこには、 弓矢の形をした、矢を放

つように鳴らす鐘、『ミューズアロー』がある。秩父 神社の女神と武甲山の男神

の恋に纏わる伝説から、この矢を心込めて引き放て ば、大切な人への想いが届

くと言われ、若いカップルが二人同時に鳴らす習慣が 定着したようだ。いつか、

この弓を一緒に引きたい、それは鳴子が前から望んで いたことだった。しかし

同時に、この『ミューズアロー』が完成したのが、丁 度芽衣子が他界し“超平

和バスターズ”の縁が一旦崩れ始めた頃だという皮肉 もあり、一人で願いごと

をする為にも近寄れなかった。

“でも、今後なら、寧ろめんまの為にも・・・”

「安城・・・」

 様々な思いを巡らす鳴子を我に帰らせたのは、雄也 の声だった。気付けば、

森の道を抜けて二人は武甲見広場の近くまで来てい た。

「ありがとな、安城」

「え?」

「今日、一緒に来てくれて・・・」

 雄也の態度は、先日堂々と告白してきたときに比べ れば控え目で、今日の件

は彼ではなく春菜たちが勝手に計画したことではない かと思わせてくる。しか

し鳴子はそれでも、どう対応すれば良いのかわから ず、慌てて周囲に目を逸ら

す。この辺りは、春から夏にかけて来れば、シャクナ ゲがきれいに咲いている

風景を見られるが、今は、それほど花は多くない。だ が、鳴子は偶然にも、ま

だ開花していないコスモスを一本見かけた。

“コスモス・・・花言葉は、乙女の真心・・・”

 鳴子は、何だか決心がついたように顔を上げ、強い 意思が伝わる眼差しで雄

也を見詰める。

「階堂君、ちょっと来てくれる?」

 二人は、人が全くいない林へと入って行っ た・・・。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 同じ朝、仁太は一見目的もないまま町中をうろつく ように外へ出た。ゲーム

ショップのアルバイトはこの日もシフトが入っている が、夕方からなので、午

前中は完全に暇だ。しかし、それでも嘗てのように家 に引き籠っては落ち着か

ず、とにかく歩かなければ気が治まらない。何が動機 なのかに関しては、自身

の心を探るのも怖い。引っ掛かった気持ちを余計に焦 がして耐え難くさせてし

まうように差してくる太陽の下、秩父駅前の自動販売 機で適当にジュースを一

本買う。そうして無意識に何度も真西を見てしまう が、その度自分に問い詰め

る。

“なんで俺は、あっちへ行かなきゃならないん だ?!”

 深呼吸して、線路の反対側へ回ろうとするが、通行 人の会話に立ち止まる。

「公園橋ってさ、高くて足が竦むぜ・・・」

「そうか?」

「ああ。まるで川の上に幽霊がいて、“こっちへおい で”って誘ってるみたい

に・・・」

「おいおい、お前、重度な高所恐怖症だな」

“そうか、もしかして俺も、めんまに呼ばれ て・・・”

 そう思うと咄嗟に問題の方向へ走ろうとするが、今 のは余りにも下手な言い

訳であることに、すぐさま気付く。

“あいつに限って、あり得ないよな・・・”

あれだ け皆の幸せを願った芽衣子が、仁太を共に死へ引きずり込もうとする

筈がな い。増して、今更そんなこと、絶対にないだろう。

“あいつなら、寧ろ今の俺の気持ちだって認めてくれ るだろう・・・”

 そんな考えが浮かぶが、直後に、またしても自分に 対して突っ込みを入れた

くなった。

“今の俺の気持ち、って、何だよ?!俺自身わかん ねーじゃねーか!”

 脳内でそう唱え、やはりここからミューズパークへ 続く秩父公園橋の方向に

背を向ける仁太。

“馬鹿みてえ!”

 駅の改札口とバス停の間に立っている間、ただ時間 が流れる。

 

「ねえ、つぎのミューズパーク行きっていつ?」

 その公園の名を耳にし、感電したように我に帰る。

「まだ三十分以上あるみたいだぜ?」

 “確かに『ぐるりん号』って、通る頻度低いから な・・・”

「歩いて行ってみるか?」

「嫌だ、遠い!そこらへんでお茶でもしよ!」

“観光客のカップルか・・・”

「でもさ、現地の人って山歩きとか慣れてそうだか ら、普通に歩いて行くよな?」

“まあ、確かに俺なら歩くけど・・・”

「あんたね、そういうトコ、勝負挑まなくていいか ら!今から歩いても絶対バ

スの方が早いし!」

“歩く方が早えに決まってんだろ!”

 バスのような、狭い人混みの中に詰められることを 嫌う仁太は、この彼氏を叱

る女性のいい分に対して、心の中で、無性に異論を唱 えたくなる。

「まあ、それもそうだな。のこのこ歩くより、バスで 寛いで行ったら直ぐ追い

越しちゃうもんな!」

“そんなわけねーだろ!今から歩いたらあんたらのバ スが着いた頃、俺はとっ

くに、そこにいるって!”

 バスの選択肢に納得したカップルに、今は何故か余 りに腹が立つ。現在自分

が二人に把握されているかどうかはわからぬが、彼ら が目的地を着いた頃、そ

こまで歩いた自分の姿を見せられたら面白いのではな いか。仁太はそう考える

と、思い切って真西へ向かう。自分でも気付いている かが曖昧ながら、いつの

間にかミューズパークへ行く言い訳ができていた。

 先程話題にされた秩父公園橋を渡っては上り坂をも テンポよく歩き、当然、

バスに追い抜かれることないまま、気付けば豊かな自 然に囲まれていた。

“何やってンだ、俺は・・・?”

 無駄な運動で汗を掻いただけではないか、といった 考えが浮かぶ。駅前の二

人の会話を聞いて、何故こんなことまでする気になっ たのか。なんだかここ数

日はそういったちょっとしたことでも変に苛立って行 動を起こしたくなる。

“なんか落ち着きがない感じだね〜仁太く〜ん”

“別に・・・”

“いやいや、悪いことじゃないよ〜。若いっていう証 拠だからね〜”

“うるせえよ!”

 今朝家を飛び出す前の父親との会話を思い出す。結 局自分は、落ち着きを求

めてこのミューズパークへやってきたのか。取り敢え ず、人混みのない裏道を

散歩して、気が済んだら帰ろう、と自分に対して指示 する。最早昼頃で、気温

は上昇する一方。風が比較的に強く吹いてくれること が救いで、木々の下の、

直接日光が当たらない場所では過ごし易い。裏道から も逸れて、林の中を歩く。

ここなら一切人が見当たらないので、気にせずぶらぶ らできる。そうして安心

し切った仁太だったが、次の瞬間、突然木の陰へ隠れ ざるを得なくなった。行

く先の散歩道から離れた林には、男女の二人組が向か い合って立っていた。こ

の二人、とくに少女の方は大いに馴染みがある。自覚 したくはないが、自分を

この公園まで歩かせる真の原因となった二人、そう、 鳴子と、あの階堂雄也と

いう青年だ。ここは、状況からして、気付かれない 内、速やかに立ち去らなけ

ればならない。咄嗟に浮かんだ思いはそれだった。し かし何故か、それができ

ない。どうしても二人のことが気になり、緊張感が喉 や腹を締め付けるまで強

くなってこの場を離れられない。背中で寄り掛かる大 木から一瞬、ほんの少し

顔を出して覗く。この位置からだと、鳴子は自分に対 し背を向け、また雄也の

方は、隣の木で隠れてこちらからは見えない。距離も 多少程度あり、相手も小

声のようなので、何か話しているようなのはわかるも のの、その内容は全く聞

こえない。

“このシチュ、俺、とんでもなく拙いんだけ ど・・・”

 盗み聞きに達してしまう前に、やはり機会あれば撤 退すべきと判断した仁太

だが、そのとき、近くの木の、太い枝が殆ど切れてい ることに注意を逸らされ

た。こうして風が吹く中、あれがいつ切れてもおかし くはないが、もしそうな

ったら、正に今鳴子が立っている位置に落ちて、頭に 命中してしまう可能性も

高いと思われる。

“おい、そこどけよ、危ねえだろ!”

 最早別の理由でも額に汗を溜める仁太だが、ここで 注意するべく表に出るわ

けにはいかない。

“何でもいいから、もうちょっとそこから離れた場所 でやれよ!”

 

 仁太がそのようなこと脳内で必死に叫ぼうとしてい る頃、鳴子は、雄也に向

かって、ゆっくり話していた。

「あのさ、階堂君・・・こないだのこと、ありが と!」

 ここでほんのり笑顔を見せるが、すぐ真剣な表情に 戻す。

「でも、ごめんなさい。私、あなたとは付き合えない の・・・」

 ここで溜息をつき、表向きには顔を買えない雄也に 対して、恥ずかしながら

も続ける。

「他に、好きな、人が、いるから・・・」

「そっか・・・」

 残念そうではあるけど、頑張って微笑もうとする雄 也。

 一方、二人の会話は聞こえないながら、仁太は只 管、その切れかかっている

枝を気にする。鳴子の頭に落ちたら、間違いなく重傷 だろう。ここは最早、自

分の不利な立場を心配する場合ではないのかもしれな い。

「その人には、中々振り向いて貰えないけど、それで も、他の人は、考えられ

ない。だから、本当にごめんなさい」

 そのときの鳴子は、いつにも増して美しく、それを ここで見られなかった仁

太は、大きな損をしたと言えるだろう。しかしそれと ほぼ同時に、また風が強

くなり、問題の枝は遂に完全に切れ、未だ気付かぬ鳴 子の方へと落下していった。

「あなるっ、危ねえ!!!」

 仁太は全てに構わず、木の裏から飛び出し、その声 に突然びっくりして振り

返る鳴子の近くに、うつ伏せ状態で倒れる。木の枝 は、仁太の予想とは幸い少

しずれて、二人の間の地面に音を立てて衝突するの だった。

「じんたん?!あんた・・・」

「いやっ、スマン!話は誓って何も聞いてねえから! ただこいつが危なく

て・・・!」

 一部が土や草がついて、服ほどではないもののやは り汚れてしまっている顔

を上げ、目の前に横たわる枝を必死に指さす仁太だ が、その先には、昨年バー

ベキューへ向かう途中に道端で転んだときの光景をそ のまま再現するかの如く、

鳴子の見事な美脚が視界に映り、慌てて立ち上がって 顔を逸らす。鳴子は枝の

ことを把握すると一瞬感動してしまいそうになるが、 直ぐに、今がどんな状況

なのかに気付く。

「いやっ、それ以前に、なんであんたがここにいる の・・・っていうか、あん

た、さっき私のこと・・・」

“ゲッ!”

 雄也がどんな反応をしているのかと一瞬焦って確認 する鳴子を見て、仁太は

先程とんでもないミスを犯してしまったことに気付 く。

「階堂、頼むっ!ちょっと来てくれ!」

 仁太は鳴子を残し、自分が先程隠れていた大木まで 雄也を引っ張る。

 

「先ず、デートの邪魔してすまなかった!断じてわざ とじゃなくて、偶然通り

かかっただけで・・・」

「あ、ああ・・・」

 何もかもが急で、事情を理解するのに少し手間がか かる雄也。この仁太の発

言は普通に考えるなら信じ難いが、これも春菜と亜紀 が計画したことなら、
彼も無意識に巻き込まれた、と考えれば筋が通るかもしれない。

「そ、それでさ・・・。さっき俺が叫んだことだけ ど、あれ、俺らがガキの頃

意味もわからずに付けちまった仇名で・・・頼 むっ!!!」

 仁太はそう言うと両手を合わせて雄也の前に大きく 頭を下げる。

「この通りだから、この仇名のことは、特に学校の連 中の前では、口が裂けて

も言わないでくれ!!!」

“じんたん・・・!”

 言うまでもなく二人の会話が気になって、木の反対 側でそれを聞いている鳴

子だが、仁太がこんな状況でも自分ではなく彼女のこ とを気に掛けていること

に、純粋にときめかずにはいられない。雄也の方も、 そんな仁太を見詰めて、

様々な事柄が頭を横切る。彼は、先程の状況であんな 風に出てきたら自身を極

めて不利な立場へ置くことを承知している筈なのに、 落ちてくる枝の危険性を

感じて構わず飛び出したこと。そして昨年、鳴子に関 する例の良からぬ噂が広

まったときも、授業中“俺を見ろ!”なんて立ち上 がって大恥をかいてまで、

彼女を庇った一件。雄也は、悲しいながらも気持ち良 く認められる現状に納得

するように笑顔を見せ、仁太の肩を軽く叩く。

「負けたよ!」

「はあ?」

 自身より幾分か小柄で、学内でも欠席が多く嘗ては 引き籠りと言われたわけ

だから決して女子たちの注目の的とは言えないだろう し、増して現在は膝から

顎まで泥塗れ故に外見が良いかも判断できない筈なの に、恐ろしいほど恰好良

く見えてしまう仁太に対し、優等生ではないけれどあ る程度評判が良いという

自信は持っている自分は、どう頑張っても絶対に敵わ ないことを実感し、彼に

惹かれる鳴子の気持ちを大いに理解した。

「宿海、お前、ほんと大した奴だな!完全に俺の負け だよ!今後宜しくな!」

「え?ああ・・・」

 恥ずかしくもあり不思議そうな顔をで返答する仁太 から、一旦鳴子の方へ戻

る雄也。

「安城!さっきは、はっきり言ってくれてありがと う!この件は、すまなかっ

たな!俺、また新しい恋を、探してみるよ!」

 雄也はそう言うと、以前のような爽やかな笑顔で手 を振り、仁太と鳴子を残

して走り去った。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

「取り敢えず、身体拭いたら?」

 雄也が去った後、鳴子は、これまたいつぞや一件の 如く仁太にハンカチを差

し伸べる。

「あ、ワリィな!」

「ねえ、ほんとなんでここにいるの?」

 十中八九春菜たちが仕組んだことだろう、とは鳴子 も思っていたが、こうな

ってしまった以上、仁太がどう答えるのか、雄也との 会話をどこまで聞かれた

のか、はっきりしなければならない。

「べ、別に・・・いや、デートの邪魔してほんと悪 かった!」

「いやっ、だからデートじゃないってば!」

 鳴子は両手首を上に曲げたまま握った拳を、左右斜 め下へ突き出して叫ぶと

一旦落ち着いてから少し目を閉じてやや斜めに仁太を 見ながら続ける。

「フったの、聞いたでしょ?」

「え?いや、階堂が“他の恋を探す”なんて言って 帰ったから、フられたのは

わかったけど、その前に何話してたのかはマジで聞い てねえから!これだけは

信じて欲しい!」

 その真剣な仁太の目に、嘘はない筈だ。鳴子は納得 し、少し赤くも優しい笑

顔になる。

「あのさ・・・ありがと!」

「ん?」

「枝から私を守ろうとした」

「あ、結局、元々当たらない所に落ちたから、俺が無 駄に汚れただけだけどな・・・」

 自分の服の悲惨な状況を見て、呆れて笑う仁太だ が、同時に、鳴子の素直な

感謝の言葉には心にほんのり刺激を受け、自分の恰好 から彼女の恰好の方へ視

線が移ると、思わず口に出した。

「その服・・・まあまあ、似合ってンじゃん・・・」

「えっ?!」

 恋愛意識はまだ怖い筈の仁太。しかし、幼馴染であ ることが少しばかり助け

となって、こうしたことを言えるようにしてくれるの だろう。鳴子は真っ赤な

顔で、“ありがとう”と返す。二人は正午の日が照ら す中、林から“ミューズの

森通り”へ出た。

「ねっ、じんたん、この際だから、めんまの為に、二 人でミューズアロー鳴ら

さない?」

「え?」

「ほら、あれができたのって、めんまが、いなくなっ た頃でしょ?だから、最

初はなんか嫌らしく思ってた。でも今は、超平和バス ターズがまた仲良しに戻

ったから、それを強調する為にも、めんまに想いを届 けようよ!」

「そうか・・・それも、そうだよな!めんまもきっと 喜ぶ!」

 お互いに微笑む二人。最後の仁太の発言を深読みし ようとすれば、彼が鳴子

と恋人同士になるのを芽衣子も祝福してくれるだろ う、とも捉えられるが、今

はまだ、そんなことは考えなくて良い。今日は、二人 を、そして集と知利子と

鉄道を、再び仲良くさせてくれた芽衣子への素直な愛 の気持ちを響かせ、そし

ていつか、願わくば、自分たちが『旅立ちの日に』を 歌うことになる卒業式の

頃に、芽衣子の導きがあったお蔭で実った仁太との愛 をも共に、彼女に感謝で

きたらいいな、と思いながら、大好きな彼と共に、 『旅立ちの丘』を目指す鳴子

だった。

 二人は気付かないが、天使の衣のような白い雲に囲 まれた中で輝く太陽は、

この、ゆっくり、少しずつ恋愛が育成されていく二人 の姿を天から優しく、暖

かく見守る芽衣子のようにも見えた。

 

 

 

〜おわり〜

 

 

 

*あとがき*

 

・「あの花」じんあなCP小説「気付かされるとき」、最後まで読んで頂きあり がとうござい

ました(^^)今回の作品は、「ハピネスチャージプリキュア」の第32話、あなるの戸松さんが

演じる氷川いおなが告白される話を基に浮かびまし た。本当は恋愛の駆け引きみたいなの

は好きじゃないのですが、脈が無いように見えた相手 が、ライバル出現時に何か感じ出す

のはあると思うので、そこから、あなるに告白する男 子のネタを使いました。問題の男子

は上記のプリキュアの話に出てくる海藤裕哉君(名前 の漢字は敢えて全部別のものにした)

で、容姿等もそのままを想定しています。勿論、あな るはじんたんを嫉妬させる為に誰か

と付き合うような娘ではないので、春菜と亜紀が裏で 色々企む必要がありました(笑)。

・それで、デートもどきの場所は、プリキュアでの動 物園から「秩父ミューズパーク」へ

変更したものの、実は行ったことがないので、ネット で必至に調べながら話の内容が浮か

んできて、完成にだいぶ時間がかかりました;(←ぐ るりん号も、ミューズアローも、更に

は「旅立ちの日に」が秩父で生まれたことについて も、今回初めて知りました/汗)

・冒頭の、セコイヤチョコCMのパロディは初めからやろうと思っていたのですが、 「ミュ

ーズの泉」でのラブライブネタは、単に話が飛び過ぎ ない為の「間」として入れざるを得

なかった(笑)。

・ミューズパークで鳴子が着ているのは、ハピプリ32話でいおなが着ていたあの服と同じ

ものです。胸の膨らみがかなり違うと思われるが (笑)、どことなくめんまを思わせる所も

あるし、“ギャル”にしては清楚なイメージがあっ て、ハピプリのこの話を元ネタにすると

決めたときから、絶対あなるにもあれ着せたいと思い ましたw髪飾りだけ、あの時のいお

なのハートマークだと絶対“誘ってる”と勘違いされ るので、あなるの星型のものにして

いますw

・全体としてはやっぱり、「あなるみたいなかわいい 娘、いい加減気付かなきゃ他の男に取

られるぞ!」っていうじんたんへの思いが自分のどこ かにありますw勿論あなるは一途な

ので他の男には走りませんけどw、今回、あなるに他 の男が真面目にアプローチしようと

している中、じんたんが彼女を意識し始める上で彼の 微妙な心の動きも、少しでも描写で

きたら、と思いました。←結局、この話の階堂君と同 様に自分も、じんたんには敵わない

って実感させられますね(笑)

・尚、元ネタであるハピプリ32話を本放送でやった頃はハンガリーにいましたし、 戻って

からも色々多忙だったので予定よりアップがだいぶ遅 れ、結局自分があの花ハマった1

年(1110日)にも間に合わなかったものの、楽しんで頂けたな ら幸いです。。。

冬コミ原稿へ本格的に取り組む前に、どうしてもこれ は挙げたかった・・・。

・それでは改めて、読んで頂き感謝しております(^^)

 

クリシュ

2014 Nov. 14.

 

 

 

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