無期懲役判決リスト 2013年度





 2013年に地裁、高裁、最高裁で無期懲役の判決が出た事件のリストです。目的は死刑判決との差を見るためです。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントなどでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。


地裁判決(うち求刑死刑)
高裁判決(うち求刑死刑)
最高裁判決(うち求刑死刑)
24(1)
20(3)+6
22(2)

 司法統計年報によると、一審:24件(控訴後取り下げ1件)、控訴審27件(棄却24件、破棄自判3件。上告17件、上告取り下げ1件)、上告審23件。


【2013年度の無期懲役判決】

氏 名
伊藤嘉信(30)
逮 捕
 2006年5月7日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、殺人未遂、住居侵入、銃刀法違反
事件概要
 山形県飯豊(いいで)町の会社員伊藤嘉信(ひろのぶ)被告(当時24)は、カメラ店経営者の長男から小学4〜5年の時、性的いじめを受けた。その時は嫌と思うだけだったが、中学生になって意味がわかり、怒りと悔しさがこみ上げるようになった。数年前に実家に戻り、我慢ができなくなり殺害を決意。
 2006年5月7日午前3時45分頃、自宅から約30mのカメラ店経営者宅に無施錠の玄関から模造刀(刃渡り約43センチ)を持って侵入。寝ていた経営者の男性(当時60)と長男(当時27)を刃物で刺したり素手で殴ったりして殺害。男性の妻で看護師の女性(当時54)も頭や腰などに重傷を負った。女性は襲われた後、自力で逃げ出して隣家に駆け込み、110番通報をした。伊藤被告は逃走したが、同日夜、県警に逮捕された。
 当時、男性宅には母(当時93)もいたが別の部屋にいて無事だった。長男は結婚を控え、山形市内の自宅から帰省中だった。
裁判所
 仙台高裁 飯渕進裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2013年1月15日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2008年10月30日の控訴審初公判で、検察側は、一審判決で伊藤被告が幼少期に長男から受けた性的暴行が犯行動機と認定されたことについて「被告の反社会的な人格が原因で、仕事や女性との関係などがうまくいかないことを、性的暴行に責任転嫁した筋違いの怨恨が動機」と指摘。一審が認定した「PTSDの疑いのある症状」もなかったと主張し、「PTSDではない」とする精神科医や心理学者の鑑定結果を示した。そして被告人には死刑を適用せざる得ない」などとして一審判決の破棄を求めた。た。一方弁護側は、PTSDを肯定し、性的暴行が原因と指摘。「被告はPTSDにより是非を弁別する能力は失われていたか低下しており、心神喪失、少なくとも心神耗弱が認められるべき」として、無罪または刑の減軽を主張した。
 12月22日の公判で、被告の母親への証人尋問で、犯行の背景や動機とされる「被告が幼少時に受けた性的暴行」の存在を示唆した。母親は伊藤被告が小学4年当時、殺害された長男から少なくとも3回、電話で呼び出されたと証言。「最初の呼び出し後に帰宅した際、泣きながら水道水で口をゆすいでいた。その後、明るく活発だった息子が家にいるようになった」と話した。
 2009年1月15日の公判における被告人質問で伊藤被告は、幼少期に受けた性的暴行の影響で今も体に変調を来すと供述した。
 2月18日の公判で志田洋裁判長は、伊藤被告の精神鑑定の実施を検討する意向を示し、検察、弁護側の双方に賛否の意見を出すよう要請した。5月15日の公判で、志田裁判長は職権で精神鑑定することを決めた。鑑定内容は▽嘉信被告の犯行時と現在の精神状態▽少年期の性的体験が犯行に及ぼした影響の有無とその程度−の2点。宮城県立精神医療センターの小高晃院長と同県精神保健福祉センターの小野善郎医師の2人が共同鑑定する。
 2010年2月19日の公判で精神鑑定の結果が報告され、嘉信被告は犯行当時、少年期に長男から受けたとされる性的暴行によって「心的外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患していた」と認定し、犯行の基本的な要因とした。志田洋裁判長は鑑定書を証拠採用した。鑑定結果によると、嘉信被告は犯行時、PTSDが認められ、現在も継続しているとした。発症したのは中学生ごろ。東京都内の専門学校を卒業して帰郷した02年以降、症状が悪化するようになったとしている。実際に暴行を受けたのは小学4年なのに発症するまで時間がかかったのは「自分が受けた性的暴行の意味を理解したのが中学生ごろだったから」とした。さらに鑑定書では「犯行の基本的要因は少年期に受けた性的暴行」と認定した。その上で、自分が受けた行為の意味を認識してから暴行を受けたことがトラウマ(心的外傷)となり、恐怖と不安が次第に増幅。自尊心を傷つけた相手を排除しようとするなどの症状を抑える限界点を超えてしまったと説明した。証人尋問で嘉信被告を鑑定した医師は「PTSDが発症するのが暴行を受けた直後でなく、今回のように数年たってからということは一般的にあり得るのか」とする裁判官の質問に対し、幼児期に受けた性的虐待の被害者などの例を挙げ「思春期になって発症する例はある」と述べた。
 6月9日の公判で、検察側は再鑑定を要求。7月28日の公判で飯淵進裁判長は、再び精神鑑定を実施することを決めた。
 2012年7月18日の公判で鑑定結果が報告され、「(嘉信被告が長男から受けた)性被害体験のフラッシュバックに続く激しい怒りの感情の爆発から引き起こされた」とし、「犯行時の被告は思考と行動が伴わないような状態(解離状態)だった」と結論付けた。この中で「(PTSDの罹患は)責任能力を減免するようなものではない」としながらも、「(量刑を決める)情状面での酌量を認める余地はあり得る」などとしている。鑑定を行った東京都の精神科医は証人尋問で「犯行時の『解離状態』はPTSDに随伴するものと理解できる。PTSDは怒りの制御に影響する。犯行の主な要因でないが、間接的には影響があったと言える」と述べた。検察側は「犯行時の被告はPTSDではなく、犯行は反社会的人格障害によるもの」と一貫して主張していたが、この点について精神科医は尋問で、「(反社会的人格障害とは)違う」と明確に否定した。
 9月18日の公判における被告人質問で伊藤嘉信被告は、写経をするなどして謝罪の念を深めていると語った。犯行動機とされる少年時に長男から受けた性的被害について「被害を受けたことに向き合い、受け止めることができるようになった。長男への憎しみやわだかまりはまだあるが、許すことが償いになると思う」と述べた。
 事件で大けがをした長男の母と弟の証人尋問では、2人とも心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされていることを明かし、母は「髪を振り乱し、襲いかかってきた被告は獣のようでした。(被告の)幼いころを知るわたしはつらいですが、死をもって償ってもらう以外、方法が見つかりません」と声を震わせた。弟は「極刑を望む。もし被告がPTSDで責任能力なしなどと判決が出れば、司法が(性的被害の)報復行為を認めると感じてしまう」と述べた。
 10月25日の最終弁論で検察側は「PTSD罹患は責任能力に影響を与えていない。鑑定結果からも、PTSDが犯行の直接の原因だとは結論づけられなかった。生来の反社会的な性格による犯行で、計画性もあった。矯正の余地は乏しい」と主張。「反省はなく、『殺意はなかった』と不合理な弁解を続けており、謝罪も通り一遍のもの。犯行態様は極めて悪質で、死刑に処することは誠にやむを得ない」と結論付けた。一方、弁護側は2度の精神鑑定でPTSDの罹患が認められ検察側が主張する「反社会的人格障害」が明確に否定された点を強調。性被害のフラッシュバックが引き金となった突発的な犯行で、怒りの制御が完全にできなくなった心神耗弱状態で責任能力は限定的だったと主張し、「被告人は生きて償うべき」と有期懲役を求めた。
 判決は2回の精神鑑定結果を基に、伊藤被告が小学4年のころ何度も性的暴行を受け、その意味が中学生になって分かりPTSDを発症したと認定。「PTSDの影響を考えれば、明らかな逆恨みに基づく犯行とは認めがたい。動機には酌むべき余地がある」とした。検察側が控訴趣意書で強調した「反社会的人格障害ゆえの犯行」という主張は、否定した。しかし犯行自体は、事前に刃物を用意するなど合理的に行動していることなどから、「PTSDが犯行に与えた影響は間接的かつ限定的で事件時は完全責任能力があった。刑事責任は重大」と判断した。
備 考
 殺害された男性らの遺族は、伊藤嘉信被告と両親を相手取り、約3億4000万円の損害賠償を求めた。2009年1月27日、山形地裁(片瀬敏寿裁判長)は、伊藤嘉信被告に約2億7360万円の支払いを命じた一方、「刑事事件の公判廷において、両親にも責任があることを認める趣旨の証言を行ったからといって、嘉信被告の損害賠償債務について引き受けの意思表示をしたものとまでは解せない」として嘉信被告の両親に対する請求は棄却した。被告側は「両親が、農地を売却して得た600万円を被害者に受け取ってもらいたいとしている」と話しており、控訴はしない方針。
 2007年5月23日、山形地裁で求刑死刑に対し一審無期懲役判決。被告側は上告した。検察側は上告せず。2013年5月10日、被告側上告取り下げ、確定。

氏 名
小林繁(68)
逮 捕
 2012年4月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火
事件概要
 川口市のタクシー運転手、小林繁被告は2012年1月6日午後9時半ごろ、川口市の義母(当時89)方1階居間にガソリンをまいて火を付け、木造2階建て住宅約90平方メートルを全焼させて義母に重いやけどを負わせ、約1カ月後の2月7日に多臓器不全で死亡させた。
 4月23日、埼玉県警は小林繁を殺人と現住建造物等放火容疑で逮捕した。出火後に義母が自力で逃げた際、「石油ストーブでやられた」という趣旨の話をしていたといい、小林被告が火災前に訪れていた内容を話したという。県警は失火の可能性がないことや、小林被告に出火当時のアリバイがないことから逮捕に踏み切ったとしている。
 小林被告の妻は、被害者の長女(2011年6月に病死)。3人は2009年8月から2011年5月まで、義母宅で同居していた。
裁判所
 さいたま地裁 井口修裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年1月30日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年1月21日の初公判で、小林被告は起訴内容を「全面的に間違っています」と否認した。
 検察側は冒頭陳述で、病死した妻の遺産相続や生命保険金などについて、小林被告が義母に不満を募らせ、「袋に入ったガソリンを被害者に投げつけ、ストーブの火に引火させた」と述べた。弁護側は、「(小林被告は)自宅にあって処理に困ったガソリンを、義母の家の庭に捨てようと思った。義母を殺そうとも家に放火しようとも思っていなかった」などと反論。遺産相続の協議中に「怒っていた被害者が被告にガソリンを投げつけ、引火させた」と主張した。
 25日の論告で検察側は、「生きている被害者を焼き殺そうとしたのは非常に残忍」などとして、無期懲役を求刑した。小林被告は、「私はやっておりません」と訴えた。
 判決で井口裁判長は、「被害者は火災直後の切迫した状況やその後も『小林がガソリンをまき、火を付けて逃げた』と一貫した説明をしている。うそや思い違いの可能性は低い」と指摘した。そして妻の死亡保険金をめぐり義母に不満を持っていた小林被告が、火災保険金などを狙って犯行に及んだと指摘。「不合理な弁解に終始し、反省の態度は見当たらない。あらかじめ用意したガソリンを持参するなど計画的。動機に酌量の余地はない」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2014年1月24日、東京高裁で被告側控訴棄却。2014年8月27日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
安藤克巳(61)
逮 捕
 2012年6月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、銃刀法違反、窃盗、詐欺
事件概要
 岐阜県瑞浪市の建築設計事務所経営、安藤克巳被告は2012年5月7日午後7時頃、瑞浪市役所駐車場に止めていた、知人で幼稚園教諭の女性(当時40)車の中で借金を断られて口論となり、女性の胸をナイフで刺して殺害。キャッシュカード2枚を奪い、市役所にあるATMで女性の口座から現金計85万円を引き出した。さらに遺体を同市の山林に女性の車で運んで遺棄した。遺体は5月12日に発見された。
 安藤被告は、建築確認申請の代行業務を主に手掛けていたが、ほとんど唯一の顧客だった同県土岐市の建設業者が4年ほど前に倒産してから仕事がなくなって受注が激減、さらに家族の医療費の負担もあって金銭的に困窮していた。安藤被告は十数年来の知人である女性から1回数十万円単位の金を無心し、総額で約1000万円を借りていた。
 安藤被告は他に2010年10月、高齢者向けマンションの新築計画があるかのように装い、県内の建設会社の男性役員(当時44)から、内装工事受注の手付金名目で80万円の小切手1通をだまし取り、2011年7月6日ごろにも同様に県内の建設会社経営の女性(当時62)から現金100万円をだまし取った。
 県警多治見署捜査本部は6月1日、安藤被告を死体遺棄容疑で逮捕した。6月11日、強盗殺人容疑で再逮捕した。7月4日、詐欺と窃盗容疑で再逮捕した。
裁判所
 岐阜地裁 室橋雅仁裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年2月4日 無期懲役
裁判焦点
 2013年1月28日の初公判で、安藤克巳被告は「殺すつもりはなかった」と殺意を否認した。
 冒頭陳述で検察側は、安藤被告は女性や金融機関に2200万円以上の借金があり、事件当時、所持金は1万円しかなかったと指摘。「安藤被告が女性を殺害して金を奪おうとナイフを用意し、遺体を遺棄した山林で使うための長靴なども準備した」と計画性を指摘。弁護側は断られた場合に脅すためナイフを持っていたとし、「もみ合いの末に誤って刺さった」と傷害致死罪の適用を主張した。
 30日の論告で検察側は察側は「短絡的で悪質極まりない」などとして無期懲役を求刑した。被害者参加制度でこの日意見陳述した女性の父親は「大切な娘を奪った被告は許せない」と死刑を求めた。弁護側は傷害致死罪と窃盗罪の適用を求め、同日結審した。
 判決で室橋雅仁裁判長は「現金を手に入れるためという動機は身勝手で冷酷非道というほかない」と指弾した。また、判決理由で「経済的に逼迫した被告が殺害してでもキャッシュカードを奪おうと被害者を刺した」と殺意を認定し、誤って女性を刺したとの安藤被告の主張について、ナイフが女性の左胸に深さ約9.5cmまで刺さっていることを指摘。「もみ合いの中で誤ってナイフが刺さった」と殺意と計画性を否定する弁護側の主張を「不自然で信用し難い」と指摘した。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
江角一子(62)
逮 捕
 2005年7月6日(窃盗容疑。8月10日、強盗殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、詐欺、詐欺未遂、窃盗、窃盗未遂
事件概要
 名古屋市の民生委員江角一子被告(当時54)は2005年3月22日夜、自らが担当していた名古屋市北区の市営住宅に住む1人暮らしの無職女性(当時83)に睡眠薬を飲ませ、さらに首を絞めて殺害。翌日、女性のキャッシュカードでATMから現金53000円を引き出した。江角被告は2005年2月にも、女性の孫名義の郵便貯金通帳で現金を引き出そうとしていた。
 遺体は翌日発見され、当初は病死と判断されたが、カードから現金が引き出されていたことが判明したため詳しく遺体を調べたところ、首に細い紐で絞められた後があったことから強盗殺人事件として捜査が始まった。
 ATMの防犯ビデオの映像から愛知県警は江角被告に任意の事情聴取を続けたが、江角被告は被害者から頼まれて現金を引き出しただけであり、カードと現金は葬儀後に返したと容疑を否認した。愛知県警は7月6日、窃盗容疑で江角被告を逮捕。さらに8月10日に強盗殺人容疑で再逮捕した。
 江角被告は被害者の近所に住んでおり、2004年まで交通指導員を22年間務めていたことから推薦され、民生委員に委嘱された。江角被告と夫は消費者金融に併せて約840万円の借金があって返済に窮していた。  江角被告は他に2003年11月、交通指導員の忘年会で同僚女性2人の財布(現金37000円)を盗んだ窃盗、2005年2月2日に勤務先の同僚女性のクレジットカードで約47000円分の買い物をした詐欺および詐欺未遂でも起訴された。
裁判所
 最高裁第三小法廷 田原睦夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年2月5日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 江角被告は一・二審で無罪を主張していた。
備 考
 2009年9月7日、名古屋地裁で求刑通り一審無期懲役判決。2011年2月23日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
北村庸(25)
逮 捕
 2012年2月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂
事件概要
 群馬県みどり市の会社員北村庸(いさお)被告は2012年2月19日午後7時半ごろ、借金返済を免れる目的でみどり市に住む親子宅を訪問。午後8時〜10時ごろ、敷地内の竹やぶで母親(当時85)の首をアンテナコードで絞め、ナイフで刺して殺害。また同10時ごろ、同宅2階で長女(当時47)の首をナイフで刺して現金120万円を奪った。
 北村被告は実家の電器店の顧客だった親子宅に家電製品の設置などで出入り。2011年8月ごろから、「自分で会社を興す費用にあてる」などとうそを言って母親から約100万円、長女から約300万円を借り、パチスロなどの遊興費や飲食費にあてたり友人に金を貸したりしていた。
 北村被告が逃走後、長女が110番通報。翌日、県警捜査1課が殺人未遂容疑で北村被告を逮捕した。
裁判所
 東京高裁 村瀬均裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年2月7日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 判決で村瀬裁判長は、「刑事責任は極めて重く、一審判決後にさらに反省を深めたとしても判断は変わらない」と述べ、量刑不当の主張を退けた。
備 考
 県警は北村被告の犯行を手助けしたとして2011年3月17日、友人の男性を強盗殺人ほう助容疑で逮捕し、前橋地検に送検。27日、処分保留で釈放した。県警は逮捕の事実を公表せず、裁判員裁判で明らかになった。県警は逮捕時に発表しなかったことについて「当時は他に関与が疑われる人物がおり、逃亡を防ぐため」と説明している。男性はその後、別の窃盗容疑で逮捕、起訴された。
 2012年9月11日、前橋地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
小谷野裕義(40)
逮 捕
 2009年8月13日(別の事件で服役中)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、営利誘拐、逮捕監禁他
事件概要
 【仙台市男性強盗殺人事件】
 小谷野裕義被告は笹本智之受刑囚、菅田伸也被告と共謀。2004年9月3日夕方、東京都の井の頭公園付近で、拳銃の取引をするなどと偽って誘い出した仙台市青葉区の風俗店経営の男性(当時30)を車に乗せ、顔に粘着テープを巻き付け両手に手錠をかけて監禁。茨城県内の貸別荘を経由し、同月4日午前10時半ごろに仙台市太白区秋保町の山林に着くまで連れ回し、11時半頃に男性の首をロープで絞め、頭をバールで殴るなどして殺害。死体を遺棄した後、同日夜から6日ごろまでの間、男性の自宅金庫から現金約5000万円と預金通帳数冊を奪った。川本仁哲被告と砂田信宏被告は東京都内から茨城県の貸別荘に向かう乗用車内や別荘での暴行に加わり、更に現金60万円を奪った。鈴木浩人被告も都内から茨城県、更に仙台市の山林までの監禁に共謀した。
 笹本被告は男性と高校時代からの友人で、男性の経営する貸金業を手伝っていた。笹本被告は「子分のように使われた」と供述しており、給料が少ないことに不満をもち、知人らとともに金を奪うことを計画した。

[逮捕に至る経緯]  笹本智之被告は2006年10月16日に「仙台での男性暴行事件」(過去の事件参照)で逮捕監禁容疑で逮捕された後、取り調べの中で仙台市の不明男性の名前を挙げ、「男性を殺害し、(仙台市太白区の)秋保の山林に埋めた。金庫の鍵を奪って金を盗んだ」と暴露。さらに2007年6月25日に開かれた西田清被告の公判で、証人として出廷した弟の笹本和良被告(当時)が弁護人の尋問で「兄から人を殺したことがある。○○(男性)の件で」との質問を肯定。さらに家へ3000万円を持って戻ってきたと答えた。宮城県警は、笹本被告らの供述は信憑性が高いと判断。2006年11月に犯行グループの1人が指し示した場所を掘り返した、男性のものとみられる毛髪などを採取したが、他には何も見つからなかった。同じ場所は2009年6月にも再度掘り返しているが、同様の結果であった。しかし4月下旬から5月上旬、笹本被告らが男性を連れ回したという東京都内の繁華街や茨城県内の貸別荘などに捜査員を派遣し、「供述だけではない証拠が得られた」(捜査幹部)として、遺体が未発見のまま営利誘拐と逮捕監禁容疑での逮捕に踏み切る。
 宮城県警は2009年8月13日、営利誘拐と逮捕監禁容疑で受刑中の笹本智之被告と小谷野裕義被告、菅田伸也被告、川本仁哲被告、砂田信宏被告の計5人を逮捕。仙台地検は31日、5人を同容疑で起訴した。
 10月26日、宮城県警は笹本被告、小谷野被告、菅田被告、川本被告の4人を強盗殺人容疑で再逮捕した(死体遺棄はすでに時効)。仙台市青葉区の会社役員鈴木浩人被告を新たに営利誘拐と逮捕監禁容疑で逮捕した。
 仙台地検は11月16日、笹本被告、小谷野被告、菅田被告を強盗殺人容疑で追起訴。川本被告と砂田被告を強盗容疑で追起訴。鈴木被告を逮捕監禁容疑で起訴した。
 さらに笹本被告は「1999年にも東京都内の暴力団組員の男を殺した」と供述。2009年7月、宮城県警は仙台市太白区内の山林を捜索。白骨化した暴力団組員男性の遺体を発見した。2010年2月10日、宮城県警は笹本智之被告と菅田伸也被告を殺人容疑で再逮捕。当時少年被告と山田純也被告を殺人容疑で逮捕した。
 仙台地検は3月3日、笹本被告と菅田被告、当時少年被告を殺人容疑で起訴した。山田純也被告は「死体遺棄のみの関与だった」として処分保留で釈放した。死体遺棄罪は公訴時効(3年)を迎えている。
 さらに笹本智之被告は「菅田被告が自殺を装って自衛官を殺害し、保険金を手に入れている」と話したことから、宮城県警が捜査。3月3日、保険金殺人事件で菅田伸也被告、山田純也被告、鈴木浩人被告、佐々木誠被告、高橋まゆみ被告の5人が逮捕された。仙台地検は3月25日、5人を殺害の容疑で起訴した。

 上記らの事件は、笹本智之被告が1994年頃に結成した犯罪組織「BTK」のメンバーが関与している。高校時代の同級生でマフィアにあこがれた男性(2004年9月殺害)と笹本被告の2人で結成。組織名は「殺すために生まれた(Born To Kill)」から名付け、2人がリーダー格だった。ナンバースリーだった菅田伸也被告も高校生のころに加入。組織は拡大しながら犯罪を繰り返した。
裁判所
 仙台地裁 鈴木信行裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年2月8日 無期懲役
裁判焦点
 最初の一審で仙台地裁は共謀を否定し懲役15年判決が言い渡したが、仙台高裁は「(共謀の機会を巡る)検察側主張を正しく把握しなかった」などと破棄差し戻し判決を出し、最高裁で確定したため、全国で初めて裁判員裁判がやり直しになった。差し戻し審では新たに裁判員を選任し、審理が行われた。
 2013年1月29日の初公判で、小谷野被告は「誘拐は間違いないが(共犯者と)殺害を事前に話し合っておらず、暗黙のうちに意思を通じ合ってもいない。殺害行為もしていない」と強盗殺人罪を改めて否認した。冒頭陳述で検察側は「殺害現場到着前も後も、被告は共犯者と殺害について話し合っていたか、暗黙のうちに意思を通じ合っていた」と主張。弁護側は「被告には被害者を殺す理由がない」などと反論した。
 冒頭陳述後、新たに選ばれた裁判員に一度目の裁判員裁判の審理内容を理解してもらうため、公判の証人尋問などを録画した録画したDVDが、31日まで3日間計8時間上映された。
 30日の第2回公判で主犯の笹本智之受刑囚が証人出廷し、「殺害前に、小谷野被告から『合図したらやれよ』と言われていた」などと述べ、事前に殺害計画があったとする内容の証言をした。
 2月1日の第4回公判で、小谷野被告は被告人質問で殺害の共謀を改めて否定した。
 4日の論告で検察側は、笹本受刑者の証言は信用できるとし、「被害者を殺害することについて意思を通じ合っていた」として、強盗殺人罪の成立を主張した。一方、弁護側は最終弁論で「殺害について話し合っておらず、殺害行為をしていない」として、強盗致死罪にとどまると訴えた。弁護側は最終弁論で、事前の共謀は否定した1度目の一審判決(懲役15年)を引用しようとしたが、検察側が「破棄されている」と異議を唱え、鈴木裁判長は引用を認めなかった。
 判決で鈴木裁判長は、争点となった共謀について、笹本智之受刑囚の証言を基に「犯行前の話し合い時点で、実行役と殺害に関し共謀があった。被告は具体的な犯行計画を立てるなどしている」と事前共謀を認めた。そして「不可欠な役割を果たし、殺害の実行犯と同等と言える」と指摘した。
過去の事件
【仙台での男性暴行事件】
 仙台市青葉区の笹本智之被告は、青葉区に住む知人の無職男性(当時26)がギャンブルで収入を得ていると聞き、因縁を付けて金を奪おうと計画し、栃木県足利市の無職西田清被告、東京都中野区の暴力団組員でビル管理業小谷野裕義被告、亘理町の無職渡辺努被告と共謀。2006年8月30日午後4時頃、男性を自宅から尾行し、コンビニエンスストアの駐車場で男性の車に乗り込んで「勝手に人のシマを荒らすな」などと脅してそのまま車内に監禁。男性に車を運転させ、同区の市葛岡墓園に連れ出して「お前を埋めてしまってもいいんだ」などと脅して殴るけるの暴行を加えた。その後約3時間にわたって男性を車で連れ回して暴行を加えた後、再び男性の自宅に戻って現金約100万円や財布、指輪など計9点(時価145000円)を奪った。

【群馬県での男女強盗殺人未遂事件】
 西田清被告は、群馬県太田市に住む縫製業の男性が副業で営んでいた金融業を2005年12月頃から手伝い、取立などを担当していたが、トラブルとなっていた。そこで西田被告は、笹本智之被告、小谷野裕義被告、渡辺努被告、笹本智之被告の弟で無職笹本和良被告と強盗を計画。西田被告を除く4人は2006年9月18日夜、男性方に西田被告が持っていた合い鍵を使って侵入し待ち伏せ。帰宅した男性(当時56)と知人女性(当時55)を殺害しようと金属バットで殴り、男性に重傷を負わせ、女性を重体に陥れ、現金約285万円などを奪った。

[両事件の逮捕経緯]
 群馬県警は9月19日、西田被告を別件の脅迫容疑で逮捕。10月9日、前橋地裁は西田被告を処分保留で釈放したが、そのまま仙台まで移送され、同日に宮城県警が西田被告を仙台市の逮捕監禁と強盗容疑で逮捕。16日までに笹本被告ら4人を同容疑で逮捕した(1名は後に不起訴と思われる)。11月21日、群馬県警が太田市の事件で5人を強盗殺人未遂と住居侵入容疑で逮捕した。太田市の男性も12月4日、貸金業法違反(無登録)容疑で逮捕されている。

[両事件の判決]
 西田清被告は両事件で起訴。2007年8月30日、前橋地裁(久我泰博裁判長)は懲役23年(求刑懲役27年)を言い渡した。控訴せず確定。
 小谷野裕義被告、笹本智之被告、渡辺努被告は両事件で起訴。笹本和良被告は群馬県での事件で起訴。2007年10月9日、前橋地裁(久我泰博裁判長)は「現場指揮など主要な役割を果たした」として小谷野被告に懲役24年(求刑懲役27年)を、笹本智之被告に「凄惨な犯行様態で最も非難を受けるべき」として懲役23年(求刑懲役25年)を、渡辺被告に懲役11年(求刑懲役13年)を、笹本和良被告に懲役9年(求刑懲役13年)を言い渡した。小谷野裕義被告は控訴するも棄却し、その後確定。他は控訴せず確定。
共犯者の裁判状況
 仙台市男性強盗殺人事件で営利誘拐と逮捕監禁、強盗罪に問われた東京都杉並区の会社員川本仁哲被告は2010年2月24日、仙台地裁で懲役5年(求刑懲役10年)を言い渡された。川本被告は報酬目的で犯行に加わったが、殺害計画までは知らされていなかったとされた。卯木裁判長は「本件が(男性が殺された)強盗殺人の計画の一部であることは量刑上考慮できない」と述べた。7月20日、仙台高裁(飯渕進裁判長)は一審判決を支持し、被告側控訴を棄却した。
 仙台市男性強盗殺人事件で営利誘拐と逮捕監禁、強盗罪に問われた広島市の無職砂田信宏被告は2010年6月3日、仙台地裁で懲役7年(求刑懲役10年)を言い渡された。鈴木信行裁判長は「計画的で極めて悪質な犯行」と述べた。
 亘理町自衛官保険金殺人事件における殺人罪と、仙台市男性強盗殺人事件における逮捕監禁罪に問われた仙台市の無職鈴木浩人被告は2010年7月15日、仙台地裁で懲役17年(求刑同)を言い渡された。鈴木信行裁判長は殺人について、男性の首にロープをかけやすいように体を持ち上げたり、足を持って体重がかかるようにしたなどとして、「(鈴木被告の)果たした役割は必要不可欠。報酬として200万円から300万円の現金と中古車を得た」と指摘。弁護側の「従属的立場を重視すべきだ」との主張については「報酬を得ており、報酬目当てで参加したことは否定できない」と退けた。そして「計画性の高さや生きたまま首をつる残忍さから、保険金目的の殺人の中でも悪質」と述べた。検察側は、共犯とされた実行役4人の中では従属的だったことなどを理由に求刑を懲役17年としていた。12月27日、仙台高裁(飯渕進裁判長)で被告側控訴棄却。
 仙台市男性強盗殺人事件における強盗殺人罪他と東京都暴力団組員殺人事件で殺人罪に問われた笹本智之被告は、二つの事件の間に確定判決があったため併合されず、2010年8月27日、仙台地裁で求刑通り無期懲役+懲役15年判決が言い渡された。鈴木信行裁判長は自首の成立を認めるとともに、更正の可能性が残されていると述べた。控訴せず確定。
 東京都暴力団組員殺人事件で殺人罪に問われた当時少年被告は2011年9月1日、仙台地裁で求刑懲役13年に対し、無罪判決。鈴木信行裁判長は「被告の関与を裏付ける客観的証拠がない。(被告との共謀を認めた)笹本受刑者の証言には不自然な点が相当あり、信用性が弱い」と判断した。2012年9月27日、仙台高裁(飯渕進裁判長)は検察側控訴を棄却した。上告せず、無罪確定。
 東京都暴力団組員殺人事件で殺人罪他に、仙台市男性強盗殺人事件で強盗殺人罪他に、亘理町自衛官保険金殺人事件で殺人罪他に問われた菅田伸也被告は区分審理され、東京都暴力団組員殺人事件では無罪、仙台市男性強盗殺人事件では強盗殺人幇助が、亘理町自衛官保険金殺人事件では有罪が言い渡され、2011年12月20日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)で求刑通り無期懲役判決が言い渡された。2013年4月25日、仙台高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
備 考
 有期懲役判決が言い渡された場合、群馬県での男女強盗殺人未遂事件などで既に判決が確定している懲役24年に量刑が加算され、有期刑上限である懲役30年の刑が科される。
 2010年10月27日、仙台地裁(川本清巌裁判長)で求刑無期懲役に対し、一審懲役15年判決。2011年7月19日、仙台高裁(飯渕進裁判長)で一審破棄、差し戻し。2012年3月5日、最高裁第二小法廷(須藤正彦裁判長)で被告側上告棄却、二審差し戻し判決が確定。裁判員制度が施行されて以降、裁判員裁判のやり直しは初めて。
 被告側は控訴した。2014年2月27日、仙台高裁で一審破棄、懲役15年判決。被告側上告するも、取り下げ確定。

氏 名
西尾一洋(35)
逮 捕
 2011年1月12日
殺害人数
 0名
罪 状
 強盗強姦、強盗強姦未遂、住居侵入他
事件概要
 愛知県江南市の無職西尾一洋被告は、2009年10月から10年12月にかけ、愛知県や岐阜市などで、見ず知らずの女性宅に侵入したり、路上で女性を襲ったりして6人に乱暴して金を奪い、4人に乱暴しようとした。判明分は以下。
  • 2009年10月29日午前3時10分頃、名古屋市内の女性宅に侵入して乱暴し、現金3000円などが入った財布を奪った。
  • 岐阜県内の女性宅への住居侵入。
  • 2010年12月11日午前3時頃、岐阜市内の駐車場で、停車していた同市のアルバイト店員の少女の軽乗用車に助手席から乗り込んで刃物のような物を見せて脅して乱暴したうえ、現金5,000円を奪った。
  • 12月16日午前0時20分頃、羽島市内の路上で、自転車で帰宅途中だった会社員女性にナイフのようなものを突きつけて暴行しようとし、現金約38,000円入りのかばんなどを奪った。
 岐阜北署などが、12月11日の事件容疑で2011年1月12日に逮捕した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 山浦善樹裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月1日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 西尾被告は二審で量刑不当を訴えている。
備 考
 2012年6月12日、岐阜地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2012年11月13日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
山浦亮介(20)
逮 捕
 2012年8月10日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、殺人未遂、住居侵入
事件概要
 長崎県島原市の県立農業大学校畜産学科2年の山浦亮介被告は、同級生の女子学生(当時19)へ一方的に恋愛感情を抱き、2012年8月9日、わいせつ行為をしてとがめられたため、家族や友人にばれるのを恐れて口を封じるしかないと考えた。さらに、同学科助教授の男性(当時54)が翌10日未明に教官室に出勤してきたのを女子学生から相談を受けたと思い込み、発覚することを恐れ殺害を計画。同日日午前4時半ごろ、教官室で助教授に対し、坑内の農機具庫から持ち出したバール(長さ約55cm、重さ1.2kg)で頭などを数回殴り殺害。助教授が管理する鍵を奪って女子寮に侵入し、寝ていた女子学生の首を両手で絞めて殺そうとし、約6か月の障害を負わせた。女子学生は重度の低酸素脳症などで一時入院し、2013年2月時点でも手足などに障害が残っている。
 山浦被告はその後、自ら110番通報。駆けつけた長崎県警島原署員が逮捕した。
裁判所
 長崎地裁 重富朗裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月5日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。起訴事実に争いはなく、量刑が焦点となった。
 2013年2月26日の初公判で、山浦亮介被告は「間違いありません」起訴事実を認めた。
検察側は冒頭陳述で「女子学生は(事件で)障害を負い、19歳にして介護が必要になった」と指摘し、「途中で逃げ切れないと思い自首した。女子学生と助教授に落ち度は無く、結果はあまりにも重大」などと述べた。弁護側は「山浦被告は犯行直後に警察に連絡しており、自首している。被害女性、助教授の遺族に謝罪して反省している」などと情状酌量を求めた。
 28日の論告で検察側は「あまりにも身勝手で理不尽な動機による短絡的な犯行。遺族は極刑を望んでおり、処罰感情は峻烈を極めている」と主張。弁護側は「更生の可能性があり、反省もしている」と述べ、「懲役10〜15年がふさわしい」と主張した。
 判決で重富裁判長は「わいせつ行為の発覚を免れるために、何の落ち度もない被害者らを殺害するという動機は極めて身勝手、自己中心的。人命軽視の態度は甚だしく、残虐で冷酷な犯行」と指摘。「計画的で強固な犯意に基づく犯行。刑事責任は極めて重い。一生をかけて償いをさせることが相当」とした。自首による刑の減軽は「自首が真摯な反省からなされたとは認められず、事案の重大さに比べて捜査に与えた影響は限定的」として退けた。
備 考
 弁護側は控訴した。3月25日付で控訴取り下げ、確定。

氏 名
永井真太郎(36)
逮 捕
 2011年3月11日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄・損壊、住居侵入、窃盗、窃盗未遂、占有離脱物横領
事件概要
 奈良県生駒市の無職、永井真太郎被告は2011年6月21午前10時45分ごろ、不正に入手した鍵を使って同市に住む知人女性(当時60)宅に窃盗目的で侵入し、女性に目撃されたため殺害してカード計5枚を窃取。22日正午頃から夜に掛け、友人計4人に「腐った魚を捨てる」と騙して依頼し、遺体を入れたプラスチックケースを女性宅から当時入居していたアパートの居室へ運び入れた。その後電動ノコギリなどで遺体を切断し、24日早朝、市内の路上でゴミ収集中の業者に、遺体の入ったゴミ袋約5袋を渡した。袋の中身を問われ、「バーベキュー用の肉を腐らせた」と説明した。また遺体の一部は山中などに捨てた。そして6月27日〜7月8日の間、女性のキャッシュカードを使って現金自動預け払い機から計70円引き出したほか、ゼリーの詰め合わせやギフトカード(計13,000円相当)を横領した。
 永井被告は2008年頃から、女性の次女と交際していたが別れていた。永井被告は生駒市内で理学療法士の専門学校に通っていたが、2011年2月に理学療法士の国家試験に失敗、専門学校を3月に卒業しアパートを引き払って以降も定職に就かず、友人や女性宅に立ち寄る生活を続けていた。
 7月5日、女性の長女が生駒署に行方不明者届を提出。7月8日、県警は、女性名義のクレジットカードを使って現金を引き出そうとしたとして、関西国際空港から出国しようとした永井被告を窃盗未遂容疑で逮捕。供述から、女性の頭蓋骨などが生駒市内の山中で見つかり、7月19日に死体遺棄容疑で再逮捕。8月10日、強盗殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 奈良地裁 橋本一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月5日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。永井被告は逮捕当初から殺人を否認している。凶器や大部分の遺体は発見されておらず、司法解剖でも死因は判明していない。
 2012年4〜12月に計10回行われた公判前整理手続きにより、住居侵入罪の成否▽殺害行為の有無▽殺害した場合の金品強取目的の有無▽被害者のキャッシュカードを利用した現金引き出しについての窃盗罪の成否▽成立する罪に即した量刑――が争点となった。
 2013年1月28日の初公判で、永井真太郎被告は死体遺棄や死体損壊の罪を認める一方、強盗殺人などについては「全く身に覚えがない」と無罪を主張した。
 検察側は冒頭陳述で、永井被告が被害者の遺体を損壊し遺棄行為に及んだ▽被害者の携帯電話から「韓国旅行へ行く」と長女らにメールをして生存を装う偽装工作をした▽サークルやボランティア活動に忙しく、被害者に自殺を伺わせる状況がなかった――などと指摘。さらに被害者宅に物色した形跡があり、永井被告の指紋が検出されたことや、カードで現金を引き出す際に暗証番号の不一致で何度も失敗していることなどを挙げ、「金に困った永井被告が盗み目的で侵入したが、帰宅してきた被害者に見つかったことで居直り、財産目当てで殺害した」と主張した。
 一方、弁護側は冒頭陳述で、永井被告が両親から送金してもらうなど金に困っておらず、被害者宅の鍵は預かっていたもので、カード使用の許可も得ていたと反論した。また、遺体発見状況について「被害者が右手に包丁を持って首から血を流して死んでいた。そばには『骨は生駒にまいてほしい』と書かれた便せんがあった」と指摘。「(永井被告の元交際相手の次女ら)娘たちが家を出て寂しい気持ちがあった」として自殺した可能性があるとし、「父に続いて母まで死亡したことを次女が知ったらかわいそうと感じ、遺体を隠して損壊し遺棄した」と説明した。死体遺棄、死体損壊の動機について、「被害者が自宅で死亡していたのを見つけたが、被害者の次女にすぐに伝えるのはかわいそうだと思い、遺体を隠そうと思った。その後次女から別れを告げられた怒りなどから、切断して遺棄した」と説明した。
 29日の第2回公判で、被害者の長女、次女が家の中から現金等がなくなることがあったと証言し、永井被告は事件前から金に困って金品を盗んでいた可能性を指摘した。
 2月1日の第4回公判で、検察側が証拠請求し、弁護側が捜査に問題があったとして、証拠採用に同意しなかった被害者の貴重品用のかばんの中身などから永井被告の指紋が検出されたとする鑑定書を、橋本一裁判長は「事件との関連性がある」として証拠採用した。
 5日の第6回公判で検察側は、被告が犯行当時金に困っていたことを示す証拠として、被告の預金が1万円未満だったとする被告の父の供述調書を提出した。一方、弁護側は「被告は金に困っていなかった」とする反論を裏付けるため、被告が当時、国の失業者向けの給付金を受給する予定だったとする書類を証拠として提出した。
 12日の第9回公判における弁護側の被告人質問で永井被告は、2011年6月22日午前9時ごろ、被害者宅を訪れると、応答がなく鍵も開いていたと証言。遺書らしき便せんが2枚ほど置かれ、居間のソファで、右手に包丁を持ち、首と手首に切り傷を負った被害者が血を流して死亡しているのを見つけたと説明した。永井被告は「(被害者は)毎日ため息をつき、ずっと寂しい思いをしていた。自暴自棄になり、自殺したと思う」と述べた。便せんは「前妻とのことなど自分の過去が書かれていたので、コンビニのゴミ箱に捨て、警察に話さなかった。(先週面会した)両親から真実を話せと言われたので、法廷で話している」と語った。
 18日の第12回公判では、被害者の三女が極刑を求めた。19日の公判における意見陳述で被害者の次女、兄が極刑を求めた。
 20日の論告求刑で検察側は、「被害者の死亡直後から身元がわからなくなるほど遺体を徹底的に損壊している。殺害していなければ、これほど損壊するはずがない。冷酷、非道な犯行で、動機は利己的で身勝手。反省の情は皆無」と述べた。被害者参加制度に基づき法廷に立った被害者の長女は、遺族を代表して発言。永井被告の行為を「考えられないほど非情で残忍。何の罪もない母が受けた苦しみが、重大な罪を犯した被告の受ける苦しみより大きいのは不公平です」と語気を強め、求刑を上回る死刑を求めた。
 同日の最終弁論で弁護側は、死体損壊、死体遺棄両罪について「残虐で、強く非難されるべきだ」とする一方、強盗殺人罪についてはこれまで通り無罪を主張。保護観察付きの執行猶予判決を求め、「服役より、保護観察を受けながら罪を考える方が真の反省に結びつく」と理由を説明した。永井被告は最終陳述で、「やっていないものはやっていない。わかってほしい」と述べ、改めて殺害を否定した。
 判決で橋本裁判長は永井被告が死体を徹底して損壊した事実について、「故意に死亡させた者以外行うはずがなく、殺害が強く推認される」と指摘。その上で「不正に入手した鍵で白昼の留守宅に侵入したことは、金品を盗む目的以外に考えられない」と結論づけた。そして「犯行は冷酷非情で非人間的。反省もみられず、このままでは矯正困難だ」と断じた。未決勾留日数は、「(早期の)仮釈放(につながる可能性)も慎重に考慮されるべきだ」として算入しなかった。
備 考
 被告側は控訴した。2013年8月下旬から10月末までの間に、大阪高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。

氏 名
後藤明弘(48)
逮 捕
 2011年8月6日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、強姦致死、傷害致死
事件概要
 愛知県尾張地方の運送会社に勤務していたトラック運転手、後藤明弘被告は2006年7月28日夜から29日朝、強姦目的で愛知県音羽町(現豊川市)に住むベトナム人女性(当時24)宅に侵入し、就寝中の女性を殺害した。女性は研修生として来日し、自室で部品検査の内職をしていた。後藤被告は事件の約1年半前、仕事中に女性のアパート近くの駐車場で休憩した際、女性を見かけて気に入り、部屋を何度ものぞいたりしていた。
 2011年3月、高山市かその周辺で、後藤被告が勤めていたコンビニで同僚だった高山市の女性(当時44)に暴行を加えて死亡させ、遺体を下呂市内の山林に遺棄した。女性は3月8日夜から行方不明となっていた。
 4月9日午後1時10分ごろ、岐阜県下呂市の県道中央に車載用の三角表示板が置かれ、「白骨死体がこの下にあり。110番通報願う」との手書きのメモ用紙が貼られているのを車で通りかかった女性が見つけた。道路脇のがけ下に白い骨のようなものが見えたため、女性は県警下呂署に通報。駆けつけた署員が道路の約10m下の法面で白骨遺体を発見した。発見1週間前には「山林に遺体がある」との通報があり、同署が捜索したが、積雪などで発見できなかった。
 岐阜県警は同じコンビニで働いていた後藤明弘被告から任意で事情聴取したところ、豊川市の事件への関与が浮上。7月に情報提供を受けた愛知県警が捜査を進めた。愛知県警は愛知県警は8月6日、殺人容疑で後藤被告を逮捕した。8月27日、名古屋地検は殺人と強姦致死容疑で後藤被告を起訴した。実際に強姦はしていないが、後藤被告が「強姦目的で殺害した」と供述していることから、強姦致死罪が成立するとしている。
 2012年1月13日、岐阜・愛知県警の共同捜査本部は後藤被告を岐阜事件における死体遺棄容疑で逮捕した。2月2日、殺人容疑で再逮捕した。2月23日、岐阜地検は殺意の立証が難しいと判断し、後藤被告を傷害致死と死体遺棄容疑で起訴した。
裁判所
 岐阜地裁 山田耕司裁判長
求 刑
 無期懲役+懲役15年
判 決
 2013年3月6日 無期懲役+懲役20年
裁判焦点
 裁判員裁判。二つの事件を審理するが、両事件の間に別の窃盗事件で確定判決を受けているため併合罪にはならず、判決の主文は事件ごとに言い渡された。
 後藤被告は岐阜事件で、遺体が見つかった現場近くの県道に「白骨死体がこの下にあり。110番願う」と書いたメモを置いたことや、直前に女性と会ったことは認めているが、傷害致死と死体遺棄については否認している。後藤被告が犯人でないとしても女性の遺体を発見できたかが争点になっている。
 2013年2月12日、岐阜事件を審理する初公判で、後藤被告は「私はすべてやっておりません」と無罪を主張した。
 検察側は冒頭陳述で「被告の車のトランクにあった(携帯電話などを首から下げる)ネックストラップから、女性のDNAが検出された。縛って車に乗せた痕跡だ」と述べ、遺体の遺棄現場も知っていたと指摘。弁護側は「女性はドライブ中に口論となって車を降り、何らかの事件に巻き込まれた。起訴は死亡の経緯や日時、場所などが特定されず違法」と主張し、公訴棄却を求めた。
 13日の第2回公判で、現場付近を日常的に通行する証人らは「雪が積もった急な山道で、通りがかりのドライバーが遺体を見つけるのは不可能」などと証言した。また通報を受けた警察官が証人尋問で、後藤被告が偽名を名乗って通報したことを明らかにし、「通報内容が詳細だったので現場の案内を頼んだが、慌てた様子で『かかわりたくないので勘弁して』と言われ電話を切られた」と証言した。
 15日の第4回公判における被告人質問で、後藤被告は2011年3月8日夜に女性と高山市内からドライブし、下呂市内の道の駅で結婚の話をめぐって口論となったため女性が車を降りて歩いていったと主張。また同月18日ごろ、運転中に山の斜面に人の足のようなものを偶然見つけたと主張。約2週間通報しなかった点について、後藤被告は「不倫関係がばれて、自分が疑われるかもしれないと不安だった」と述べた。何度も現場に出向き複数回にわたりデジタルカメラで遺体を撮影したことを指摘されると、「非日常的で興味本位だった。女性に申し訳ないと思いすぐに写真を消した」と話した。
 19日の第5回公判で、岐阜事件の論告と弁論が行われた。検察側は、後藤被告が発見の難しい場所に女性の遺体があると知っていたことや、遺体の発見日時や場所について供述が変遷していることなどから「(被告の主張は)ありえない偶然に満ちていて、話を作りあげているのは明らか。被告が犯人でなければ合理的な説明ができない」と主張した。弁護側は「遺体のあった場所は、別の通行人が白骨を見つけた位置より約5m上。被告が遺体を偶然見つけたことは間違いない」と反論し、「犯人だとしたらなぜ警察に遺体の場所を通報したのか」など、「犯人と断定できる立証が尽くされたとはいえない」と述べ、改めて無罪を主張した。
 26日の第6回公判から愛知事件の審理が始まった。後藤被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 殺意が生じた時期などが争点になる。冒頭陳述で検察側は、トラック運転手をしていた後藤被告が事件の約1年前からベトナム人女性の部屋をのぞき見していており、性的関心を抱き女性の部屋に侵入したと指摘し、「計画的な犯行で確定的な殺意があった」と主張した。弁護側は殺害に至った経緯などについて「今後の公判で被告自身の口から語ってもらう」と述べた。同日の被告人質問で後藤被告は「騒がれたらまずいと思い、2、3度口をふさぎ首を絞めたら死なせてしまった」と述べた。
 27日の論告で検察側は、愛知事件で無期懲役、岐阜事件で懲役15年を求刑した。検察側は愛知事件について「残虐かつ悪質。都合の悪いことは説明せず反省が見られない」などと批判した。同日の最終弁論で弁護側は、愛知事件について「罪と向き合い償うべきだ」として有期刑上限の懲役20年が妥当とし、岐阜事件については起訴内容が不明確として公訴棄却を求めた。同日、岐阜事件の被害者の母親と長男は書面での意見陳述で死刑を求めた。
 山田耕司裁判長は岐阜事件の判決で、検察側が立証した状況証拠を採用。後藤被告が発見の著しく困難な山中の遺体の位置を知っていたことから、生前の被害者と最後に接触したと認定し「被告の主張は不可解で信用できない。被告人が被害者を死亡させた犯人であると強く推認される」として傷害致死罪は認定した。一方、「遺棄の時点で被害者が死亡していたとは言い切れない」として、死体遺棄罪については無罪とした。量刑が求刑を上回った理由については、後藤被告が豊川事件の後に下呂事件を起こしたことを検察側が「十分に考慮していない」とし、「欲望の赴くまま犯行を繰り返し再犯は必死。法律上の最高刑をもって臨むほかない」と説明した。愛知事件については「頭部を鉄パイプで執拗に殴打し、心音が止まるまで繰り返し首を絞めた。残酷で冷酷な犯行で反省の態度はみじんも見られない」と指摘した。
備 考
 後藤被告の弁護を担当していた男性弁護士が2012年12月末以降、連絡が取れなくなったため、後藤被告の公判は、男性弁護士の代わりに別の弁護士2人が加わっている。男性弁護士は後藤被告が県警に逮捕された2012年1月以降、弁護を担当し裁判員裁判の準備をしてきたが、12月19日頃から連絡が取れなくなった。行方不明になった理由は分かっておらず、家族が捜索願を出している。
 後藤被告は2つの事件の間に別の窃盗事件で逮捕され、その判決が確定しているため、両事件では刑法の併合罪は適用されず判決は別々に言い渡された。判決が確定した場合、量刑の重い無期懲役が先に執行される。
 被告側は控訴した。2013年9月30日、名古屋高裁で一審破棄、無期懲役+懲役12年判決。2014年3月10日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
若生康貴(37)
逮 捕
 2011年2月28日(死体遺棄容疑。3月22日、強盗殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 金沢市に住むNHK金沢放送局の元委託カメラマン若生康貴被告は2011年2月6日午後9時35分から翌7日午前2時16分の間、金沢市かその周辺に駐車した乗用車内で、株の投資資金として、金沢市に住む主婦の女性(当時27)から株の投資名目で預かっていた800万円の運用益などの返済を免れようと、刃物で左首を刺して殺害し、遺体を内灘町の海岸砂浜に埋めた。若生被告と女性は3年前から知り合いだった。
 2月6日の午後10時ごろ、主婦の両親が金沢市福増町のショッピングセンター駐車場で、車を発見。翌日、金沢西署に捜索願を提出した。
 石川県警は2月7日に若生被告へ最初に任意聴取を実施。17日、県警は逮捕監禁容疑で若生被告の自宅を家宅捜査し、主婦の血痕が残っていた乗用車を押収した。18日午前6時頃、若生被告は後頭部を刃物で刺して自殺を図り、意識不明の重体となって県立中央病院(金沢市)に入院。24日、内灘町大根布の砂浜で、女性の遺体が見つかった。
 2月28日、石川県警は若生被告を死体遺棄容疑で逮捕。3月22日、強盗殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 山浦善樹裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月6日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 若生被告は一・二審で「犯人は別におり、自分は巻き込まれただけ」と無罪を主張している。
備 考
 2012年3月2日、金沢地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2012年10月30日、名古屋高裁金沢支部で被告側控訴棄却。
 若生被告は乗用車内で見つかった毛髪について、検察側のDNA鑑定が不十分だったなどとして、異議を申し立てた。最高裁第一小法廷(山浦善樹裁判長)は21日付で、上告棄却決定に対する被告の異議申し立てを棄却した。
 2013年5月28日付で若生康貴受刑者は、「捜査機関によるDNA鑑定が虚偽のものであり、裁判は不当」と主張し、金沢地裁へ再審請求した。若生受刑者は、DNA鑑定に関する証人の証言は虚偽で、鑑定資料報告書なども偽造されたと主張。2014年1月には同証人を偽証罪で告訴したが、金沢地検は3月に不起訴(嫌疑なし)とした。3月31日付で金沢地裁は、請求を棄却した。7月2日付で名古屋高裁金沢支部は、即時抗告を棄却する決定をした。

氏 名
引寺利明(45)
逮 捕
 2010年6月22日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、銃刀法違反
事件概要
 引寺(ひきじ)利明被告は2010年6月22日午前7時33分ごろ、広島県広島市南区のマツダ宇品工場にマツダ社製のファミリアで侵入。約8分間、時速40〜70qで暴走、急発進や急ターンを繰り返し、通勤途中だった同社社員の男性(当時39)が死亡、1人が顔面骨折や脳挫傷などで重体となり、右目を失明した。また1人が重傷、9人が軽傷を負った。引寺被告は車で工場北門から逃走し、約20分後に自ら110番通報。県警が府中町内で車と男を発見。車内に包丁も所持しており、殺人未遂と銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕した。
 引寺被告は3月25日、6カ月契約の期間社員として入社。研修を経て、4月1日から宇品工場でバンパー製造の日勤業務に当たっていたが、同14日に「一身上の都合」として退社した。実働したのはわずか8日間だった。
 引寺被告は父親がマツダの元社員で、無類の車好き。高校卒業後には自動車部品メーカーに勤め、その後も大半は派遣社員や契約社員として、自動車関連の職場で勤務していた。一方、車には多額のお金をつぎ込んだ。この5年間でスポーツカーなどを4台ほど買い替えており、2年前には多重債務を抱えて自己破産していた。事件当時は別の自動車部品メーカーで勤務していた。
 7月12日、広島県警は引寺利明被告を殺人容疑で再逮捕。広島地検は、精神鑑定のための鑑定留置を広島簡裁に請求、7月27日付で認められた。約3カ月間の精神鑑定で、物事の是非・善悪を識別する能力(責任能力)があったと判断し、10月29日、引寺被告を起訴した。
裁判所
 広島高裁 木口信之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月11日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2012年12月20日の控訴審初公判で、弁護側は一審で引寺被告が犯行時に「妄想性障害」だったと認定しながら量刑を考慮していないして、「完全責任能力を認めた地裁判決には誤りがある」と破棄による軽減か差し戻しを求めた。検察側は、「被告の謝罪や反省は一切なく、刑が減軽されないよう強く願う」とする犠牲になった社員の妻の陳述書を読み上げた。弁護側は新たな脳検査の実施を求めたが、木口裁判長は採用せず、即日結審した。
 法廷では、弁護側が求めた被告人質問を却下されたことに引寺被告が激高して「事件を起こしてよかった」と叫び、退廷時に裁判長に近寄ろうとして制止される場面もあった。
 判決で木口信之裁判長は「完全責任能力を認めた鑑定は合理的」と指摘し、法令適用の誤りもないと述べた。一審で認めた妄想性障害の影響を追認したが、「動機には性格や人生観に基づく部分が大きい」と指摘した。そして「殺意や完全責任能力があるとした一審判決に誤りは認められず、刑事責任は重く量刑も不当でない」などと述べ、被告の控訴を棄却した。
 引寺被告は判決の言い渡し後、「わしに一言ないんですか」などと大声を出し、刑務官に押さえられながら退廷した。
備 考
 2012年3月9日、広島地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は即日上告した。2013年9月24日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
浦上剛志(34)
逮 捕
 2009年6月9日(窃盗容疑。別事件で4月22日に逮捕済み)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、逮捕監禁、不正アクセス禁止法違反、電子計算機使用詐欺、旅券法違反、犯罪収益移転防止法違反他
事件概要
 大阪府のゲーム機リース業、浦上剛志被告は2008年8月5日、一宮市の輸入卸業森宏年被告と共謀し、バンコク市内に滞在していた岐阜県山県市出身の男性(当時33)のマンションで男性の両手首を手錠で、両足も粘着テープで拘束し、パソコン2台やキャッシュカード3枚などを強奪。森被告が現場を離れた際、浦上被告が男性の頭を浴槽に沈め、水死させた。帰国後の8月6日〜10日、浦上被告は森被告と奪ったキャッシュカードやパソコンを使ったりして、男性の預金約1640万円を不正に得た。
 8月9日、タイ山中で男性の遺体が発見された。タイ警察は8月21日に殺人容疑で浦上被告、森被告の逮捕状を取った。浦上被告は京都府警に出頭し、「自分は無関係」と述べた。岐阜県警の捜査員も駆け付けたが、タイ警察による殺人容疑の逮捕状は日本国内では効力がなく、身柄を拘束できず、帰宅させていた。その後浦上被告は行方不明となった。9月11日、岐阜県警は窃盗容疑で両被告の逮捕状を取り、16日に森被告が逮捕された。
 浦上被告は都内へ移動し、数か所のホテルを転々としていた。12月以降、偽造パスポートでカナダや中国、韓国などに計6回の出入国を繰り返した。その後闇サイトの掲示板で浦上被告は他人名義の口座売買を持ちかけたため、2009年4月22日、警視庁は別事件の犯罪収益移転防止法違反容疑で逮捕した。このとき浦上被告は黙秘していたため、氏名不詳のまま逮捕している。しかし部屋に残っていたパソコン用メモリに入っていた少年時代の画像から「浦上」という苗字が判明。指名手配の照会により、岐阜県警が指名手配していることが判明。連絡を受けた岐阜県警が、指紋で浦上容疑者と確認。6月9日、岐阜県警が浦上被告を窃盗容疑で逮捕。8月4日、浦上被告、森被告を逮捕監禁と強盗殺人容疑で再逮捕した。
 他に森被告は2008年6月5日、JR京都駅構内の旅行会社で浦上被告になりすまし、同名義のカードで新大阪−東京間の回数券3つづり(79万4400円相当)を購入し、同日中に京都市内の金券ショップでこれらの回数券を換金。そして浦上被告が翌6日、京都市内の警察署にカードの遺失届を出し、購入代金の支払いを免れた。
裁判所
 最高裁第一小法廷 桜井龍子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月12日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は無罪を主張している。
備 考
 共犯の森宏年被告は強盗致死他で起訴。2010年12月9日、岐阜地裁(山田耕司裁判長)で懲役13年判決(求刑懲役15年)。この裁判員裁判は、国外犯規定の初の適用事例である。2011年6月20日、名古屋高裁(志田洋裁判長)で被告側控訴棄却。被告側上告棄却、確定。また現金を引き出した窃盗罪などについて森被告は先に起訴されており、2009年6月30日、岐阜地裁(田辺三保子裁判官)で懲役3年(求刑懲役4年)判決。10月28日、名古屋高裁(片山俊雄裁判長)で被告側控訴棄却。上告するも棄却され確定。
 2011年3月18日、岐阜地裁(宮本聡裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2011年11月30日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
山口芳寛(22)
逮 捕
 2011年3月4日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄
事件概要
 熊本市の大学生山口芳寛被告は2011年3月3日午後7時半頃、同市の商業施設で、家族で買い物に来ていた女児(当時3)を多目的トイレに連れ込んでわいせつな行為をした上、 首を手で絞めるなどして殺害。遺体をリュックサックに入れ、8時ごろ、近くの排水路に遺棄した。
 熊本県警は4日午後、商業施設の防犯カメラに映っていた山口被告を任意同行。「女児を殺害し、川に捨てた」との供述通り遺体を発見したため、同日山口被告を死体遺棄容疑で緊急逮捕した。3月22日、山口被告は殺人罪で再逮捕された。
 熊本地検は4月6日、熊本簡裁に鑑定留置を請求し、認められた。期間は当初3か月だったが後に4か月に延長。8月13日、犯行当時に刑事責任能力はあったと判断し、熊本地裁は山口被告を起訴した。
裁判所
 福岡高裁 陶山博生裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2013年3月1日の控訴審初公判で、山口被告側は控訴趣意書で「被告には小児性愛の精神症状があり、事件当時は責任能力が欠けていた」などとして無罪を主張した。弁護側の被告人質問では、「自分は精神障害があると考えているのに、それが考慮されていない判断だったのが理解できず、控訴した」と述べ、それに配慮した判決を求めた。山口被告側は、一審で証人尋問した精神鑑定医を再尋問するよう求めたが、高裁は却下した。検察側は控訴棄却を求め、即日結審した。
 判決で陶山博生裁判長は「小児性愛は基本的に人格の偏りに過ぎず、責任能力に影響を及ぼすものではない。完全責任能力を認めた一審に事実誤認はない」と判断し、被告側の主張を退けた。そして「身勝手極まりない犯行で刑事責任は重く、無期懲役が不当とは言えない」と述べた。
備 考
 2012年10月29日、熊本地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2013年6月25日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
竹中誠司(25)
逮 捕
 2011年3月11日
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗殺人、窃盗、詐欺
事件概要
 住所不定、無職竹中誠司被告は2011年8月7日午前5時15分頃、金品を奪う目的で、かつて仕事で訪問したことのある印刷会社役員の男性(当時64)方である広島市中区のお好み焼き店兼住宅に、無施錠の1階勝手口から室内に侵入。2階和室にいた男性とその妻でお好み焼屋経営の女性(当時61)を、台所にあった文化包丁(刃渡り約17cmで刺して失血死させた。
 男性の携帯電話の通信記録などから、当時は広島市内に住んでいた竹中被告が浮上。現場には血のついた裸足の足跡などが残され、この足紋が竹中被告のものと一致したことから、広島県警広島中央署捜査本部は11月19日、竹中被告を殺人容疑で逮捕した。
 竹中被告は2011年9月、盗んだクレジットカードを使った詐欺容疑で島根県警に逮捕され、松江地裁益田支部で公判中だった。
 竹中被告は6月に会社を辞め、事件当時は友人宅やインターネットカフェに寝泊まりしていた。
 竹中被告は「2人に恨みはなかったが、金が欲しかった」と供述したことから、捜査本部は21日、強盗殺人に容疑を切り替え、竹中被告を広島地検に送検した。
 竹中被告は他に、2011年8月1日夜から2日朝にかけて、広島市西区の会社事務所に侵入し、約35万円を盗んだ。殺害事件後の8月15日〜9月11日、山口市や島根県益田市内の住宅でゲーム機や財布を盗むなどした。
裁判所
 広島地裁 伊名波宏仁裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2013年3月13日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。公判前整理手続き中、竹中被告の事件当時の記憶があいまいなことなどから弁護側が地裁に精神鑑定を申請し、2012年3月16日付で認められた。争点は、有罪か無罪か、警察の調書の信用性、刑事責任能力、強盗目的による侵入か、などである。詐欺事件についても併合審理された。
 2013年1月28日の初公判で、竹中被告は元の職場での窃盗などの罪については「間違いない」と認めたが、強盗殺人については「申し上げにくいが当時の記憶がないです」と否認した。
 検察側は冒頭陳述で、竹中被告が事件当日、ガールズバーの店員から「店に遊びに来てほしい」と言われたが、前日に財布を置き忘れるなどして所持金が1万円弱しかなく、「どこかで盗みをしようと思いついた」と指摘。インターネット回線の営業で訪れたことのある被害者宅を狙った、とした。事件後、竹中被告の右耳の3〜4か所に血液が付いているのを店員が見ていることや、当時金に困っていたこと、遺体のそばにあった血の付いた足跡が竹中被告のものと一致したことや、起訴前は犯行を認める供述をしていたことなどから「強盗目的で2人を殺害したことは明らか」と主張した。一方、弁護側は、竹中被告に当時の記憶がないことなどから犯人性を争う姿勢を示したほか、県警や検察の取り調べの手法などを厳しく批判。今後の公判で、検察官の証人尋問などを行うとした。  2月6日の第3回公判で、足跡を鑑定した県警鑑識課の職員が証人として出廷し、「(被告の)足跡と照合した結果、12カ所の特徴点があった」と証言した。被告の手の平の傷を鑑定した医師も証人出廷し、「傷の形や深さ、傷の向きが全て異なることから、刃物を逆手に持った際にできた可能性がある」などと述べた。
 12日の第6回公判で、被害者夫婦の二男が証人出廷し、「死刑以外望んでいません」と涙ながらに訴えた。13日の第7回公判では被害者男性の母親が書面で意見陳述し、極刑を訴えた。
 18日の第10回公判で、竹中被告が2012年2月、取り調べをした捜査員に送った「自分がしてしまったことは一生かけても許されない」と記した手紙が、検察側から証拠提出され、採用された。
 19日の第11回公判で、竹中被告が2011年、詐欺容疑で島根県警に逮捕された事件を担当した弁護士が証人として出廷。竹中被告が本事件に関する取り調べを受けた際、刑事訴訟法などで保障された接見交通権の侵害があったなどと述べた。
 21日の第12回公判における被告人質問で竹中被告は、逮捕前と直後に作られた殺害を認める自白調書について「刑事に言われるがままに作られた」と語った。同日、起訴後の精神鑑定を担当した医師が出廷し、「事件当時は精神障害はなかった」との鑑定結果を報告した。
 22日の第13回公判で、精神鑑定を担当した医師は、竹中被告が「記憶にない」と繰り返し述べていることについて、重大なショックから記憶喪失となる「解離性健忘」の可能性が極めて高いと指摘した。
 26日の第15回公判で、捜査段階で犯行を認めた竹中被告の供述調書8通が証拠採用された。一方で、竹中被告が「取り調べ中に弁護士を呼んでもらえなかった」などと記した被疑者ノートも証拠採用された。
 27日の第16回公判で、被害者参加制度に基づき、被害者夫婦の次男と長女が意見陳述し「命で償ってほしい」と、相次いで極刑を求めた。
 28日の論告求刑で検察側は、動機については「無職で住むところがなく、ガールズバーで散財し、残りの金が入った財布を落として金に困っていた」と述べた。さらに「現場の足跡が竹中被告と一致し、取り調べに一貫して犯行を認めていた」として犯人に間違いないと主張。地裁が実施した精神鑑定の結果などから「金品を奪うため合理的な行動を取っていた。強い強盗の意志があった」と述べ、刑事責任能力があったと主張。公判で竹中被告が「よく覚えていない」と繰り返したことについては、「取り調べ段階では一貫して認めていた。忘れようとしているだけ」と指摘し、精神鑑定を担当した医師が指摘した記憶喪失の可能性を否定した。そして、「あまりにも重大、凶悪な犯行で、金目当ての動機は自己中心的で身勝手。遺族への謝罪もなく、法が認める最大限の刑罰を科すしかない」として死刑を求刑した。
 同日の最終弁論で弁護側は、迎合しがちな被告の性格や、記憶喪失は詐病ではないとする鑑定医の判断を踏まえ、「供述調書の任意性に疑いがある」などとして無罪を主張した。さらに、仮に有罪の場合でも、「事件当時は何らかの精神障害があった」として刑の減軽を求めた。
 判決で伊名波裁判長は「黙秘権も通知された取り調べで犯行を認めた」として供述調書の任意性を肯定。現場に残された被害者の血の付いた足跡は被告が犯行時に付けたとして、犯人と認定した。その上で、「金欲しさから仕事で訪問したことがある男性方に侵入し、抵抗を受けて突発的に2人を殺害した」と指摘。過去の強盗致傷事件で執行猶予判決を受けた後、しばらくまじめに働いていた点などを考慮。「落ち度のない被害者に執拗に攻撃を加え、極めて悪質。死刑選択も考慮すべきだが、計画性は認められず、「記憶にない」などと述べ情状は良くないが、更生の可能性もないとは言えないことから極刑がやむを得ない場合には当たらない」と結論付けた。
備 考
 数年前に強盗致傷容疑で逮捕され、執行猶予判決を受けた前科がある。
 被告側は控訴した。検察側は控訴せず。2014年2月3日、広島高裁で被告側控訴棄却。2014年9月17日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
鈴木武(36)
逮 捕
 2012年3月3日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火
事件概要
 姫路市の溶接業、鈴木武被告は2012年3月3日午前1時5分頃、兵庫県姫路市のスナックでガソリンと灯油の混合液体をまき、ライターで放火。店を全焼させ、経営者の女性(当時27)を急性一酸化炭素中毒で殺害し、女性の母親(当時50)が重傷、客の会社員男性(当時36)が意識不明の重体、パートの女性客(当時31)が軽傷を負った。
鈴木被告は店の常連客で、約1年前から女性と交際していたが、1か月前頃から金銭を巡ってけんかが絶えなくなり、数日前に別れたばかりだった。また鈴木被告は事件当時、仕事の関係先が倒産して資金繰りに困っていた。
 その後鈴木被告は知人女性の車で、元妻と息子が住む広島県の東広島市まで逃走。同日午後0時15分頃、広島県警東広島署に出頭した。鈴木被告は手などに火傷を負っていたため、近くの病院で治療を受けた後、逮捕された。その後、火傷治療のために釈放されて入院。4月6日、殺人他の容疑で再逮捕された。
裁判所
 神戸地裁姫路支部 溝国禎久裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月13日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年3月4日の初公判で、鈴木被告は「建物を燃やしたのは間違いないが、あんなに燃えるとは思わず、女性が亡くなるとは思っていなかった」と殺意を否認した。
検察側は冒頭陳述で、鈴木被告が当時、女性に別れを告げられ、過去に買い与えた金や物を女性の母親が返しに来たことなどに憤慨したと指摘。女性らに脅迫メールを送っていたことや、スナックに入店後7秒で火を付けたことなどから、「女性と母への一方的な逆恨み。犯行は計画的だった」と明確な殺意があったと主張した。
 弁護側は「被告は泥酔状態で、ガソリンが一瞬で燃え上がるとは思わず、殺意はなかった」と突発的な犯行だったと訴え、殺人罪の成立を否定した。
 3月8日の論告で検察側は、店の出入り口は1つだけであることを知っていたことなどをあげて「殺意はあった」と主張。「一方的な逆恨み」と断じた。弁護側は最終弁論で「ガソリンが一瞬で爆発すると知らず、結果は予想外」などと改めて殺意を否定し、傷害致死罪の成立に留まると主張した。
 判決で溝国禎久裁判長は、交際していた女性から別れを切り出されたことなどから犯行に及んだと認定。「ガソリンが引火しやすい危険な液体であるのは社会人の一般常識。被告にはガス溶接の資格があり、ガソリンの特性を知らなかったとは思えない」などと弁護側の否定した殺意も認定した。そして極刑を望む遺族の意向を「最も重視すべき」とした上で「死刑で臨むべき犯罪には及ばないが、あまりに短絡的で刑事責任は誠に重い。危険な殺害方法で、厳しい非難で臨むべきだ」と結論付けた。
備 考
 兵庫県警は2012年4月26日、鈴木被告の逃走を手助けしたとして、姫路市のマッサージ店従業員の女性を犯人隠匿容疑で書類送検した。
 県警生活環境課などは2012年9月12日、鈴木被告にガソリンを違法に販売したとして、ガソリンスタンドの運営会社とセルフ式ガソリンスタンド運営の子会社、子会社の元契約社員で60代の男を消防法違反容疑で書類送検した。消防法は客が自分で容器にガソリンを入れることを禁じている。
 被告側は控訴した。2013年9月27日、大阪高裁(川合昌幸裁判長)で被告側控訴棄却。2014年10月28日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
藤井時雄(69)
逮 捕
 2010年10月3日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 長野県南箕輪村のパート清掃員、藤井時雄被告は2010年9月9日午後10時ごろ、伊那市の路上に止めた軽乗用車内で、会社員の男性(当時42)の首や胸を包丁で数回刺し、失血死させた。そして、男性から借りた30万円の返済を免れることで、財産上不法な利益を得たとしている。藤井被告は、男性の勤め先の建物清掃請負会社の同僚で、同社によると、2人は3年ほど前から駒ヶ根市内の温泉旅館で働いていた。
 翌朝、電柱に軽乗用車が衝突しているのを発見した通行人が119番し、事件が発覚した。10月3日、藤井被告は殺人容疑で逮捕された。長野地検は23日、借金を免れる目的だったとして、強盗殺人罪で藤井被告を長野地裁に起訴した。
裁判所
 長野地裁 高木順子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月14日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年1月15日の初公判で、藤井時雄被告は「男性を殺害していないし、金を借りた事実もない。私は無罪です」と起訴内容を否認した。
 検察側の冒頭陳述によると、現場付近に1万円札大の紙片15枚が入った茶封筒が破られた状態で落ちており「紙片の1枚に付着していた指紋が、藤井被告の右手親指の指紋と一致した」と主張。また、被害者の右肩に柄の取れた包丁が刺さり、付近から柄だけが見つかった。柄の付着物から被害者と藤井被告のDNAが混ざった状態で検出され「2人のDNAが混じったものと考えて矛盾のない鑑定結果だ」とした。
 一方、弁護側は「殺害を直接証明できる証拠はない」と主張。DNA鑑定には「柄の付着物のDNAは、ごく少量しか採取できていない。被害者のものと混じっており、慎重に扱う必要がある」と述べ、指紋も「茶封筒そのものからは出ていない」と指摘した。検察側が示した被害者の携帯電話のメモ機能にあった「藤井被告から30万円が返ってきそう」との記載も「いつ誰が書いたものなのか明らかにされていない」と反論した。
 18日の公判で、現場付近に落ちていた1万円札大の紙片と、被告宅にあったA4サイズの紙を鑑定した民間の製紙会社の研究員が「二つは同種の紙の可能性が高い。広告チラシなどに使われるもので、あまり一般の家にはなく、専門店以外ではあまり見たことがない」と証言した。
 22日の公判で、被害者と藤井被告の共通の元同僚の男性が出廷し「被害者は『(藤井被告から)お金を返してもらえない』と話していた」と証言した。一方、弁護側が「被害者の給料から考えて30万円を貸すと思うか」と問うと、男性は「(貸すとは)考えられない」と答えた。
 2月7日の公判で警察庁科学警察研究所元所長の研究者が出廷し、現場付近で見つかった包丁の柄の付着物から、混ざった状態の被害者と藤井被告のDNAが検出されたが「藤井被告の付着物が微量だったため、DNA鑑定結果の信頼性は低い」と述べた。証人尋問で検察側が「被告のDNAが含まれていないと断言できるか」と問うと「断言できない。信頼性がないことを考えながら(証拠として)判断してほしい」と答えた。
 12日の被告人質問で、藤井被告は改めて起訴内容を否認。被告は、被害者が殺害されたとされる夜は「パチンコ店を回り、午後10時前には家に帰った」と述べた。被害者との間で約3回の借金のやりとりを認めたが「全て返済は済んでいる」と述べた。検察側は「9月9日午後10時前後に殺害し、同10時半頃に帰宅した」と指摘。藤井被告とみられる男が9日午後9時42分に、パチンコ店駐車場にいるのを店の防犯カメラがとらえているのを根拠の一つとしている。
 15日の論告で検察側は、「藤井被告が犯人でなければ説明できないことがある」と強調。現場付近に落ちていた1万円札大の紙片15枚のうちの1枚に藤井被告の右手親指の指紋が検出され「被告が手にしたことを如実に示すもの」と主張。また、被告は元同僚の被害者に借金があり「殺害の動機があった」とした。更に、凶器の包丁の柄の付着物のDNA鑑定で「被害者と被告のDNAが混じったものと考えて矛盾がない結果が出ている」と指摘した。
 19日の最終弁論で弁護側は、被害者の遺体発見現場から約110m離れた場所に1万円札に似せた紙片が落ちていて、藤井被告の指紋が検出されている点について、「指紋が付着した時期は明らかになっていない」とし、「事件に関係なく付いたものであるという可能性を完全に排除できない」と述べた。現場から約70m離れた場所で見つかった凶器の包丁の柄について、検察側が「被告が包丁を握ったことと矛盾しないDNA型鑑定結果が出た」としているのに対し、弁護側は「鑑定資料の量が少なく、確実な判定ができたとは言えない。不確実で信用性に乏しい」と主張した。さらに、検察が被害者の携帯電話に残されたメモなどを、藤井被告が被害者に30万円の借金があったことの根拠にしていることについて弁護側は「借金はしていない。被害者はお金を貸すだけの経済的余裕はなかった」と述べた。弁護側は「(藤井被告が)犯人であるとの推測を妨げる事実が多く存在する」と強調し、「疑わしきは被告の利益にという刑事裁判の原則に沿って無罪を言い渡してほしい」と述べた。
 最後に藤井被告は、「男性とは長い月日の中でお互いに金の貸し借りはあったが、約束通りきちんと返した」と陳述。「一緒に仲良く仕事をしてきた男性が殺されて悔しい。正しい判断をお願いします」と訴えた。
 判決で高木裁判長は、現場付近から発見された1万円札大の紙片について「被告の指紋が付着しており、流通性の低い同種の紙が被告の自宅で発見されている」と指摘。その上で「藤井被告が紙片を作成し、男性の車に持ち込んだと推認できる」とした。男性の携帯電話のメモ機能に「『藤井さんから30万円が返ってきそう』との記載があり、男性の周辺に『藤井』という者は藤井被告以外いない」と借金の事実を認定した。高木裁判長は、男性がこの携帯電話を使い始めたのは2009年12月なので、「9月8日」は事件前日の2010年9月8日と推認。携帯電話に藤井被告の自宅の電話番号も登録されていたことなども総合すると、藤井被告が茶封筒に入れた紙片を渡して借金返済を装ったが見破られたため、殺害に及んだと結論づけた。また、防犯カメラや藤井被告の妻の証言などから殺害の時間を午後9時42分〜10時半ごろと推測。藤井被告が男性を殺害した後、帰宅することが可能だったと指摘した。しかし、検察側が「藤井被告と男性のDNAが混じったものと考えて矛盾がないという結果が出ている」と主張した凶器の包丁の柄の付着物のDNA鑑定結果については「検察側の主張にくみすることはできない」と退けた。そして高木裁判長は「被害者の気弱な性格につけ込んで借金をし、返済に窮した揚げ句、被害者を殺害した凶悪な事件である。自己保身に汲々としている姿は醜悪。虚偽のアリバイ供述を弄するなど、反省の態度がみられない」と述べた。
備 考
 弁護側は即日控訴した。2013年11月13日、東京高裁で被告側控訴棄却。2014年3月26日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
本田祐樹(25)
逮 捕
 2012年3月3日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗強姦、住居侵入、窃盗、強制わいせつ
事件概要
 市川市の無職本田祐樹被告は以下の事件を引き起こした。

<第1区分>
 本田被告は2011年6月4日未明、県内の女性の自宅マンションに侵入、女性を刃物で脅して体を触るなどのわいせつな行為をした。
<第2区分>
 本田被告は2011年6月9日午前1時35分ごろ、松戸市内の30代の女性会社員宅に、鍵のかかっていない高窓から侵入。室内にいた女性を包丁のようなもので脅し、現金約6000円や預金通帳などを奪った上、強姦した。
<第3区分>
 本田祐樹被告は2011年6月10日午後11時半ごろ、市川市に住む大学2年の女性(当時19)宅に侵入し、キャッシュカードや通帳など7点(時価約14,630円相当)を強奪。女性を車で連れ去り、車内で強姦したうえ、頭にポリ袋をかぶせて窒息死させた。その後、キャッシュカードを使って現金自動預け払い機で現金50万円を引き出した。女性の遺体は11日午後2時半ごろ、全裸で両手を縛られた状態で近くに住む男性に発見された。本田被告と女性とは面識がなかった。

 6月上旬に市川市などで女性宅を狙った強盗などが3件あり、犯人の男は、胸にキャラクターのイラストが入った黒っぽいジャージー姿だった。このため、県警は同一犯とみて被害者の証言に基づき、似顔絵を作成して捜査を進めていた。
 6月12日午後6時15分頃、市川駅前交番の警察官が、同じキャラクターのイラスト入り黒色ジャージーを着て歩いている本田被告に職務質問。身元を確認したところ、強殺事件の被害者の頭にかぶせられていたレジ袋の指紋から、捜査線上に浮上していた本田被告であることが判明した。
 7月3日、第3区分の窃盗容疑で再逮捕。死体遺棄容疑は処分保留。7月24日、窃盗容疑で起訴。8月10日、第2区分の事件で強盗強姦容疑などで再逮捕。9月12日、第3区分の強盗殺人などで再逮捕。10月3日、強盗殺人などで追起訴。10月12日、強盗強姦罪などで追起訴した。12月20日、死体遺棄容疑について不起訴(嫌疑不十分)とした。地検は「死体を遺棄したと認定するには証拠が不十分」と説明している。
裁判所
 千葉地裁 稗田雅洋裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月15日 無期懲役
裁判焦点
 計3事件について、裁判員の負担を減らすため、分割した事件をそれぞれ別の裁判員が審理する区分審理が行われた。第1区分は裁判官のみ、第2・3区分は裁判員裁判。
 2012年12月10日の第1区分における初公判で、本田被告は「自分はそのようなことは一切していません」と起訴内容を否認した。
 検察側は冒頭陳述で「犯人の服装や(犯行中に)被害者に話した身の上に関する内容が被告と一致する」と述べた。弁護側は現場で採取された毛髪や体液などが被告のものと特定できなかったと指摘。「被告が犯人であることには疑問が残る」と無罪を主張した。
 証人として出廷した被害女性は「犯人を刺激しないよう目を見て言葉をかけ、会話をした。マスクと帽子を着けていたが二重の目はよく覚えている」と述べた。
2013年1月11日、稗田裁判長は「有罪」の部分判決を言い渡した。稗田裁判長は、「被害者が証言する犯人の特徴や、犯人とのやり取りは極めて具体的。女性の証言の信用性に疑いの余地はない。被告人以外の者が犯人であるという合理的な疑いはなく、被告人が犯人であることは十分に認定できる。被告は不合理な弁解に終始し、反省の態度が見られない」と述べた。

 1月22日の第2区分における初公判で、本田被告は「一切事件に関わっていません」と無罪を主張した。
 検察側は冒頭陳述で、現場から本田被告のスニーカーの足跡が採取されたことなどから、「犯人は本田被告だ」と主張。一方、弁護側は同じような足跡が残る靴はいくつもあるなどと主張した。
 2月1日、稗田裁判長は「有罪」の部分判決を言い渡した。稗田裁判長は、DNA型鑑定と足跡鑑定の信用性を認め「本田被告が犯人と強く推認される」などと指摘。「身に覚えがない」などと無罪を訴えていた本田被告の主張を退けた。

 2月25日の第3区分(強殺事件)における初公判で、本田被告は「私は殺害してはいません」と無罪を訴えた。被害者宅への住居侵入や強盗強姦の罪についても「合意の上だった」などと主張。被害者のキャッシュカードを使って現金を引き出した事実は認めたものの、「それが窃盗罪になるのか、僕は法律的なことは分かりません」と付け加えた。
 検察側は、被害者方アパート室内には、本田被告が履いていたスニーカーと同じ靴の土足の跡があり、被害者の服も刃物で切断されていたと指摘。「暴行、脅迫により抵抗できない状態にしてキャッシュカードを奪い、乱暴した上で殺害した」などと主張した。また、殺害時、被害者の手首を縛ってあった布から被告と同じ型のDNAが検出され、頭にかぶせられたビニール袋に、本田被告の指紋が付着していたと指摘した。
 弁護側は、被害者のカードで現金計50万円を引き出したとされる窃盗罪の一部は認めたが、住居侵入やカード強奪なども否認。被害者とは以前から面識があり、事件のあった2011年6月10〜11日は、40代の知人の男に指示を受け、被害者を車で連れ出しこの男と一緒に行動したと主張。被害者が亡くなったのは「この男の行為が原因」と述べた。
 3月1日の第4回公判で、被害者と同級生だった男性は、事件後、被害者の部屋からゲーム機がなくなったことを証言した。本田被告と事件当時同居していた女性は、本田被告が被害者方に侵入したとされる日の翌日、部屋に戻ると、以前はなかったゲーム機や現金18万〜19万円などが部屋にあったと証言。女性は不思議に思ったが、本田被告は「チンピラから奪ってきた」と話していた、とした。
 4日の第5回公判で行われた弁護側による被告人質問で、本田被告は殺害について、別人の名前を挙げて「別の男がやった」と述べた。袋に残った本田被告の指紋については「車中にあった袋を林道で捨てたが、それを男が使ったかもしれない」と語った。事件後、本田被告がゲーム機や多額の現金を持っていたことについては、被害者がゲーム機を部屋から持ち出したと主張し、「車に置いたままだったので持ち帰った」「現金は、事件前までに別の知人などから奪うなどして得た」などと述べた。
 7日の論告で検察側は、先に区分審理され、有罪となった別の2件のわいせつ事件も挙げ「被告が金銭欲や性欲を満たすため短期間に連続して、被害者の人格を無視した犯行は悪質。死刑の求刑も考えられる事案だ。公判で被害者を侮辱する弁解をしたなどとして、更正の見込みは薄い」と指摘。そのうえで「殺害は計画性が認められず、極刑を求めるには慎重にならざるを得ない」と述べた。「知人の男が殺害した」という本田被告の主張は「信用できない」と否定した。
 被害者の両親は意見陳述で極刑を求めた。
 弁護側は最終陳述で現場の手袋痕や靴跡などは証拠として不十分だとして被告の関与を否定。「求められているのは証拠に基づく判断」として、女性の頭にかぶせられたポリ袋の口にすき間があった点などを挙げ、仮に死亡にかかわったとしても「本当に殺意があれば、ナイフで刺すなどもっと確実な行為を選ぶ」と指摘した。
 本田被告は、「体験したことをありのままに話した。本当にやっていないので、それだけは信じていただきたい」と改めて無実を訴えた。
 判決で稗田裁判長は、「部屋の足跡痕は被告のスニーカーの可能性が高く、被告が土足で入ったことを強く推認させる」「本田被告の住む部屋からは、女性方にあったゲーム機が発見された」などとして、強盗に入り無理やり連れ去ったとする検察側の主張を認めた。また被告側の別人犯行主張を、「不自然で不合理。人物の存在自体が疑わしい」と一蹴。現場の複数の遺留品から被告と同じ型のDNAや指紋が検出されたなどとして「被告以外の関与を疑わせる事情はない」と認定した。さらに、頭にかぶせられたポリ袋が強く結ばれていた点を挙げ「窒息して死に至ると認識できないはずはない」と殺意を認めた。そして「金銭欲や性欲を満たすために弱い立場にある女性を対象に凶行を繰り返した」と、ほかの2事件と合わせ厳しく断罪した。一方、判決は殺害現場や女性宅への侵入方法などについては特定しなかった。
備 考
 被告側は即日控訴した。2014年1月24日、東京高裁で被告側控訴棄却。2015年3月17日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
池本賞治(48)
逮 捕
 2011年5月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火
事件概要
 指定暴力団山口組弘道会系の組長池本賞治被告は、組員又村光俊被告と共謀。2010年9月3日午前0時45分ごろ、又村被告へ指示して、名古屋市のキャバクラでガソリン入りペットボトルに火を付けて投げさせ、系列店の店長男性(当時27)をやけどによる感染症で死亡させ、女性従業員ら2人に、約2週間から2か月間のやけどを負わせた。放火当時、同店には従業員ら22人がいた。
 事件より約2時間前の午後11時過ぎ、又村被告らは同店内で「バックはおるんだろう。シマ(縄張り)を荒らすな」などとどなって出入り口のドアガラスを蹴り破るなどした。
 事件後、池本被告や又村被告らは破門となっている。
 愛知県警は2011年4月29日、広島県尾道市にいた池本被告、又村被告ら6人を、暴力行為等処罰法違反(集団的暴行など)容疑で逮捕。5月20日、6人のうちの池本被告、又村被告、もう1名と、別の売春防止法違反罪で起訴された1名が、殺人や現住建造物等放火などの疑いで再逮捕された。同日、名古屋地検は、暴力行為処罰法違反容疑で逮捕された6人のうち池本被告ら3人を器物損壊などの罪で名古屋地裁に起訴し、又村被告ら他の3人は処分保留とした(7月29日、不起訴処分)。6月10日、名古屋地検は池本賞治被告と又村光俊被告を殺人や現住建造物等放火などの罪で名古屋地裁に起訴した。共犯として逮捕した2人については、「現時点では起訴できる証拠はない」として処分保留とした(2012年3月30日、不起訴処分)。
裁判所
 最高裁第一小法廷 白木勇裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月19日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は殺意を否認している。
備 考
 暴力行為等処罰法違反(集団的暴行など)容疑で逮捕、起訴された元幹部の男性は、2011年8月19日、名古屋地裁(水野将徳裁判官)で懲役2年・執行猶予4年(求刑懲役2年)の判決が言い渡されている。そのまま確定と思われる。
 暴力行為等処罰法違反(集団的暴行など)容疑で逮捕、起訴されたとび職の男性は他の窃盗事件と合わせて審理され、2011年11月29日、名古屋地裁(伊藤納裁判官)で懲役3年6月(求刑懲役4年6月)の判決が言い渡されている。
 共犯の又村光俊被告は2012年3月8日、名古屋地裁(手崎政人裁判長)の裁判員裁判で懲役30年判決(求刑無期懲役)、控訴せず確定。
 2012年3月22日、名古屋地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2012年11月15日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。
 2013年5月、死亡した店長の遺族は、放火されたキャバクラ店が当時、みかじめ料の支払いを拒否していたことなどから、放火は「店の経営者に制裁を加え、組の縄張りを維持する目的だった」と指摘。「威力を利用した資金獲得行為」に該当すると主張し、組員が市民に危害を加えるなどした場合に、上部団体組長の責任を追及できると規定した改正暴力団対策法(2008年施行)に基づき、山口組の篠田建市(通称・司忍)6代目組長、山口組ナンバー2の高山清司若頭、実行役2人ら5人に慰謝料約8千万円や死亡逸失利益約5千万円など約1億5520万円の賠償を求めた。2015年7月14日付で、名古屋地裁で篠田組長らが連帯して1億円を支払う内容で和解した。店舗側も篠田組長らに賠償請求訴訟を起こしている。

氏 名
筧末幸(63)
逮 捕
 2011年12月9日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 三重県鈴鹿市の筧(かけひ)末幸被告は2011年10月12日午後1時50分から同3時20分までの間、同市の堤防道路に駐車中の軽乗用車やその近くで、同市に住む健康サロン経営の女性(当時57)の首や胸などを出刃包丁(刃渡り約16cm)で数回突き刺して殺害し、車の中にあった財布などから現金数十万円を奪った。
 筧被告は以前別の健康サロンに勤務していた際、女性と顔見知りになった。筧被告は2011年4月から11月下旬まで、県教育委員会に登下校安全指導員として雇用され、同市内の県立高校で、生徒の登下校の見回りなどをしていた。事件当日は午前7時半から午後0時半まで勤務し、翌日も同じ時間帯で働いていた。
 県警捜査本部は10月下旬、遺体発見現場から約1km離れた、女性の軽乗用車が見つかった付近で、筧被告に似た人物を事件当日に見たという証言が得られた。11月27日、捜査本部は筧被告を参考人として事情を聴いたところ、「事件とは関係ありません」と関与を否定した。翌28日に自宅で、上半身を刃物で刺して自殺を図り、10日程度のけがだったが救急車で入院。その後退院した筧被告を12月9日午前、市内の商業施設で発見。筧被告に任意同行を求め、筧被告の供述に基づき、市内の田園地帯で凶器とみられる包丁を発見した。捜査本部は10日、筧被告を殺人容疑で逮捕した。
 筧被告は逮捕当初、「自分が殺した。現金数十万円を車内から奪った」と供述していたが、起訴前から犯行を否認。津地検は12月28日、筧被告が事件後に借金を返済していたことなどから、殺人罪ではなく強盗殺人罪を適用して起訴した。
裁判所
 津地裁 岩井隆義裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月26日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年3月4日の初公判で、筧被告は「殺していない。金も奪っていない」と全面的に起訴内容を否認した。
 冒頭陳述で検察側は「筧被告には収入がほとんどなく、5000万円以上の借金があり、多額の現金を持ち歩く被害者を殺害した。被告の説明に基づき凶器は発見され、事件当日の午後4時20分頃に4万円余を返済している」と指摘した。弁護側は「女性の知人の男が真犯人」と主張。付き添って現場にいた筧被告は、男の依頼で女性の車を乗り捨てるなどしたと説明、筧被告の供述に基づき発見された包丁は、車内にあったため捨てたとした。
 8日の第5回公判で、焦点となっている供述の任意性について、検察側は「取り調べは休憩や食事を挟み、被告の体調に問題はなかった。供述には任意性がある」と主張。弁護側は「退院してすぐに深夜まで、意識がもうろうとするまで調べた。楽になりたいと自白した。証拠にはならない」と指摘した。
 15日の論告で検察側は、「執拗に刃物で攻撃した残忍な犯行で、金目当ての動機にも酌むべき点はない」と断じた。同日の最終弁論で弁護側は、「長時間の取り調べの末に取られた自白調書は無効」などとして無罪を主張し、結審した。
 判決で岩井隆義裁判長は「計画性が高く態様は残忍。殺害直後から奪った金を借金返済や遊興費に使い、反省や後悔が一切見られない」とした。争点となった供述の任意性を認め、弁護側が主張した第三者の犯行の可能性などについては「弁解は不合理な点が多く信用できない。被告が犯人であることは明らか」として全面的に退けた。
備 考
 被告側は即日控訴した。2013年10月1日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
松本英也(54)
逮 捕
 2011年10月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 東京都渋谷区の雑居ビルをめぐり、ビル管理会社の顧問である男性は、山口組系の代表的な経済ヤクザだったG組のフロント企業との間で起きたトラブルの矢面に立っていた。
 G組長の側近であり若頭補佐でG組系組長だった松本英也被告は2005年春頃、配下の幹部K組員らに男性(当時58)の監視を指示。1年後の2006年3月5日夜、K組員が港区北青山の路上で男性を待ち伏せし、背中などを刺して殺害、逃走した。
 2006年5月、雑居ビルの不正登記を行ったとする電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑でG組長(山口組を除籍)らが逮捕されたため、松本被告は6月末、K組員と目付役の男を成田空港から出国させるとともに2人を破門処分にし、組とは無関係ということにした。
 台湾を経由して中国入りしたK元組員らは中国マフィアの紹介で仕事を得ていたとみられ、2人はその後も中国人になりすまし、香港やマカオなどに潜伏していた。しかし警視庁はK元組員を実行犯と断定、潜伏先を中国とみて国際手配に踏み切った。このため、松本被告は2010年夏、2人に中国からの脱出を指示。2人は松本被告の知人男性の指示で、ベトナム、カンボジアを陸路で移動、2011年初め、タイに入国した。
 K元組員は2011年4月26日、目付け役の男とタイ・チェンライ郊外の山中を歩いていた際、一緒にいたタイ人ガイドの男に射殺された。軽傷で済んだ目付け役の男は不法入国が発覚したため、タイの警察当局に身柄を拘束された。ガイドの男は地元警察に逮捕された。逃亡を手助けした知人男性はその後病死している。
 殺人事件時、運転手だった男性は2010年12月、殺人容疑で逮捕されている。
 警視庁組織犯罪対策4課は2011年10月20日、殺人容疑で松本英也被告を逮捕した。
裁判所
 東京地裁 鹿野伸二裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年3月28日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年3月4日の初公判で、松本英也被告は「実行役に殺害の指示など与えていない」と無罪を主張した。
 検察側は冒頭陳述で、松本被告が実行犯の元組員ら2人に携帯電話やバイクを与えたり、うち1人を海外逃亡させたりしたことから、殺害を指示したと主張。これに対し、弁護側は「殺害の指示を示す直接証拠はない」と反論した。
 判決で鹿野裁判長は、松本被告が男性殺害後に報告を受け、組員を海外に逃亡させている点などに言及し、被告が犯行を指示したと認定。「無防備な一般市民を、組織を用いて殺害したもので、暴力団特有の考え方に基づく反社会性の高い犯行。配下の者に責任をなすり付け、反省の態度が全く見受けられない」と非難した。
備 考
 G元組長は、懲役2年執行猶予4年の刑が、2012年2月13日に確定している。
 K元組員は2011年11月9日、容疑者死亡の殺人容疑で書類送検されている。
 K元組員の目付役だった男性は、別の事件でタイの捜査当局に逮捕され、現地で服役した。2012年9月26日、タイから日本に強制送還された。
 殺害された男性の遺族は2012年8月10日、山口組組長、G元組長、松本英也被告、運転手の男性の計4人に対し、慰謝料など約1億8700万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。2012年10月4日、東京地裁で遺族側とG元組長の間で和解が成立した。G元組長が和解金として計1億1000万円を支払い、遺族側は他の3人についての請求は取り下げた。
 被告側は控訴した。

 2013年8月28日、東京地検は証拠担当の男性事務官が警視庁から送られた被害状況の鑑定書などを放置し、弁護側に証拠開示していなかったと発表した。事件は控訴審が始まる段階で、検察側は弁護側に謝罪し、鑑定書を含む捜査書類182点を開示した。事務官は2012年4月頃、捜査書類の受け入れ手続きをせず、机脇の段ボール箱に入れて放置。捜査と公判の各担当検事も書類に気づかず、弁護側の請求に「存在しない」と回答していた。2013年5月31日、別の事件で事務官の書類放置が発覚した。

 2013年9月20日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
曽根貴九一(83)
逮 捕
 2007年2月3日(殺人容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 静岡県吉田町の無職曽根貴九一(きくいち)被告は2007年2月1日午後0時15分頃、吉田町に住む義姉の無職女性(当時92)方に訪れ金を無心したが断られたため、玄関で女性の顔を数回殴った後に、鉈や金づち状の鈍器で頭などを何回も殴って殺害し、現金約26000円が入った財布を奪った。
 曽根被告は女性の死別した夫の弟で、女性に無心を繰り返していた。
 現場にいたA被告は殺害して奪った金と知りながら曽根被告から現金6000円を受け取ったが、自宅で燃やした後、2日に牧之原署に出頭した。
 曽根被告は逮捕当初から犯行を否認。弁護人は2007年2月15日、「動機も物証もなく誤認逮捕だ」として静岡地検に容疑者の即時釈放を申し入れた。申し入れ書によると、曽根被告は年金や不動産所得で経済的に困っておらず、自首したA容疑者が供述した殺害後に凶器を入れたとされる布袋にも血痕はなかった。また曽根被告は利き手の右手中指が不自由で物は強く握れないという。
 2月24日、静岡地検は曽根被告を強盗殺人容疑で起訴した。曽根被告は「突き飛ばしただけで殺していない。(曽根被告の自宅から見つかった)財布は生前に受け取ったもので中身は入ってなかった」と否認した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 山浦善樹裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月3日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 曽根貴九一被告は一・二審で無罪を主張している。
備 考
 証拠隠滅の容疑で逮捕されたA元被告は盗品等無償譲り受けの罪で起訴。2007年5月31日、静岡地裁で懲役1年執行猶予2年(求刑懲役1年)が言い渡された。
 2009年5月25日、静岡地裁で懲役16年判決。2012年5月8日、東京高裁で一審破棄、求刑通り無期懲役判決。

氏 名
坂本敏之(44)
逮 捕
 2009年9月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反(加重所持)
事件概要
 指定暴力団工藤会系組幹部坂本敏之被告、ならびに同会系の別の組のI組員は共謀して2008年9月10日午前2時50分頃、福岡県中間市に住む同会系組幹部(当時66)宅に侵入。拳銃で頭や胸などを撃って殺害した、とされる。拳銃は発見されていない。
裁判所
 最高裁第三小法廷 田原睦夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月8日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 坂本被告は一・二審で無罪を主張。一審では「犯行を認めた捜査段階の調書で秘密の暴露がなく、(暴力団関係者の)だれかをかばって虚偽の自白をした可能性が高く、実行犯と認定できない」として無罪が言い渡されたが、二審では調書について信用できると認定し、「間接事実を総合評価すると、坂本被告は殺害に深く関与したと認められる」と逆転有罪判決を言い渡していた。
備 考
 裁判員や親族に危害が加えられる恐れがあるとして、全国で初めて裁判員裁判の対象から除外された。
 I被告は無罪(求刑懲役20年)が言い渡された。二審でも無罪判決。上告せず確定。
 両被告とともに逮捕されていた組長と組員は、起訴されずに釈放されている。
 2011年2月7日、福岡地裁小倉支部で一審無罪判決。2012年9月21日、福岡高裁で一審破棄、無期懲役判決。

氏 名
山本孝幸(34)
逮 捕
 2011年4月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強姦致死
事件概要
 小田原市の電気設備業山本孝幸被告は2002年6月25日午前0時頃、厚木市の焼き肉店従業員だった女性(当時48)の帰宅途中、女性の自宅前の路上で顔を何度も拳で殴って暴行を加え、内臓損傷と頸部圧迫で殺害した。
 山本被告は事件当時、卸会社で働き、現場から約500m東にある女性と同じ町内のアパートに住んでいた。2003年10月まで契約期間があったのに、2002年10月に小田原市へ転居していた。女性と山本被告に面識はなかった。
 2011年春、公訴時効の廃止に伴い、神奈川県警捜査1課に未解決事件専従の特命犯が、21人体制で発足。女性の着衣から採取したDNAが山本被告のものと一致し、未解決事件専従の特命班が裏付け捜査を進め、4月20日、殺人容疑で山本被告を逮捕した。同班がかかわる初の逮捕事件となった。
裁判所
 最高裁第二小法廷 小貫芳信裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月9日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は無罪を主張している。
備 考
 2012年7月20日、横浜地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2012年11月15日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
西村豊(58)
逮 捕
 2011年5月21日(別の詐欺罪で服役中)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺他
事件概要
 都内で合鍵製作会社を経営していた西村豊被告は、同会社役員の工藤隆元被告と共謀。2009年4月20日、松戸市のアパートに住む従業員男性(当時52)の首をロープで首を絞めて殺害。男性が自殺したように装い、5月に生命保険金約2000万円を騙し取った。事件後、工藤元被告が「家に行ったら自殺していた」と通報し、千葉県警松戸署員が駆けつけたが、ロープで首をつった状態だったことや遺書のようなメモ残されていたことから、自殺と判断、司法解剖は行わなかった。
 西村被告は以前、中古車販売会社を経営していたが倒産。妻らと共謀して自分に掛けた保険金をだまし取る目的で2003年11月、自分が死亡したとする虚偽の死亡届を東京都中央区役所に提出し、その後は他人に成りすまして生活していた。2005年10月に他人名義で合鍵製造などを手がける会社を設立し、工藤元被告も役員に就任。同社は業績がふるわず、2007年頃から資金繰りが悪化し、2009年当時は倒産状態だった。
 男性は求人募集を見て応募し、2006年1月から勤務していた。男性は当時は「小島」姓だったが、西村被告は8カ月後、男性を結婚させて「高橋」姓に変えさせ、社内では「吉田誠」と名乗らせた。戸籍を失っていた西村被告はこの直後、自分の顔写真を張った「高橋久好」名義の運転免許証を不正に取得。さらに2007年11月、免許証を使って男性に成り済まし、会社を受取人とする生命保険契約を結んだ。2008年12月には男性を再婚させ、別姓に変えさせた上で、5カ月後に殺害した。発見された「借金した責任をとる」などと書かれた遺書のようなメモは、西村被告から借金をしていた男性を言いくるめて書かせていた。
 しかし西村被告の自宅で、当時交際していた女性が西村被告の本名が載っていた古い免許証を見つけた。捨てていなかった古い免許証に違和感を覚えた女性が警視庁に相談した結果、不審な行動が次々と明らかになった。
 西村被告は2003年の件でウソの死亡診断書などを保険会社に提出し、生命保険金約5400万円をだまし取ったとして警視庁に詐欺容疑で2010年5月10日に元妻ら3人とともに逮捕され、合計約8900万円をだまし取ったとして2011年3月、懲役7年の実刑が確定していた。警視庁が西村被告の周辺を捜査したところ、死亡した男性に生命保険が掛けられていたことが判明。再捜査の結果、他殺だったと判断し、工藤元被告とともに逮捕した。
裁判所
 東京高裁 八木正一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月10日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 西村被告側は「男性は自殺で、殺害していない」と改めて無罪を主張したが、高裁判決は一審判決と同様、被告が殺害をほのめかしたとする工藤元被告の供述は信用できるなどとして退けた。
備 考
 工藤隆元被告は2012年3月28日、東京地裁(村山浩昭裁判長)の裁判員裁判で懲役20年(求刑懲役25年)判決。8月14日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 2012年9月28日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2013年9月25日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
安承哲(41)
逮 捕
 2009年3月27日(強盗事件で現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂、強盗、窃盗他
事件概要
 元警備員で韓国籍の安承哲(あんしょうてつ 日本名・安田亨)被告は2008年12月29日、東大阪市内でタクシー運転手の男性(当時67)の首などを刃物で切りつけて殺害し、約2万円を強奪した。2009年1月5日、松原市内で男性運転手(当時61)の首などに刃物で切りつけて重傷を負わせ、約25,000円を奪った。
 3月15日、大阪市東住吉区のコンビニエンスストアで現金約35万円を奪った。その後、周辺で未遂を含め2件のコンビニ強盗事件を起こした。
 3月27日午前0時50分ごろ、大阪市東住吉区のコンビニエンスストア(15日と同じ場所)に白マスクをして押し入り、レジにいた男性店員(当時19)にナイフを突きつけて脅し、現金約54,000円を奪って逃走。その直後、現場近くで東住吉署員が自転車に乗った不審な男を発見。男は容疑を否認したが、マスクや軍手などの所持品が目撃証言と一致したことから強盗の疑いで逮捕した。
 他に2件の強盗、窃盗事件がある。
 安承哲被告は月12万円の生活保護を受けながらパチンコに頻繁に通い、消費者金融に300万円近くの借金があった。
 大阪府警捜査一課は5月23日、強盗殺人未遂容疑で安承哲被告を再逮捕。6月12日、強盗殺人容疑で再逮捕した。
 6月15日、大阪地裁(小松本卓裁判官)で開かれた強盗事件の公判で、弁護側が安被告は過去に精神的な疾患での通院歴があると述べた。その後公判は停止し、強盗殺人事件他と一緒に裁かれることとなった。
 大阪地検は6月26日、本格的な精神鑑定のための鑑定留置を大阪地裁に請求し、認められた。当初3か月、その後1か月延長した鑑定結果、地検は「刑事責任能力が認められる」と判断し、11月10日に起訴した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 横田尤孝裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月23日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 被告側は一、二審を通じ、殺傷事件では無罪を主張している。
備 考
 2012年2月13日、大阪地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2012年9月25日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
平田智大(23)
逮 捕
 2011年9月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、建造物侵入
事件概要
 無職平田智大(ともひろ)被告は、解体工田中勇気被告と共謀。2011年9月19日未明、東京都豊島区のゲームセンターに侵入し、事務所にいた経営者の男性(当時75)を暴行した後、平田被告が消火器で男性の後頭部を何度も殴って殺害。さらに、両被告は男性のズボンのポケットに入っていたカギの束を使って両替機から現金11万4400円を奪った後、再び店内に侵入して別の両替機から現金4万6200円を奪った。
 平田被告と田中被告は神奈川県内の少年院で知りあい、退院後も頻繁に会っていた。平田被告は以前からゲームセンターで遊んでいた。
 防犯カメラの映像などから2人が浮上。9月27日、逮捕された。
裁判所
 東京高裁 金谷暁裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月24日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 平田被告側は一審同様、「犯行時はてんかんの発作で意識がなかった」などと主張したが、金谷裁判長は、一審判決の認定に不合理な点はないと判断。「足が不自由な高齢者を狙った凶悪な犯行で、刑事責任は極めて重い」と述べ、無期懲役が重すぎるとは言えないとした。
備 考
 共犯で強盗致死などの罪で起訴された田中勇気被告は、「犯行は悪質だが、平田被告を止めるなどした」として懲役23年(求刑懲役25年)が言い渡された。田中被告は控訴せず確定。
 2012年11月1日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
王チン(22)
逮 捕
 2011年3月11日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 中国山東省出身の元留学生で、住所不定無職の王チン(チン=王へんに深のつくり)被告は2012年7月31日未明、JR別府駅前からタクシーに乗車。午前2時頃、大分県杵築市の路上で停車中のタクシー車内で、タクシー運転手の男性(当時74)の胸を包丁と果物ナイフで複数回刺すなどして殺害、売上金など約14,000円と携帯電話を奪うなどした。事件後は別府まで電車で戻り、市内の友人宅などを転々としていた。
 王被告は2012年3月、別府市の別府大短期大学部を卒業した。大学側によると、在学中は「親戚の会社に就職する」と説明していたが、卒業後は「就労ビザが取れない」と話していたという。
 大分県警は、近くの県道を上半身裸の男が歩いていたという目撃証言を複数得た。また現場から約2km先にある清涼飲料水の自販機には血痕が付着しており、付近の水路には男性の携帯電話が落ちていた。血液のDNA鑑定などから王被告を特定して逮捕状を請求。9月16日午後2時半頃、別府市内で捜査員が発見し、身柄を確保した。
裁判所
 大分地裁 真鍋秀永裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月25日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年4月23日の初公判で、王被告は「間違いありません」と、起訴事実を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、動機を「4年制大学への編入も就職のあてもないまま短大を卒業した。就職も進学も出来ず、在留期限も切れた。金に困り、抵抗されることなく金を奪うため殺害を計画した」と主張。当時は廃虚になったアパートで寝泊まりしており、凶器のナイフ、手袋をビニール袋に入れてJR別府駅に向かい、付近で客待ちしていた被害者のタクシーに乗車した、と説明した。事件前にも、以前のアルバイト先の飲食店から金を盗むなどしていたと困窮ぶりを明らかにした。これに対し、弁護側は「両親に帰国したいと伝えたが、『日本で就職してほしい』などと言われた。両親の理想と現実との違いに悩み、自暴自棄になった。まだ若くて前科前歴もない。取り返しのつかないことをしたと深く反省している」とし、情状酌量を求めた。
 24日の論告で検察側は、「金目的の動機に酌量の余地はない」として無期懲役を求刑した。弁護側は「就職や進学先が決まらず、自暴自棄になり精神的に追い詰められた。前科前歴はなく真摯に反省している」と情状酌量を求めた。  判決で真鍋裁判長は、「金銭目的でためらうことなく人命を奪った。確実に絶命させようと多数回にわたって切りつけるなど、残忍かつ執拗。被害者は家族や同僚から慕われ、事件の半年後に退職するはずで、無念の思いや恐怖、苦痛は多大」と指摘。「反省を深め、残りの人生をかけて被害者や遺族の苦痛、悲嘆を理解させるべきだと判断した」と述べた。被告に向かって「反省を深め、被害者や遺族のことを考えてほしい」と説諭すると、被告は「分かりました」と日本語で答えた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
菅田伸也(34)
逮 捕
 2009年10月26日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、強盗殺人幇助、営利誘拐(幇助)、逮捕監禁(幇助)他
事件概要
【東京都暴力団組員殺人事件】
 笹本智之被告と菅田伸也被告、事件当時少年被告(当時19)は1999年1月31日午前9時頃、暴力団組員の男性(当時31)が住む東京都中野区内のアパートで、就寝中の男性の顔や頭を菅田被告が鉄パイプで殴り、当時少年被告がロープで首を絞め、殺害。遺体を仙台市太白区内の山林へ遺棄した。男性は、当時笹本被告が所属していた暴力団幹部の組織だった。男性の遺体は2009年7月、仙台市太白区の山林で白骨化して見つかった。
 ※ただし、事件当時少年被告と菅田伸也被告は一審無罪判決。

【亘理町自衛官保険金殺人事件】
 菅田伸也被告、山田純也被告、鈴木浩人被告、千葉県習志野市の会社員佐々木誠被告は、2000年8月6日、宮城県亘理町に住む自衛官の男性(当時45)方で、男性の首を絞めるなどして殺害した。妻のまゆみ被告は「外出先から戻ると、夫が台所で首をつっていた」と警察官に説明していた。県警は、遺体の首付近に血痕が付着しているなど不審な点はあったが、目立った外傷はなかったため、検視で自殺と断定。司法解剖はしなかった。菅田被告はまゆみ被告が仙台市内の飲食店でホステスをしていた時の客であり、殺人はまゆみ被告が菅田被告ら4人に持ちかけたものであった。まゆみ被告は菅田被告らへの報酬として、保険金からそれぞれ数百万円を支払った。ただしまゆみ被告は、その後も事あるごとにカネをせびられた。
 刑事部長は逮捕当日、検視に誤りがあったことを認め、「誤認検視の絶無に取り組む」とのコメントを出した。

【仙台市男性強盗殺人事件】
 笹本智之被告は菅田伸也被告、小谷野裕義被告と共謀。2004年9月3日夕方、東京都の井の頭公園付近で、拳銃の取引をするなどと偽って誘い出した仙台市青葉区の風俗店経営の男性(当時30)を車に乗せ、顔に粘着テープを巻き付け両手に手錠をかけて監禁。茨城県内の貸別荘を経由し、同月4日午前10時半ごろに仙台市太白区秋保町の山林に着くまで連れ回し、11時半頃に男性の首をロープで絞め、頭をバールで殴るなどして殺害。死体を遺棄した後、同日夜から6日ごろまでの間、男性の自宅金庫から現金約5000万円と預金通帳数冊を奪った。川本仁哲被告と砂田信宏被告は東京都内から茨城県の貸別荘に向かう乗用車内や別荘での暴行に加わり、更に現金60万円を奪った。鈴木浩人被告も都内から茨城県、更に仙台市の山林までの監禁に共謀した。
 笹本被告は男性と高校時代からの友人で、男性の経営する貸金業を手伝っていた。笹本被告は「子分のように使われた」と供述しており、給料が少ないことに不満をもち、知人らとともに金を奪うことを計画した。

[逮捕に至る経緯]  笹本智之被告は2006年10月16日に「仙台での男性暴行事件」(過去の事件参照)で逮捕監禁容疑で逮捕された後、取り調べの中で仙台市の不明男性の名前を挙げ、「男性を殺害し、(仙台市太白区の)秋保の山林に埋めた。金庫の鍵を奪って金を盗んだ」と暴露。さらに2007年6月25日に開かれた西田清被告の公判で、証人として出廷した弟の笹本和良被告(当時)が弁護人の尋問で「兄から人を殺したことがある。○○(男性)の件で」との質問を肯定。さらに家へ3000万円を持って戻ってきたと答えた。宮城県警は、笹本被告らの供述は信憑性が高いと判断。2006年11月に犯行グループの1人が指し示した場所を掘り返した、男性のものとみられる毛髪などを採取したが、他には何も見つからなかった。同じ場所は2009年6月にも再度掘り返しているが、同様の結果であった。しかし4月下旬から5月上旬、笹本被告らが男性を連れ回したという東京都内の繁華街や茨城県内の貸別荘などに捜査員を派遣し、「供述だけではない証拠が得られた」(捜査幹部)として、遺体が未発見のまま営利誘拐と逮捕監禁容疑での逮捕に踏み切る。
 宮城県警は2009年8月13日、営利誘拐と逮捕監禁容疑で受刑中の笹本智之被告と小谷野裕義被告、菅田伸也被告、川本仁哲被告、砂田信宏被告の計5人を逮捕。仙台地検は31日、5人を同容疑で起訴した。
 10月26日、宮城県警は笹本被告、小谷野被告、菅田被告、川本被告の4人を強盗殺人容疑で再逮捕した(死体遺棄はすでに時効)。仙台市青葉区の会社役員鈴木浩人被告を新たに営利誘拐と逮捕監禁容疑で逮捕した。
 仙台地検は11月16日、笹本被告、小谷野被告、菅田被告を強盗殺人容疑で追起訴。川本被告と砂田被告を強盗容疑で追起訴。鈴木被告を逮捕監禁容疑で起訴した。
 さらに笹本被告は「1999年にも東京都内の暴力団組員の男を殺した」と供述。2009年7月、宮城県警は仙台市太白区内の山林を捜索。白骨化した暴力団組員男性の遺体を発見した。2010年2月10日、宮城県警は笹本智之被告と菅田伸也被告を殺人容疑で再逮捕。当時少年被告と山田純也被告を殺人容疑で逮捕した。
 仙台地検は3月3日、笹本被告と菅田被告、当時少年被告を殺人容疑で起訴した。山田純也被告は「死体遺棄のみの関与だった」として処分保留で釈放した。死体遺棄罪は公訴時効(3年)を迎えている。
 さらに笹本智之被告は「菅田被告が自殺を装って自衛官を殺害し、保険金を手に入れている」と話したことから、宮城県警が捜査。3月3日、保険金殺人事件で菅田伸也被告、山田純也被告、鈴木浩人被告、佐々木誠被告、高橋まゆみ被告の5人が逮捕された。仙台地検は3月25日、5人を殺害の容疑で起訴した。

 上記らの事件は、笹本智之被告が1994年頃に結成した犯罪組織「BTK」のメンバーが関与している。高校時代の同級生でマフィアにあこがれた男性(2004年9月殺害)と笹本被告の2人で結成。組織名は「殺すために生まれた(Born To Kill)」から名付け、2人がリーダー格だった。ナンバースリーだった菅田伸也被告も高校生のころに加入。組織は拡大しながら犯罪を繰り返した。
裁判所
 仙台高裁 飯渕進裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月25日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2012年10月9日の控訴審初公判で検察側は、東京都暴力団組員殺人事件を「無罪」、仙台市男性強盗殺人事件を「ほう助罪」とした一審の判断に「事実誤認がある」と主張。弁護側は、亘理町自衛官保険金殺人事件の「主犯格」を菅田被告としたことを不服とした。
 12月11日の第2回公判で菅田被告は、事件ごとに別々の裁判員が担当した3区分審理が行われたことについて「同一事実について(裁判によって)評価が変わり、公正な判決とは思わなかった。一括審理が十分可能で、同一の裁判体に裁かれたかった」などと述べた。
 判決で飯渕裁判長は、東京都暴力団組員殺人事件は「『殺害への関与を裏付ける可能性のある客観的証拠が欠落している』とした一審判決は総合評価して吟味しており、支持できる」とした。仙台市男性強盗殺人事件については「犯行を容易にするための行為にとどまり、首謀者との間に共謀が成立した証明はない」と述べた。亘理町自衛官保険金殺人事件に対しては、「犯行計画を立案し、報酬を管理できる立場にあった。犯行を主導したと評価できる」と判断し、「刑事責任は極めて重大で量刑は相当」とした。
共犯者の裁判結果
[事件別]
 東京都暴力団組員殺人事件で殺人罪に、仙台市男性強盗殺人事件で強盗殺人罪他に問われた笹本智之被告は2010年8月27日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)の裁判員裁判で懲役15年+無期懲役判決(求刑同)。途中で確定判決を挟んでいたため、別々に判決を言い渡された。控訴せず確定。
 東京都暴力団組員殺人事件で殺人罪に問われた当時少年被告は2011年9月1日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)の裁判員裁判で無罪判決(求刑懲役13年)。2012年9月27日、仙台高裁(飯渕進裁判長)は検察側控訴を棄却した。上告せず、無罪確定。
 仙台市男性強盗殺人事件で強盗致死、営利誘拐等に問われた小谷野裕義被告は2010年10月27日、仙台地裁(川本清巌裁判長)の裁判員裁判で懲役15年判決(求刑無期懲役)。2011年7月19日、仙台高裁(飯渕進裁判長)で一審破棄、差し戻し判決。2012年3月5日、最高裁第二小法廷(須藤正彦裁判長)で被告側上告棄却、二審差し戻し判決が確定。裁判員制度が施行されて以降、裁判員裁判のやり直しは初めて。2013年2月8日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)は求刑通り無期懲役判決を言い渡した。2014年2月27日、仙台高裁で一審破棄、懲役15年判決。
 仙台市男性強盗殺人事件で営利誘拐と逮捕監禁、強盗罪に問われた川本仁哲被告は2010年2月24日、仙台地裁(卯木誠裁判長)で懲役5年判決(求刑懲役10年)。7月20日、仙台高裁(飯渕進裁判長)で被告側控訴棄却。
 仙台市男性強盗殺人事件で営利誘拐と逮捕監禁、強盗罪に問われた砂田信宏被告は2010年6月3日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)で懲役7年判決(求刑懲役10年)。
 亘理町自衛官保険金殺人事件における殺人罪と、仙台市男性強盗殺人事件における逮捕監禁罪に問われた鈴木浩人被告は2010年7月15日、仙台地裁(鈴木信行裁判長)の裁判員裁判で懲役17年判決(求刑同)。12月27日、仙台高裁(飯渕進裁判長)で被告側控訴棄却。
 亘理町自衛官保険金殺人事件における殺人罪に問われた佐々木誠被告は2010年9月10日、仙台地裁(川本清巌裁判長)の裁判員裁判で懲役15年判決(求刑同)。控訴せず確定。
 亘理町自衛官保険金殺人事件における殺人罪に問われた山田純也被告は2010年10月1日、仙台地裁(川本清巌裁判長)の裁判員裁判で懲役13年6月判決(求刑懲役15年)。控訴せず確定。山田被告は東京都暴力団組員殺人事件で遺体を埋めたとされているが、死体遺棄については時効が成立している。
 亘理町自衛官保険金殺人事件における殺人罪に問われた高橋まゆみ被告は2010年11月19日、仙台地裁(川本清巌裁判長)の裁判員裁判で無期懲役判決(求刑同)。2011年5月24日、仙台高裁(飯渕進裁判長)で被告側控訴棄却。上告せず?確定。
備 考
 2011年12月20日、仙台地裁で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。検察側は上告せず。2015年3月10日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
大芦明(45)
逮 捕
 2011年11月5日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、銃刀法違反
事件概要
 堺市の大工、大芦(おおあし)明被告は同居する父親の大工仕事を普段から手伝っており、2011年11月5日も午後2時ごろから裏庭で電動かんなによる作業をしていたところ、隣家に住む女性(当時45)の同居人である男性(当時61)から騒音で注意された。その後仕事を止めて自宅にいたが、約2時間後、隣家の大きなドアの音を聞いた大芦被告は、再び苦情を言いに来ると考えて激高。午後4時15分ごろ、自宅台所から出刃包丁(刃渡り18.7cm)を持ち出し、隣家の前で男性を刺したのち、近くにいて悲鳴を上げた女性も刺して殺害した。包丁を捨てて逃走したが、電話で知人の説得を受け、約10分後に現場から約800m離れたコンビニ店の駐車場から110番通報。駆け付けた警察官が殺人未遂容疑で緊急逮捕した。  大芦被告宅の敷地内には作業場があり、大工である父親や大芦容疑者が使う工具の音が周囲に聞こえていた。被害者は約1年半前の転居直後から騒音に抗議するほか、大芦被告宅の訪問客らが、付近の路上に駐車することにも抗議していた。  大阪地検堺支部は堺簡裁に大芦被告の鑑定留置を申請し、簡裁は4月24日付で申請を認めた。2012年3月7日、刑事責任を問えると判断した大阪地検堺支部は、大芦明被告を殺人と銃刀法違反の罪で大阪地裁堺支部に起訴した。
裁判所
 大阪地裁堺支部 畑山靖裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年4月26日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年4月16日の初公判で、大芦被告は「殺害したことは間違いありません」と起訴内容を認めた一方で「女性を殺害した状況は、頭が真っ白で覚えていません」と述べた。
 検察側は冒頭陳述で、大芦被告が、騒音などをめぐって家族が男性に苦情を言われたことなどから憎悪を募らせたと指摘。犯行時の行動に異常はなく「責任能力があった」と述べた。一方、弁護側は「女性の殺害時は心神喪失状態で責任能力はなかった」と訴えた。
 4月19日の論告で検察側は、「結果は重大だ。完全責任能力もあった」として無期懲役を求刑、弁護側は「心神耗弱かそれに近い状態だった」と懲役20〜26年を求めた。
 判決で畠山裁判長は、精神鑑定した医師の「かっとなって行動したという正常な心理の範囲内だった」との証言を基に、完全な責任能力があると認定した。大芦被告が男性から「(大工仕事の)音がうるさい」などと強い口調で苦情を言われ、追いつめられた心境にあったと認めたが、「殺害を正当化するものではなく短絡的だ」と指摘した。そして「執拗で残虐な犯行。2人を殺害した責任は極めて重い」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2013年11月中に大阪高裁(中谷雄二郎裁判長)で被告側控訴棄却と思われる。

氏 名
山下政彦(47)
逮 捕
 2011年11月3日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、銃刀法違反
事件概要
 松江市の無職山下政彦被告は2011年11月3日午前6時半頃、松江市の地下道で近くに住む散歩中の男性(当時89)に金を要求。断られたため、持っていた刃渡り19cmの包丁で男性の腹を刺した。
 数分後、男性が倒れているのを通行人が発見し、110番した。男性は市内の病院に運ばれたが、同日午後死亡した。地下道の防犯カメラに包丁を持った山下被告が映っていたことから松江署は事件から約5時間後、山下被告を強盗傷害容疑で緊急逮捕した。
 山下被告は11月17日から2012年2月20日まで精神鑑定のため、鑑定留置された。2月24日、松江地検は山下被告を起訴した。地検は「鑑定結果や犯行前後の言動などから、責任能力に問題はない」と判断した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 横田尤孝裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年5月8日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は殺意がなかったと主張している。
備 考
 2012年7月13日、松江地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2012年12月9日、広島高裁松江支部で被告側控訴棄却。

氏 名
前田和隆(43)
逮 捕
 2011年9月14日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火
事件概要
 神奈川県厚木市の前田和隆被告は、2011年4月2日午前2時頃、厚木市に済む別居中の妻らが住む木造2階建て住宅1階の戸袋など4か所にガソリンをまき、その上に、ライターで点火した新聞紙を投げて火をつけ、2階で就寝中の義父(当時70)と義母(当時64)を焼死させた。2階で就寝中の妻は、屋根伝いに逃げて無事だった。妻らと同居していた2人の子供は事件前日、自宅に泊めていた。
 前田被告は2008年5月、同居していた義父母らと関係が悪化して別居生活を始めた。翌年3月以降、妻に再度の同居を申し入れたが断られ、不満を募らせていった。前田被告は2011年2月まで、在日米陸軍キャンプ座間に施設修理担当などで勤務していたが、犯行当時は無職だった。
 県警捜査1課と厚木署は9月14日、建築資材販売店員となっていた前田被告を逮捕した。
裁判所
 東京高裁 井上弘通裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年5月21日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「殺意はなく、一審判決の量刑は重すぎて不当」と主張したが、井上弘通裁判長は「放火までする動機を持つ者はほかにおらず、ガソリンをまいて放火することの危険性を被告は認識していた。義父母らを殺害すれば子どもと同居できると考えた。犯行の結果はあまりにも重大とする一審判決の量刑は相当」と指摘した。
備 考
 2012年11月27日、横浜地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2013年11月13日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
外山硬基(26)
逮 捕
 2010年8月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強姦致死、強姦致傷他
事件概要
 札幌市の会社員外山硬基被告は、知人と酒を飲んだ後の2010年8月23日午前4時30分頃、50歳代の女性を乗用車ではねて重傷を負わせた。さらに暴行しようとしたが抵抗されたため、目的を果たせなかった。午前5時10分ごろ、札幌市中央区ススキノの路上で帰宅途中の飲食店従業員の女性(当時45)を約40km/hのスピードではね、車内に連れ込んで乱暴した後、約8km離れた同市西区の山中にある砕石会社の草むらに放置した。
 衝突の現場を見た住民が110番通報。道警が捜査を始めたところ、約1時間後、砕石会社の従業員は女性を発見し通報。女性は意識不明の重体で、12日後に死亡した。
 道警は同日夕方、1件目の強姦致傷容疑で外山被告を緊急逮捕した。9月13日、殺人と強姦致死容疑で外山被告を再逮捕した。
 飲酒で心身耗弱状態だった可能性があるとして、札幌地検は10月1日〜12月20日に鑑定留置を行った。12月22日、札幌地検は外山被告を起訴した。
裁判所
 札幌高裁 山本哲一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年5月28日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2013年5月14日の控訴審初公判で、弁護側は「殺意はなく、責任能力は限定的だった。事実誤認と量刑不当」と主張し、検察側は控訴棄却を求め、即日結審した。一審判決で「事件を他人事のように語り、真剣に反省しているとは到底認められない」と指摘されたことに対し、外山被告は「大変な罪を犯して、他人事にはみじんも思っていない」と否定した。
 判決で山本裁判長は「何ら落ち度のない被害者を立て続けに強姦目的で襲った非常に悪質な事案。性欲のはけ口として被害者を物のように扱った」と厳しく非難。山本裁判長は最大の争点の殺意の有無について「『死ぬかもしれない』という未必の故意を認定した一審判決には合理性がある」と指摘。また、責任能力についても一審と同様に「完全な責任能力があった」として弁護側の主張を退けた。
備 考
 事件当時、江別市の不動産会社を経営しているのは被告の父親であるという嘘が「2ちゃんねる」等のインターネット上に飛び交い、不動産会社に苦情電話が相次いで業務が麻痺した。特に静岡県富士市の小学校非常勤講師の男性(当時34)は、事件2日後の8月25日に、外山被告の名前をタイトルにしたブログを開設。不動産会社を名指しし、同社の信用を損ねた。会社社長は無関係を訴えるビラを市内で配布するとともに、道警に被害届を提出した。北海道警江別署は2011年1月13日、信用毀損の疑いで男性を書類送検した。
 男性はネット上で約1000のブログを開設してアフィリエイトによる広告収入を得ており、月10万〜20万円相当のポイントを得ていた。

 2012年12月14日、札幌地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
今井精一(68)
逮 捕
 2012年3月31日(暴力行為等処罰法違反容疑。2012年4月20日、殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反、暴力行為等処罰法違反
事件概要
 住所不定、無職今井精一被告は2012年3月31日午後4時55分頃、富山県高岡市で、乗っていたタクシー運転手の男性(当時58)の首の左側を所持していた小刀(刃渡り約13cm)で1回刺し、出血性ショックで殺害した。さらにこの約30分後、犯行に使った小刀で別のタクシーの女性運転手(当時51)を脅し、金を払わず下車した。事件当時、今井被告は現場近くのスナックで酒を飲んでおり、タクシーは配車依頼によるものだった。
 タクシー運転手の男性は午後4時56分ごろ、会社に「襲われた」と電話。そして午後5時ごろ、男性が倒れているところを通行人が発見し、県警高岡署へ通報した。
 女性運転手を脅して下車し、歩いていたところを、高岡署員が発見し、所へ任意同行し、暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕した。小刀に付着していた血液が男性のDNA型と一致したほか、男性のタクシーの外側から今井被告の指紋を検出したこと等から4月20日、殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 名古屋高裁金沢支部 彦坂孝孔裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年5月30日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2013年4月18日の控訴審初公判で弁護側は、「今井被告はアルコール依存症とみられ、事件当時は酩酊状態で、責任能力が低下していた」などとして量刑不当を主張した。今井被告は被告人質問で「酒を飲むと気が短くなり、事件直前はいつもより多く飲んでいた。一番の原因は酒だと思う」と主張。検察側は控訴棄却を求めて即日結審した。
 判決で彦坂孝孔裁判長は、被告は犯行後に逃走を図り、警察に通報されないよう合理的な行動をとっていると指摘、「責任能力が劣った状態にはなかった」と弁護側の主張を退けた。そして「被告の刑事責任は重大。犯行は極めて悪質で動機にも酌量の余地がなく一審判決には何ら不合理な点は認められない」と述べた。
備 考
 今井精一被告は1991年8月4日夕方、高岡市の質店で、質入れを断られたことに腹を立て、同質店店主の女性(当時79)を突き倒したあと、いたずらをしてけがを負わせた。その後、女性が意識を取り戻し声を上げたため、わいせつ行為の発覚を恐れてタオルで首を絞めて殺害した。事件直後の8月28日に高岡市内の貴金属店で指輪1個(41万円相当)を盗み、有罪判決を受けて服役、出所して1995年末に県内へ戻ったが、1996年1月11日、逮捕された。殺人とわいせつ致傷の罪で起訴され、1996年5月29日、富山地裁高岡支部で懲役15年判決(求刑懲役18年)を受け、服役していた。今井被告には他にも複数の前科がある。
 2012年12月10日、富山地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2013年11月18日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
内田幸史(38)/松崎光二(49)
逮 捕
 2012年7月22日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 新聞販売店従業員の内田幸史被告と、元新聞販売店従業員の松崎光二被告は2012年7月21日午後9時頃、千葉県市原市のアパートに住む毎日新聞販売所店長の男性(当時56)方で、ベルトなどで男性の首を絞めて殺害。現金約6000円が入った財布を奪い、遺体を市内の山林に遺棄した。
 7月22日、千葉県警は松崎被告を死体遺棄容疑で逮捕。松崎被告の自供で25日、内田被告を死体遺棄容疑で逮捕した。8月13日、強盗殺人容疑で2人を再逮捕した。
裁判所
 千葉地裁 稗田雅洋裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年6月5日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年5月27日の初公判で、2人はいずれも起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、内田被告は男性から「店に空き巣に入った」と疑われたことなどに怒り、2011年夏ごろ、殺害を考え始めたとした。松崎被告は2012年6月末に解雇され、その後給料を支払われなかったことなどから殺害を決意。2人は遺体を捨てる場所の下見に行ったほか、男性の携帯電話を持ち去ることなどを事前に計画していたと主張した。一方、内田被告側は「計画性はなく、突発的な犯行だった」と主張し、松崎被告側は「内田被告が主導し、指示に従って行動した」と訴えた。そして弁護側は、2人が事件後、反省していることなどを主張した。
 30日の論告で検察側は、「パチンコ代や生活費欲しさから犯行に及んだ」と指摘。遺棄現場を下見し、計画性もあったと主張した。動機となった労働上の不満なども「殺意を抱くほどの理由にはならない」と述べた。松崎被告側は「内田被告からの勧誘や指示がなければ、殺そうとまでは思わなかった」とした。
 判決で稗田雅洋裁判長は「結果は極めて重大。遺棄現場を下見するなど計画的犯行という面も認められ、勤務態度が良くなかったことなども併せると、動機や経緯は身勝手で酌むべき事情は乏しい」と述べた。
備 考
 内田幸史被告は控訴せず確定。
 松崎光二被告は控訴した。2013年10月9日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
伊能和夫(62)
逮 捕
 2010年1月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 住所不定無職、伊能和夫被告は2009年11月15日午後3時ごろ、東京都港区のマンションで金品を強奪するために飲食店経営の男性(当時74)方に侵入。部屋にいた男性の首を刃物で突き刺すなどして殺害した。
 伊能被告は事件後に地下鉄で台東区内に移動し、同16日夜に上野公園前で酒に酔って暴れているのを上野署員に保護された。翌17日に上野署を出たが、同署前の掲示板に投石し、器物損壊容疑で現行犯逮捕された。その後、伊能被告の靴底に男性のものとみられる微量の血痕が付着しており、マンションの手すりには伊能被告の指紋があり、付近の防犯カメラに伊能被告と酷似した男が写っていたことから、伊能被告を強盗殺人容疑で2010年1月20日に再逮捕した。
 伊能被告は2009年5月に出所し、埼玉県内の生活保護受給者用施設で寝泊まりしたり、建設現場で働いたりしていたが、事件当時は仕事をしていなかった。
裁判所
 東京高裁 村瀬均裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2013年6月20日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 一審は裁判員裁判。伊能和夫被告は逮捕当初から黙秘している。
 2011年2月24日の初公判で、伊能被告は罪状認否で、名前からすべてについて証言台の前で直立したまま無言を貫いた。このため、吉村裁判長が検察官に、「法廷にいる者と被告の同一性を明らかにしてください」と指示。検察官が、器物損壊容疑で逮捕された際に撮影した伊能被告の写真を提示し、「被告本人です」と述べた。
 検察側は冒頭陳述で、伊能被告が事件当日に包丁を購入し、男性の自宅マンション前をうろついていたと主張。玄関と窓を開けたまま昼寝をしていた男性の部屋へ侵入し、包丁で首を刺して殺害した後、室内を物色して逃走したと述べた。そして現場から被告の指紋などが見つかった、被告の靴底に男性の血液が付着していた、マンション付近の防犯カメラに被告が写っていたことから「被告が犯人である」と主張した。
 弁護側は「事件当日、現場には行っておらず、殺害もしていない」と無罪を主張した。
 3日の被告人質問では弁護側が「質問はございません」と述べ、検察側質問に移った。伊能被告は裁判長の「椅子に座って」との呼びかけに無言で応じたが、検察官が「声が聞こえているか」「質問されていると分かるか」と呼びかけても、目をつぶり下を向いて黙り続けた。
 4日の論告で検察側は、現場室内から被告の掌紋が見つかったことや、被告の靴底に付着していた血液が男性のDNA型と一致したこと、犯行時刻前後に近隣の防犯カメラで撮影された被告とみられる男の映像などから「間接証拠を総合すると被告が犯人なのは明らか」と指摘。その上で「身勝手極まりない動機から何ら落ち度のない男性を殺害した。犯罪傾向は極めて深刻で改悛の情はみじんもなく、死刑選択はやむを得ない」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「被害者宅は玄関が無施錠だった。被告は被害者が何者かに殺害された後に空き巣目的で入った可能性がある」などと反論。「黙秘は憲法で保障された権利で、不利に考慮してはならない」と述べた。
 判決で吉村裁判長は、現場から被告の掌紋が検出され、被告の靴底に被害者の血痕が付着していたことなどから「状況証拠を総合すると被告が犯人と認められる」と有罪を認定した。そして「出所して半年で冷酷非情な犯行に及んだ。自分の利益だけを考え、人の命という最も重要な価値を軽く見た冷酷非情な犯行。2人殺害の前科は特に重視すべきで、生命をもって罪を償わせるほかない」と述べた。

 2012年7月17日の控訴審初公判で、弁護側は「被告と犯行を結びつける直接証拠はない。被告は犯人でない」として無罪を主張。仮に犯人だとしても、「被害者が1人であることなどを考えると、死刑を選択すべき事案ではない」と訴えた。検察側は控訴棄却を主張した。
 控訴審初公判を含め、その後の公判でも伊能和夫被告は出廷しなかった。
 判決で村瀬裁判長は、被告の靴底に男性の血液が付着していたことや、被告が事件直前に購入した包丁と男性の刺し傷の形状に矛盾がないことなどから「被告の犯行と認めた一審判決の認定に不合理な点はない」と判断した。そして、「被害者は1人で、当初から殺意があったとは到底言えない」と指摘。「前科と新たな罪に顕著な類似性が認められる場合に死刑が選択される」とした上で、心中目的などで妻子2人を殺害した前科と今回の強盗殺人に「類似性は認められない」と指摘。「一審は前科を過度に重視しすぎた。裁判員が議論を尽くした結果だが、刑の選択に誤りがある」と判断した。そして「殺意は強固だが、被害者が1人の事案で、死刑は選択しがたい」と述べた。
備 考
 伊能和夫被告は1988年11月5日正午ごろ、妻(当時36)が浮気をしていると疑って詰問、口論となり、カッとなって台所にあった包丁(刃渡り23.5cm)で刺殺した。その後、妻を殺したことで将来を悲観、子供と心中しようと同日午後8時ごろ、長男(当時8)と二女(当時3)の口に都市ガスのゴムホースを押しつけるなどした上、室内に灯油をまいて放火。二女を焼死させ、自分は自宅ベランダから約15m下の芝生に飛び降り1か月の重傷を負った。長男はベランダから近くの人に助けられ無事だった。
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火などの罪で起訴。1989年11月30日、千葉地裁で懲役20年(求刑同)の判決が言い渡された。控訴後、1990年1月25日に取り下げ、確定。
 2011年3月15日、東京地裁(吉村典晃裁判長)の裁判員裁判で、求刑通り死刑判決。裁判員裁判の死刑判決が破棄されたのは初めて。検察、被告側は上告した。2015年2月3日、検察・被告側上告棄却、確定。

氏 名
山口芳寛(22)
逮 捕
 2011年3月4日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄
事件概要
 熊本市の大学生山口芳寛被告は2011年3月3日午後7時半頃、同市の商業施設で、家族で買い物に来ていた女児(当時3)を多目的トイレに連れ込んでわいせつな行為をした上、 首を手で絞めるなどして殺害。遺体をリュックサックに入れ、8時ごろ、近くの排水路に遺棄した。
 熊本県警は4日午後、商業施設の防犯カメラに映っていた山口被告を任意同行。「女児を殺害し、川に捨てた」との供述通り遺体を発見したため、同日山口被告を死体遺棄容疑で緊急逮捕した。3月22日、山口被告は殺人罪で再逮捕された。
 熊本地検は4月6日、熊本簡裁に鑑定留置を請求し、認められた。期間は当初3か月だったが後に4か月に延長。8月13日、犯行当時に刑事責任能力はあったと判断し、熊本地裁は山口被告を起訴した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 白木勇裁判長裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年6月25日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 山口被告は一審で殺意の有無を、二審で責任能力を争っている。
備 考
 2012年10月29日、熊本地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2013年3月13日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
築山栄(61)
逮 捕
 2011年4月30日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、殺人未遂
事件概要
 大阪市東淀川区の無職築山栄被告は2011年4月27日午前2時35分頃、同市豊島区のアパート2階で、知人男性(当時44)の部屋で男性の首をナイフで刺して失血死させた。さらに室外に逃げ出した知人男性の元妻(当時39)の首などをナイフで切り付けて殺害。別の部屋から2人を助けようと出てきた男性(当時68)の首を刺して重傷を負わせた。その後、裏の非常階段から逃走した。
 築山被告、知人男性と女性は聴覚障害者で10数年前に知り合ったが、数年前から三角関係にあり、金銭トラブルも抱えていた。
 交友関係や重傷の男性の目撃証言より築山被告が浮上。大阪府警は4月30日午後、築山被告に任意同行を求め、事情を聞いたところ犯行を認めたため逮捕した。
裁判所
 大阪高裁 裁判長不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年7月5日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 不明。
備 考
 2012年11月15日、大阪地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2014年1月21日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
坂本明浩(53)
逮 捕
 2005年2月13日、広島東署銃撃事件における銃刀法違反他容疑で逮捕。2006年2月10日、「リンリンハウス」放火事件における殺人他容疑で再逮捕。
殺害人数
 4名
罪 状
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、覚せい剤取締法違反(営利目的所持)、威力業務妨害、銃刀法違反、組織的犯罪処罰法違反(建造物損壊)
事件概要
 神戸市のテレホンクラブ「コールズ」を経営していた中井嘉代子被告は1999年12月ごろ、神戸市内で経営するテレホンクラブの営業をめぐり、ライバル関係にあったテレホンクラブ「リンリンハウス」の営業を妨害しようと、広島市の元会社役員で、覚せい剤密売グループ会長坂本明浩被告に1000万円で犯行を依頼した。
 坂本被告は、依頼を承諾し、重機オペレータ佐野和幸受刑者と無職亀野晋也受刑者、暴力団員堀健一被告に犯行を指示。3人は2000年3月2日午前5時5分頃、盗んだナンバープレートを付けた乗用車で神戸駅前店に乗りつけ、一升瓶で作った火炎瓶1本を店内に投げ込んで同店の一部を焼き、店員1人に軽傷を負わせた。10分後には東約1キロの元町店に2本を投げ込んでビル2、3階部分計約100平方メートルの同店を全焼させ、男性客4人を一酸化炭素中毒で殺し、店員ら3人に重軽傷を負わせた。
 中井被告は坂本明浩被告の求めに応じ、犯行後、報酬や逃走資金などとして計約1億100万円を渡した。

 他に坂本被告は2004年2月9日午前0時5分頃、広島市中区の広島東署正面玄関に向けて拳銃を1発発射し、自動ドアのガラス2枚(189000円相当)を割った。
 坂本被告は覚せい剤密売組織「インターナショナル・シークレット・サービス」(ISS)の会長だったとされる。2005年6月27日、広島県警銃器薬物対策課と広島東署などは、2004年12月17日、広島市中区大手町の駐車場で、乗用車の車内にあったカップ食品の容器の中に覚せい剤約420グラムを所持した。
 坂本被告は2004年5月に広島市南区の喫茶店で、金融会社の社員を脅し30万円を取ったとして共犯者とともに恐喝容疑で逮捕されているが、2006年5月9日、共犯者と被害者との間で示談が成立したことなどから起訴猶予処分となっている。
裁判所
 最高裁第三小法廷 岡部喜代子裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2013年7月8日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 坂本被告は一・二審で無罪を主張している。
備 考
 広島東署発砲事件では、実行犯である元ISS幹部のM被告が銃刀法違反と組織的犯罪処罰法違反(建造物損壊)容疑で、他の脅迫事件における建造物損壊、威力業務妨害容疑とともに起訴された。2008年2月1日、広島地裁(細田啓介裁判長)で懲役14年、罰金200万円(求刑懲役18年、罰金200万円)が言い渡されている。11月11日、広島高裁(楢崎康英裁判長)は被告側控訴を棄却した。他に3人が有罪判決を受けている。

 佐野和幸受刑者(求刑死刑)と亀野晋也受刑者(求刑無期懲役)は2003年11月27日、神戸地裁で一審無期懲役判決。2005年7月4日、大阪高裁で検察・被告側控訴棄却(検察控訴は佐野受刑囚に対して)。2006年11月14日、最高裁で被告側上告棄却、確定。
 運転役だった堀健一被告は逃亡し、現住建造物等放火容疑で指名手配されていたが、2008年7月28日、愛媛県新居浜市内で逮捕された。2009年12月16日、神戸地裁で一審懲役20年判決(求刑無期懲役)。2010年8月4日、大阪高裁で検察・被告側控訴棄却。
 中井嘉代子被告は無実を主張したが、2007年11月28日、神戸地裁で一審無期懲役判決(求刑死刑)。2009年3月3日、大阪高裁で検察・被告側控訴棄却。2010年8月25日、被告側上告棄却、確定。
 手引き等をした神戸市の元土木資材販売業N被告は、殺人容疑で起訴された。2006年11月30日、神戸地裁にて傷害致死ほう助などの罪で、懲役9年(求刑懲役15年)を言い渡された。2007年10月18日、大阪高裁は一審判決を破棄、殺人のほう助罪などを適用したものの「重要な役割を果たしたとは言えない」と懲役6年に減刑した。被告側上告が棄却され、確定。
 坂本被告、N被告と一緒に殺人容疑で逮捕された無職男性は、関与の度合いが低かったとされ、起訴猶予となっている。
 2008年12月8日、神戸地裁で求刑死刑に対し一審無期懲役判決。2011年5月24日、大阪高裁で一審破棄のうえ、改めて無期懲役判決。

氏 名
落合益幸(66)
逮 捕
 2010年1月22日(殺人容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 組織犯罪処罰法違反(組織的殺人)、銃刀法違反(組織的加重所持)、組織犯罪処罰法違反(暴力)他
事件概要
 静岡市の指定暴力団山口組直系総長、落合益幸被告は2008年4月1日午前5時35分ごろ、組員らに指示し組織として、ふじみ野市内の暴力団事務所駐車場で住吉会系幹部(当時35)を射殺した。また同日、さいたま市内の住吉会系暴力団事務所のドアをバールなどで破壊した。
 3月31日、八潮市のファミリーレストラン駐車場で、山口組系暴力団関係者の男性(当時35)が刺殺された事件の報復が動機とされる。
 2009年3月9日、埼玉県警は山口組系暴力団組長ら5人を殺人容疑などで逮捕した。10日、別の容疑で逮捕していた暴力団組員8人を殺人容疑で再逮捕した。その後も逮捕が続き、2010年1月22日、殺人容疑で落合益幸被告ら3人が殺人容疑で逮捕された。合計40人以上が逮捕されている。
裁判所
 さいたま地裁 多和田隆史裁判長
求 刑
 無期懲役+罰金3000万円
判 決
 2013年7月18日 無期懲役+罰金3000万円
裁判焦点
 裁判員裁判。さいたま地検は、裁判員法3条に基づき、裁判員に危険が及ぶ恐れがあるとして裁判官だけで審理するよう除外請求を求めた2012年11月末に求めた。2013年1月末、さいたま地裁は、「同法3条の要件に該当しない」として却下した。除外が決定されたケースは2012年3月末までに2件あるが、除外請求が却下されたのは全国初とされる。
 2013年5月15日の初公判で、落合被告は「殺害の指示も共謀も一切していない」と起訴事実を否認し、無罪を主張した。
 冒頭陳述で検察側は、落合被告らが報復として組織的殺人に及んだと犯行の経緯を説明。「“返し”(報復)は、組織の威信を保つための暴力団特有の論理。落合被告の意向や指示に基づいて組織を挙げて相手の組員を殺害、報復を遂げた」と述べた。
 弁護側は、報復による殺害を被告が指示していない点を強調。組織による報復については「映画や漫画の世界のことでフィクション。組織の上の人は関わらないというのが基本的スタンスだ」と検察側の主張に反論した。
 7月8日の論告で検察側は、「犯行は組織の最高責任者である被告の指示によるもので、組織の威信とメンツを保つためには人を殺すこともいとわない暴力団の反社会性を強調している。被害者は抗争の巻き添えとなって命を奪われた」などと指弾した。同日の最終弁論で弁護側は、事件前後の通話記録や被告と組員のやりとりなどを説明し、「指示を出したという事実は一切存在しない」と無罪を主張した。
 多和田隆史裁判長は判決理由で「団体の威信を保つための組織による犯行で、実行犯の組員との間で共謀が認められる。被告が主犯であることは明らか。やられたらやり返すという暴力団特有の論理に基づく反社会的な犯行」と述べた。
備 考
 さいたま地裁は、公判のある日には組関係者の来庁に備えてゲート式の金属探知機を使って所持品検査をするなどの厳戒態勢を敷いた。法廷では、証人として出廷した組関係者を遮蔽板で囲い、傍聴席や被告人席から見えないように配慮している。地裁は「証人が被告人や傍聴人から見られることで受ける精神的負担を軽減するため、刑事訴訟法に基づいた措置だ」と説明する。法廷内には警備員が配置され、傍聴席と証言台の間には透明なついたてが立てられているが、裁判員の顔は通常の裁判と同じように傍聴席から見ることができる。
 裁判員の期間は、選任手続きがあった5月7日から判決までの73日間。最高裁などによると、震災による中断を除いた裁判員裁判では、木嶋佳苗被告の100日、上田美由紀被告の75日に次ぎ、全国で3番目の長さとなった。
 落合被告は殺人で前科2犯。いずれも暴力団がらみで2件で計2名を殺害、1名に重傷を負わせている。2件の合計で懲役27年。
 被告側は控訴した。2016年2月1日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
関戸良一(60)
逮 捕
 2012年9月8日(窃盗容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、非現住検討物等放火、詐欺未遂、窃盗
事件概要
 住所不定、無職、関戸良一被告は、知人である茨城県常陸大宮市の飲食店従業員、皆川昌弘被告と共謀。栃木県茂木町の整骨院経営の知人男性から関戸被告は約2255万円、皆川被告は約711万円の借金返済を免れようと、2012年6月17日午後8時10分頃、茂木町内のログハウス内で男性(当時63)に睡眠薬を飲ませた後、同18日午前2時45分頃、関戸良一被告の所有するパイプ椅子で頭を数回殴打。昏睡状態の男性を近くの川に突き落として溺死させ、現金1万円を奪うとともに、借金を免れようとした。
 関戸被告と皆川被告は1月頃から計画を練り、2月には、フィリピンにある火山に男性を誘い出した。火口に突き落とす計画だったが、観光客が多く断念。5月には、皆川被告が経営するラーメン店で睡眠薬入りラーメンを食べさせ、眠った男性を殺そうと計画したが、睡眠薬が効かなかった。
 それ以前の2011年11月4日午前3時50分頃、二人は関戸被告所有の民宿に放火し、漏電による火災として火災保険金約4500万円をだまし取ろうとした。事件当時、民宿は営業していなかった。2012年3月、共済組合に保険金支払い請求書を提出したが、組合は事件10日前に契約を結んだことや出火原因を不審に思い、保険金は支払われなかった。二人は保険金を借金返済に充てようと考えていた。
 2012年6月19日、家族が茂木署に捜査願を提出。23日、男性の遺体が茨城県大洗町の海岸で見つかった。
 仕事をせず車上生活をして困窮していた関戸被告は2012年9月8日午前6時20分頃、栃木県下野市の総合病院の屋外喫煙所で、上三川町に住む無職女性(80)の現金約36,000円などが入った巾着袋(計39,000円相当)を突然奪い、乗用車で逃走した。約1時間半後、宇都宮市内のスーパーの駐車場で発見され、窃盗容疑で宇都宮署員に緊急逮捕された。
 11月17日、関戸被告と皆川被告が非現住検討物等放火と詐欺未遂容疑で逮捕された。2013年1月7日、両被告が強盗殺人容疑で再逮捕された。
裁判所
 宇都宮地裁 松本圭史裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年7月23日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。窃盗容疑については2012年11月19日に宇都宮地裁(松本圭史裁判官)で初公判が開かれ、関戸被告は起訴事実を認めた。次回公判は2013年1月15日の予定だったが、おそらく強盗殺人他と合わせて審理されている。
 2013年7月17日の初公判で、関戸被告は「すべて事実です」と起訴事実を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、関戸被告と皆川被告が男性から多額の借金をしていたと指摘。これを免れようと昨年1月以降、フィリピンに誘い出し、崖から突き落とそうとしたり、生き埋めにするための穴を自宅裏山に掘ったりするなど、複数回にわたり殺害を企てていたことを明らかにした。また、関戸被告は、椅子で殴打して動かなくなった男性を軽トラックにつないで約1.4km引きずり川に落としたとし、「残忍な犯行」と指弾した。
 弁護側は、皆川被告の指示だったとして「深く反省している。厳しい刑を科すべきではない」と述べた。
 19日の第3回公判における被告人質問で、「最初から殺す気だったのではないか」という検察側の質問に関戸被告は「計画は全て皆川被告が考えた。上下関係があり、逆らえなかった」と主張。一方で「なぜ殺害をやめようとしなかったのか。遺族の気持ちを考えなかったのか」と問われると「自分の嘘がばれてしまうので、何も考えなかった」と話した。
 22日は意見陳述で男性の妻が出廷し、極刑を訴えた。同日の論告で検察側は、「(男性殺害の)話を持ち掛けてきたのは皆川被告だが、関戸被告は主体的に犯行に及んでいる」とし、「皆川被告に責任を押しつけ、言い訳をしている」と厳しく非難。「動機は極めて身勝手。犯行は計画的で、残酷な方法で殺害している」と指摘。同日の最終弁論で弁護側は、皆川昌弘被告が主導で計画していたことを挙げ、「皆川被告にも借金があり、それを免れるために、上下関係を利用して実行犯にさせられた。真摯に反省もしている」などとして、有期刑が相当と主張した。
 判決で松本裁判長は、「パイプ椅子で殴打するという殺害方法を自ら選択し、台風の影響で水かさが増すと考えて川へ突き落とすなど、主体的、積極的に関与した」と指摘。動機については「遊興費に使った多額な債務の返済を免れるため」などと厳しく非難し、さらに「被害者が高利の利息を要求したことが遠因」という弁護側の主張を「被害者は返済を要求したことすらない」として退けた。そして、「動機や経緯は身勝手で悪質で酌量の余地はない。理不尽な犯行により、突然その生命を奪われた。残された妻子の悲嘆も非常に大きい」と断じた。
備 考
 皆川昌弘被告は強盗殺人他容疑で起訴済み。控訴せず確定。

氏 名
室井都子(71)
逮 捕
 2013年2月25日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 無職室井都子(みやこ)被告は2002年6月21日正午頃、岡山市のアパートで、元清掃会社従業員の男性(当時70)に借金を申し込んだが断られたため腹を立て、男性の頭などを金槌のようなもので何度も殴ったうえ、首をタオルで締め付けるなどして殺害し、現金約6万円入りの財布を奪った。男性は一人暮らしで身寄りが無かった。
 室井被告は2001年11月頃から、事件が起きたアパートの別室で他の男性と同居していた。2001年12月から2002年3月頃まで偽名を使って被害者の男性と同じ清掃会社に勤めていたが、頻繁に他の従業員や会社から金を借りていたため、辞めさせられた。事件が起きたアパートは、清掃会社の持ち物だった。
 室井被告はその後も男性と同居を続けたが、事件発生から数日後に失踪。7月6日に関係者が死体を見つけて事件が発覚。岡山県警は重要参考人として追うとともに、同僚に対する詐欺容疑で指名手配をしたが、7年後に事項が完成。捜査員は目撃情報などを頼りに捜査を続けるも行き詰まっていた。
 室井被告は北陸や近畿、九州などを転々とし、2006年には兵庫県尼崎市で偽名を使って生活保護費を受給していた。東京都豊島区でも受給していたが、2012年5月末に同区職員から偽名を疑われ、ホームレス生活を始めた。
 2013年2月14日、室井被告は東京都内のショッピングセンターで弁当など食料品3000円相当を万引きしたとして、警視庁に窃盗容疑で逮捕された。室井被告は取り調べの過程で事件の関与を認め、上申書を提出。2月25日、強盗殺人容疑で逮捕された。
裁判所
 岡山地裁 森岡孝介裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年7月30日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年7月23日の初公判で、室井被告は「間違いありません」と述べて起訴事実を認めた。
 25日の論告で検察側は、「犯行は執拗で残虐。10年間逃げるなど、罪を逃れようとする強い意思があり、刑事責任は極めて重大」と述べた。同日の最終弁論で弁護側は、「犯行は無計画で、一時的な激情にかられて行われたもの」として、有期刑の上限である懲役30年が相当と述べた。
 判決で森岡裁判長は、「無抵抗の被害者の頭や顔を金づちで何度も殴った上、首にタオルを巻いてかなりの時間絞め続けた。強固な殺意が認められる。当時の生活に嫌気がさし、新しい生活のための費用が必要だったという動機は、あまりに身勝手で理不尽だ」と弁護側の主張を退けた。そして、「犯行は執拗かつ徹底し、酌量の余地は乏しい」とした。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
齊藤健一(44)
逮 捕
 2012年12月12日(強要未遂容疑。2013年1月3日、殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、窃盗、強要未遂、電磁的公正証書原本不実記録・同供用
事件概要
 熊本市の指定暴力団道仁会系組幹部齊藤健一被告は、知人の無職S被告と共謀。2012年10月20日午前3時ごろ、約3億円の保険金を掛けた熊本市の無職男性(当時45)を、熊本市北区の県道で軽乗用車とトラックではね、殺害した。
 斉藤被告は事件に先立ち、同日午前0時半ごろ、熊本市内の駐車場から軽乗用車(30万円相当)を盗んだ。また10月23日頃、熊本市の男性(当時52)に対し、自らが暴力団組員であるなどと脅し、事件の犯人として出頭するよう要求した。
 斎藤被告と被害者の男性は約10年前に知り合った。交通事故を装ってけがをし、保険金をだまし取る計画を男性に持ち掛けており、男性11社計約3億円の保険金がかけられ、掛け金の一部は斉藤被告が負担していた。斉藤被告と無職女性が共謀し、重度の知的障害をもつ女性の長女と斉藤被告を偽装結婚させていた。保険金の受取人は妻や無指定のものもあったが、請求はなく、支払われていない。
 12月12日、強要未遂容疑で斉藤健一被告とS被告が逮捕された。2013年1月3日、殺人容疑で斉藤被告、S被告が再逮捕され、無職女性が逮捕された。1月8日、窃盗容疑で無職男性が逮捕された。1月24日、斉藤被告と無職女性が電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で再逮捕された。同日、無職女性の殺人容疑は処分保留となった(後日、不起訴)。
裁判所
 熊本地裁 松尾嘉倫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年8月30日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年8月23日の初公判で齊藤健一被告は、殺人などの罪については起訴事実を認め、強要未遂罪に限っては否認した。
 検察側は冒頭陳述で、被害者の男性に損害を負わされ不満があったと指摘。「暴力団に多額の資金を提供するなどの目的で、約3億円の保険金を獲得しようとした」と動機を指摘。そのうえで、あらかじめ犯行に使用する軽乗用車とトラックを用意し、S被告と現場を下見するなど周到な準備を行ったとした。犯行そのものに関しては、「斉藤被告は自ら運転する軽乗用車で男性をはね、まだ生きていたことから道路に横たわらせた男性をトラックで2度にわたってひいた」「確実に殺すために2度ひいた」と残虐性を強調した。弁護側は冒頭陳述で、「暴力団組織から多額の金銭を上納するよう指示され、殺害して保険金をだまし取るよう考えるに至った」「保険金の請求手続きをしていない」と情状酌量の余地を主張。男性に対する強要未遂罪に関しては、「身代わり出頭を依頼したが、脅迫はしていない」として罪が成立しないと反論した。
 28日の論告で検察側は、車で複数回ひいて殺害したことを「人命軽視もはなはだしい」と指摘。計画から実行まで首謀者の立場にあったとし「更生の可能性も乏しい」と主張した。
 同日の最終弁論で弁護側は、斉藤被告が、所属していた暴力団を2011年に脱退したために金銭を要求され、「精神的に追いつめられていた。捜査段階から包み隠さず話し、反省している」と主張し、情状酌量を求め懲役18年が相当と主張した。斉藤被告は殺人罪は認めたが、身代わり出頭させようとした強要未遂罪については「やってないことは、やってない」と意見陳述した。
 判決で松尾裁判長は斉藤被告が犯行当時も暴力団に所属していたと認定。斉藤被告らは軽乗用車を事前に盗み、2トントラックも調達した上で、瀕死の被害者をトラックで2度ひいているとして「周到な準備をして臨んだ計画的な犯行である上、極めて冷酷で、一人の生命が奪われた結果は非常に重い」と指弾。身代わり出頭の強要や、被害者の偽装結婚を図ったことも「適正な捜査が妨害された」と悪質性を指摘した。また、身代わりとして知人を警察に出頭させるなど、殺人後も「自己保身のみ考えていた」と述べた。そして、「人命を自らの金銭的利益に変えようとする動機は非道で、強い非難を免れない」と述べた。
備 考
 斉藤被告の犯罪計画を知りながら、2012年9月に熊本市の飲食店で知人に譲った軽乗用車の合鍵を斉藤被告に渡して市内の駐車場に案内したとして殺人ほう助、窃盗ほう助に問われた男性は2012年5月24日、熊本地裁(松尾嘉倫裁判長)で求刑通り懲役6年の判決を受けた。2013年9月12日、福岡高裁(川口政明裁判長)は被告側控訴を棄却した。
 斎藤被告らと共謀し、重度の知的障害の長女と被害者の男性を2012年3月2日に偽装結婚させたとして電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪に問われた無職女性は2013年3月22日、熊本地裁(小松本卓裁判官)で懲役2年執行猶予4年(求刑懲役2年)の判決を受けた。殺人容疑では不起訴処分(容疑不十分)となっている。控訴せず確定。同件では被害者の男性も書類送検され、容疑者死亡で不起訴となっている。
 共犯のS被告は2013年10月7日、熊本地裁(松尾嘉倫裁判長)の裁判員裁判で、懲役19年判決(求刑懲役25年)。従属的な立場であると認定された。被告側は即日控訴した。
 被告側は控訴した。2014年2月5日、福岡高裁で被告側控訴棄却。2014年6月9日、飛行側上告棄却、確定。

氏 名
田中五郎(62)
逮 捕
 2012年4月29日(死体遺棄容疑。2012年5月18日、強盗殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 神戸市北区の飲食業田中五郎被告は2012年4月25日午後2時30分〜3時、同市灘区で調理場用に借りていたプレハブ小屋で、知人男性(当時68)の首や胸などを包丁で数回突き刺して殺害し、借りていた計180万円の返済を免れようとした。田中被告は男性から月1割の利息で現金を借りていた。
 殺害現場に偶然居合わせた知人男性を共謀させ、ホームセンターで購入した防水シートで遺体をくるみ、深夜に遺体を車で六甲山のドライブウェーに運び、山中に放り捨てた。
 29日、知人男性が兵庫県警垂水署に自首。県警捜査1課などが同日午後3時半ごろ、山中で男性の遺体を発見し、田中被告と知人男性を死体遺棄容疑で逮捕した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 木内道祥裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年9月12日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 知人男性は死体遺棄容疑で起訴。2012年7月31日、神戸地裁(宮崎英一裁判官)で懲役1年6月・執行猶予5年(求刑懲役1年6月)判決。宮崎裁判官は「従属的な立場」と認定。「被害者への反感で犯行に加担するなど動機に酌量の余地は乏しいが、被告の自首により全容解明につながっており、反省もしている」とした。控訴せず確定。
 2012年12月7日、神戸地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2013年中に、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
松本英也(54)
逮 捕
 2011年10月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 東京都渋谷区の雑居ビルをめぐり、ビル管理会社の顧問である男性は、山口組系の代表的な経済ヤクザだったG組のフロント企業との間で起きたトラブルの矢面に立っていた。
 G組長の側近であり若頭補佐でG組系組長だった松本英也被告は2005年春頃、配下の幹部K組員らに男性(当時58)の監視を指示。1年後の2006年3月5日夜、K組員が港区北青山の路上で男性を待ち伏せし、背中などを刺して殺害、逃走した。
 2006年5月、雑居ビルの不正登記を行ったとする電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑でG組長(山口組を除籍)らが逮捕されたため、松本被告は6月末、K組員と目付役の男を成田空港から出国させるとともに2人を破門処分にし、組とは無関係ということにした。
 台湾を経由して中国入りしたK元組員らは中国マフィアの紹介で仕事を得ていたとみられ、2人はその後も中国人になりすまし、香港やマカオなどに潜伏していた。しかし警視庁はK元組員を実行犯と断定、潜伏先を中国とみて国際手配に踏み切った。このため、松本被告は2010年夏、2人に中国からの脱出を指示。2人は松本被告の知人男性の指示で、ベトナム、カンボジアを陸路で移動、2011年初め、タイに入国した。
 K元組員は2011年4月26日、目付け役の男とタイ・チェンライ郊外の山中を歩いていた際、一緒にいたタイ人ガイドの男に射殺された。軽傷で済んだ目付け役の男は不法入国が発覚したため、タイの警察当局に身柄を拘束された。ガイドの男は地元警察に逮捕された。逃亡を手助けした知人男性はその後病死している。
 殺人事件時、運転手だった男性は2010年12月、殺人容疑で逮捕されている。
 警視庁組織犯罪対策4課は2011年10月20日、殺人容疑で松本英也被告を逮捕した。
裁判所
 東京高裁 山崎学裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年9月20日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 控訴審で弁護側は、「被告は被害者を捜すよう依頼しただけで、殺害は指示していない」と一審に続き無罪を主張したが、判決で山崎裁判長は、「実行役は殺害から数時間後に被告に報告している。独断で犯行に及んだとは考えられず、殺害を指示したとする一審の判断に誤りはない」とした。
備 考
 G元組長は、懲役2年執行猶予4年の刑が、2012年2月13日に確定している。
 K元組員は2011年11月9日、容疑者死亡の殺人容疑で書類送検されている。
 K元組員の目付役だった男性は、別の事件でタイの捜査当局に逮捕され、現地で服役した。2012年9月26日、タイから日本に強制送還された。
 殺害された男性の遺族は2012年8月10日、山口組組長、G元組長、松本英也被告、運転手の男性の計4人に対し、慰謝料など約1億8700万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。2012年10月4日、東京地裁で遺族側とG元組長の間で和解が成立した。G元組長が和解金として計1億1000万円を支払い、遺族側は他の3人についての請求は取り下げた。
 2013年8月28日、東京地検は証拠担当の男性事務官が警視庁から送られた被害状況の鑑定書などを放置し、弁護側に証拠開示していなかったと発表した。事件は控訴審が始まる段階で、検察側は弁護側に謝罪し、鑑定書を含む捜査書類182点を開示した。事務官は2012年4月頃、捜査書類の受け入れ手続きをせず、机脇の段ボール箱に入れて放置。捜査と公判の各担当検事も書類に気づかず、弁護側の請求に「存在しない」と回答していた。2013年5月31日、別の事件で事務官の書類放置が発覚した。
 2013年3月28日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
伊東順一(61)
逮 捕
 2007年2月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、窃盗
事件概要
 大分県豊後大野市の無職伊東順一被告は2005年3月14日、同市で一人暮らしをしていた顔見知りの女性(当時61)方に勝手口から鍵を壊して侵入し金品を物色。帰宅した女性に見付かったため、女性の頭をコンクリート塊(重さ約800g)片で殴ったり、首を絞めたりして殺害。乗用車と商品券2枚(時価計約59万円)を奪った。伊東被告は3月8日頃にも女性方に勝手口から侵入し、13万円を盗んでいた。
 遺体は19日に発見され、車は翌日、自宅から約2.5km離れた空き地で見付かった。
 伊東被告は2005年12月、同県竹田市の住宅で缶ビールなどを盗んだとして竹田署に逮捕され、2006年2月に大分地裁で懲役2年の判決を受けた。2006年7月、福岡高裁で懲役2年の判決が確定し、福岡刑務所で服役中だった。
 伊東被告は福岡高裁に控訴中の2006年5月、取り調べで「(女性の)家と車の鍵を川に捨てた」と関与をほのめかした。有力な物証に乏しかったが、大分県警は現場資料の積み重ねなどから2007年2月2日に逮捕した。
裁判所
 福岡高裁 服部悟裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年9月20日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 伊東順一被告は捜査段階で容疑を大筋で認めたが、公判前整理手続き前には無罪を主張した。
 一審大分地裁の判決で宮本裁判長は殺害状況から犯人は多量の返り血を浴びた可能性が高いにもかかわらず、「(被告が強奪したとされる)被害者の車のシートカバーなどに血痕が全く残っていないのは不自然」と指摘。伊東被告が奪ったとされた車と、被告本人が事件後に映っていたとされる現場近くの防犯カメラについて「似ているという域を出ない」と述べ、「被告人が犯人ではないかと疑わせる事実がいくつか存在するが、自白を除く証拠だけで、被告の犯行と認定することはできない」とした。凶器のひもの態様など検察側が主張した犯人しか知り得ない「秘密の暴露」も「暴露には当たらない」と退けた。伊東被告が犯行を認めた供述調書についても、「自白と否認を繰り返すなどしており、信用性には疑問がある」と述べた。その上で「法的な意味で任意性に欠けるというものではないとしても、内容に不自然ないし不合理な部分があり、意に反して自白した可能性も否定できない」とした。また、別件の窃盗事件の起訴後の拘置を利用して、強盗殺人事件を取り調べたことについて「令状主義を逸脱する違法なものであった可能性を否定できない。相当厳しく追及された可能性がある」と、捜査手法を批判した。

 2011年7月20日の控訴審初公判で、検察側は「推測に基づいた判断をした一審判決には重大な事実誤認がある」として一審判決の破棄を求めた。また、犯人が逃走に使ったとされる被害者の乗用車内で見つかった微物から、被害者と被告のものが混合したDNA型が検出されたとする鑑定結果を新たな証拠として請求した。検察側によると、微物は運転席付近で見つかり、一審判決後に実施した精度の高い鑑定でDNA型が判明したという。検察側は鑑定に携わった大分県警の警察官らを証人として申請し、採用された。一方、弁護側は「被告は被害者と顔見知りで、事件前に車に乗ったことがあり、その際に微物が付着してもおかしくない」と反論。改めて無罪を主張して控訴棄却を求めた。
 公判は判決まで計26回開かれた。検察側が申請した警察官らを中心に50人以上が証人として出廷。弁護側が「有罪ありきの進行だ」と批判する異例の展開をたどった。
 2013年5月29日の公判で、弁護側は最終弁論で「複数の人物のDNA型が混ざっており、新たな鑑定資料に証拠価値はない。被告の捜査段階の自白には信用性がなく証拠も全くない」と主張。検察側の控訴棄却を求めた。
 判決で服部裁判長は、焦点となっていた捜査段階の自白調書について、「供述は自白以外の証拠で認定できる事実に符合する。体験者でなければ語れない具体性に富む」と信用性を認めた。更に、控訴審で提出された、殺害された女性の車から伊東被告のDNA型が検出されたとする鑑定▽女性宅の土間にあった伊東被告の靴の跡▽事件7日後に女性の買い物券を持っていた−−などの状況証拠から有罪と認定。一審判決を「証拠の評価を誤り、論理則、経験則に照らして不合理だ」として破棄した。動機について「金品を物色した際に帰宅した女性にとがめられ、逮捕を免れるため殺害した」と断定し、「殺害方法は執拗で残忍」と指摘した。
備 考
 公判前整理手続き中、弁護側は、伊東被告が捜査段階で自白した内容の供述調書の適法性を争う中で、取り調べメモ(備忘録)の証拠開示を請求。検察側が「警察官に聞いたが、メモはない」としたため、大分地裁は2008年5月22日、被告を取り調べた警察官5人に対し、取り調べメモ(備忘録)について尋問をした。メモを巡り、取り調べた警察官を直接尋問するのは極めて異例。
 メモは警察に作成が義務づけられているが、検察側の証拠には含まれなかった。だが、メモからは供述の変遷などが推認できることから、従来の刑事裁判でも弁護側が開示を求めることがある。2007年12月には最高裁が公判前整理手続きの中での証拠開示の対象になるとの判断を示した。さらに警察庁も2008年5月13日、取り調べの際に書き取ったメモを事件ごとに保管するよう長官訓令で定めた。
 7月22日、検察側は弁護側の請求に応じ、任意で印字された警察官の取り調べメモ(備忘録)を開示した。弁護側は、手書きのメモを含めてほかにも備忘録があるとして、請求を取り下げなかった。7月29日、検察側が弁護側の請求に応じ、警察官の取り調べメモ(備忘録)を任意で追加開示したため、弁護側は請求を取り下げた。
 伊東被告は2011年5月12日午後3時20分ごろ、大分市内のスーパーで、おにぎりやまんじゅうなど7点(計540円相当)をバッグに入れて盗み、そのまま店を出ようとしたところを女性警備員に見つかった。大分中央署は窃盗容疑で現行犯逮捕した。所持金はほとんどなく、空腹に耐えかねての犯行だった。2011年7月11日、大分簡裁(中間博文裁判官)は「反省の態度を示しているが、再犯の可能性を否定できない」と述べ、懲役8月(求刑懲役1年)の実刑判決を言い渡した。
 伊東順一被告は2010年10月から12月にかけて大分市の男性に「財産分与に絡み弁護士費用が必要」などと話を持ちかけて12回にわたり合計65万円をだまし取った疑いで、2013年11月25日に逮捕された。伊東被告は「金は預かったがだますつもりはなかった」と容疑を否認している。警察は2011年3月、男性から被害届が出され捜査を進めていた。2014年1月30日の初公判で、伊東被告は起訴事実を認めた。2月18日、大分地裁(世森ユキコ裁判官)は、懲役1年10か月(求刑懲役2年6か月)の判決を言い渡した。伊東被告は控訴したが、後に取り下げて確定。

 2010年2月23日、大分地裁で一審無罪判決。弁護側は即日上告した。2015年10月6日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
引寺利明(45)
逮 捕
 2010年6月22日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、銃刀法違反
事件概要
 引寺(ひきじ)利明被告は2010年6月22日午前7時33分ごろ、広島県広島市南区のマツダ宇品工場にマツダ社製のファミリアで侵入。約8分間、時速40〜70qで暴走、急発進や急ターンを繰り返し、通勤途中だった同社社員の男性(当時39)が死亡、1人が顔面骨折や脳挫傷などで重体となり、右目を失明した。また1人が重傷、9人が軽傷を負った。引寺被告は車で工場北門から逃走し、約20分後に自ら110番通報。県警が府中町内で車と男を発見。車内に包丁も所持しており、殺人未遂と銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕した。
 引寺被告は3月25日、6カ月契約の期間社員として入社。研修を経て、4月1日から宇品工場でバンパー製造の日勤業務に当たっていたが、同14日に「一身上の都合」として退社した。実働したのはわずか8日間だった。
 引寺被告は父親がマツダの元社員で、無類の車好き。高校卒業後には自動車部品メーカーに勤め、その後も大半は派遣社員や契約社員として、自動車関連の職場で勤務していた。一方、車には多額のお金をつぎ込んだ。この5年間でスポーツカーなどを4台ほど買い替えており、2年前には多重債務を抱えて自己破産していた。事件当時は別の自動車部品メーカーで勤務していた。
 7月12日、広島県警は引寺利明被告を殺人容疑で再逮捕。広島地検は、精神鑑定のための鑑定留置を広島簡裁に請求、7月27日付で認められた。約3カ月間の精神鑑定で、物事の是非・善悪を識別する能力(責任能力)があったと判断し、10月29日、引寺被告を起訴した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 千葉勝美裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年9月24日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で弁護側は、引寺被告が犯行時に「妄想性障害」だったとして責任能力を争っていた。
備 考
 2012年3月9日、広島地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2013年3月11日、広島高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
西村豊(59)
逮 捕
 2011年5月21日(別の詐欺罪で服役中)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺他
事件概要
 都内で合鍵製作会社を経営していた西村豊被告は、同会社役員の工藤隆元被告と共謀。2009年4月20日、松戸市のアパートに住む従業員男性(当時52)の首をロープで首を絞めて殺害。男性が自殺したように装い、5月に生命保険金約2000万円を騙し取った。事件後、工藤元被告が「家に行ったら自殺していた」と通報し、千葉県警松戸署員が駆けつけたが、ロープで首をつった状態だったことや遺書のようなメモ残されていたことから、自殺と判断、司法解剖は行わなかった。
 西村被告は以前、中古車販売会社を経営していたが倒産。妻らと共謀して自分に掛けた保険金をだまし取る目的で2003年11月、自分が死亡したとする虚偽の死亡届を東京都中央区役所に提出し、その後は他人に成りすまして生活していた。2005年10月に他人名義で合鍵製造などを手がける会社を設立し、工藤元被告も役員に就任。同社は業績がふるわず、2007年頃から資金繰りが悪化し、2009年当時は倒産状態だった。
 男性は求人募集を見て応募し、2006年1月から勤務していた。男性は当時は「小島」姓だったが、西村被告は8カ月後、男性を結婚させて「高橋」姓に変えさせ、社内では「吉田誠」と名乗らせた。戸籍を失っていた西村被告はこの直後、自分の顔写真を張った「高橋久好」名義の運転免許証を不正に取得。さらに2007年11月、免許証を使って男性に成り済まし、会社を受取人とする生命保険契約を結んだ。2008年12月には男性を再婚させ、別姓に変えさせた上で、5カ月後に殺害した。発見された「借金した責任をとる」などと書かれた遺書のようなメモは、西村被告から借金をしていた男性を言いくるめて書かせていた。
 しかし西村被告の自宅で、当時交際していた女性が西村被告の本名が載っていた古い免許証を見つけた。捨てていなかった古い免許証に違和感を覚えた女性が警視庁に相談した結果、不審な行動が次々と明らかになった。
 西村被告は2003年の件でウソの死亡診断書などを保険会社に提出し、生命保険金約5400万円をだまし取ったとして警視庁に詐欺容疑で2010年5月10日に元妻ら3人とともに逮捕され、合計約8900万円をだまし取ったとして2011年3月、懲役7年の実刑が確定していた。警視庁が西村被告の周辺を捜査したところ、死亡した男性に生命保険が掛けられていたことが判明。再捜査の結果、他殺だったと判断し、工藤元被告とともに逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 鬼丸かおる裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年9月25日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で西村被告側は、「男性は自殺で、殺害していない」と無罪を主張していた。
備 考
 工藤隆元被告は2012年3月28日、東京地裁(村山浩昭裁判長)の裁判員裁判で懲役20年(求刑懲役25年)判決。8月14日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 2012年9月28日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2013年4月10日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
後藤明弘(48)
逮 捕
 2011年8月6日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、強姦致死、傷害致死
事件概要
 愛知県尾張地方の運送会社に勤務していたトラック運転手、後藤明弘被告は2006年7月28日夜から29日朝、強姦目的で愛知県音羽町(現豊川市)に住むベトナム人女性(当時24)宅に侵入し、就寝中の女性を殺害した。女性は研修生として来日し、自室で部品検査の内職をしていた。後藤被告は事件の約1年半前、仕事中に女性のアパート近くの駐車場で休憩した際、女性を見かけて気に入り、部屋を何度ものぞいたりしていた。
 2011年3月、高山市かその周辺で、後藤被告が勤めていたコンビニで同僚だった高山市の女性(当時44)に暴行を加えて死亡させ、遺体を下呂市内の山林に遺棄した。女性は3月8日夜から行方不明となっていた。
 4月9日午後1時10分ごろ、岐阜県下呂市の県道中央に車載用の三角表示板が置かれ、「白骨死体がこの下にあり。110番通報願う」との手書きのメモ用紙が貼られているのを車で通りかかった女性が見つけた。道路脇のがけ下に白い骨のようなものが見えたため、女性は県警下呂署に通報。駆けつけた署員が道路の約10m下の法面で白骨遺体を発見した。発見1週間前には「山林に遺体がある」との通報があり、同署が捜索したが、積雪などで発見できなかった。
 岐阜県警は同じコンビニで働いていた後藤明弘被告から任意で事情聴取したところ、豊川市の事件への関与が浮上。7月に情報提供を受けた愛知県警が捜査を進めた。愛知県警は愛知県警は8月6日、殺人容疑で後藤被告を逮捕した。8月27日、名古屋地検は殺人と強姦致死容疑で後藤被告を起訴した。実際に強姦はしていないが、後藤被告が「強姦目的で殺害した」と供述していることから、強姦致死罪が成立するとしている。
 2012年1月13日、岐阜・愛知県警の共同捜査本部は後藤被告を岐阜事件における死体遺棄容疑で逮捕した。2月2日、殺人容疑で再逮捕した。2月23日、岐阜地検は殺意の立証が難しいと判断し、後藤被告を傷害致死と死体遺棄容疑で起訴した。
裁判所
 名古屋高裁 石山容示裁判長
求 刑
 無期懲役+懲役15年
判 決
 2013年9月30日 無期懲役+懲役12年(一審破棄)
裁判焦点
 2013年8月7日の控訴審初公判で、弁護側は、愛知事件については「反省しており、有期懲役刑とすべきだ」とし、岐阜事件については「一審判決は事実誤認」などとして無罪を主張。検察側は控訴棄却を求めて即日結審した。
 判決で石山裁判長は、岐阜事件について「一審の事実認定に誤りはない」とする一方、「暴行の態様や動機、経緯が明らかではなく、規範意識が完全に欠如しているとまでは評価できない。量刑は相当性を欠き、重すぎる」と述べた。愛知事件については被告側の控訴を棄却した。
備 考
 後藤被告は2つの事件の間に別の窃盗事件で逮捕され、その判決が確定しているため、両事件では刑法の併合罪は適用されず判決は別々に言い渡された。判決が確定した場合、量刑の重い無期懲役が先に執行される。
 2013年3月6日、岐阜地裁の裁判員裁判で、無期懲役+懲役20年判決。2013年9月30日、名古屋高裁で一審破棄、無期懲役+懲役12年判決。2014年3月10日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
筧末幸(64)
逮 捕
 2011年12月9日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 三重県鈴鹿市の筧(かけひ)末幸被告は2011年10月12日午後1時50分から同3時20分までの間、同市の堤防道路に駐車中の軽乗用車やその近くで、同市に住む健康サロン経営の女性(当時57)の首や胸などを出刃包丁(刃渡り約16cm)で数回突き刺して殺害し、車の中にあった財布などから現金数十万円を奪った。
 筧被告は以前別の健康サロンに勤務していた際、女性と顔見知りになった。筧被告は2011年4月から11月下旬まで、県教育委員会に登下校安全指導員として雇用され、同市内の県立高校で、生徒の登下校の見回りなどをしていた。事件当日は午前7時半から午後0時半まで勤務し、翌日も同じ時間帯で働いていた。
 県警捜査本部は10月下旬、遺体発見現場から約1km離れた、女性の軽乗用車が見つかった付近で、筧被告に似た人物を事件当日に見たという証言が得られた。11月27日、捜査本部は筧被告を参考人として事情を聴いたところ、「事件とは関係ありません」と関与を否定した。翌28日に自宅で、上半身を刃物で刺して自殺を図り、10日程度のけがだったが救急車で入院。その後退院した筧被告を12月9日午前、市内の商業施設で発見。筧被告に任意同行を求め、筧被告の供述に基づき、市内の田園地帯で凶器とみられる包丁を発見した。捜査本部は10日、筧被告を殺人容疑で逮捕した。
 筧被告は逮捕当初、「自分が殺した。現金数十万円を車内から奪った」と供述していたが、起訴前から犯行を否認。津地検は12月28日、筧被告が事件後に借金を返済していたことなどから、殺人罪ではなく強盗殺人罪を適用して起訴した。
裁判所
 名古屋高裁 岩井隆義裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年10月1日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2013年9月10日の控訴審初公判で筧末幸被告は、一審で否定していた犯行を認めた。筧被告は「我が身大切さと親族に迷惑がかかると思ってきたが、いつまでも嘘をついていてはいけないと考えた」と述べ、具体的な殺害方法などを説明。弁護側は殺害の動機を「被害者から家族の悪口を言われたためで、金銭を奪う目的はなかった」と説明し、刑の軽減を求めた。検察側は控訴棄却を求め、即日結審した。
 判決で柴田裁判長は「被害者に落ち度があったと主張して罪の軽減を図った」と指摘。刑を軽くするよう求めた弁護側の主張を退けた。殺害の動機については「借金返済に苦慮していたことや殺害後の金銭の使い方から強盗目的で殺害したことは合理的に説明できる」と指摘した。
備 考
 2013年3月26日、津地裁の裁判員裁判で、求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
竪山辰美(52)
逮 捕
 2009年11月17日
殺害人数
 1名
罪 状
 住居侵入、強盗強姦未遂、強盗致傷、強盗強姦、監禁、窃盗、窃盗未遂、強盗殺人、建造物侵入、現住建造物等放火、死体損壊
事件概要
 住所不定、無職竪山辰美被告は2009年10月20日夜から21日の間、千葉県松戸市に住む大学4年の女性(当時21)宅に窓を割って侵入。21日午前10時15分過ぎ、帰宅した女性(当時21)に包丁(刃渡り約17.6cm)を押しつけ、両手首をストッキングで縛り、現金約5,000円、キャッシュカード2枚、クレジットカード2枚等を奪って暗証番号を聞き出すとともに、午後1時頃、女性の胸を包丁で突き刺して殺害した。10月21日午後1時30分頃、松戸駅のATMにて現金20,000円を搾取。その後も駅やコンビニのATMで現金を引き出そうとしたが、暗証番号が一致しなかったり、残高不足だったりしたため、断念した。さらに22日、女性方にベランダの無施錠窓から侵入。犯行を隠すため、死体付近の衣類にライターで火を放ち、同室内の床、壁など約24m2を焼損、同時に死体を焼損した。同日午後8時20分ごろ、女性の知人がマンションを訪れて火災に気づいて110番通報し、事件が発覚した。

 竪山辰美被告は他に以下の事件で起訴されている。
  • 2009年9月16日午後1時30分過ぎ、千葉県佐倉市に住む女性方の窓の施錠を外して侵入。現金約43,000円を盗んだ。
  • 10月2日午後10時30分過ぎ、松戸市在住の女性方に無施錠の玄関から侵入。3日午前0時過ぎ、女性に殴るなどの暴行を加えて顔などを骨折させるなど全治3週間の怪我を負わせたうえ、「声を出すな。殺すぞ」などと脅迫。折りたたみナイフを突きつけて結束バンドで両手を縛り、現金約15,000円、キャッシュカード2枚、クレジットカード1枚を奪った。
  • 10月6日午後8時頃、佐倉市にある家の窓の施錠を外して侵入。LEDライト(時価約2,980円相当)を盗んだ。
  • 10月7日午後6時40分頃、佐倉市の民家に、無施錠の玄関から侵入。家にいた女性(当時61)に殴る蹴るの暴行を加えてあごの骨を折るなど全治約2ヶ月の重傷を負わせるとともに、現金約1万円を盗んだ。さらに午後7時10分頃、帰宅した女性の娘(当時31)に殴る蹴るの暴行を加え、現金約16,000円、キャッシュカード1枚、クレジットカード3枚、財布やハンドバック(時価合計37,500円相当)を強奪。さらに女性の自家用車を奪って娘を連れ出して強姦し、全治2週間の重傷を負わせた。その後、コンビニのATMで現金約55万円を引き出した。
  • 10月31日午後8時35分頃、印旛郡(現印西市)の病院駐車場で、車に乗ろうとした女性(当時22)を転倒させ、ドライバーで脅迫。結束バンドで拘束した上で暴行して全治2週間の怪我を負わせたが、目撃した第三者が騒いだため、金品を奪うことができず逃走した。
  • 11月2日午前8時40分頃、印旛郡在住の男性方に、無施錠の窓から侵入。現金約30,000円を奪うとともに、中にいた女性(当時30)に包丁を押しつけて脅し、現金約155,000円を奪った。さらに女性を強姦しようとしたが、生理中であったため断念して逃走した。
  • 11月13日午後6時過ぎ、印旛郡所在のアパートの女性の部屋の窓の施錠を外して侵入。現金約60,000円および宝くじ62枚を盗んだ。
 11月17日、2日の事件に伴う強盗強姦未遂と住居侵入容疑で、東京都荒川区のサウナにいた竪山被告を逮捕。松戸駅近くのATMで現金を引き出した画像と一致したことから捜査を開始し、竪山被告が女性殺害について関与を認めたため2010年1月27日、窃盗容疑で逮捕。2月17日、強盗殺人、現住建造物等放火などの容疑で再逮捕した。
 竪山被告は2009年9月に約46万円を持って北海道の刑務所を出所し、あてもなく上京。キャバクラなどで15万円を使ってしまい、金が無くならないうちにと佐倉市で留守宅を見つけ空き巣を働いた。以後、窃盗事件等を繰り返していた。
裁判所
 東京高裁 村瀬均裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2013年10月8日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 裁判員裁判。公判前整理手続きで、主な争点は殺意の有無に絞り込まれた。強盗殺人事件以外の起訴事実についても一括で審理された。
 2011年6月8日の初公判で、竪山辰美被告は殺人事件以外についてほとんど「間違いありません」と答えたが、女性に対する強盗殺人の部分では「ほぼ間違いありませんが、殺すつもりはなかった」と殺意を否認。波床裁判長の「殺意はなかったということですか」という問いかけに、「はい」としっかりとした口調で答えた。
 検察側は冒頭陳述で、モニターを使って、女性の首と左胸の5か所あった傷を詳細に説明した。特に左胸の刺し傷の一つは深さ11cmにも及んでいることから、強い殺意の根拠とした。また、「刺した後に介抱や救急車を呼ぶなどの救命活動を何ら取っていないどころか、部屋を物色して立ち去り、金銭目的の犯行を貫徹している」と指摘した。
 弁護側は、竪山被告が女性の部屋を物色後、疲れて仮眠していたところ、女性が帰宅したために室内の包丁で脅したと説明した。「女性は冷静で、被告と話しているうちに、缶ビールを持ってきて被告に渡した。油断した被告が包丁を床に置いたため奪い合いになり、弾みで胸に刺さった」と主張した。竪山被告は幼少期に父親からの虐待を受けて家出や非行を繰り返していたといい、こうした経歴から「知的障害、発達障害の疑いがあることも、被告の行動の背景にある事情だ」などと述べ、「検察側は死刑を求刑する可能性がある。裁判員は被告のすべてを漏らさずに見てもらいたい」と訴えかけた。
 判決で波床昌則裁判長は、動機や経緯は判然としないとしながら、女性の将来を奪った結果は重大と指摘。「包丁の刃が折れるほどの力で刺し、遺体もろとも犯跡を隠すため女性宅に火を放っており、冷酷非情だ」と批判した。また女性殺害の悪質性や結果の重大さに加え、刑務所を出所してから3か月足らずの竪山被告が強盗傷害などの事件を短期間に繰り返していた点を重視し、「被害者が死亡してもおかしくないほどの傷害や深刻な性的被害を与えた。被告の反社会的な傾向性は顕著で根深い」と断じた。焦点となっていた殺意については、傷口に乱れがないことから「もみ合いの中で生じた傷とは考えにくい」とし、傷の状況から殺意を持って強い力で刺したと認定した。また被告の成育歴については「竪山被告の48歳という犯行時年齢を考えると、生育環境を重視する段階にはない」と断じた。そして「被告は公判供述を変遷させており、責任回避の言動も見られ、真に反省を深めているとみることはできない」と指弾。「殺害が1人で計画性がないことを考慮しても、極刑を回避すべき決定的事情とまではならない。「刑事責任は誠に重く、更生可能性は乏しい」との判断を示した。

 7月6日、竪山辰美被告は控訴した。また7月7日、弁護団が一審判決を不服として控訴した。弁護団は「竪山被告は量刑自体に不服はないが、殺意に関する事実認定に不服があり、控訴する運びになった」と文書でコメントした。
 2013年6月4日の控訴審初公判で、弁護側は「死亡した被害者は1人で、殺害に計画性はなかった。過去の同種事件と比べ、死刑は重すぎる」と主張。被告には発達障害の疑いがあるとして精神鑑定の実施を求めたが、裁判長は却下した。被害者の両親は被害者参加制度を利用して出廷。裁判官が「一日も早く死刑が執行されることを望む」との両親の意見陳述書を読み上げた。検察側は控訴棄却を求めて即日結審した。
 判決で村瀬均裁判長は、一審判決と同様に、竪山被告が殺意を持って女性の胸を包丁で刺すなどして殺害したと認めたが、女性の部屋に侵入したのは金品を盗むためだったとし、「殺害された被害者は1人で、犯行に計画性はない。同種事件で死刑がなかった過去の例からすると、死刑の選択がやむを得ないとは言えない」とし、先例に沿って判断すべきだとの考えを示した。また、死刑の対象とはならない、他の事件が示す被告の危険性について、「先例に反して死刑を選択するまでの合理的な理由にはならない」と判断した。そして「死刑選択の合理的、説得力のある理由とは言い難い。裁判員らが議論を尽くした結果だが、刑の選択に誤りがある」と述べた。
備 考
 竪山辰美被告は1984年に起こした強盗強姦事件で懲役7年の判決を受け服役し、1992年に出所。結婚して働いていたが、2002年4月に神奈川県内のアパートに侵入して、20歳代女性を殴って現金60,000円とキャッシュカードなどを奪う強盗致傷事件を起こして懲役7年の判決を受けた。
 2011年6月30日、千葉地裁の裁判員裁判で、求刑通り一審死刑判決。検察・被告側は上告した。2015年2月3日、検察・被告側上告棄却、確定。

氏 名
松崎光二(49)
逮 捕
 2012年7月22日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 新聞販売店従業員の内田幸史元被告と、元新聞販売店従業員の松崎光二被告は2012年7月21日午後9時頃、千葉県市原市のアパートに住む毎日新聞販売所店長の男性(当時56)方で、ベルトなどで男性の首を絞めて殺害。現金約6000円が入った財布を奪い、遺体を市内の山林に遺棄した。
 7月22日、千葉県警は松崎被告を死体遺棄容疑で逮捕。松崎被告の自供で25日、内田元被告を死体遺棄容疑で逮捕した。8月13日、強盗殺人容疑で2人を再逮捕した。
裁判所
 東京高裁 河合健司裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年10月9日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「事前に金を奪おうとは考えておらず、刑が重すぎる」と訴えたが、河合健司裁判長は「共犯の男と被害者の財布を奪い、金を分けると打ち合わせていた。無期懲役が不当とは言えない」と退けた。
備 考
 2013年6月5日、千葉地裁の裁判員裁判で、求刑通り一審無期懲役判決。内田幸史被告は控訴せず確定。

氏 名
小糸誠次(32)
逮 捕
 2011年4月11日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 住所不定、無職小糸誠次被告は2011年4月6日午前2時すぎ、熊本市内で男性(当時63)の運転するタクシーに乗車し約3時間後、菊池市の野菜集荷場の倉庫前で男性の後頭部などを果物ナイフとカッターナイフで多数回刺し、タクシーのトランクに男性を閉じ込めた。現金約13,000円を奪い、乗車料金約14,000円を支払わなかった。その後、合志市の廃車置き場にタクシーを放置した。男性は出血性ショックで死亡した。
 小糸被告は4月5日深夜、宿泊中のホテル料金が払えず強盗を考えたが断念。熊本市内で男性のタクシーに乗り菊池市へ。料金が払えず、市内の母親の家に行くよう頼むも断られ、直後に襲いかかったものだった。
 6日午前7時頃、野菜集荷場を訪れた運送会社員が男性の携帯電話や血だまりを見つけ、110番通報。午後1時15分ごろ、タクシーと男性の遺体が見つかった。その後の調べで、犯行現場で若い男性の姿を付近住民が目撃していたことが判明。約1年前まで近くで近くで働いていた小糸被告が浮上した。11日午後、捜査員が熊本市内にいた小糸被告を見つけ、事情を聴いたところ犯行を自供した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 小貫芳信裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 >2013年10月21日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は殺意を否認している。
備 考
 2012年1月27日、熊本地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2012年7月11日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
奥山喜裕(22)
逮 捕
 2012年1月11日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 京都市右京区の貴金属買い取り会社社員、奥山喜裕被告は2011年12月19日、伏見区に住むパート勤務の女性(当時68)方を訪れて貴金属を脅し取ろうとしたが、女性が助けを呼ぼうとしたため、首や手を肌着で絞めて殺害し、指輪5個を奪った。奪った指輪のうち4個は、勤務先とは別の業者で計約3万円に換金し、交際相手とのクリスマスディナーなどに使った。1個は交際女性に渡した。
 奥山被告は12月10日に同僚の鑑定士とともに女性宅を訪れ、指輪1点を500円で買い取っていた。
 事件後、女性宅から指輪がなくなっていたことや買い取り業者が訪問していたとの情報などから奥山被告が浮上し、京都府警は2012年1月11日、強盗殺人などの容疑で奥山被告を逮捕した。
裁判所
 京都地裁 後藤真知子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年10月28日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年10月15日の初公判で、奥山被告は「最終的に殺害に至ったのは間違いないが、訪問は指輪を脅し取ろうと考えたわけではなく、買い取り目的だった」などと述べ、起訴内容を一部否認した。
 検察側は冒頭陳述で「被告は犯行後、被害品の指輪を交際相手に差し出して結婚を申し込んだ」と述べ、遊興費に困っていたことが動機だと指摘した。また、「被告は女性方を訪問時、いきなり『貴金属くれ』と言った」などと、殺害前に貴金属を奪おうと決意していたとした。弁護側は、指輪を盗もうと決めたのは殺害後だとして、「強盗殺人ではなく、殺人と窃盗の罪の成立にとどまる」と反論。被告には精神発達の遅れを伴う広汎性発達障害や解離性障害があると明かし、「当時は心神耗弱状態だった」と主張した。
 10月22日の論告で検察側は、「目先の金欲しさで生命を奪った。被害者から奪った指輪で交際相手にプロポーズするなど、犯行後の態様も悪質でおぞましい」と指摘。弁護側は、広汎性発達障害の特性が強く影響し、当時は心神耗弱状態だったと主張。殺害は衝動的で、「最初から指輪を奪うつもりだった」とする被告の自白調書には任意性や信用性に疑問があるとして、10〜30年の有期刑が相当だと訴えた。奥山被告は最終陳述で、「遺族に何かできるなら、出来る限りしていくつもりです」と謝罪した。
 判決で後藤真知子裁判長は、「首を強く絞め続けるなど強固な殺意があり、遊ぶ金欲しさの残忍な犯行」と述べた。弁護側の主張に対しては、「(取り調べの様子を録音録画した)DVDでは誘導なく質問に答えている」として自白調書が信用できると指摘し、強盗殺人罪の成立を認めた。また、弁護側が主張した広汎性発達障害については認定したが、「学校や仕事など通常の社会生活を送っており、障害の程度は重くない。犯行は被告固有の性格をおおむね反映している」と完全責任能力を認定。「犯行に精神障害の影響が一定程度認められ、障害が見過ごされてきた養育環境に同情の余地はある」とした一方、奪った指輪を換金して遊ぶ金に使うなどしており、「刑事責任は重大で有期懲役は相当ではない」と結論付けた。
備 考
 被告側は控訴した。2014年9月5日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
舩山昇悟(35)
逮 捕
 2011年7月24日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人
事件概要
 東京都渋谷区の無職舩山(ふなやま)昇悟被告はは中国人ホステスと再婚しようと考え、看護師の妻(当時35)を殺害して保険金で生活費などを得ることを計画。再婚には小学3年の長男(当時9歳)も邪魔になることなどから、2011年7月18日未明、自宅マンションで寝ていた2人をタオルのようなもので絞殺した上、第三者の犯行に見せかけるため室内を荒らすなどした。
 舩山被告は2003年、夫婦で互いを受取人とする生命保険に加入していたが、定職に就かないようになった2010年秋になり、新たにそれぞれが死亡すると約3500万円を受け取ることができる保険に加入していた。
 事件後、舩山被告は110番通報。しかし室内が物色されたり、外部から侵入された形跡がなかったため、捜査本部は舩山被告に発見の経緯を聞き、7月24日になって事件の関与を認めた。
裁判所
 最高裁第一小法廷 白木勇裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年11月6日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は保険金目的を否定している。
備 考
 2012年3月27日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2012年10月18日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
尹麗娜(57)
逮 捕
 2007年10月15日(殺人容疑)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、傷害致死、詐欺、有印私文書偽造・同行使、電磁的公正証書原本不実記録・同供用
事件概要
(注:以下に書く文章は起訴事実に新聞報道などを加味したものであり、裁判で認定された事実とは一部異なっている。認定された事実については、「裁判焦点」の判決箇所を確認のこと)
 大阪市で1998年秋からスナックを経営していた中国籍の尹麗娜(イン・リナ)被告は、1998年に結婚した日本人男性と離婚してまもなくの2001年5月、客だった元鉄道公安官の日本人男性との婚姻届を提出、同居するようになった。しかし7月に申請した在留期間更新許可決定が10月になっても下りず、尹被告は偽装結婚を斡旋していたことから強制送還を恐れた。強制送還されれば夫が亡くなっても財産を相続できないため、夫が病死したことになれば多額の財産が早く手に入ると考え、夫同様に糖尿病を患っていた別人を替え玉に仕立てて夫が病死したように装うことを計画。
 夫は尹被告が経営していたスナックを閉店した直後の10月28日、家主に家賃を払いに言ったのを最後に消息を絶つ。
 尹麗娜被告は2001年10月29日〜11月6日の間で、大阪市中央区の自宅で夫(当時77)を殺害した。その後、自宅押入付近で遺体を解体した。夫の遺体は発見されていない。尹被告は10月31日、知人男性の車で奈良市月ヶ瀬(旧月ヶ瀬村)の山中に向かい、ボストンバッグとゴミ袋二つを橋の上から川に投棄した。運転していた知人男性は、何を捨てたのかは知らなかった。逮捕後、この車のトランクから血痕が見つかり、DNA鑑定で夫のものであることが判明している。さらに11月7日には部屋の畳替えを実施している。
 尹被告はすぐにKさんを夫の替え玉にして通院させたが、別のTさんの方が身軽であったため、替え玉をTさんに変更。11月20日から12月4日まで入院させ、尹被告は妻として付き添っていた。しかしTさんは血糖値がほぼ正常に戻った。Tさんは12月18日に別の病院へ通院したのを最後に消息を絶つ。尹被告は2001年12月中旬〜2002年1月頃、Tさん(当時71)を大阪府かその周辺で殺害し、解体して捨てた。
 尹被告は次に無職越田俊昭被告と共謀。Kさん(同69)を夫になりすませた後、夫の住民票を石川県野々市町に移し、2月4日から越田被告の義兄宅で尹被告、Kさんらと暮らし始めた。尹被告らはKさんが糖尿病と知ったうえで、病状を悪化させるためビールを飲ませたり、ステーキを食べさせていた。2月10日、尹被告らはKさんを海岸で数時間歩かせた上、知人宅の納屋に連れていって簀巻きにし、14〜15日頃まで監禁した。その間、インスリンを注射せず、糖尿病を悪化させて殺害した。尹被告は石川県警の調べに対し、夫の戸籍謄本などを示しながらKさんが夫であると強調し、認めさせた。
 尹被告は2月16日、夫が病死したとする虚偽の死亡届を野々市町役場に提出。さらに夫の娘3人の住民票を無断で異動させて印鑑登録し、夫の土地約380平方メートルを尹被告名義にする虚偽の不動産登記を申請した。さらに夫名義の投資信託や預貯金など計約3200万円を不正に引き出した。尹被告は約1000万円を中国に住む親族の生活費や娘の留学資金として送金しているが、残りは逃走資金などで使い果たしたとされる。また相続した土地は売却に失敗した。この土地は事件発覚後、名義が元に戻されている。

 2002年4月、尹麗娜被告の夫の死亡届が出ていることを娘が知り、大阪府警に相談。病死とされた男性の写真を見た家族が別人と訴え、事件が発覚。写真の男性はKさんであることが判明。さらに尹被告が虚偽の不動産登記をした疑いが浮上した。
 2002年4月20日、大阪府岬町の山林でTさんの頭蓋骨が発見された。
 尹被告は事件発覚後の2002年5月、読売新聞大阪本社に手紙を寄せ、「2001年12月10日に夫婦げんかになり、その晩から帰ってこなくなりました」と、夫失跡の経緯を記していた。しかしその後の5月に捜査本部が尹被告の現場検証を行った際、押し入れから血痕と骨格筋の一部が見つかった。畳替えされた畳床からも微量の血痕が発見され、いずれもDNA鑑定でっとと一致した。Tさんが、夫の健康保険証を使っていたことも判明。
 大阪、石川両府県警合同捜査本部は2002年5月、虚偽の登記をしたとして公正証書原本不実記載容疑などで尹被告を指名手配した。
 2002年7月4日、Tさんの両足が包まれたポリ袋が入っているリュックサックが、堺泉北港(堺市)の沖合10mで発見された。
 捜査本部は2002年7月、尹被告がバッグなどを投げ捨てた橋の下にあるダム付近を捜索したが、夫の遺体は発見できていない。
 捜査本部は2003年1月に殺人容疑に切り替えて尹麗娜被告を国際手配した。

 尹麗娜被告は2002年5月、和歌山市の旅館で知りあった男性のトラックに同乗して東京・浅草へ向かい、そこで姿を消した。ここで70歳代の男性と出会い、江東区内で同居を始めた。5ヶ月後、屋台の店を営む別の中年男性と知り合い、この男性らとおでん屋台を共同経営することに。2003年秋ごろ、70歳代の男性と別れ、最後の潜伏先となる共同住宅に転居した。周囲には「江里」と名乗っていた。共同住宅には男性数人が出入りし、尹被告はおでん屋台のオーナーを務めた。屋台は無許可営業だったため、2006年には区の指導で廃業した。
 「江里」の知り合いであった男性が、未解決事件をまとめた書籍に載っていた尹麗娜被告の特徴と写真を偶然見て、「江里」が尹被告と似ていることに気付き、2007年10月15日に大阪府警へ通報。捜査員が17日に尹麗娜被告に任意同行を求め、Kさん殺人容疑で逮捕した。
 2007年10月25日、捜査本部は越田俊昭受刑者をKさん殺人容疑で逮捕した。越田受刑者は、土地の不正相続に関与したり、貯金を引き出したりしたとして、2002年に詐欺などの疑いで逮捕され、懲役5年の実刑判決が確定し、服役していた。越田受刑者は当時、合同捜査本部の調べに、替え玉であることは気付いていたが、死亡については関わりを否定していた。
 その後、捜査本部は詐欺容疑などで再逮捕。2008年1月9日に夫殺人容疑で再逮捕。さらにTさんの両足が入っていたリュックサックに残っていた女性のものとみられる長い毛髪がDNA鑑定の結果、尹被告のものであることが判明。さらにリュックサックが中国製で国内では販売されておらず、たびたび中国に戻っていた尹被告には入手する機会があったと判断。尹被告が似たようなリュックサックを持っていたという証言も得た。合同捜査本部は1月22日、Tさん殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 千葉勝美裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2013年11月11日 無期懲役(検察・被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一審では夫の事件では傷害致死、Tさんの事件では無罪、Kさんの事件では殺人を認定していた。
 検察側は3人に対しいずれも殺人罪を適用し、死刑判決を求めて上告。被告側は3件とも無罪を求めて上告した。
 最高裁は決定で、「死刑も十分に考慮されるが、殺された被害者が1人で犯行状況も不明であり、無期懲役の判断が誤りとは言えない」とした。
備 考
 共犯の無職越田俊昭被告は2009年3月18日、大阪地裁で求刑通り懲役15年判決。2010年2月9日、大阪高裁で被告側控訴棄却。2010年7月21日、最高裁第一小法廷で被告側上告棄却、確定。
 2010年1月28日、大阪地裁で一審無期懲役判決。2011年4月20日、大阪高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
藤井時雄(70)
逮 捕
 2010年10月3日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 長野県南箕輪村のパート清掃員、藤井時雄被告は2010年9月9日午後10時ごろ、伊那市の路上に止めた軽乗用車内で、会社員の男性(当時42)の首や胸を包丁で数回刺し、失血死させた。そして、男性から借りた30万円の返済を免れることで、財産上不法な利益を得たとしている。藤井被告は、男性の勤め先の建物清掃請負会社の同僚で、同社によると、2人は3年ほど前から駒ヶ根市内の温泉旅館で働いていた。
 翌朝、電柱に軽乗用車が衝突しているのを発見した通行人が119番し、事件が発覚した。10月3日、藤井被告は殺人容疑で逮捕された。長野地検は23日、借金を免れる目的だったとして、強盗殺人罪で藤井被告を長野地裁に起訴した。
裁判所
 東京高裁 金谷暁裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年11月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2013年9月18日の控訴審初公判で、弁護側は「事件発生時のアリバイがあり、一審判決の事実認定は合理性を欠く」などとして無罪を主張したのに対し、検察側は控訴棄却を求め、結審した。
 判決で金谷裁判長は、「客観的状況を考えると殺害した犯人が被告であることは明らかで、借金の返済を免れようとしたことが動機と十分推認できる。被告の供述は信用できないとした一審判決の判断は相当」とした。
備 考
 2013年3月14日、長野地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2014年3月26日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
前田和隆(43)
逮 捕
 2011年9月14日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火
事件概要
 神奈川県厚木市の前田和隆被告は、2011年4月2日午前2時頃、厚木市に済む別居中の妻らが住む木造2階建て住宅1階の戸袋など4か所にガソリンをまき、その上に、ライターで点火した新聞紙を投げて火をつけ、2階で就寝中の義父(当時70)と義母(当時64)を焼死させた。2階で就寝中の妻は、屋根伝いに逃げて無事だった。妻らと同居していた2人の子供は事件前日、自宅に泊めていた。
 前田被告は2008年5月、同居していた義父母らと関係が悪化して別居生活を始めた。翌年3月以降、妻に再度の同居を申し入れたが断られ、不満を募らせていった。前田被告は2011年2月まで、在日米陸軍キャンプ座間に施設修理担当などで勤務していたが、犯行当時は無職だった。
 県警捜査1課と厚木署は9月14日、建築資材販売店員となっていた前田被告を逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 鬼丸かおる裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年11月13日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は殺意を否認している。
備 考
 2012年11月27日、横浜地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2013年5月21日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
今井精一(68)
逮 捕
 2012年3月31日(暴力行為等処罰法違反容疑。2012年4月20日、殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反、暴力行為等処罰法違反
事件概要
 住所不定、無職今井精一被告は2012年3月31日午後4時55分頃、富山県高岡市で、乗っていたタクシー運転手の男性(当時58)の首の左側を所持していた小刀(刃渡り約13cm)で1回刺し、出血性ショックで殺害した。さらにこの約30分後、犯行に使った小刀で別のタクシーの女性運転手(当時51)を脅し、金を払わず下車した。事件当時、今井被告は現場近くのスナックで酒を飲んでおり、タクシーは配車依頼によるものだった。
 タクシー運転手の男性は午後4時56分ごろ、会社に「襲われた」と電話。そして午後5時ごろ、男性が倒れているところを通行人が発見し、県警高岡署へ通報した。
 女性運転手を脅して下車し、歩いていたところを、高岡署員が発見し、所へ任意同行し、暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕した。小刀に付着していた血液が男性のDNA型と一致したほか、男性のタクシーの外側から今井被告の指紋を検出したこと等から4月20日、殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 大橋正春裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年11月18日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は、事件当時酩酊状態で責任能力が低下していたとして、量刑不当を主張している。
備 考
 今井精一被告は1991年8月4日夕方、高岡市の質店で、質入れを断られたことに腹を立て、同質店店主の女性(当時79)を突き倒したあと、いたずらをしてけがを負わせた。その後、女性が意識を取り戻し声を上げたため、わいせつ行為の発覚を恐れてタオルで首を絞めて殺害した。事件直後の8月28日に高岡市内の貴金属店で指輪1個(41万円相当)を盗み、有罪判決を受けて服役、出所して1995年末に県内へ戻ったが、1996年1月11日、逮捕された。殺人とわいせつ致傷の罪で起訴され、1996年5月29日、富山地裁高岡支部で懲役15年判決(求刑懲役18年)を受け、服役していた。今井被告には他にも複数の前科がある。
 2012年12月10日、富山地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2013年5月30日、名古屋高裁金沢支部で被告側控訴棄却。

氏 名
久木野信寛(44)
逮 捕
 2013年2月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 久木野信寛被告は1997年4月13日午前2時過ぎ、三重県上野市(現・伊賀市)のビジネスホテルに押し入り、フロント付近で夜勤の従業員男性(当時48)の胸や背中を刃物で23か所以上刺して殺害し、金庫などから約159万円を奪ったとされる。久木野被告は1990年から約2年間、同ホテルに勤務していた。
 2010年4月の刑事訴訟法改正に伴う時効撤廃後、県警は現場で見つかった軍手から採取したDNA型を改めて鑑定。任意で提出を受けた久木野被告のDNA型と一致したことなどから、2013年2月1日、兵庫県小野市で工員として働いていた久木野被告を逮捕した。
裁判所
 津地裁 岩井隆義裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年11月22日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。久木野被告は逮捕当初こそ否認していたが、後に犯行を認めている。
 2013年11月14日の初公判で、久木野被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 冒頭陳述で検察側は、久木野被告には当時、競馬などで約200万円の借金があったと指摘。久木野被告が1995年にも同じホテルから現金約235万円を盗み、味をしめたとした上で「借金返済や遊ぶ金欲しさから現金を盗み出そうとし、刃物や軍手を用意した計画的な犯行」と主張した。弁護側は「見つかった時のために刃物を所持していたが、当初は危害を加えるつもりはなかった。心から反省している」と述べた。
19日の論告で検察側は「強い殺意に基づく残虐な犯行。競馬やスナック通いで重ねた借金を返済するための犯行で、酌量の余地はなく、結果は重大」と指摘した。同日の最終弁論で弁護側は被害者の体に40カ所以上の刺し傷があったことに「無我夢中で刺してしまい、最初から殺意があったとはいえない。16年間自首する勇気がなかった。現在は素直に罪を認め、謝罪文を書き続けるなど反省している」として、適正な判断を求めた。
 判決で岩井隆義裁判長は「被害者が抵抗できなくなった後もしつこく刺すなど、著しく残虐な犯行。盗んだ金を競馬につぎ込むなど酌量の余地はない」と述べた。
備 考
 警察庁によると、2010年4月に改正刑事訴訟法が施行され、殺人などの凶悪犯罪の公訴時効が撤廃されて以降、撤廃がなければ時効となっていた事件で指名手配されていなかった容疑者が逮捕された全国初の事件。旧法だったら2012年4月に時効が成立していた。
 ホテルは2004年6月に閉館となっている。
 被告側は控訴した。2014年4月24日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。2015年12月3日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
松尾元気(23)
逮 捕
 2012年12月1日(窃盗容疑。12月22日、強盗殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、強盗傷害、窃盗他
事件概要
 東京都板橋区の無職・松尾元気被告は2012年11月21日午後3時頃、空き巣目的で同区のマンションに住む会社員方に窃盗目的で侵入。帰宅した主婦(当時34)の胸などを複数回刺して殺害。奪ったキャッシュカードで現金25万8千円を引き出すなどした。
 他に松尾被告は、2012年9〜11月、板橋区内で空き巣や強盗を8事件(被害総額約100万円)繰り返した。
 周辺で発生していた連続空き巣事件で採取された足跡が、現場に残された者と酷似。会社員宅のインターホンに残っていた録画の記録と、駅や現金を引き出したATMの防犯カメラに写っていた人物を映像解析したところ、占有離脱物横領容疑などで検挙されたことのある松尾被告が浮上。12月1日、現金を引き出した窃盗容疑で松尾被告が逮捕された。松尾被告は現場から約700m離れたアパートに、若い女性と暮らしていた。12月22日、強盗殺人と住居侵入容疑で再逮捕された。
裁判所
 東京地裁 大善文男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年11月29日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。松尾被告は逮捕当時、事件への関与を否定し、その後は黙秘を続けていた。
 2013年11月11日の初公判で、松尾被告は「私がやりました」と起訴内容を認めた。その他8事件のうち、2012年9月28日に男性(当時71)の頭部を殴ってかばんを奪ったとされる強盗傷害罪については「記憶がない」と無罪を主張した。その他は起訴事実を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、松尾被告が、殺害事件前の約2か月間、板橋区内で空き巣や強盗を8事件(被害総額約100万円)繰り返したと指摘した。弁護側は「仕事が続かず、お金に困っていた。11月上旬に初めて空き巣をし、その後犯行を繰り返し、女姓を殺めてしまった」と述べた。
 22日の論告に先立ち、主婦の遺族らは極刑を求めた。論告で検察側は、「被告には強い殺意があった。盗みに入った被告が口封じに殺害した残虐な犯行で、反省も見られない」と批難した。
 判決で大善文男裁判長は、松尾被告が主婦の手足を縛ってキャッシュカードの暗証番号を教えるよう脅し、主婦が声を出して手を上げたため、とっさに持っていたサバイバルナイフで突き刺したと認定。被害者の傷の深さなどから「確定的な殺意があった」と判断した。そして「殺傷能力の高いナイフで20回前後も執拗に刺し、残虐で悪質だ」と非難した。ほかに起訴された強盗傷害や空き巣など8事件についても認定し、「場当たり的な性格や精神的な未熟さがうかがえるが、酌量減軽すべき事案ではない。楽に金を手に入れるため空き巣を繰り返し、ついには強盗殺人に及んだ。犯行態様は残虐悪質で遺族の悲しみは深い」と述べた。大善裁判長は「無残な方法で愛する家族を突然奪われた遺族が、死刑を求めるのも当然」と指摘。その一方で、「殺人に計画性がなく、積極的な殺意までは認められないことから、死刑を選択すべき事案ではない」と量刑理由を説明した。
備 考
 警視庁高島平署捜査本部は事件発生翌日の11月22日に東京大学医学部付属病院で遺体を司法解剖し、結婚指輪を外して押収品として保管。病院から高島平署に戻った後で指輪がないことに気付いた。署内や病院などを捜したが見つからず、警視庁幹部が12月に遺族に謝罪した。警視庁は紛失の事実の公表を検討したが、遺族の意向で公表を控えていた。
 裁判員選任手続きで、東京地裁は候補者に「審理で遺体写真を使う」と予告した。地裁が候補者に遺体写真の使用を予告するのは初めて。
 控訴せず確定。

氏 名
中山潤基(26)
逮 捕
 2013年3月12日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、銃刀法違反
事件概要
 青森県南部町の警備員、中山潤基(じゅんき)被告は2013年2月28日午前2時ごろ〜同3時半ごろ、金品を盗もうと、勤務していた警備会社の同僚で、岩手県二戸市に住む男性(当時31)の自宅に浴室窓から侵入。1階寝室で男性に気付かれたため胸と背中を持参した包丁(刃渡り16.7cm)で数回刺したうえ、両端に金属製のへらが付いた特殊な刃物で首を数回突くなどして殺害。現金約46,000円とキャッシュカード1枚などが入った財布を盗んだ。隣室には身体の不自由な母親がいたが、就寝しており無事だった。
 同日朝、男性が担当する現場に姿を見せなかったことから、勤務先の上司が1人で男性宅を訪問。男性の母親から「いませんよ」と言われ、いったん引き返した。しかし、男性の車が自宅の車庫に止まっていたため、不審に思った上司が、この日は勤務が休みだった中山被告に連絡。一緒に男性宅を訪ねた。同じ頃、同日午前8時50分頃、母親を訪ねたヘルパーの女姓が男性の遺体を発見した。
 県警は3月12日、強盗殺人と住居侵入の容疑で中山被告を逮捕した。中山被告はパチンコ等で借金があり、奪った現金もパチンコに使っていた。
裁判所
 盛岡地裁 岡田健彦裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年12月5日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2013年12月2日の初公判で、中山被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、中山被告が帰宅後、血の付いた軍手や服を焼却したと明かした。また、持って行った包丁の刃が折れて現場に残ったことを気にし、会社の同僚に電話して「(男性に)包丁をあげた」などと取り繕ったと指摘した。弁護側は、中山被告が小学3年から高校1年まで新聞配達で家計を支えるなど、経済的に苦しい生い立ちだったとした。「ローンの支払いで悩み、金を盗むための住居侵入だった。逮捕後は反省している」と述べた。
 被告人質問で弁護側から男性を狙った理由を尋ねられると、「ギャンブルや酒、たばこをやらない人で、お金があると思った」と話した。
 3日の論告で検察側は、障害を持つ母を1人で介護し、真面目に働いていた男性の命を奪った結果は重大と指摘。「パチンコにのめりこみ、金に困った末の行為。奪った現金をパチンコに使うなど人として許されない」とした。同日の最終弁論で弁護側は、現金を盗むために住宅に侵入し、見つかれば殺さなければならないと思っていただけで殺害は計画的でないとし、「(遺族に)謝罪文を送るなど反省しており、家族も更生に協力すると話している」などと、有期懲役にすべきだとした。
 判決理由で岡田裁判長は、事前に凶器を準備するなど犯行は計画的だったと指摘。「給料の大半をパチンコに使い困窮した経緯は自業自得で同情の余地はない」と述べた。その上で「被告の身勝手な思考に一片の人間性も見出すことができない。生涯をかけて罪を償わせるのが相当だ」とした。
備 考
 被告側は控訴した。中山被告本人が「できるだけ早く社会復帰を果たし、遺族に被害弁済をしたい」として減刑を求めており、控訴を決めたという。2014年5月27日、仙台高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。

氏 名
岡田浩幸(51)
逮 捕
 2009年5月8日
殺害人数
 3名
罪 状
 殺人
事件概要
 枚方市の会社員岡田浩幸被告は2009年4月17日午後7時ごろ、自宅で中学1年の長女(当時12)と小学1年の次女(当時7)の首を絞めて包丁で刺殺し、妻(当時46)も殺害した。さらに岡田被告は自らの腹も刺して3週間のけがを負った。妻が刺されながらも110番通報し、駆けつけた枚方署員が、自らの腹を刺そうとした岡田被告を制止した。5月8日、殺人容疑で岡田被告を逮捕した。
 岡田被告は大手会社の大阪支社営業部長を務めていたが、2008年5月枚方市の心療内科に通院し、休職中だった。
 簡易精神鑑定の結果、罪に問えると判断し、7月23日に起訴された。
裁判所
 大阪高裁 中谷雄二郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年12月10日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 岡田被告は一審同様、「娘2人は妻が殺した」と主張したが、中谷雄二郎裁判長は判決理由で「被告の主張は妻の110番通報の内容などの事実と全く整合せず、到底信用できない」として娘殺害を認定。量刑については「理想の家族に戻れないなら心中しようという動機は身勝手。無期懲役が重過ぎて不当とはいえない」と指摘した。
備 考
 2012年12月17日、大阪地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2014年5月8日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
元少年(24)
逮 捕
 2008年1月10日(銃刀法違反容疑。1月20日、殺人他容疑で再逮捕)
殺害人数
 3名
罪 状
 殺人、死体損壊、現住建造物等放火、銃刀法違反
事件概要
 青森県八戸市に住む無職少年(当時18)は酒癖の悪いパート従業員の母親や、母親の交際相手の男性になびく中学3年の弟、中学1年の妹に憎しみを感じ、3人を殺害することで、家族を失ったつらさと、後悔する生き地獄を父親に味わわせてやろうと計画。2008年1月9日、自宅アパートで母(当時43)と弟(同15歳)、妹(同13歳)をサバイバルナイフで殺害。母の腹部をナイフで切った上、部屋に放火して一室を全焼させた。
 県警八戸署は殺人事件と断定し捜査本部を設置した。10日午前6時ごろに少年をJR八戸駅で発見し、刃物を持っていたため銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 寺田逸郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年12月24日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は責任能力について争っている。
備 考
 2009年3月27日、青森地裁で求刑通り一審無期懲役判決。2012年11月29日、仙台高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
島袋信秀(57)
逮 捕
 2009年1月17日(窃盗容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体損壊・遺棄、窃盗
事件概要
 那覇市の暴力団組員島袋信秀被告は、福岡市の自営業H被告、福岡市の無職W被告、同市のK被告と共謀。2008年11月30日から12月1日までの間で、北谷町に住む自営業の男性(当時50)を殺害し、遺体を切断して同県大宜味(おおぎみ)村の山間部に埋めた。さらに男性のキャッシュカードで計約415万円を引き出し、仲間と分けた。
 男性の実兄が、弟と連絡が取れなくなったと12月8日に沖縄署に家出人捜索願を提出。12月20日、畑の所有者が地面に血痕があるのを見つけ、駐在所に通報。名護署員が掘り返し、ビニール袋に入った男性の切断遺体を発見した。
 2009年1月17日〜19日、無断でキャッシュカードから現金を引き落とした窃盗容疑で島袋被告、H被告、N被告を逮捕。2月9日、死体遺棄容疑で3人を再逮捕。3月2日、強盗殺人容疑で島袋被告を再逮捕した。3月4日、H被告、W被告、K被告を強盗殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 寺田逸郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2013年12月25日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 島袋被告は一・二審で「強盗殺人には関わっていない」と無罪を主張している。
備 考
 共犯のH被告は2010年3月29日、那覇地裁(吉井広幸裁判長)で懲役22年判決(求刑懲役25年)。控訴せず確定。
 共犯のK被告は2010年12月16日、那覇地裁(鈴木秀行裁判長)で懲役14年判決(求刑懲役20年)。
 共犯のW被告もすでに判決が出ている。
 2011年3月14日、那覇地裁で求刑通り一審無期懲役判決。2011年中?に福岡高裁那覇支部で被告側控訴棄却。




※高裁判決
 佐々木靖雄被告(2012年4月16日、一審無期懲役判決)は、2013年中に大阪高裁で被告側控訴が棄却されていると思われる。確証がないので、ここに記す。
 田中五郎被告(2012年12月7日、一審無期懲役判決)は、2013年中に大阪高裁で被告側控訴が棄却されている。確証がないので、ここに記す。
 全義明被告(2012年12月12日、一審無期懲役判決)は、2013年9月17日に大阪高裁(上垣猛裁判長)で判決があった。被告側控訴が棄却されたものと思われるが、確証がないので、ここに記す。
 鈴木武被告(2013年3月13日、一審無期懲役判決)は、2013年9月27日に大阪高裁(川合昌幸裁判長)で判決で被告側控訴が棄却されている。確証がないのでここに記す。
 永井真太郎被告(2013年3月5日、一審無期懲役判決)は、2013年8月下旬から10月末までの間に、大阪高裁で被告側控訴が棄却されている。確証がないのでここに記す。
 大芦明被告(2013年4月26日、一審無期懲役判決)は、2013年11月中に大阪高裁(中谷雄二郎裁判長)で判決があった。被告側控訴が棄却されたと思われるが、確証がないのでここに記す。

※銃刀法
 正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」

※麻薬特例法
 正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」

※入管難民法
 正式名称は「出入国管理及び難民認定法」

※確定について
 求刑死刑について一審無期懲役判決、検察側のみ控訴して無期懲役判決が下された被告については確定したものと見なしている。


【参考資料】
 新聞記事各種



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