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サヨナラ、ジーコ

2004.02.19

 私にとって、以前からジーコ氏は大きな謎だった。「ジーコ氏擁護論」で論じたアントラーズ時代のジーコ氏の素晴らしかった「監督」振りと、日本代表監督としての無様な采配振りの落差があまりに大きかったからだ。「ジーコ氏現状分析」では、ジーコ氏がしばらく現場を離れていたので、かつての能力が錆びたのだろうか、と仮説を立てた事もある。
 でも、ようやくわかった。あの悲惨なオマーン戦で、その落差の理由が。

1.ジーコ氏は更迭すべし

 言うまでもなく、オマーン戦の無様な試合振りを見て、私は「ジーコ氏解任すべし」と確信を持った。ジーコ氏は、「日本代表チームの監督」と言う仕事に全知全霊を持って取り組んでいない、換言すれば、いい加減な気持ちでこの仕事に取り組んでいるとしか思えないからだ。以下、論拠を説明する。

2.日本代表の目標、再確認

 現在の日本代表チームの目標は何だろうか。2002年大会で地元の利があったとは言え、ベスト16まで進んだ日本である。2006年でベスト8あるいはベスト4を目指すと言う事のはずだ。そして、そのためには、以下の2点が具体的な対応策となろう。

@ブラジル、アルゼンチン、フランス、イタリアと言った世界最高クラスのチームと互角とまではいかなくても、そこそこ抵抗できる戦闘能力を持つチームを作る事
A予選及び本大会で着実に勝ち点を拾う努力を最善に尽くし、ワールドカップ2次トーナメントまで進出する確率を高めていく事

 うち@について、ジーコ氏の監督振りは心もとなく、このままでは戦闘能力の向上が望めないから更迭すべきと言う典型的見解が大住氏が述べている「オートマチズムの欠如」である。全くおっしゃる通りで、昨日の約束ごとなど何もない試合を見せられると、いくらジーコ氏が「選手たちの自由な発想、創造性に任せる」と語っても、守備ラインからのつなぎにも約束ごとが見られない現状では、あまりに説得力に欠ける。特に試合を組み立てる上で最も重要な、守備的MFと両サイドバックに活動量も連係が全く見られないのだから。

 そして、Aについては様々な方が論じているので、ここを参照にして欲しい。それぞれ、実に的を得た意見が多い。少なくとも、このオマーン戦は1次予選で最も重要な試合と言ってもよい試合であり、監督として腕の見せ所の試合である。その試合で、全く動けないコンディションの選手をフル出場させ、事実上10人で試合をされ続けては言葉はない。  

3.ジーコ氏を否定する理由

 しかし、私がジーコ氏を更迭すべしと思うのは、もっと基本的な問題だ。
 先日、私はジーコ氏を「考えていない」と酷評した(2月13日の日記)。そして、「本番第1回」のオマーン戦を見て、私はある仮説を持つに至った。「ジーコ氏は、もちろん考えていない、そしてそれはやる気がないからではないか」と。

 昨日のオマーン戦は真剣勝負だ。様々な条件の中で、勝利への確率を少しでも高める事が、監督の仕事である。ところが、非常に悩ましい条件が揃っていた。
  (A)中心選手の多くは欧州でプレイしており、呼び戻しが簡単でない。
  (B)国内組についてはシーズンオフ直後、コンディションが整わない時期での試合となる。
  (C)さらに悪い事に、合宿で風邪が流行した などである。
 そのような悪条件下では、ベストのチームを作るのは難しい。とすれば、状況を見極めながら、いかにベターなチームを作る事ができるか、監督の手腕が問われるところ。

 ところが、この日ジーコ氏が選んだ11人は、遠藤(このポジションの小野は負傷で帰国できず)を除いては、おなじみの4DF(うち、宮本と山田は発熱)+海外組(稲本、柳沢:所属チームでほとんど試合に出られず、中村:負傷上がり、中田、高原:帰国は月曜日、合同練習はほとんどしていない)と言う物だった。つまり、以前からジーコ氏が固定したがっている「ベストメンバ」にほど近いメンバを、コンディション抜きに強引に出場させただけだった。さらに、いずれの選手も、体調が悪そうで乏しい運動量で、単調な攻撃に終始した。工夫も何もない試合だった。

 そして、試合が始まってからの采配も定型的だった。全く不振の山田を放置し、常時10人での試合を継続するのだから(山田は風邪で発熱していたらしいが)。ここを交替させるだけでも、状況は改善したはずだ。しかし、ジーコ氏は守備ラインには手を加えず、攻撃ラインの入替に終始。
 と、ここまでは2月13日に述べた「考えていない」の延長である。

  ところが、試合後のジーコ氏の発言、振る舞いが興味深かった。
 「2週間あればよいチームを作れるのだが」と語り、誕生日だかカーニバルだか知らないがブラジルに帰国してしまったと言う。これは凄い。今回の予選方式と今年の日本サッカー界の日程を考えれば、氏に「2週間」の時間が与えられる可能性は皆無なのだ。つまり、予選方式と今年の日程を知らないか、自分は現状の仕事を成功させる能力がないと発言しているのと等価ではないか。
 そして昨日の厳しい試合のフィードバック検討をする間もなく帰国。考えてみれば、ジーコ氏は(選考した半分の選手を最終メンバに入れなかった)合宿の直前に来日し、1試合だけを終えてブラジルに去る。換言すれば、本番のオマーン戦だけのために、仕方がないから来日したようにすら思えてくる。アジアチャンピオンズカップもA3もゼロックスも五輪予選も、興味がないのだろう。
 つまり、やる気がないのである。やる気がなければ、「考えない」のも当然だ。この男は高額の報酬を得ながら、中途半端な気持ちでその職務を遂行しようとしているだけなのだ。   

4.サヨナラ、ジーコ

 冒頭に述べたように、私は、あの「アントラーズ時代のジーコ」は何だったのか、とずっと疑問を抱いていた。ようやくわかった。あのJリーグ黎明期、アントラーズを率いていたジーコは、やる気に満ち溢れていたのだ(日本と言う後進国にサッカーを普及させようとの信念だったのか、借金を返すためだったのかは知らないが、いずれにしても問題ではない)。そして、今のジーコ氏はやる気がないのである。

 日本協会が「ジーコ日本代表監督とその取り巻き」に今までいくらカネを払い、今後いくら払わねばならないかは知らない。でも仕方がない。やる気がないのだから。これ以上の支払いが最小になるようにすべきである。大枚を捨ててしまう事になるかもしれないが、かつてのジーコが、日本サッカーに与えてくれた財産を考えれば、もう捨て金と思うしかないではないか。潔くジーコと訣別しよう。別に「更迭」、「解任」と大上段に構える必要もない。「帰国したジーコ氏から『体調不良、大変残念だが辞任する』と連絡があった」とニュースリリースを流せば、誰も傷つかない。ジーコ氏も再来日して、また少しはカネを稼ぐ事もできる。採用した川淵会長も傷つかない。考えてみれば理想的ではないか。久保のおかげで、うやむやのうちにジーコ氏が退任するだけなのだ。

  もっとも、昨日の試合内容を見れば、サッカーを判っている人ならば、誰でもジーコ氏を更迭すべき、と思うはずだ。日本協会は既に後任人事の調整に入っているのかもしれない。川淵会長が、一見ジーコ氏を擁護するような発言をしているが、思慮深い人なので、人事問題でマスコミに情報が流出するのを避けるためと、考えるのが妥当なような気もする。

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Authored by Fumio Muto ; 2004 February 19 ; 武藤へ一言
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